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第1話#02
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とある日の放課後。クラスメイトが居残ってお喋りをしている教室で、日直の当番をしている女生徒――卯月千鶴がいました。千鶴はトレードマークの三つ編みのおさげと大きな眼鏡を触りつつ、今日あった事を丁寧に日誌へ書き記しています。しかし、書きたいことが沢山あるのか、時にシャーペンで頬をつんつんと突きました。平凡な日常もこぼさず、面白く書いた方が良い。千鶴はそう思って日誌を書き終えました。
「これで良いでしょう」
最終確認で日誌を読み返し、机にシャーペンを置くと千鶴は微笑みます。そうして、両腕を前に、上に、伸ばして体を解しました。両肩をギュッギュッと押し上げて一息ついていると、スマホのバイブ音が聞こえました。千鶴は素早く、スカートのポケットからスマホを取り出します。画面を点けると、欠伸姿の三毛猫が1通のメールと15時30分の時刻を知らせていました。千鶴は素早くパスコードを入力し、メールを開きます。千鶴の兄からでした。メールの用名は『今日の写真』です。内容は『これ見て』と、ただ1つの画像が送付されていました。それは、白猫がへそ天で寝ている画像でした。その画像に千鶴は安堵の表情を浮かべます。
(――今日も長たちからの命令はなし。あるのは…)
画像を下へスクロールして、出てきた文章に千鶴は苦笑しました。
(―― 16時30分からスーパーのタイムセール、ですか。もう…兄さんときたら、定期連絡に私用の文も書いちゃうんだから)
千鶴は、メールに三毛猫が右手を挙げて立ち上がっている画像を送付して返信しました。猫の何気ない動作でメッセージを相手に伝える。へそ天で寝ている姿は安全安心何もなしと言う意味で、表情と動きで意味は違うが手を挙げている姿は了解と言う意味がありました。送信完了の文字が出ると、千鶴はスマホの画面を消しました。と、同時に元気な女生徒の声が聞こえてきます。
「ねえねえ、今日のテレビ見た?昨日、公園でバラバラ死体がまた見つかったって」
(――また、この話)
千鶴は聞き耳を立てつつ、帰る準備を始めました。
一ヶ月前から巷を騒がせているニュースがあります。とある山中で人間の腕と足が発見され、それぞれが別の人間だと報道されたのです。発見当初どれも死後数日が経過しており、未だ身元は分かっていません。それだけでも恐ろしい事件なのに、日が経つに連れて様々な場所から動物の体の一部も発見されました。古く白骨したモノ、新しく血が滴るモノ。誰にも気づかれず、しかし、探せば見つかるような場所で発見されるのです。この事から犯人は残虐非道な愉快犯だろうと推測され、様々な憶測もされました。そう、犯人はまだ捕まっていません。
(もうそろそろだろう、と兄さんは言っていましたが…どうなるのか)
千鶴は考えます。調査に手間取れば、それだけで被害者が増えていきます。人も動物も等しく、彼らには関係な――「あっそういえば!!」と一際大きな声に千鶴は驚いて肩を跳ね上げました。
「知ってる?今日ね、学校に巫女服姿の幽霊が出たんだって!」
巫女服と聞いて、千鶴はそっと頭を抱えました。とある人物が脳裏に映ったのです。それは正に彼女――岩崎篠の姿でした。
「え、何それ?」
「なんか隣のクラスの子が騒いでたんだけど…図書室へ続く廊下から鈴の音が聞こえたと思ったら、『巫女服を着た女の人』が窓辺に立ってたんだって。しかも、見てる間に一瞬で消えたそうだよ」
「ああ、それなら私も先輩から聞いたわ。なんか校内のあちこちにいたとかで鈴の音が聞こえたら気をつけなさいって」
「へー、それで先生たちが妙にピリピリしてたんだ」
