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第一章
光秀
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「私には、明智光秀などという親戚はいないはずです。」
濃姫は不思議そうに呟いた。
「確かに私の母方は明智です。そして今は叔父が家督を継いでおります。しかし、叔母は身体が弱く、子はおりません。」
「そうなのか・・やはり事実はどこか違っているのかもしれない・・」
(光秀が居なければ本能寺の変は起こらない?そんな事はありえない。他の細かい詳細ならいざ知らず、本能寺の変に関しては揺るぎない歴史の事実なのだから・・という事は光秀も作り出さなければいけないという事なのか!)
信長は困惑していた。
「確かに近しい縁者に明智はたくさんおります。でも光秀という者もそれであろうと思われる者も心当たりがないんです。しかしその者が居なければ駄目だという事であれば、取り敢えず私が確認してみましょう。私が知らないだけかもしれませんので、話しはまたその後ですね。」
ひとまず明智光秀の件は濃姫に委ねる事にした。
暫くすると明智光秀の詳細について話しがあると、3人は濃姫に呼び出された。
「やはりどこを調べても明智光秀はおりませんでした。」
その言葉を聞いて皆一様に項垂れた。
「やっぱり・・そうか・・」
「光秀もこちらで用意しなければならないという事だな。」
「これは中々大変そうね・・」
落ち込む三人を見て濃姫が声を掛けた。
「皆さん。そこで考えたんですが・・思い切って私が光秀になろうかと思います。」
「え~!!!」
「以前、秀吉殿から伺いました。自分は秀吉になったんだと。なら、今度は私が光秀になれば万事、事が上手く運ぶのではないかと思ったんです。明智の縁者の私ならば簡単に明智に入り込む事が出来ますし、明智の縁者を知り尽くしている私ならば味方を見つける事も容易です。そこで色々と試行錯誤してみた結果、私なら出来ます。どうでしょうか?」
「しかし、女子の姫が男になれますか?」
皆、唖然とし濃姫に問いかけた。
「大丈夫です。女子だとばれないようにこれからしっかり身なりは整えます。それに私は普通の男には負けないくらいの腕はありますから、すぐに戦にだって出られます。その辺は心配ご無用です。ただ・・ひとつお願いがあるのです。その時はお静を私の女房にしたいのです。なのでこのお役目を私にさせてはくれないでしょうか?必ず皆さんのご期待に副う事が出来ます!」
濃姫は三人に強く訴えかける。
「そして私が明智光秀になってやりたい事がもうひとつあります。それは父の仇である斉藤義龍をこの手で討つことです。なのでお願いです。その思いを遂げさせてはくれませんか?」
信長たちはもはや濃姫の決意と覚悟に異論を唱える事など出来なかった。
そして明智光秀として生き返る為に全力で協力すると誓い計画を進める事を約束した。
濃姫とお静を加えた五人の仲間達は濃姫が明智光秀になるという途方もない計画に向かって懸命に策を練っていた。
しかし皆の心は不安でいっぱいだった。
「なあ~秀吉。濃姫には全力で協力するとは言ったものの史実では濃姫が美濃へ帰るなんてなかっただろう。これは歴史を変える事にならないのか?」
素朴な疑問を秀吉に投げかけてみると秀吉の口からは意外な答えが返ってきた。
「歴史の真実は正直言って難しい。例えば「本能寺の変」ひとつ取っても、「秀吉黒幕説」や「家康黒幕説」などが山ほどあるんだ。首謀者は確かに明智光秀だったけど、それは史実という名の膨大な資料から研究し、たくさんのその時代の専門家が出した見解でしかない。その実態は光秀はただの実行犯だったんじゃないかとさえ言われてるんだよ。正直、過去の真実なんて分からない事だらけさ。ましてやその武将の妻や他の女子達に関してなんて、資料が乏しくて何が真実なのかも分からないってとこが本音だよ。濃姫に至っては本能寺の変で信長と一緒に亡くなったとか、生き延びて80何歳くらいまで生きていたとか・・ハッキリしてないんだ。」
「そうなのか・・」
「うん。歴史は未だに謎の部分が極めて多いから、ある程度の変更は問題ないような気がする。だから実際何を信じて何を基準にこの先進めて行くのか正直、正解はないって事かな。」
「なるほど・・」
「まあ~上手く行かなかったらその都度修正すればいいって事さ!」
秀吉は驚くほど楽観的であった。
濃姫は不思議そうに呟いた。
「確かに私の母方は明智です。そして今は叔父が家督を継いでおります。しかし、叔母は身体が弱く、子はおりません。」
「そうなのか・・やはり事実はどこか違っているのかもしれない・・」
(光秀が居なければ本能寺の変は起こらない?そんな事はありえない。他の細かい詳細ならいざ知らず、本能寺の変に関しては揺るぎない歴史の事実なのだから・・という事は光秀も作り出さなければいけないという事なのか!)
