34 / 58
第一章
光秀
しおりを挟む
「私には、明智光秀などという親戚はいないはずです。」
濃姫は不思議そうに呟いた。
「確かに私の母方は明智です。そして今は叔父が家督を継いでおります。しかし、叔母は身体が弱く、子はおりません。」
「そうなのか・・やはり事実はどこか違っているのかもしれない・・」
(光秀が居なければ本能寺の変は起こらない?そんな事はありえない。他の細かい詳細ならいざ知らず、本能寺の変に関しては揺るぎない歴史の事実なのだから・・という事は光秀も作り出さなければいけないという事なのか!)
信長は困惑していた。
「確かに近しい縁者に明智はたくさんおります。でも光秀という者もそれであろうと思われる者も心当たりがないんです。しかしその者が居なければ駄目だという事であれば、取り敢えず私が確認してみましょう。私が知らないだけかもしれませんので、話しはまたその後ですね。」
ひとまず明智光秀の件は濃姫に委ねる事にした。
暫くすると明智光秀の詳細について話しがあると、3人は濃姫に呼び出された。
「やはりどこを調べても明智光秀はおりませんでした。」
その言葉を聞いて皆一様に項垂れた。
「やっぱり・・そうか・・」
「光秀もこちらで用意しなければならないという事だな。」
「これは中々大変そうね・・」
落ち込む三人を見て濃姫が声を掛けた。
「皆さん。そこで考えたんですが・・思い切って私が光秀になろうかと思います。」
「え~!!!」
「以前、秀吉殿から伺いました。自分は秀吉になったんだと。なら、今度は私が光秀になれば万事、事が上手く運ぶのではないかと思ったんです。明智の縁者の私ならば簡単に明智に入り込む事が出来ますし、明智の縁者を知り尽くしている私ならば味方を見つける事も容易です。そこで色々と試行錯誤してみた結果、私なら出来ます。どうでしょうか?」
「しかし、女子の姫が男になれますか?」
皆、唖然とし濃姫に問いかけた。
「大丈夫です。女子だとばれないようにこれからしっかり身なりは整えます。それに私は普通の男には負けないくらいの腕はありますから、すぐに戦にだって出られます。その辺は心配ご無用です。ただ・・ひとつお願いがあるのです。その時はお静を私の女房にしたいのです。なのでこのお役目を私にさせてはくれないでしょうか?必ず皆さんのご期待に副う事が出来ます!」
濃姫は三人に強く訴えかける。
「そして私が明智光秀になってやりたい事がもうひとつあります。それは父の仇である斉藤義龍をこの手で討つことです。なのでお願いです。その思いを遂げさせてはくれませんか?」
信長たちはもはや濃姫の決意と覚悟に異論を唱える事など出来なかった。
そして明智光秀として生き返る為に全力で協力すると誓い計画を進める事を約束した。
濃姫とお静を加えた五人の仲間達は濃姫が明智光秀になるという途方もない計画に向かって懸命に策を練っていた。
しかし皆の心は不安でいっぱいだった。
「なあ~秀吉。濃姫には全力で協力するとは言ったものの史実では濃姫が美濃へ帰るなんてなかっただろう。これは歴史を変える事にならないのか?」
素朴な疑問を秀吉に投げかけてみると秀吉の口からは意外な答えが返ってきた。
「歴史の真実は正直言って難しい。例えば「本能寺の変」ひとつ取っても、「秀吉黒幕説」や「家康黒幕説」などが山ほどあるんだ。首謀者は確かに明智光秀だったけど、それは史実という名の膨大な資料から研究し、たくさんのその時代の専門家が出した見解でしかない。その実態は光秀はただの実行犯だったんじゃないかとさえ言われてるんだよ。正直、過去の真実なんて分からない事だらけさ。ましてやその武将の妻や他の女子達に関してなんて、資料が乏しくて何が真実なのかも分からないってとこが本音だよ。濃姫に至っては本能寺の変で信長と一緒に亡くなったとか、生き延びて80何歳くらいまで生きていたとか・・ハッキリしてないんだ。」
「そうなのか・・」
「うん。歴史は未だに謎の部分が極めて多いから、ある程度の変更は問題ないような気がする。だから実際何を信じて何を基準にこの先進めて行くのか正直、正解はないって事かな。」
「なるほど・・」
「まあ~上手く行かなかったらその都度修正すればいいって事さ!」
秀吉は驚くほど楽観的であった。
濃姫は不思議そうに呟いた。
「確かに私の母方は明智です。そして今は叔父が家督を継いでおります。しかし、叔母は身体が弱く、子はおりません。」
「そうなのか・・やはり事実はどこか違っているのかもしれない・・」
(光秀が居なければ本能寺の変は起こらない?そんな事はありえない。他の細かい詳細ならいざ知らず、本能寺の変に関しては揺るぎない歴史の事実なのだから・・という事は光秀も作り出さなければいけないという事なのか!)