「うん。不審者の可能性もあるからって警戒してるみたい。でもさ、人が一瞬で消えてあっちこっちに行くことはないじゃん。だから――」
千鶴はそっと教室を出ました。教室から聞こえるクラスメイトの声を背後に足早に、向かう先は篠の元です。篠はきっと、風なびく屋上でしょう。
「これで良いでしょう」
最終確認で日誌を読み返し、机にシャーペンを置くと千鶴は微笑みます。そうして、両腕を前に、上に、伸ばして体を解しました。両肩をギュッギュッと押し上げて一息ついていると、スマホのバイブ音が聞こえました。千鶴は素早く、スカートのポケットからスマホを取り出します。画面を点けると、欠伸姿の三毛猫が1通のメールと15時30分の時刻を知らせていました。千鶴は素早くパスコードを入力し、メールを開きます。千鶴の兄からでした。メールの用名は『今日の写真』です。内容は『これ見て』と、ただ1つの画像が送付されていました。それは、白猫がへそ天で寝ている画像でした。その画像に千鶴は安堵の表情を浮かべます。
(――今日も長たちからの命令はなし。あるのは…)
画像を下へスクロールして、出てきた文章に千鶴は苦笑しました。
(―― 16時30分からスーパーのタイムセール、ですか。もう…兄さんときたら、定期連絡に私用の文も書いちゃうんだから)
千鶴は、メールに三毛猫が右手を挙げて立ち上がっている画像を送付して返信しました。猫の何気ない動作でメッセージを相手に伝える。へそ天で寝ている姿は安全安心何もなしと言う意味で、表情と動きで意味は違うが手を挙げている姿は了解と言う意味がありました。送信完了の文字が出ると、千鶴はスマホの画面を消しました。と、同時に元気な女生徒の声が聞こえてきます。
「ねえねえ、今日のテレビ見た?昨日、公園でバラバラ死体がまた見つかったって」
(――また、この話)
千鶴は聞き耳を立てつつ、帰る準備を始めました。
一ヶ月前から巷を騒がせているニュースがあります。とある山中で人間の腕と足が発見され、それぞれが別の人間だと報道されたのです。発見当初どれも死後数日が経過しており、未だ身元は分かっていません。それだけでも恐ろしい事件なのに、日が経つに連れて様々な場所から動物の体の一部も発見されました。古く白骨したモノ、新しく血が滴るモノ。誰にも気づかれず、しかし、探せば見つかるような場所で発見されるのです。この事から犯人は残虐非道な愉快犯だろうと推測され、様々な憶測もされました。そう、犯人はまだ捕まっていません。
(もうそろそろだろう、と兄さんは言っていましたが…どうなるのか)
千鶴は考えます。調査に手間取れば、それだけで被害者が増えていきます。人も動物も等しく、彼らには関係な――「あっそういえば!!」と一際大きな声に千鶴は驚いて肩を跳ね上げました。
「知ってる?今日ね、学校に巫女服姿の幽霊が出たんだって!」
巫女服と聞いて、千鶴はそっと頭を抱えました。とある人物が脳裏に映ったのです。それは正に彼女――岩崎篠の姿でした。
「え、何それ?」
「なんか隣のクラスの子が騒いでたんだけど…図書室へ続く廊下から鈴の音が聞こえたと思ったら、『巫女服を着た女の人』が窓辺に立ってたんだって。しかも、見てる間に一瞬で消えたそうだよ」
「ああ、それなら私も先輩から聞いたわ。なんか校内のあちこちにいたとかで鈴の音が聞こえたら気をつけなさいって」
「へー、それで先生たちが妙にピリピリしてたんだ」
「うん。不審者の可能性もあるからって警戒してるみたい。でもさ、人が一瞬で消えてあっちこっちに行くことはないじゃん。だから――」
千鶴はそっと教室を出ました。教室から聞こえるクラスメイトの声を背後に足早に、向かう先は篠の元です。篠はきっと、風なびく屋上でしょう。
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