いまさら!のぶなが?

華猫

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第一章

吉乃

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「なあ秀吉。史実上では私に吉乃という側室がいると歌奈に聞いたんだが本当なのか?」
「あ~そうだね。確かにいることになってる。側室は他にもいたけど、吉乃は特別で信長最愛の人って言われてるんだ。もうとっくに居てもおかしくない年代だと思うけど・・」
「いや、そんなのありえないだろう!私には歌奈以外には考えられないのに?」
「そうだよな~今のお館様と歌奈はそういう仲なわけだから、他の側室って考えられないけど・・」

そうなのである!

この屋敷に歌奈が住むようになってから、私は事あるごと、無い時にも関わらず足繁く通い詰め、私達はお互いの気持ちを確かめる事が出来たのだ!なので私はどんなに二人が離れていようとも他の女子には目もくれないと、歌奈に誓ったのだ。

「そうは言っても歴史上の織田信長には側室も子供もいたとなると話しは別だよな?」
「だね~って、これって結構やばく無い?歌奈のせいで歴史が変わるって事になったら・・」
「大変だ!」
顔を見合わせ事の重大さに青くなる。

「今、歴史と同じなのは、濃姫との間には子供がいないって事だけ。だけど吉乃とは子供が三人もいるし、その一人が嫡男だしね。この事実が変わってしまったらやっぱり歴史も変わるって事だよな。」
「そうだな。取り敢えず、他の側室は何とでもなるだろう。適当な女子を側室だ!として置いとけば良いだけだからね。でも最愛のとなると、誰でもいい訳ないよな・・そもそも私には歌奈以外考えられないし・・」
と、その時閃いた!
「そうか!そうなんだ!この時代に本来あるべきものが無いなら自分たちで作ればいいんだよ。そうだろう?歌奈を吉乃に仕立てればいいって事だろう!」
「なるほど!そうか!吉乃が存在しないなら・・あるものを消したり交換したりする事は難しいけど無い物を作り出す事は簡単じゃないか~」
「そうだよ!そうすれば間違いなく歴史上の織田信長の最愛の人になるだろう?」
「なるなる!そもそも歴史上では、女性の細かい史実なんてどこまでが本当でどこまでが作り話しなのか、疑わしい事だらけだから、誤魔化す事なんていくらでも出来るよ。」

思いもかけず良い案が浮かんで二人で大盛り上がりに盛り上がり・・

「未来を変えない為に、未来をそっくりそのまま自分たちで作り出す事は出来るって事だよな?」
「うん!これって・・これからやろうとする事の最大のヒントになるかもしれない。視点を変えたらこんなに良い打開策が生まれるなんて・・まさに目から鱗だ!」

しかしこの後が重要・・

「では、秀吉。歌奈を吉乃にするためにまず、最初に必要なのはなんだ?」
暫く考えこみ、秀吉は記憶を絞り出す。
「確か・・吉乃は丹羽郡小折の生駒屋敷の長女という説があって、それが使えると思う。先ずは、私が内密に丹羽に行って実際に吉乃が存在していないか確かめる。で、実在しないのならその出自を作り出す事が可能かどうか探ってみる。そしてもし可能なら、生駒を抱き込み、既成事実をでっち上げアリバイ工作を施す・・簡単に言うとそんな感じかな?」
「なるほど。よし分かった!時間は限られている。先ずは丹羽に行きその既成事実とアリバイ工作?とやらを始めよう。」
「なんか、やる気が湧いて来たぞ~」

張り切る秀吉を見てふと我に返った。

「喜んでるとこ悪いけど、なあ秀吉。もう1つ、子供は無理だよな。歌奈は三か月しかいられない・・」
「う~ん・・」

再び頭を抱えていると勢いよく歌奈が飛び込んで来た。

「彼女死んでしまったわ・・助けてあげることが出来なかった・・」
泣きじゃくる歌奈になすすべがなかった。
「そうか・・色々ありがとう。ごめんな・・」
そう言葉をかけ慰める事しか出来なかった。
歌奈は暫く泣き続けていたが急に思い出したように顔を上げ
「ねえ三郎、お願い!残されたあの子を育てましょう。私は長くいれないけど、他へやったりしないわよね?大事に育てててくれるよね?」
その瞬間、秀吉と顔を見合わせた!
「あたりまえじゃないか!いい考えだ。そう俺達の子として育てよう。」

心配はいらない。
子供だって作れるのである。



数日後、吉乃の存在を確かめに丹羽郡の生駒屋敷に向かった二人はその現実に驚いた。

吉乃は存在していたが、だいぶ前、幼い頃に亡くなったというのだ。その代わり生駒屋敷の次女が、史実にあるように美濃の豪族・土田弥平次へ嫁いでおり、実際に出戻っているが、少し前にどこかの村の若者と恋仲になり出て行ってしまったという事なのだ。

「これは・・驚いた。やはり本来の歴史は違うという事なんだな。」
「ああ。それをこれから歴史通りに変えるって事か・・」


二人は考え、生駒の主人にひとつの約束させた。

「娘の事は誰に聞かれても必ずこう答えてくれ。「娘はとある方に見初められ嫁に行った。」とね・・」

「はい・・」

「長女とか次女とかいちいち付けなくていいから。でももし長女でしたかね?と問われたら長女です。と答えてくれれ。但し次女かと問われたら長女だと言ってくれ。それだけでいい。」

「はい!分かりました・・」

「後の事はこちらでやるので心配はいらない。礼は必ずする。安心してくれ。」

「後は、周辺に長女の吉乃が信長の側室になったらしいと少しずつ噂を流せばいいだろう。」

「ああ。嘘の既成事実を織り込んで流しておくさ!後の細かい事は任せておけ!」


生駒の主人はただただ目を丸くしていた。

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