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第一章
死
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父上が亡くなった・・
【享年42歳】
あまりに早すぎる死であった。
私はまだ父上の庇護下にいるのに、まだ一人で立つことも出来ていないのに、こんなぶざまな状態でどうやって織田家を背負って行くのか。
抑えきれない不安と恐れ、そして堪え切れない悲しみが全身に押し寄せてくる。
人目を避け・・
ただひたすら泣いた 泣いた 泣いた…
そして涙も枯れようとしていた時、政秀が言った。
「信長様、この先ご自分の身に何かあった時お渡しせよと、こちらをお館様より預かっておりました。」
それは父上の遺言であった。
『父はそなたを一片の曇りもなく信じている。そなたの信じるままに生きよ。そなたの思うままに生きよ。己れの手で先を切り開け。そなたなら必ず出来るだろう。』
父上の亡骸を前にもう涙は零れなかった。
葬儀の席で暴れまわり、昔のように傍若無人な振る舞いをした。
未熟な子として、最後のあがきだった。
しかし何だかすっきりした。
そして決めた!
もう一度、未来へ行くのだと・・拒絶されても諦めない。必ず行かなければ・・なぜかそう強く思った。
そして私は紫陽花の咲く池へ向かっていた。
不思議なことに私の願いは通じた。
あんなに日々、紫陽花の池に足をつっこんでは、なんて浅い池なんだと腹を立ててたことがまるで嘘のように当たり前に今、私は平野家の池に立ちすくんでいる。
「ここに帰って来たいと思うあまり夢でも見てるのだろうか?」
すると、誰かが背後から私に声をかけた。
「三郎さんですよね?」
驚いて振り向くとそこに懐かしい顔が立っていた。
「ご住職様!」
「あ~やっぱり三郎さんでしたか。ご無沙汰してましたがお元気でしたか?」
私はまた、ずぶ濡れで駆け出していた。
「はい!元気です。皆さんもお変わりないですか?またお会い出来るなんて本当にうれしいです!」
そういう私を見て住職は笑って言った。
「相変わらずびしょ濡れですね。風邪を引いたら大変です。平野さんはお留守のようですから、まずは我が家へ参りましょう。」
何だか気恥しい感じはしたが、このままでは歌奈達にも会い辛いのでお言葉に甘えて久し振りの紫陽寺に向かった。
「私の事を覚えていてくれたのですね。」
あれからのこと・・何と話したらよいのかを必死に考えていたが、思いもかけない話しが住職の口から出て来て私はただ唖然としてしまった。
「もちろん。覚えてますとも。あの後、急に姿が見えなくなったのでどうしているかと心配に思ってましたが、ちょうどお隣が留守の時に、お寺にいらっしゃったんですよ、あなたの家の使用人だという方が・・それで、どうしてもあの日イギリス行きの飛行機に乗せなくてはならなくて連れて行きましたって。急なことだったのでこちらにもキチンとご挨拶も出来ずに申し訳なかったと・・なので取り敢えず安心しておりました。」
「イギリス行きの飛行機?」
私は困惑した・・
そんなことがあっていいものなのだろうか。あまりにも出来すぎた話ではないか?しかし私には反論も言い訳もそれが出来るだけの準備もなかった。ましてや否定などする気もなかった。
(ここはひと先ず、話に乗っかろう!)
