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第一章
平成
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「高瀬、忙しいところすまない。それで容体はどうだい?まだ子供なんでなんだか焦ってしまったよ。たぶん歌奈と同じ年ごろだろうな。」
形成外科医の平野は心配そうに尋ねた。
「大丈夫さ。かなりの脱水と衰弱はあるが、まあ若いからね。回復は早いと思うよ。ちょうど外来も一段落したし、今日は俺が当直だから任せとけよ。ところでお前こそ今日は久々の休暇だったんじゃないのか?」
高瀬総合病院 高瀬健太郎副院長は愉快そうに尋ねた。
「ああ。そうだったんだが、家の前で急に倒れたもんだからそれどころじゃないよ!それにしても身元につながるものを何も持ってないなんて・・困ったな・・」
「まあ~取り敢えず2~3日は入院してもらうからその間に警察と相談したらどうだい?大丈夫だよ!この時代、何とかなるだろう。こんな子供だ。捜索願とか?きっとあるだろう。」
高瀬副院長はそう言って同じこの病院の形成外科医でもある親友の平野智士を慰めた。
「あなた、どうなの?」
高瀬副院長と入れ違いに病室に入って来た平野の妻は心配そうに夫に尋ねる。
「ああ、命に別状はないそうだよ。」
「あ~良かった。まだ子供よね。歌奈と同い年くらいかしらね?」
「ママ、私だって本当にびっくりしたんだから!急に倒れるし・・どこの子なんだろうね?この辺じゃ見かけ子だよね?」
そう言って娘の歌奈が顔を覗き込む。
「何も分からないんだ。身元が分かるもの?財布とか携帯とかは持ってなかったからね。というかそれ以外も何も持ってなかったんだ。」
「じゃあ、この子が目を覚ますまで本当に何も分からないってことなのね・・」
「ああ、そうだね。それにしてもこの服装も興味深いよね~今時の若者が着物なんて珍しいよな。」
「ほんとね・・」
夫妻は顔を見合わせてため息をついた・・
「でも、取り敢えず無事なんだから良かったじゃない?なんか、安心したら私おなかすいちゃった~パパ!今日は外食の予定だったでしょう?」
「そういえばそうね。すっかり忘れていたわ。せっかくパパのお休みなのに結局、病院にいるなんて何だか可笑しいわね!」
そんな妻の言葉に平野はすまなそうに微笑んだ。
朦朧とする意識の中で三郎は賑やかな話し声を聞いていた・・
ここは城なのか?あれは夢だったのか?しかし奇妙な夢だった。
それにしてもなんだか体中が痛くて身動きが出来ない・・
堪え切れずに目を開けようとしたその瞬間!
奇妙な会話が聞こえてきて思わず硬直した。
「歌奈は何が食べたいの?」
「ハンバーグが良いかな?でもピザも食べたいし。あ~どっちも食べたい!」
その返事に笑い声が広がる。
(ハンバーグって、ピザって何?え~やっぱり夢じゃない?)
驚き、とび起きそうになるのを三郎は必死に堪えた。
形成外科医の平野は心配そうに尋ねた。
「大丈夫さ。かなりの脱水と衰弱はあるが、まあ若いからね。回復は早いと思うよ。ちょうど外来も一段落したし、今日は俺が当直だから任せとけよ。ところでお前こそ今日は久々の休暇だったんじゃないのか?」
高瀬総合病院 高瀬健太郎副院長は愉快そうに尋ねた。
「ああ。そうだったんだが、家の前で急に倒れたもんだからそれどころじゃないよ!それにしても身元につながるものを何も持ってないなんて・・困ったな・・」
「まあ~取り敢えず2~3日は入院してもらうからその間に警察と相談したらどうだい?大丈夫だよ!この時代、何とかなるだろう。こんな子供だ。捜索願とか?きっとあるだろう。」
高瀬副院長はそう言って同じこの病院の形成外科医でもある親友の平野智士を慰めた。
「あなた、どうなの?」
高瀬副院長と入れ違いに病室に入って来た平野の妻は心配そうに夫に尋ねる。
「ああ、命に別状はないそうだよ。」
「あ~良かった。まだ子供よね。歌奈と同い年くらいかしらね?」
「ママ、私だって本当にびっくりしたんだから!急に倒れるし・・どこの子なんだろうね?この辺じゃ見かけ子だよね?」
そう言って娘の歌奈が顔を覗き込む。
「何も分からないんだ。身元が分かるもの?財布とか携帯とかは持ってなかったからね。というかそれ以外も何も持ってなかったんだ。」
「じゃあ、この子が目を覚ますまで本当に何も分からないってことなのね・・」
「ああ、そうだね。それにしてもこの服装も興味深いよね~今時の若者が着物なんて珍しいよな。」
「ほんとね・・」
夫妻は顔を見合わせてため息をついた・・
「でも、取り敢えず無事なんだから良かったじゃない?なんか、安心したら私おなかすいちゃった~パパ!今日は外食の予定だったでしょう?」
「そういえばそうね。すっかり忘れていたわ。せっかくパパのお休みなのに結局、病院にいるなんて何だか可笑しいわね!」
そんな妻の言葉に平野はすまなそうに微笑んだ。
朦朧とする意識の中で三郎は賑やかな話し声を聞いていた・・
ここは城なのか?あれは夢だったのか?しかし奇妙な夢だった。
それにしてもなんだか体中が痛くて身動きが出来ない・・
堪え切れずに目を開けようとしたその瞬間!
奇妙な会話が聞こえてきて思わず硬直した。
「歌奈は何が食べたいの?」
「ハンバーグが良いかな?でもピザも食べたいし。あ~どっちも食べたい!」
その返事に笑い声が広がる。
(ハンバーグって、ピザって何?え~やっぱり夢じゃない?)
驚き、とび起きそうになるのを三郎は必死に堪えた。
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