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第一章
兄
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数日後、長秀の別宅にやってきた信長は奇妙な事を言いだした。
「小一郎を呼んでくれ。聞きたい事があるんだ。」
呼ばれてやって来た小一郎に信長は質問を始めた。
「小一郎、お前には兄がいたと言ったな。そしてあの日、私達がおまえの家に立ち寄った日から行方がわからないと・・でその兄は戻ったのか?」
神妙な顔をして小一郎が答える。
「いいえお館様。兄は未だに帰って来ません。あの後、兄が行っていた山に探しに行ってみましたが、頂上の池のほとりに血の付いた兄のわらじが落ちていただけで・・たぶんあの辺の山賊に襲われたか、池に落ちて死んでしまったんじゃないかと思います。」
「ほう。池はさらってみたのか?」
「いいえ。あそこの池は見た目より深いんです。危険なので普段は誰も近づきませんが、ただ・・この時期はあの辺一帯に新しく筍が芽吹く時期なんです。一年のうちこの時期だけなのできっと兄は筍を探しに行ったのではないかと思います。」
「それで、兄の名前はなんといったかな?」
「はい。藤吉郎です。」
その名前を聞いて秀一は声を上げそうになるのを飲み込んだ。
「わかった。下がっていいぞ。」
部屋を出る小一郎の背中を見つめ秀一は全てを悟った。
「あの!小一郎だよな。秀吉の弟の・・本当なのか?」
驚く秀一を半ば呆れたような顔で見つめながら信長はゆっくり話し始めた。
「気付かなかったか・・私はどうして秀一が平成に戻らなかったのか?必至で考えた。私が平成に跳んだ最初も2回目も、3か月で強制的に戻って来たんだからね。一体なにが違うかって事だよ。で思い出したんだ。覚えてないか?あの時、池のほとりに出た時に何者かに襲われた誰かが池に落ちた事を。お前と入れ替わりに池に落ちたのが藤吉郎だったんだ。お前その名前に聞き覚えがあるだろう?そして、小一郎、中村・・私は聞き覚えがある。平成で学んだからな。そう、だからすぐに思ったよ。その藤吉郎が後の豊臣秀吉じゃないのか?ってね。」
「そんなバカな!だってそしたら秀吉がいなくなったって事だろう。歴史が変わってしまうよ!藤吉郎って同じ名前の奴なんて沢山いるだろう。」
秀一はパニックになってそう叫んだ。
「しかし、この中村で弟が小一郎でっていったらそう似た者はいないと思うけど?」
冷静に話す信長に腹を立てた秀一は声を荒げた。
「じゃあ歴史は変わってしまうって事だよな!未来が変わるって事だよな!お前はそれでもいいかもしれないが、俺は、おれの家族は他の人達はどうなるんだ!」
そんな秀一を信長は真剣なまなざしで見据えた。
「もう起きてしまった事だ。後はこれからどうするべきかを考えることだよ。私はこの数日間ずっと考えていた。そして出した結論がある。それはな秀一、お前が秀吉になるってことだよ。」
「あっ!?」
秀一は声にならない声を出した。
信長曰く・・
「私の仮説が正しければお前の代わりに藤吉郎が平成に行ってるはずだ。多分だが、入れ変わりがいれば留まる事が出来るって事なのかもしれない。それならお前はここでこれから木下藤吉郎として生きる事になるんだということだ。だって考えてみろよ。太平の世を築くためには秀吉の英知が必要なんだろう。でも本物の藤吉郎で出来るのか?そう考えたらすぐに答えが出た。お前なら出来るってね。そうお前がこの先、豊臣秀吉になるんだ。そしてその為にお前はこの世界に飛び込んで来たんだってね。」
得意げに話す信長に些かの不満が湧き上がるが、何故だか不思議と納得してしまった。
(俺が秀吉になるしか方法はないのか・・?)
