いまさら!のぶなが?

華猫

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第一章

旅立ち

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ある時、歌奈が言い出した。

「ねえ~この作戦の名前を決めましょうよ。万が一誰かに聞かれても探り当てられないような名前・・(転換作戦)なんてどうかな?」
「転換?」
「そう。以前、未来では色んな医術が発達してるって教えたよね。その中で性転換手術とかもあるのよ。それこそ女が男に、男が女になるの。その転換。この時代の人達が聞いても意味が分からないと思うけど、どう?」
「へ~まあ歌奈がいうならそれで良いよ。」
「じゃあ決まりね。本来ならその性転換手術を濃姫に受けて貰うのが一番手っ取り早いのだけど、ただそれは見た目を変えるだけだからあまり意味はないのよね。見た目だけなら本人の努力でどうにでもなりそうだからリスクの方が大きいわ。そもそも身体の内側から変えられれば一番良いのだけど、ホルモン剤なんてないこの時代ではどう考えても無理だもの。あ~ホルモンっていうのはね、簡単に言うと男か女かを決める為の体内の成分とでもいうのかな。だから濃姫にそれをしてもらう事は物理的に不可能なのよ。でも大丈夫。その代わり私が今回戻ったら必要な物をかき集めて必ずまた帰って来るから。濃姫は安心して待っていてね。」

その言葉通り・・
一度未来へ戻った歌奈は度々現れ、その度に転換計画に必要だと思われる物を持ち帰った。


「これは髭。肌に触れる部分はシリコンと言って、ここにこの接着剤を塗って顔に付けるの。どちらも人体には無害だから安心して使って大丈夫よ。ただ水にぬれると剥がれ易くなるから気を付けてね。後は、さらしの代わりに胸に巻く物とか・・」
細かな説明を付けながら二人で楽しそうに話していた歌奈が急に慌てて私達を振り返った。
「ちょっと男性陣は向こうに行っててくれない!」
そう言って私と秀吉は部屋を追い出された。
「なんなんだ一体!」
憤慨する私に向かって秀吉が囁いた。
「私の想像だと、たぶん・・こっちの話しだと思う。」
そう言って自分の股間を指さした。


「濃姫。これはとても大切で必要な事だと思うから用意しました。」
その「あるもの」を見て濃姫の顔は真っ赤になり「きゃ!」と小さな声を上げた。
「ごめんなさいね。私だってこれを手配するの大変だったんだから!でも・・必要でしょ。一応…何種類か持って来たけど後は自分で考えて使い分けてくれたら良いと思う。」
「そうね・・必要だわ。必要よ。あ、ありがとう・・」
そう言うと急いでお静にしまわせた。
「腰に巻いてね。」
「うん・・」

濃姫は物だけに頼らず自分自身も鍛え始めた。
胸が目立たないように胸筋を鍛え、肌も日焼けし、そして髪を切り・・その姿は日に日に逞しい男性に変化して行った。
数日のうちにその姿はもう、濃姫ではなくなっていた。

そして次の計画の準備に移る頃合いになっていた。


「濃姫は病が重い。暫く様子を見ていたが・・期待が持てぬようなら実家に帰りたいと本人が言っているので希望を叶えてやりたいと思っている。この件は出来るだけ内々に運びたい。今、奥に来ている客人は濃姫の縁者で明智光秀と申す者だ。明智光綱の嫡男だ。この度の従者として来ている。」

その準備は着々と進んで行った。

その頃、尾張城下では、まことしやかに濃姫が病の為に実家へ帰るという噂が広まっていた。

「病が重いので美濃へお戻りになるらしい・・」
「お子様もいらっしゃらないから追い出されるんじゃないのか・・?」
「いや、もう長くはないらしいぞ・・」
「どうも、美濃の重臣が迎えに来ているらしい・・」
「美濃の明智だそうだ。お館様に取り入る為に来たみたいだ・・」
「美濃の斉藤義龍に太刀打ち出来るくらいの人らしいぞ・・」
「斉藤道三の敵討ちか・・?」
「濃姫の遺言じゃないのか・・?」
「何でもお城では内々に事を進めているらしい・・」
「では、公に噂など立てられないな・・」

噂が、噂を呼びこむ・・
信長も家臣たちも口を噤み・・
その後、濃姫の帰郷と明智光秀の存在は公然の秘密となっていった。


屋敷では濃姫が信長に別れの挨拶をしていた。

「信長様、うまい具合に噂を広められましたね。」
濃姫は(クスリ)とほほ笑んだ。
「なに、こんな事は容易い事だ。これで濃姫と光秀の曖昧な憶測は広まるが、城側が隠すことにより誰も真実を追求しようなんて思わず噂話に留めるようになる。しかし、濃姫の影響力が失われる事と光秀の存在が人々に認知されるという事は間違いないという事さ。」

信長は高らかに笑って見せた。

その笑いが収まると真剣な面持ちで濃姫に尋ねた。

「それで?先ずはどうする?」
「はい。先ずは明智の叔父上に正直に話します。その上で協力を仰ぐつもりです。ご心配には及びません。叔父は信頼できるお人ですし、万が一しくじっても次の策はもう考えてありますからご安心下さい。そして、父、斉藤道三の仇は必ず討ちます。信長様、その際は必ず助太刀して下さいますよね?」
「任せておけ。そなたの期待は絶対に裏切らん!」
「分かりました。ならばその後、永禄11年までには明智光秀として朝廷に入り込み、必ず信長様に再会する事をお約束します。」
「頼んだぞ!濃姫!」


そして、季節が暑い夏へ変わろうとしていた時・・
濃姫はお静と共に美濃へと旅立った。


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