それが一番いい答えだった。
「そ、そうなんです!ただ、今でも常に記憶があいまいで、何か病気みたいなんです。でも皆さんのことはよく覚えてますよ。もちろんとても良くしていただいたので感謝しています。まずはお礼が言いたくて、本当にありがとうございました。」
「お礼なんてとんでもない。まあ、秀一も、そろそろ学校から帰ってくるでしょうからゆっくり待っていて下さい。今日は時間はあるんですか?もし時間があるなら今回はうちにいらっしゃるといいですよ。もうみんな年ごろですからね。平野家には私から伝えておきますから、夜にでも皆さんに会いにお隣に行きましょう。」
「本当ですか!何から何までありがとうございます。すみませんが甘えてもいいですか?」
(もう甘えられるものはなんでもだ!遠慮してたらここじゃ暮らしていけないからな~)
「もちろんです。ずっといていただいても結構ですよ。」
そういう住職の顔はまるで仏様に見えた。
そう思った瞬間、また身体から力が抜けていくのが分かった。
【享年42歳】
あまりに早すぎる死であった。
私はまだ父上の庇護下にいるのに、まだ一人で立つことも出来ていないのに、こんなぶざまな状態でどうやって織田家を背負って行くのか。
抑えきれない不安と恐れ、そして堪え切れない悲しみが全身に押し寄せてくる。
人目を避け・・
ただひたすら泣いた 泣いた 泣いた…
そして涙も枯れようとしていた時、政秀が言った。
「信長様、この先ご自分の身に何かあった時お渡しせよと、こちらをお館様より預かっておりました。」
それは父上の遺言であった。
『父はそなたを一片の曇りもなく信じている。そなたの信じるままに生きよ。そなたの思うままに生きよ。己れの手で先を切り開け。そなたなら必ず出来るだろう。』
父上の亡骸を前にもう涙は零れなかった。
葬儀の席で暴れまわり、昔のように傍若無人な振る舞いをした。
未熟な子として、最後のあがきだった。
しかし何だかすっきりした。
そして決めた!
もう一度、未来へ行くのだと・・拒絶されても諦めない。必ず行かなければ・・なぜかそう強く思った。
そして私は紫陽花の咲く池へ向かっていた。
不思議なことに私の願いは通じた。
あんなに日々、紫陽花の池に足をつっこんでは、なんて浅い池なんだと腹を立ててたことがまるで嘘のように当たり前に今、私は平野家の池に立ちすくんでいる。
「ここに帰って来たいと思うあまり夢でも見てるのだろうか?」
すると、誰かが背後から私に声をかけた。
「三郎さんですよね?」
驚いて振り向くとそこに懐かしい顔が立っていた。
「ご住職様!」
「あ~やっぱり三郎さんでしたか。ご無沙汰してましたがお元気でしたか?」
私はまた、ずぶ濡れで駆け出していた。
「はい!元気です。皆さんもお変わりないですか?またお会い出来るなんて本当にうれしいです!」
そういう私を見て住職は笑って言った。
「相変わらずびしょ濡れですね。風邪を引いたら大変です。平野さんはお留守のようですから、まずは我が家へ参りましょう。」
何だか気恥しい感じはしたが、このままでは歌奈達にも会い辛いのでお言葉に甘えて久し振りの紫陽寺に向かった。
「私の事を覚えていてくれたのですね。」
あれからのこと・・何と話したらよいのかを必死に考えていたが、思いもかけない話しが住職の口から出て来て私はただ唖然としてしまった。
「もちろん。覚えてますとも。あの後、急に姿が見えなくなったのでどうしているかと心配に思ってましたが、ちょうどお隣が留守の時に、お寺にいらっしゃったんですよ、あなたの家の使用人だという方が・・それで、どうしてもあの日イギリス行きの飛行機に乗せなくてはならなくて連れて行きましたって。急なことだったのでこちらにもキチンとご挨拶も出来ずに申し訳なかったと・・なので取り敢えず安心しておりました。」
「イギリス行きの飛行機?」
私は困惑した・・
そんなことがあっていいものなのだろうか。あまりにも出来すぎた話ではないか?しかし私には反論も言い訳もそれが出来るだけの準備もなかった。ましてや否定などする気もなかった。
(ここはひと先ず、話に乗っかろう!)
それが一番いい答えだった。
「そ、そうなんです!ただ、今でも常に記憶があいまいで、何か病気みたいなんです。でも皆さんのことはよく覚えてますよ。もちろんとても良くしていただいたので感謝しています。まずはお礼が言いたくて、本当にありがとうございました。」
「お礼なんてとんでもない。まあ、秀一も、そろそろ学校から帰ってくるでしょうからゆっくり待っていて下さい。今日は時間はあるんですか?もし時間があるなら今回はうちにいらっしゃるといいですよ。もうみんな年ごろですからね。平野家には私から伝えておきますから、夜にでも皆さんに会いにお隣に行きましょう。」
「本当ですか!何から何までありがとうございます。すみませんが甘えてもいいですか?」
(もう甘えられるものはなんでもだ!遠慮してたらここじゃ暮らしていけないからな~)
「もちろんです。ずっといていただいても結構ですよ。」
そういう住職の顔はまるで仏様に見えた。
そう思った瞬間、また身体から力が抜けていくのが分かった。
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