信長は困惑していた。
「確かに近しい縁者に明智はたくさんおります。でも光秀という者もそれであろうと思われる者も心当たりがないんです。しかしその者が居なければ駄目だという事であれば、取り敢えず私が確認してみましょう。私が知らないだけかもしれませんので、話しはまたその後ですね。」
ひとまず明智光秀の件は濃姫に委ねる事にした。
暫くすると明智光秀の詳細について話しがあると、3人は濃姫に呼び出された。
「やはりどこを調べても明智光秀はおりませんでした。」
その言葉を聞いて皆一様に項垂れた。
「やっぱり・・そうか・・」
「光秀もこちらで用意しなければならないという事だな。」
「これは中々大変そうね・・」
落ち込む三人を見て濃姫が声を掛けた。
「皆さん。そこで考えたんですが・・思い切って私が光秀になろうかと思います。」
「え~!!!」
「以前、秀吉殿から伺いました。自分は秀吉になったんだと。なら、今度は私が光秀になれば万事、事が上手く運ぶのではないかと思ったんです。明智の縁者の私ならば簡単に明智に入り込む事が出来ますし、明智の縁者を知り尽くしている私ならば味方を見つける事も容易です。そこで色々と試行錯誤してみた結果、私なら出来ます。どうでしょうか?」
「しかし、女子の姫が男になれますか?」
皆、唖然とし濃姫に問いかけた。
「大丈夫です。女子だとばれないようにこれからしっかり身なりは整えます。それに私は普通の男には負けないくらいの腕はありますから、すぐに戦にだって出られます。その辺は心配ご無用です。ただ・・ひとつお願いがあるのです。その時はお静を私の女房にしたいのです。なのでこのお役目を私にさせてはくれないでしょうか?必ず皆さんのご期待に副う事が出来ます!」
濃姫は三人に強く訴えかける。
「そして私が明智光秀になってやりたい事がもうひとつあります。それは父の仇である斉藤義龍をこの手で討つことです。なのでお願いです。その思いを遂げさせてはくれませんか?」
信長たちはもはや濃姫の決意と覚悟に異論を唱える事など出来なかった。
そして明智光秀として生き返る為に全力で協力すると誓い計画を進める事を約束した。
濃姫とお静を加えた五人の仲間達は濃姫が明智光秀になるという途方もない計画に向かって懸命に策を練っていた。
しかし皆の心は不安でいっぱいだった。
「なあ~秀吉。濃姫には全力で協力するとは言ったものの史実では濃姫が美濃へ帰るなんてなかっただろう。これは歴史を変える事にならないのか?」
素朴な疑問を秀吉に投げかけてみると秀吉の口からは意外な答えが返ってきた。
「歴史の真実は正直言って難しい。例えば「本能寺の変」ひとつ取っても、「秀吉黒幕説」や「家康黒幕説」などが山ほどあるんだ。首謀者は確かに明智光秀だったけど、それは史実という名の膨大な資料から研究し、たくさんのその時代の専門家が出した見解でしかない。その実態は光秀はただの実行犯だったんじゃないかとさえ言われてるんだよ。正直、過去の真実なんて分からない事だらけさ。ましてやその武将の妻や他の女子達に関してなんて、資料が乏しくて何が真実なのかも分からないってとこが本音だよ。濃姫に至っては本能寺の変で信長と一緒に亡くなったとか、生き延びて80何歳くらいまで生きていたとか・・ハッキリしてないんだ。」
「そうなのか・・」
「うん。歴史は未だに謎の部分が極めて多いから、ある程度の変更は問題ないような気がする。だから実際何を信じて何を基準にこの先進めて行くのか正直、正解はないって事かな。」
「なるほど・・」
「まあ~上手く行かなかったらその都度修正すればいいって事さ!」
秀吉は驚くほど楽観的であった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

楽将伝
九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語
織田信長の親衛隊は
気楽な稼業と
きたもんだ(嘘)
戦国史上、最もブラックな職場
「織田信長の親衛隊」
そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた
金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか)
天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
出撃!特殊戦略潜水艦隊
ノデミチ
歴史・時代
海の狩人、潜水艦。
大国アメリカと短期決戦を挑む為に、連合艦隊司令山本五十六の肝入りで創設された秘匿潜水艦。
戦略潜水戦艦 伊号第500型潜水艦〜2隻。
潜水空母 伊号第400型潜水艦〜4隻。
広大な太平洋を舞台に大暴れする連合艦隊の秘密兵器。
一度書いてみたかったIF戦記物。
この機会に挑戦してみます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
戦国を駆ける軍師・雪之丞見参!
沙羅双樹
歴史・時代
川中島の合戦で亡くなった軍師、山本勘助に嫡男がいた。その男は、山本雪之丞と言い、頭が良く、姿かたちも美しい若者であった。その日、信玄の館を訪れた雪之丞は、上洛の手段を考えている信玄に、「第二啄木鳥の戦法」を提案したのだった……。
この小説はカクヨムに連載中の「武田信玄上洛記」を大幅に加筆訂正したものです。より読みやすく面白く書き直しました。「武田信玄上洛の巻」の後は、「明智光秀の本能寺の変の巻」、さらにそのあとは鎌倉の商人、紅屋庄右衛門が登場する「商売人、紅屋庄右衛門の巻」、そして下野の国宇都宮で摩耶姫に会う「妖美なる姫君、摩耶姫の巻」へと展開していきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる