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第一章
家訓
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三郎たちが帰った後、住職と利信は奥の院に戻っていた。
「利信、家訓を覚えているか・・」
「もちろん、覚えています。父さん・・彼は本物ですかね・・」
「それはこれから分かるだろう・・」
「歌奈ちゃんから聞いたんですが、彼は半月ほど前にお隣の庭に倒れていたらしいです。それもびしょ濡れのサムライ姿で・・でも目覚めてから記憶が無いと言ってましたが・・」
「そうか・・利信、家訓を持ってきてくれるか。」
「はい・・分かりました。」
利信は立ち上がり、その重厚な扉を開け、本尊の下に収めてあった古めかしい箱を取り出した。
住職は丁寧にその箱から『家訓』を取り出し広げ始めた。
それはこの紫陽寺/清水家が建立時から代々受け継いできた家訓でだった。
そしてこの役500年あまりの間、大切に守られてきた家宝でもあった。
「もし本当に三郎君が私達が待っていたお館様であるなら、これからは全身全霊お仕えしなければならない。そして彼が本物なら、間もなく彼は消えるだろう。そしてまた再び私たちの前に現れた時こそ、この家訓を実行しなければならない。」
そう言うと静かにその「家訓」を読み始めた。
『家訓』
一、世が平らかに成る時、お館様は現れる。水面に映る紫陽花と共に。
一、その名は三郎。三月のうちに消え去るとも、その御名を忘れるべからず。
一、お館様は再び現れる。この後お館様が大義を果たされるよう、己が運命をかけ、前世、後世を見据えお使いせよ。長く待ち侘びたこの日を決して忘れることなくすべてがこの後始まることを覚悟せよ。
一、お館様三度の嘆くお姿に惑わされることなく、お館様の為、なさねばならぬ大義のため、より見識を深めていただく努力をせよ。見聞は力なり。
一、お館様は苦しみ、悩み、そして決断する。己が人生を絶っても必要とする全ての民の太平を。その時必要なありとあらゆる手段をもってお館様の歩む道を確保せよ。
一、お館様は時を駆ける。その道を切り開く方法を見い出される。皆の頭脳と技術を結集し如何なる難題をも乗り越えればその先に天下太平の世は必ず築かれるであろう。
一、お館様大儀を成し遂げし後、遥か先に思いを馳せ全ての富を惜しまざればこれを以って集大と成る。
一、未来永劫、その血筋を絶やす事なくば輪廻は必ず民の希望を叶えるであろう。
「利信、家訓を覚えているか・・」
「もちろん、覚えています。父さん・・彼は本物ですかね・・」
「それはこれから分かるだろう・・」
「歌奈ちゃんから聞いたんですが、彼は半月ほど前にお隣の庭に倒れていたらしいです。それもびしょ濡れのサムライ姿で・・でも目覚めてから記憶が無いと言ってましたが・・」
「そうか・・利信、家訓を持ってきてくれるか。」
「はい・・分かりました。」
利信は立ち上がり、その重厚な扉を開け、本尊の下に収めてあった古めかしい箱を取り出した。
住職は丁寧にその箱から『家訓』を取り出し広げ始めた。
それはこの紫陽寺/清水家が建立時から代々受け継いできた家訓でだった。
そしてこの役500年あまりの間、大切に守られてきた家宝でもあった。
「もし本当に三郎君が私達が待っていたお館様であるなら、これからは全身全霊お仕えしなければならない。そして彼が本物なら、間もなく彼は消えるだろう。そしてまた再び私たちの前に現れた時こそ、この家訓を実行しなければならない。」
そう言うと静かにその「家訓」を読み始めた。
『家訓』
一、世が平らかに成る時、お館様は現れる。水面に映る紫陽花と共に。
一、その名は三郎。三月のうちに消え去るとも、その御名を忘れるべからず。
一、お館様は再び現れる。この後お館様が大義を果たされるよう、己が運命をかけ、前世、後世を見据えお使いせよ。長く待ち侘びたこの日を決して忘れることなくすべてがこの後始まることを覚悟せよ。
一、お館様三度の嘆くお姿に惑わされることなく、お館様の為、なさねばならぬ大義のため、より見識を深めていただく努力をせよ。見聞は力なり。
一、お館様は苦しみ、悩み、そして決断する。己が人生を絶っても必要とする全ての民の太平を。その時必要なありとあらゆる手段をもってお館様の歩む道を確保せよ。
一、お館様は時を駆ける。その道を切り開く方法を見い出される。皆の頭脳と技術を結集し如何なる難題をも乗り越えればその先に天下太平の世は必ず築かれるであろう。
一、お館様大儀を成し遂げし後、遥か先に思いを馳せ全ての富を惜しまざればこれを以って集大と成る。
一、未来永劫、その血筋を絶やす事なくば輪廻は必ず民の希望を叶えるであろう。
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