6 / 58
第一章
兄弟
しおりを挟む
急だった。
「ただいま~」
現れたのは、私より少々年上だろうか。男子である。
「三郎君、今日はうちの息子達が帰って来る予定だったのよ。紹介するわね。二男の勝人よ。緊張しなくてもいいわよ。」
(息子?そういえば、母上がおっしゃっていたな)
「君が三郎君か~宜しく。このばか妹がうるさくないか!」
(するどい)
「いえ!そんなことないです」
突然の出会いと質問に思わず気後れして上手く言葉が出ない。
「ちょっと!なによ!ばか妹ですって!ばか兄貴がなに言ってんのよ!」
歌奈が怒り出す・・
「もう、いい加減にしなさい!顔合わせるとすぐそうなんだから。もう夕飯にするから、歌奈はパパを呼んで来て頂戴。お兄ちゃんはまだ遅くなるらしいから。勝人は早く着替えてらっしゃい!」
思いがけない展開に歌奈の背中を見つめたまま固まっていたところにまた勝人が話し始めた。
「びっくりした?安心して。仲が悪い訳じゃなんだよ。変な話だけど可愛くていじめたくなるってあるじゃない?歌奈には言うなよ。たった一人の妹だからな。いじりたくなる訳よ。」
「そうですか・・私にも妹がいて・・なんか分かります。」
「えっ!?妹いたの?思い出したの?」
「いいえ!違います。もしいたら同じ気持ちになるだろうから分かりますってことです。」
(あ~危なかった~)
いつの世も兄と妹はあまり変わりはないようで少し安心した。
「孝人はちょっと遅れるみたい。この間話した長男ね。」
「今日は、ママの誕生日なのよ。誕生日って三郎分かる?」
(そのくらい、知ってるわ!)
「そうだったんですか!めでたい日なんですね。で、その祝いでみんな集まったんですね。」
そんなことを賑やかに話していると・・
「ただいま~」
「あっ、お兄ちゃん帰って来た~思ったより早かったね!」
「お帰りなさい。ほんとね。早かったじゃない?」
「まあね。今日は特別ゲストもいるから、興味深々で急いで帰って来たよ。初めまして三郎君。長男の孝人です。よろしく。」
そう言ってにこやかにあいさつをしてくれた。
何だか照れくさくて、思いのほかもじもじしてるのが自分でも分かった。
孝人は24歳。勝人は22歳で二人共専門は違うが父上のように医者を目指して勉強しているらしい。
歌奈は歳の離れた妹だという事だった。
和気あいあいとした家族の風景に心が和んだ。
(家族はこんなに仲が良いいんだな。それも長男と二男で・・)
羨ましいと思った。見ていて悲しくもなった。
この家族のように、私の家族も円満に暮らせることが出来たならどんなに幸せだろう・・
そんな事を考えていた。
「ちょっと、庭に出てゆっくり話そうよ。」
兄弟と男3人、庭に出て他愛もない会話が始まる。
孝人も勝人も色んな話をしてくれた。
私はただ、うなずき聞くだけだった。
当然、全てが初めて聞く話しばかりなので、興味深いというのもあったが、何よりも平野兄弟が、仲良く色んな話しを私にしてくれているこの光景が私にはまぶしくて仕方なかった。
「何か困った事があったらいつでも言ってくれよ。君のご両親のことは父がなんとかするだろうから、それ以外ってことだけどね。」
「そうさ。同じ男同士なんだから、兄貴だけじゃなくて俺にも言ってくれよな!」
『男同志』いい響きだ。今までこんなに頼もしい言葉を本心から聞いたことは無かったな・・
この夜、私は存分に男同士を味わった。
「ただいま~」
現れたのは、私より少々年上だろうか。男子である。
「三郎君、今日はうちの息子達が帰って来る予定だったのよ。紹介するわね。二男の勝人よ。緊張しなくてもいいわよ。」
(息子?そういえば、母上がおっしゃっていたな)
「君が三郎君か~宜しく。このばか妹がうるさくないか!」
(するどい)
「いえ!そんなことないです」
突然の出会いと質問に思わず気後れして上手く言葉が出ない。
「ちょっと!なによ!ばか妹ですって!ばか兄貴がなに言ってんのよ!」
歌奈が怒り出す・・
「もう、いい加減にしなさい!顔合わせるとすぐそうなんだから。もう夕飯にするから、歌奈はパパを呼んで来て頂戴。お兄ちゃんはまだ遅くなるらしいから。勝人は早く着替えてらっしゃい!」
思いがけない展開に歌奈の背中を見つめたまま固まっていたところにまた勝人が話し始めた。
「びっくりした?安心して。仲が悪い訳じゃなんだよ。変な話だけど可愛くていじめたくなるってあるじゃない?歌奈には言うなよ。たった一人の妹だからな。いじりたくなる訳よ。」
「そうですか・・私にも妹がいて・・なんか分かります。」
「えっ!?妹いたの?思い出したの?」
「いいえ!違います。もしいたら同じ気持ちになるだろうから分かりますってことです。」
(あ~危なかった~)
いつの世も兄と妹はあまり変わりはないようで少し安心した。
「孝人はちょっと遅れるみたい。この間話した長男ね。」
「今日は、ママの誕生日なのよ。誕生日って三郎分かる?」
(そのくらい、知ってるわ!)
