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序章
月下の麗人
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耕作は、20メートル四方の森の広場であぐらをかき腕を組んで首を傾げる。
背には石でできた小さな遺跡の入り口が蔦に覆われている。蔦には赤い小さな花が咲いており、緑色の蔦と無数の花、そして茶色の壁が覗いていた。
「異世界かぁ~」
ここでやっと耕作は悩んだような声を上げた。
突如として異世界に飛ばされた自分を両親が心配しているのではないかと気になったのだ。いきなり息子が消えたら普通の家庭では蜂の巣を突っついたような大騒ぎとなる。捜索願が出され、警察が動きもしかしたらテレビで報道される可能性がある。
が、両親がどんな顔をしているかを思い出すと、二人とも笑っていた。
(親父も母さんもたぶん喜ぶんだろうな)
耕作の両親は特殊だった。貝塚夫妻は、日本でも有名な冒険家夫婦。父は作家兼冒険家で、母は大学の非常勤講師の考古学者。そんな二人にくっついて小さな頃より全世界を旅し、耕作の義務教育ではなくなる中学から日本へ住んでいるが、両親は年がら年中外国へ行って家を留守にしていた。
耕作は幼少の頃より父に聞かされていた言葉がある。
『耕作。俺を超えてみろ。俺を超えるような冒険をしたらお前は一人前だ』
ガシガシと耕作の小さな頭を無精髭をニカっと笑わせて揺さぶる父。
それを思い出すと耕作の心から悩みは消え去った。
「冒険だ。俺は親父を超える冒険ができるぞ!」
憧れ。
耕作の胸にはずっとその憧れが潜んでいた。父を超えるような冒険。エベレストやゴビ砂漠横断など数々の大冒険をしてきた彼の父親に勝てるような冒険計画を妄想したこともある。しかし、自分の知恵で行けるような場所が父を超えるような場所とは思えなかった。
そして、耕作はいま異世界にいる。
これぞまさしく大冒険も大冒険。
誰もなし得ない冒険の世界が広がっていた。
耕作は満足そうに笑った後で
「まずはここを拠点にするか」
彼はここを根城にして調査に出るつもりだった。異世界も、現実世界の外国も大して耕作には変わらない。言語、生活習慣、通貨、そして信じる宗教や社会規範。自分とは全く違う人種というものを理解している彼は、気楽な頭の割に慎重な考えだ。
さしあたり、今は飲み水の確保と何処まで続くかわからない森を過ごすために食料を集めなければならない。遺跡の扉は誰か、あるいは他の生き物にあらされた形跡はない。彼は遺跡を安全地帯だと決めて、行動を開始する。
「寝るか」
選択した行動は実に気楽な物だった。
だが、月が二つあってかなり明るいが今は夜。人間が行動するには十分暗かった。森に入れば更に暗くなり、足下もおぼつかなくなる。太陽が昇ったあとでゆっくりと調査すればいい。そう判断して、彼は自分が壊した扉を手に持ち、起こす。扉は色々と活用できる。一番は生物が遺跡に侵入するのを防ぐ防御壁となり、よく乾いた板は燃やせばいい燃料にもなるだろう。
ずるずると重そうな扉を片手で引きずりながらふと耕作は首を傾げる。
(なんか…筋力上がってない?)
どう見ても30kgはありそうなずしりと重たい木の扉を片腕でなんなく引っ張ることができる。それに自分がタックルをして千切った蔦も人の腕ほどありそうなほど太かった。
耕作は自分の腕を見る。日焼けした普通の腕だった。一応父に言われたように筋トレを欠かさないようにしていたので年齢の割に太い。だが、それでもプロレス部や柔道部の学生と比べればなんとも頼りない細腕である。
不思議に思いつつも筋力が上がったならラッキーだと勝手に納得して耕作は、また扉を引きずろうとすると。
―――ガサガサガサ。
不意に森の茂みから音が鳴った。
耕作は警戒してさっと木の扉を縦にして隠れる。
(なんだ? 獣か? それともモンスターってやつか?)
頭の中にあるのは熊や犬といった獣だが、嫌な予感がした。異世界特有のモンスターや魔物。そういった人の命を脅かす存在にひやりとした。
(魔物とか魔族じゃ…ないよな?)
