いまさら!のぶなが?

華猫

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第二章

宿題

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「ベットの上で退屈でしょう。」
痛々しく巻かれた包帯だらけの信長の顔をまじましと見つめながら歌奈は尋ねた。
「いや。秀一から言われた宿題があるから大丈夫さ。」
「宿題?」
「ああ…」
溜息交じりの声で信長は呟いた。
「実は秀一と約束をしたんだ…」
「約束?どんな?」
「うん…私と秀一はこの先、家康と秀吉として敵同士になって行くだろう。って事は、今までのように仲間として顔を突き合わせて作戦会議という訳にはいかないって事さ。だからひとりであっても作戦が遂行出来るように、私自身が歴史を把握し本気で秀吉と対峙出来るようになる事!それが秀一から出された宿題さ。」
「なるほど…でもこの短期間で把握出来るの?三郎にとってはだいぶ分が悪いわね。」
「まあね。かなり大変ではある…でもこちらにちょくちょく来ていた時に学んだこともあるし向こうで秀一に教わった事も随分とあるから自信はあるんだ。先ずはやってみなくちゃ分からないけど…でも、あの秀吉と腕比べだと思ったら俄然やる気が出て来るよ。あいつに負けたくはないからね。」
自信満々の信長を見て歌奈はなぜだかとても嬉しかった。
「何だかあなた、楽しそうね。それにそんなに負けず嫌いだったなんてびっくりだわ。」
「そっ、そんな事ないよ!楽しんでる訳じゃないよ!」
クスクス笑う歌奈を見て信長はちょっと照れくさかった。


「ところで、三郎に相談があるんだけど…」
「何だい?」

歌奈は先日訪ねて来た、家康の子孫だと名乗った岩崎氏の言葉を思い返していた。


「私達一族の後継者は代々高祖父の遺言と高祖母の話しを受け継ぎその秘密を守って来ました。大恩人は「織田信長様」だと。そしてこの紫陽寺を守り抜けと。紫陽寺の金塊は信長様にお渡しすると約束しております。そしてその時に真実を知る事が出来ると高祖父の遺言にありました。金塊はどうか信長様の思うままにお使い下さい。そしてこの先も岩崎家は織田家と徳川家の為に…そして日本の為に、微力ながら尽くしていきたいと…私は思いを新たにしております。」


「岩崎さんが言っていた紫陽寺のあれの事なんだけど…あなたはどうしたい?こんな事、急に答えは出ないと思うけど、あなたは3か月しか居れないから話し合っておかないといけないと思って。それに何だか知ってしまうと物騒な感じもするし…」
「そうだね。でも保管場所はこのままでいいと思う。下手に動かすと余計に危険に感じるよ。この時代まで隠し通して来たんだからここが一番安心って事だよ。」
「そうね。確かに、戦時中なんて政府から隠し通せたと思うとある意味凄いわね。」
「使い道は歌奈に任せるよ。私はこれから数年やる事があるだろう。いつこちらに来れるか来れないか・・この先どうなるかも分からない。過去に持って行く訳にも行かないし。だからこれは未来の為に使った方が良いと思う。」
「うん。実は…ちょっと考えがあるの。だから私に任せて欲しい。」
「ああ、君にお願いしたい。よろしく頼むよ。」
「分かった。これは私の宿題ね。」
ふたりは笑顔で見つめ合った。
「それにしても、これが世の言う徳川の埋蔵金て事になるのかな~」
「埋蔵金?」
「そうよ。有名な話しなの。詳しく教えてあげる。」
そう言って無邪気に話し出す歌奈を見ていると、信長は心底幸せだと感じた。


「歌奈、向こうに戻る前に先代のご住職のお墓参りをしたいんだけど…」
「ああそうね。退院したら行きましょう。先ずは一日でも早く退院する事が先決ね。」

(そうよね…戻る日が来るのよね…)

歌奈は静かに目を伏せた。

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