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第一章
事件
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「秀吉・・すまなかった。」
私の頭の中はとにかく謝ろうという事だけでいっぱいだった。
「はあ~もう良いよ。怒ってないし・・なんも気にしてないよ!」
「ごめん・・」
「うん・・分かってくれればいいよ。」
私達の間に多くの言葉はいらない・・
秀吉からそんな安心感が感じ取れ私は安堵した。
「ところでオヤジたちは元気だったか?何か変わった事はなかったか?」
「ああ~そうだった。変わりなくみんな元気だったよ。お前の事心配してたけど、でも誇らしげだった。それで今回分かった事があるんだ。これはかなり大事な事だよ。お前のご先祖の事なんだ・・」
私は今回、向こうに行って体験した全てを秀吉に話して聞かせた。
「うちの寺にそんな秘密があったなんて驚きだ!確かに由緒ある家系だから恥ずべき生き方はするなって散々言われては来たんだけど・・こんなところに繋がってたなんて、今のこの俺の立場は成るべくして成ったって事か・・」
「紫陽寺の家訓の件は、歴代のご住職しか知らないらしい。絶対に外に漏れないように跡取りにだけ伝えられるそうなんだ。」
「なるほど・・じゃあ兄貴は知ってたんだな・・」
「ああ。でも今回は別だろう。お前は当事者だからな。そこで家訓を教えてやって欲しいって言われたんだけど、暗記できる訳無いだろう~で、コピーを撮って貰ったから持ってきたよ。」
「お前コピーって?どうやって持って来たんだよ!?」
「いや~どうしようか迷ったんだけど良いのがあったの思い出してさ~ジップロックさ!」
私はすかさず家訓を取り出し秀吉に手渡した。
秀吉は、渡されたそれを開く事も出来ないくらい何故か爆笑し続けた。
ほどなくして歌奈の屋敷でちょっとした事件が起きた。
使いの者に話を聞くと、屋敷の前に産まれたばかりの赤ん坊を連れた母親が行き倒れていて、歌奈が介抱しているという。
「お方様はそれはそれは熱心に介抱していらっしゃいます。」
それを聞いて秀吉と屋敷に出向いた私に歌奈は怒りをぶつけてきた。
「三郎!あなたは、領主なんでしょ!なのにこんな小さな赤ん坊と母親が飢えて苦しんでるって、いったいどんな統治をしているのよ!自分たち武士さえ良ければいい訳!」
物凄い剣幕だった。
「歌奈!いくらなんでも、お館様にその言い方は無いだろう!」
「秀吉、いいんだ・・そうだよな・・尾張だけじゃなくこの国をなんとかしたいと思ってるのに、このざまじゃ歌奈に何を言われても仕方がないな・・すまない・・」
謝る私を見て歌奈は悲しそうに呟いた。
「私だってこの時代が私の住む世界と違って色んな事が大変なのは分かっているわよ・・でも、実際に目の当たりにすると憤りを感じてしまう。だから、もっともっと頑張って!先の事も大事だけど目の前にある事はもっと大事だよ・・じゃあ私はまだ看病があるから行くわ。」
そう言って歌奈は慌ただしく戻って行った。
「しかし、どこにいても歌奈は変わらないな~」
秀吉はため息をついたが、颯爽と去っていく歌奈の後ろ姿は、凛としていて私の目には頼もしくさえ映っていた。
「あれが私の愛する歌奈だよ。」
私の頭の中はとにかく謝ろうという事だけでいっぱいだった。
「はあ~もう良いよ。怒ってないし・・なんも気にしてないよ!」
「ごめん・・」
「うん・・分かってくれればいいよ。」
私達の間に多くの言葉はいらない・・
秀吉からそんな安心感が感じ取れ私は安堵した。
「ところでオヤジたちは元気だったか?何か変わった事はなかったか?」
「ああ~そうだった。変わりなくみんな元気だったよ。お前の事心配してたけど、でも誇らしげだった。それで今回分かった事があるんだ。これはかなり大事な事だよ。お前のご先祖の事なんだ・・」
私は今回、向こうに行って体験した全てを秀吉に話して聞かせた。
「うちの寺にそんな秘密があったなんて驚きだ!確かに由緒ある家系だから恥ずべき生き方はするなって散々言われては来たんだけど・・こんなところに繋がってたなんて、今のこの俺の立場は成るべくして成ったって事か・・」
「紫陽寺の家訓の件は、歴代のご住職しか知らないらしい。絶対に外に漏れないように跡取りにだけ伝えられるそうなんだ。」
「なるほど・・じゃあ兄貴は知ってたんだな・・」
「ああ。でも今回は別だろう。お前は当事者だからな。そこで家訓を教えてやって欲しいって言われたんだけど、暗記できる訳無いだろう~で、コピーを撮って貰ったから持ってきたよ。」
「お前コピーって?どうやって持って来たんだよ!?」
「いや~どうしようか迷ったんだけど良いのがあったの思い出してさ~ジップロックさ!」
私はすかさず家訓を取り出し秀吉に手渡した。
秀吉は、渡されたそれを開く事も出来ないくらい何故か爆笑し続けた。
ほどなくして歌奈の屋敷でちょっとした事件が起きた。
使いの者に話を聞くと、屋敷の前に産まれたばかりの赤ん坊を連れた母親が行き倒れていて、歌奈が介抱しているという。
「お方様はそれはそれは熱心に介抱していらっしゃいます。」
それを聞いて秀吉と屋敷に出向いた私に歌奈は怒りをぶつけてきた。
「三郎!あなたは、領主なんでしょ!なのにこんな小さな赤ん坊と母親が飢えて苦しんでるって、いったいどんな統治をしているのよ!自分たち武士さえ良ければいい訳!」
物凄い剣幕だった。
「歌奈!いくらなんでも、お館様にその言い方は無いだろう!」
「秀吉、いいんだ・・そうだよな・・尾張だけじゃなくこの国をなんとかしたいと思ってるのに、このざまじゃ歌奈に何を言われても仕方がないな・・すまない・・」
謝る私を見て歌奈は悲しそうに呟いた。
「私だってこの時代が私の住む世界と違って色んな事が大変なのは分かっているわよ・・でも、実際に目の当たりにすると憤りを感じてしまう。だから、もっともっと頑張って!先の事も大事だけど目の前にある事はもっと大事だよ・・じゃあ私はまだ看病があるから行くわ。」
そう言って歌奈は慌ただしく戻って行った。
「しかし、どこにいても歌奈は変わらないな~」
秀吉はため息をついたが、颯爽と去っていく歌奈の後ろ姿は、凛としていて私の目には頼もしくさえ映っていた。
「あれが私の愛する歌奈だよ。」
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