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第一章
定め
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秀吉に取って代わると決めたものの・・
そこで待ち受けていたものはやはり過酷な戦乱の世・・
下剋上の世界・・
分かっていても、平成人の秀一には想像を絶するまさに名の通りの戦国時代だった。
平成の知恵を駆使し、懸命に歴史の道筋をたどりながら信長と共に戦乱の世を駆ける。
どんなに苦しくても悲しくても『歴史を変えるな!』が二人の合言葉になっていった。
もう何年過ぎ去ったのかも分からないほど、秀一はまるで本物の秀吉のように戦に憑りつかれていった。
そう、本物の戦国武将のように・・
信長の敵は外敵だけではない。
信長自身の、織田弾正忠家の問題。清須織田家の問題。そして弟、信勝と母、土田御前の問題。
この先、天下取りの号令を上げるためにはこの問題は避けては通れない重大事だった。
「お館様、ここからが本当の苦しみです。覚悟は出来てますか?」
秀吉は真剣な眼差しで信長に問いかけた。
「覚悟か・・出来ていると言ったら嘘になるだろうな。ただ・・やるしかない。そう思っているだけだ・・」
秀吉が「ふぅ~」と深呼吸した。
「では、これから起こる事、お館様がやらなければいけない事を今から申します。」
信長に緊張が走った。
(秀吉の口調が丁寧になるとロクなことを言わない!)
「先ずは、これから織田弾正忠家の輩が裏切り、清須織田家の密かな後ろ盾を受けてお館様を潰しにかかります。その、織田弾正忠家をまず討伐しなければなりません。そして先ずは、お館様が織田弾正忠家の当主にならなければなりません。その後は、清須織田家と戦い、これを潰し、そしてお館様が清須城の当主、名実共に織田家本流の唯一の当主になるのです。」
「なるほど。織田家を1つに纏めなければならないという事だな・・」
「そういう事です。でも・・その後が肝心です。信勝様と土田御前です。出来ますか?」
その名前を聞いて信長の顔色が変わるのを秀吉は見逃さなかった。
「お館様、嫌とは言わせませんよ・・これがお館様がしなければならない本当の覚悟です。この何年かの後の事になるでしょう。その為に私はこれから準備を進めますから、お館はゆっくりと覚悟を決めてください。」
冷静に話す秀吉の顔を見て信長は諦めたように呟く。
「分かった。お前の言う結末には逆うつもりはない。ただ私なりのやり方は考慮して貰いたい。」
「分かりました。この先も今まで通り、お館様の考えや、やり方には考慮します。」
「まっ!覚悟の方はおまえの言うようにゆっくりとさせてもらう事にするよ。」
「けっ!ふざけるな!」
秀吉のその言葉に、今はまだほんの少しだけ笑う余裕があった。
3年後、弘治元年/1555年
信長はその日。織田家本流として清須城へ入った。
清須城の天守で城下を見下ろしながら秀吉に呟く。
「秀吉。私たちはこのまま進んでいいんだよな?」
「ああ」
「間違ってはいないよな?」
「ああ」
「この先はもっと犠牲者が出る。悲劇もたくさん起きる。それを私がやらなければという事だよな・・」
「そうだ。お館様でなければ誰がやるんだ?」
「そうだな・・まだ私の覚悟が足りないという事だな・・」
「はい。でなければ秀吉はこの場から消えてしまいますのでね。」
「・・・」
「こ、この後の計画は上手くいっているのか?勝家どうだ?」
「柴田様は問題ない。その他も先ずは慎重に事を進めているので差し当たって問題はないかと思う。」
答えながら秀吉も改めて自分の覚悟を決めた。
二人でここまで全力で突っ走っては来たが、この先どうなるのか?実は確固たる計画さえもない。
しかし、時間は待ってはくれない。
次々と起こる難題に対処する為、先回りをして慎重に事を運ぶ。
真実を話し仲間とするもの、真実を隠し仲間とするもの、排除する者、その全てを瞬時に見極めなければならない。
それは秀吉ではない、秀一の務め・・
ふと気が付くともう何年経っていたのだろうか・・
いつ平成に引き戻されてしまうのか?いついなくなってしまうのか?そんな不安を共に抱えながらやっとここまでたどり着いた。
秀吉がそんな切なさを噛みしめていると、急に信長の口から思いがけない言葉が出た。
「さる!」
「はぁ!」
「お前なんかサルに似てきたな。」
秀吉は思わず大声で笑った。
この5年あまり・・
もちろん、日焼け止めクリームなんてない!
そして500年後とはまるで違うこの日差し。太陽はこんなに近かったんだと改めて感じていたこの生活で、秀一は引き締まった身体と日焼けした顔の秀吉になっていた。
「よくそんな事言えるな!人を散々こき使っておいて!誰がこんな姿にしたんだよ!」
秀吉は信長を責めながらもう一言付け加えた。
「歴史上の織田信長も秀吉をサルって呼んでたな。有名な話しだが創作だと思ってた。でもこれが現実なんだな。そう思うとやっぱり私が秀吉だったんだと、認めるしかないって事だな・・」
二人は感慨深げに顔を見合わせた。
この後、新たなそして最も辛い戦いが始まる。
弟 織田信勝の謀反。
信勝側に寝返らせておいた柴田勝家は偽の大敗を期し、信長軍の圧勝に終わった。
そして一度は許した信勝は僅か1年後に再び謀反。
「死」を免れる事は到底出来なかった。
信長は改めて、歴史は変えられぬと思い知らされる事になるのである。
そこで待ち受けていたものはやはり過酷な戦乱の世・・
下剋上の世界・・
分かっていても、平成人の秀一には想像を絶するまさに名の通りの戦国時代だった。
平成の知恵を駆使し、懸命に歴史の道筋をたどりながら信長と共に戦乱の世を駆ける。
どんなに苦しくても悲しくても『歴史を変えるな!』が二人の合言葉になっていった。
もう何年過ぎ去ったのかも分からないほど、秀一はまるで本物の秀吉のように戦に憑りつかれていった。
そう、本物の戦国武将のように・・
信長の敵は外敵だけではない。
信長自身の、織田弾正忠家の問題。清須織田家の問題。そして弟、信勝と母、土田御前の問題。
この先、天下取りの号令を上げるためにはこの問題は避けては通れない重大事だった。
「お館様、ここからが本当の苦しみです。覚悟は出来てますか?」
秀吉は真剣な眼差しで信長に問いかけた。
「覚悟か・・出来ていると言ったら嘘になるだろうな。ただ・・やるしかない。そう思っているだけだ・・」
秀吉が「ふぅ~」と深呼吸した。
「では、これから起こる事、お館様がやらなければいけない事を今から申します。」
信長に緊張が走った。
(秀吉の口調が丁寧になるとロクなことを言わない!)
「先ずは、これから織田弾正忠家の輩が裏切り、清須織田家の密かな後ろ盾を受けてお館様を潰しにかかります。その、織田弾正忠家をまず討伐しなければなりません。そして先ずは、お館様が織田弾正忠家の当主にならなければなりません。その後は、清須織田家と戦い、これを潰し、そしてお館様が清須城の当主、名実共に織田家本流の唯一の当主になるのです。」
「なるほど。織田家を1つに纏めなければならないという事だな・・」
「そういう事です。でも・・その後が肝心です。信勝様と土田御前です。出来ますか?」
その名前を聞いて信長の顔色が変わるのを秀吉は見逃さなかった。
「お館様、嫌とは言わせませんよ・・これがお館様がしなければならない本当の覚悟です。この何年かの後の事になるでしょう。その為に私はこれから準備を進めますから、お館はゆっくりと覚悟を決めてください。」
冷静に話す秀吉の顔を見て信長は諦めたように呟く。
「分かった。お前の言う結末には逆うつもりはない。ただ私なりのやり方は考慮して貰いたい。」
「分かりました。この先も今まで通り、お館様の考えや、やり方には考慮します。」
「まっ!覚悟の方はおまえの言うようにゆっくりとさせてもらう事にするよ。」
「けっ!ふざけるな!」
秀吉のその言葉に、今はまだほんの少しだけ笑う余裕があった。
3年後、弘治元年/1555年
信長はその日。織田家本流として清須城へ入った。
清須城の天守で城下を見下ろしながら秀吉に呟く。
「秀吉。私たちはこのまま進んでいいんだよな?」
「ああ」
「間違ってはいないよな?」
「ああ」
「この先はもっと犠牲者が出る。悲劇もたくさん起きる。それを私がやらなければという事だよな・・」
「そうだ。お館様でなければ誰がやるんだ?」
「そうだな・・まだ私の覚悟が足りないという事だな・・」
「はい。でなければ秀吉はこの場から消えてしまいますのでね。」
「・・・」
「こ、この後の計画は上手くいっているのか?勝家どうだ?」
「柴田様は問題ない。その他も先ずは慎重に事を進めているので差し当たって問題はないかと思う。」
答えながら秀吉も改めて自分の覚悟を決めた。
二人でここまで全力で突っ走っては来たが、この先どうなるのか?実は確固たる計画さえもない。
しかし、時間は待ってはくれない。
次々と起こる難題に対処する為、先回りをして慎重に事を運ぶ。
真実を話し仲間とするもの、真実を隠し仲間とするもの、排除する者、その全てを瞬時に見極めなければならない。
それは秀吉ではない、秀一の務め・・
ふと気が付くともう何年経っていたのだろうか・・
いつ平成に引き戻されてしまうのか?いついなくなってしまうのか?そんな不安を共に抱えながらやっとここまでたどり着いた。
秀吉がそんな切なさを噛みしめていると、急に信長の口から思いがけない言葉が出た。
「さる!」
「はぁ!」
「お前なんかサルに似てきたな。」
秀吉は思わず大声で笑った。
この5年あまり・・
もちろん、日焼け止めクリームなんてない!
そして500年後とはまるで違うこの日差し。太陽はこんなに近かったんだと改めて感じていたこの生活で、秀一は引き締まった身体と日焼けした顔の秀吉になっていた。
「よくそんな事言えるな!人を散々こき使っておいて!誰がこんな姿にしたんだよ!」
秀吉は信長を責めながらもう一言付け加えた。
「歴史上の織田信長も秀吉をサルって呼んでたな。有名な話しだが創作だと思ってた。でもこれが現実なんだな。そう思うとやっぱり私が秀吉だったんだと、認めるしかないって事だな・・」
二人は感慨深げに顔を見合わせた。
この後、新たなそして最も辛い戦いが始まる。
弟 織田信勝の謀反。
信勝側に寝返らせておいた柴田勝家は偽の大敗を期し、信長軍の圧勝に終わった。
そして一度は許した信勝は僅か1年後に再び謀反。
「死」を免れる事は到底出来なかった。
信長は改めて、歴史は変えられぬと思い知らされる事になるのである。
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