いまさら!のぶなが?

華猫

文字の大きさ
上 下
56 / 58
第二章

宿題

しおりを挟む
「ベットの上で退屈でしょう。」
痛々しく巻かれた包帯だらけの信長の顔をまじましと見つめながら歌奈は尋ねた。
「いや。秀一から言われた宿題があるから大丈夫さ。」
「宿題?」
「ああ…」
溜息交じりの声で信長は呟いた。
「実は秀一と約束をしたんだ…」
「約束?どんな?」
「うん…私と秀一はこの先、家康と秀吉として敵同士になって行くだろう。って事は、今までのように仲間として顔を突き合わせて作戦会議という訳にはいかないって事さ。だからひとりであっても作戦が遂行出来るように、私自身が歴史を把握し本気で秀吉と対峙出来るようになる事!それが秀一から出された宿題さ。」
「なるほど…でもこの短期間で把握出来るの?三郎にとってはだいぶ分が悪いわね。」
「まあね。かなり大変ではある…でもこちらにちょくちょく来ていた時に学んだこともあるし向こうで秀一に教わった事も随分とあるから自信はあるんだ。先ずはやってみなくちゃ分からないけど…でも、あの秀吉と腕比べだと思ったら俄然やる気が出て来るよ。あいつに負けたくはないからね。」
自信満々の信長を見て歌奈はなぜだかとても嬉しかった。
「何だかあなた、楽しそうね。それにそんなに負けず嫌いだったなんてびっくりだわ。」
「そっ、そんな事ないよ!楽しんでる訳じゃないよ!」
クスクス笑う歌奈を見て信長はちょっと照れくさかった。


「ところで、三郎に相談があるんだけど…」
「何だい?」

歌奈は先日訪ねて来た、家康の子孫だと名乗った岩崎氏の言葉を思い返していた。


「私達一族の後継者は代々高祖父の遺言と高祖母の話しを受け継ぎその秘密を守って来ました。大恩人は「織田信長様」だと。そしてこの紫陽寺を守り抜けと。紫陽寺の金塊は信長様にお渡しすると約束しております。そしてその時に真実を知る事が出来ると高祖父の遺言にありました。金塊はどうか信長様の思うままにお使い下さい。そしてこの先も岩崎家は織田家と徳川家の為に…そして日本の為に、微力ながら尽くしていきたいと…私は思いを新たにしております。」


「岩崎さんが言っていた紫陽寺のあれの事なんだけど…あなたはどうしたい?こんな事、急に答えは出ないと思うけど、あなたは3か月しか居れないから話し合っておかないといけないと思って。それに何だか知ってしまうと物騒な感じもするし…」
「そうだね。でも保管場所はこのままでいいと思う。下手に動かすと余計に危険に感じるよ。この時代まで隠し通して来たんだからここが一番安心って事だよ。」
「そうね。確かに、戦時中なんて政府から隠し通せたと思うとある意味凄いわね。」
「使い道は歌奈に任せるよ。私はこれから数年やる事があるだろう。いつこちらに来れるか来れないか・・この先どうなるかも分からない。過去に持って行く訳にも行かないし。だからこれは未来の為に使った方が良いと思う。」
「うん。実は…ちょっと考えがあるの。だから私に任せて欲しい。」
「ああ、君にお願いしたい。よろしく頼むよ。」
「分かった。これは私の宿題ね。」
ふたりは笑顔で見つめ合った。
「それにしても、これが世の言う徳川の埋蔵金て事になるのかな~」
「埋蔵金?」
「そうよ。有名な話しなの。詳しく教えてあげる。」
そう言って無邪気に話し出す歌奈を見ていると、信長は心底幸せだと感じた。


「歌奈、向こうに戻る前に先代のご住職のお墓参りをしたいんだけど…」
「ああそうね。退院したら行きましょう。先ずは一日でも早く退院する事が先決ね。」

(そうよね…戻る日が来るのよね…)

歌奈は静かに目を伏せた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

楽将伝

九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語 織田信長の親衛隊は 気楽な稼業と きたもんだ(嘘) 戦国史上、最もブラックな職場 「織田信長の親衛隊」 そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた 金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか) 天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

出撃!特殊戦略潜水艦隊

ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。 大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。 戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。 潜水空母   伊号第400型潜水艦〜4隻。 広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。 一度書いてみたかったIF戦記物。 この機会に挑戦してみます。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

戦国を駆ける軍師・雪之丞見参!

沙羅双樹
歴史・時代
川中島の合戦で亡くなった軍師、山本勘助に嫡男がいた。その男は、山本雪之丞と言い、頭が良く、姿かたちも美しい若者であった。その日、信玄の館を訪れた雪之丞は、上洛の手段を考えている信玄に、「第二啄木鳥の戦法」を提案したのだった……。 この小説はカクヨムに連載中の「武田信玄上洛記」を大幅に加筆訂正したものです。より読みやすく面白く書き直しました。「武田信玄上洛の巻」の後は、「明智光秀の本能寺の変の巻」、さらにそのあとは鎌倉の商人、紅屋庄右衛門が登場する「商売人、紅屋庄右衛門の巻」、そして下野の国宇都宮で摩耶姫に会う「妖美なる姫君、摩耶姫の巻」へと展開していきます。

処理中です...