信長は困惑していた。
「確かに近しい縁者に明智はたくさんおります。でも光秀という者もそれであろうと思われる者も心当たりがないんです。しかしその者が居なければ駄目だという事であれば、取り敢えず私が確認してみましょう。私が知らないだけかもしれませんので、話しはまたその後ですね。」
ひとまず明智光秀の件は濃姫に委ねる事にした。
暫くすると明智光秀の詳細について話しがあると、3人は濃姫に呼び出された。
「やはりどこを調べても明智光秀はおりませんでした。」
その言葉を聞いて皆一様に項垂れた。
「やっぱり・・そうか・・」
「光秀もこちらで用意しなければならないという事だな。」
「これは中々大変そうね・・」
落ち込む三人を見て濃姫が声を掛けた。
「皆さん。そこで考えたんですが・・思い切って私が光秀になろうかと思います。」
「え~!!!」
「以前、秀吉殿から伺いました。自分は秀吉になったんだと。なら、今度は私が光秀になれば万事、事が上手く運ぶのではないかと思ったんです。明智の縁者の私ならば簡単に明智に入り込む事が出来ますし、明智の縁者を知り尽くしている私ならば味方を見つける事も容易です。そこで色々と試行錯誤してみた結果、私なら出来ます。どうでしょうか?」
「しかし、女子の姫が男になれますか?」
皆、唖然とし濃姫に問いかけた。
「大丈夫です。女子だとばれないようにこれからしっかり身なりは整えます。それに私は普通の男には負けないくらいの腕はありますから、すぐに戦にだって出られます。その辺は心配ご無用です。ただ・・ひとつお願いがあるのです。その時はお静を私の女房にしたいのです。なのでこのお役目を私にさせてはくれないでしょうか?必ず皆さんのご期待に副う事が出来ます!」
濃姫は三人に強く訴えかける。
「そして私が明智光秀になってやりたい事がもうひとつあります。それは父の仇である斉藤義龍をこの手で討つことです。なのでお願いです。その思いを遂げさせてはくれませんか?」
信長たちはもはや濃姫の決意と覚悟に異論を唱える事など出来なかった。
そして明智光秀として生き返る為に全力で協力すると誓い計画を進める事を約束した。
濃姫とお静を加えた五人の仲間達は濃姫が明智光秀になるという途方もない計画に向かって懸命に策を練っていた。
しかし皆の心は不安でいっぱいだった。
「なあ~秀吉。濃姫には全力で協力するとは言ったものの史実では濃姫が美濃へ帰るなんてなかっただろう。これは歴史を変える事にならないのか?」
素朴な疑問を秀吉に投げかけてみると秀吉の口からは意外な答えが返ってきた。
「歴史の真実は正直言って難しい。例えば「本能寺の変」ひとつ取っても、「秀吉黒幕説」や「家康黒幕説」などが山ほどあるんだ。首謀者は確かに明智光秀だったけど、それは史実という名の膨大な資料から研究し、たくさんのその時代の専門家が出した見解でしかない。その実態は光秀はただの実行犯だったんじゃないかとさえ言われてるんだよ。正直、過去の真実なんて分からない事だらけさ。ましてやその武将の妻や他の女子達に関してなんて、資料が乏しくて何が真実なのかも分からないってとこが本音だよ。濃姫に至っては本能寺の変で信長と一緒に亡くなったとか、生き延びて80何歳くらいまで生きていたとか・・ハッキリしてないんだ。」
「そうなのか・・」
「うん。歴史は未だに謎の部分が極めて多いから、ある程度の変更は問題ないような気がする。だから実際何を信じて何を基準にこの先進めて行くのか正直、正解はないって事かな。」
「なるほど・・」
「まあ~上手く行かなかったらその都度修正すればいいって事さ!」
秀吉は驚くほど楽観的であった。
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