「秀一。考えてる暇はないんだ。未来を変えたくはないだろう。それは私も同じだ。その為には私に協力して欲しいと思ってる。私と一緒に『未来を変えない』その手伝いをしてみないか?」
信長は畳みかけるように人の弱みに付け込み正論をぶちかまして来る。
これが500年たっても名を馳せるさすがの織田信長なのだと、秀一は改めて思い知らさせれた。この数日間、悩みに悩んて出せない結論が信長にかかればいとも簡単に、それも奇想天外な答えが返ってくるのだと、その洞察力と想像力に恐れ入った。
「ああ・・そうだな・・」
思わず出たその言葉を信長が聞き逃すはずもなく・・
「よし!決まりだ!秀一!ぞうり取りからはじめるぞ!」
そのにやけた顔は憎らしくさえ思えた。
「小一郎を呼んでくれ。聞きたい事があるんだ。」
呼ばれてやって来た小一郎に信長は質問を始めた。
「小一郎、お前には兄がいたと言ったな。そしてあの日、私達がおまえの家に立ち寄った日から行方がわからないと・・でその兄は戻ったのか?」
神妙な顔をして小一郎が答える。
「いいえお館様。兄は未だに帰って来ません。あの後、兄が行っていた山に探しに行ってみましたが、頂上の池のほとりに血の付いた兄のわらじが落ちていただけで・・たぶんあの辺の山賊に襲われたか、池に落ちて死んでしまったんじゃないかと思います。」
「ほう。池はさらってみたのか?」
「いいえ。あそこの池は見た目より深いんです。危険なので普段は誰も近づきませんが、ただ・・この時期はあの辺一帯に新しく筍が芽吹く時期なんです。一年のうちこの時期だけなのできっと兄は筍を探しに行ったのではないかと思います。」
「それで、兄の名前はなんといったかな?」
「はい。藤吉郎です。」
その名前を聞いて秀一は声を上げそうになるのを飲み込んだ。
「わかった。下がっていいぞ。」
部屋を出る小一郎の背中を見つめ秀一は全てを悟った。
「あの!小一郎だよな。秀吉の弟の・・本当なのか?」
驚く秀一を半ば呆れたような顔で見つめながら信長はゆっくり話し始めた。
「気付かなかったか・・私はどうして秀一が平成に戻らなかったのか?必至で考えた。私が平成に跳んだ最初も2回目も、3か月で強制的に戻って来たんだからね。一体なにが違うかって事だよ。で思い出したんだ。覚えてないか?あの時、池のほとりに出た時に何者かに襲われた誰かが池に落ちた事を。お前と入れ替わりに池に落ちたのが藤吉郎だったんだ。お前その名前に聞き覚えがあるだろう?そして、小一郎、中村・・私は聞き覚えがある。平成で学んだからな。そう、だからすぐに思ったよ。その藤吉郎が後の豊臣秀吉じゃないのか?ってね。」
「そんなバカな!だってそしたら秀吉がいなくなったって事だろう。歴史が変わってしまうよ!藤吉郎って同じ名前の奴なんて沢山いるだろう。」
秀一はパニックになってそう叫んだ。
「しかし、この中村で弟が小一郎でっていったらそう似た者はいないと思うけど?」
冷静に話す信長に腹を立てた秀一は声を荒げた。
「じゃあ歴史は変わってしまうって事だよな!未来が変わるって事だよな!お前はそれでもいいかもしれないが、俺は、おれの家族は他の人達はどうなるんだ!」
そんな秀一を信長は真剣なまなざしで見据えた。
「もう起きてしまった事だ。後はこれからどうするべきかを考えることだよ。私はこの数日間ずっと考えていた。そして出した結論がある。それはな秀一、お前が秀吉になるってことだよ。」
「あっ!?」
秀一は声にならない声を出した。
信長曰く・・
「私の仮説が正しければお前の代わりに藤吉郎が平成に行ってるはずだ。多分だが、入れ変わりがいれば留まる事が出来るって事なのかもしれない。それならお前はここでこれから木下藤吉郎として生きる事になるんだということだ。だって考えてみろよ。太平の世を築くためには秀吉の英知が必要なんだろう。でも本物の藤吉郎で出来るのか?そう考えたらすぐに答えが出た。お前なら出来るってね。そうお前がこの先、豊臣秀吉になるんだ。そしてその為にお前はこの世界に飛び込んで来たんだってね。」
得意げに話す信長に些かの不満が湧き上がるが、何故だか不思議と納得してしまった。
(俺が秀吉になるしか方法はないのか・・?)
「秀一。考えてる暇はないんだ。未来を変えたくはないだろう。それは私も同じだ。その為には私に協力して欲しいと思ってる。私と一緒に『未来を変えない』その手伝いをしてみないか?」
信長は畳みかけるように人の弱みに付け込み正論をぶちかまして来る。
これが500年たっても名を馳せるさすがの織田信長なのだと、秀一は改めて思い知らさせれた。この数日間、悩みに悩んて出せない結論が信長にかかればいとも簡単に、それも奇想天外な答えが返ってくるのだと、その洞察力と想像力に恐れ入った。
「ああ・・そうだな・・」
思わず出たその言葉を信長が聞き逃すはずもなく・・
「よし!決まりだ!秀一!ぞうり取りからはじめるぞ!」
そのにやけた顔は憎らしくさえ思えた。
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