「そうだったんですか!めでたい日なんですね。で、その祝いでみんな集まったんですね。」
そんなことを賑やかに話していると・・
「ただいま~」
「あっ、お兄ちゃん帰って来た~思ったより早かったね!」
「お帰りなさい。ほんとね。早かったじゃない?」
「まあね。今日は特別ゲストもいるから、興味深々で急いで帰って来たよ。初めまして三郎君。長男の孝人です。よろしく。」
そう言ってにこやかにあいさつをしてくれた。
何だか照れくさくて、思いのほかもじもじしてるのが自分でも分かった。
孝人は24歳。勝人は22歳で二人共専門は違うが父上のように医者を目指して勉強しているらしい。
歌奈は歳の離れた妹だという事だった。
和気あいあいとした家族の風景に心が和んだ。
(家族はこんなに仲が良いいんだな。それも長男と二男で・・)
羨ましいと思った。見ていて悲しくもなった。
この家族のように、私の家族も円満に暮らせることが出来たならどんなに幸せだろう・・
そんな事を考えていた。
「ちょっと、庭に出てゆっくり話そうよ。」
兄弟と男3人、庭に出て他愛もない会話が始まる。
孝人も勝人も色んな話をしてくれた。
私はただ、うなずき聞くだけだった。
当然、全てが初めて聞く話しばかりなので、興味深いというのもあったが、何よりも平野兄弟が、仲良く色んな話しを私にしてくれているこの光景が私にはまぶしくて仕方なかった。
「何か困った事があったらいつでも言ってくれよ。君のご両親のことは父がなんとかするだろうから、それ以外ってことだけどね。」
「そうさ。同じ男同士なんだから、兄貴だけじゃなくて俺にも言ってくれよな!」
『男同志』いい響きだ。今までこんなに頼もしい言葉を本心から聞いたことは無かったな・・
この夜、私は存分に男同士を味わった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
楽将伝
九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語
織田信長の親衛隊は
気楽な稼業と
きたもんだ(嘘)
戦国史上、最もブラックな職場
「織田信長の親衛隊」
そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた
金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか)
天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
江戸時代改装計画
華研えねこ
歴史・時代
皇紀2603年7月4日、大和甲板にて。皮肉にもアメリカが独立したとされる日にアメリカ史上最も屈辱的である条約は結ばれることになった。
「では大統領、この降伏文書にサインして貰いたい。まさかペリーを派遣した君等が嫌とは言うまいね?」
頭髪を全て刈り取った男が日本代表として流暢なキングズ・イングリッシュで話していた。後に「白人から世界を解放した男」として讃えられる有名人、石原莞爾だ。
ここはトラック、言うまでも無く日本の内南洋であり、停泊しているのは軍艦大和。その後部甲板でルーズベルトは憤死せんがばかりに震えていた。
(何故だ、どうしてこうなった……!!)
自問自答するも答えは出ず、一年以内には火刑に処される彼はその人生最期の一年を巧妙に憤死しないように体調を管理されながら過ごすことになる。
トラック講和条約と称される講和条約の内容は以下の通り。
・アメリカ合衆国は満州国を承認
・アメリカ合衆国は、ウェーキ島、グアム島、アリューシャン島、ハワイ諸島、ライン諸島を大日本帝国へ割譲
・アメリカ合衆国はフィリピンの国際連盟委任独立準備政府設立の承認
・アメリカ合衆国は大日本帝国に戦費賠償金300億ドルの支払い
・アメリカ合衆国の軍備縮小
・アメリカ合衆国の関税自主権の撤廃
・アメリカ合衆国の移民法の撤廃
・アメリカ合衆国首脳部及び戦争煽動者は国際裁判の判決に従うこと
確かに、多少は苛酷な内容であったが、「最も屈辱」とは少々大げさであろう。何せ、彼らの我々の世界に於ける悪行三昧に比べたら、この程度で済んだことに感謝するべきなのだから……。

徳川家康。一向宗に認められていた不入の権を侵害し紛争に発展。家中が二分する中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次が採った行動。それは……。
俣彦
歴史・時代
1563年。徳川家康が三河国内の一向宗が持つ「不入の権」を侵害。
両者の対立はエスカレートし紛争に発展。双方共に関係を持つ徳川の家臣は分裂。
そんな中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次は……。
16世紀のオデュッセイア
尾方佐羽
歴史・時代
【第13章を夏ごろからスタート予定です】世界の海が人と船で結ばれていく16世紀の遥かな旅の物語です。
12章は16世紀後半のフランスが舞台になっています。
※このお話は史実を参考にしたフィクションです。

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜
かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。
徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。
堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる……
豊臣家に味方する者はいない。
西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。
しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。
全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる