いまさら!のぶなが?

華猫

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第一章

桶狭間

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永禄3年5月
今川義元を打つべく桶狭間に向かった。

本陣を構える場所はもちろん知っている。

私は家臣にその後方の山の斜面を気付かれぬように整備させ今川義元が来るのを待った。

秀吉の天気予報は雨。
その言葉通り、早朝からしとしとと雨が降り続く。
降りしきる雨に本陣に籠った今川義元を闇夜に紛れて討つ。
成功しない訳がない・・


その数日前・・
私は、今川方で参戦し大高城に籠城していた松平元康に文を書いた。

「私は必ず今川義元を討つ。もし私が義元を討ち果たせたなら決して城からは出るな。決して今川の味方をするな。そして今川を裏切り私に付け」と・・

総大将の義元を討ちとられた今川軍は総崩れとなり、もはや戦う気力さえも失っていた。
案の定、元康は今川を裏切り織田家側に寝返った。
私達の絆の深さを確信した。


この勝利を境に歴史のごとく織田家の天下はまた一歩近づいた。

やはり間違いない・・

こうしてまたひとつ天下泰平への道を切り開いた。
後ろを振り向く事はもう出来ない。
前進あるのみ!


ふと、考えてみれば、そこまで天下だなんだと思った事など今まで無かった。
父の教えでは、強くなれ、負けるな、のし上がれと言われ続けてきたが天下を取れとまでは教わらなかった。
幼い頃は母や家臣たちとの軋轢の中で傍若無人で我儘な自分であった事は間違いないが、自分はそこまで冷酷ではない。多くの人を貶め殺めてまで自分の覇権を拡大しようだなんて考えた事も無かった。
しかし今は、何人もの人を犠牲にし、非情なまでに策略をめぐらしそして天下を取ろうとまで考えている。弟を殺し、母を排除してまで・・

始めは、歴史上の織田信長になる為には自分の性格さえも変えなければいけない事に少なからず抵抗を感じていが、しかし、ここに至って、まさか今川義元を討ち果たせる日が来るとは正直思ってもみなかった。
確かに未来のこの知識があってこその勝利ではあるが、その反面、つくづくそれが私の運命なのだと思い知らされる事になったのも事実だ。

そして本来の私ではなく、この歴史上の織田信長がいたからこそ、この後に太平の世を作る一歩を踏み出す事が出来たのだ。そう思うと、この先どんな犠牲を払おうと、どんな人間と思われようと、私は私の役目を果たさなければいけない!

決意新たに私の心は興奮していた。


以前、秀吉が言っていた。

「織田信長が天下にその名を知らしめるための手始めは桶狭間で今川義元に勝つことだ!」

その言葉の通り・・

桶狭間で今川義元を討ち取った後、この織田信長に対する世間の風向きは一瞬で変わった。
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