彼は声をひそめている。自分の気配を消して、扉から顔を少し覗かせて月明かりに照らし出されている森の方へと目を向けていた。
そしてまたガサガサと音がして何かが月明かりの影を地面に落として這い出てきた。長い胴体と凶悪な顔つき。
(やばい…ヘビだ。しかもデカすぎ…)
我が物顔で悠然と出てきたのは自、分の背丈の数倍を優に超えるような大きさのヘビだった。首周りだけでも耕作の胴体ぐらいはあった。それを持ち上げる姿は、耕作が隠れる扉を圧迫するような迫力がある。
灰色の巨大なヘビはチロチロと舌を出して、匂いを嗅いでいた。ヘビの口内には嗅覚を感じ取る感覚器と顔には獲物の熱を感じ取る感覚器が備わっている。それを正確に耕作へと向けていた。
(………反則だろ)
耕作は命の危険を感じ取り、頭が真っ白になりそうになる。
熱に敏感なヘビは優秀なハンター。例え森に逃げ込んだとしても匂いと熱で簡単に見つかってしまうだろう。
(あれほどデカいヘビだ。動きも遅いはず。全力で逃げればなんとななるかも)
しかし、耕作は森に逃げることを考えていた。
幾ら早いヘビでも人間の足には勝てない。全力で逃げ回り相手よりも体力で勝れば―――。
(なんとなかるか)
そう考えて耕作は扉を支える手に力を込めた。
扉を投げつけて怯ませ、後は一目散に森に逃げる。後のことは考えない。むしろ考えたところでどうにもならないと彼は腹をくくる。
ずるりとヘビが動いた。鎌首を上げたまま蛇腹を芝生にこすりつけて、耕作へ近付いてくる。
耕作は顔を扉の影に引っ込めて、ヘビの影でタイミングを見計らう。
1、2、3とリズムを刻み、影が完全に扉を覆った。
(今だ!)
腕に力を込めて耕作は叫ぶ。
「おりゃあああああああああ!」
耕作は全力で扉をぶん回す。その扉がグルグルと回ってヘビに襲いかかることも見ずに耕作は走り出そうと―――。
「シャァァァァァ!」
バシャリと液体が扉にかかる音。そしてその扉がジュウジュウと激しい音を出して煙が舞い上がる。
木製の扉は、ヘビが吐き出した溶解液で溶けた。
「なぁっ!?」
耕作は悲鳴を上げた。逆に怯んでしまった。白い煙をかき分けるように一筋の影が息を飲むような速さで耕作に襲いかかる。
「ぐっ!」
耕作はワザと芝生に転がり、そのままその勢いで立ち上がる。
が、双子の月を背にした耕作は、自分が最後に見る光景だと直感した。
既にヘビの口角が大きく開かれ、鋭い牙と二股の舌から生臭い息が耕作の顔にかかるほど近い。
(俺の冒険もこんなものなのか…)
噛み付かれるまでの一瞬の時間が以上に引き延ばされる。まるで時間が止まったようだった。
その一瞬、耕作の心の中で冷たい諦観がヘドロのように彼を覆い尽くそうとしていた。それはヘビの口の形をしたヘドロ。
耕作は目を閉じない。
例え自分の最後だとしても、今までに生きた16年間の幕をしっかりと見ようと心に決めていたのだ。
―――ビュウ。
鋭い音。風を切るような音と頬を掠める風。
視界の端で何か細い物が一閃通った。それは月の光に照らされ、目に焼き付くような煌めきだった。
ぶしゃりと何かが貫かれる音。貫かれて血が弾けた音だった。
ヘビを貫いたのは一条の槍だった。ヘビの口角から槍が入り込み、そのまま脳みそを貫通している。ヘビの身体はそのまま槍に持って行かれて、遺跡の中へと吹き飛んでいった。
ごくりと唾を飲み込んで耕作は後ろを振り返る。
そこには一人の女性。
双子の月を背にして、燃える松明が名刀のように引き締まった美しい顔を輝かせていた。松明と同じ燃え上がるような赤毛は腰まで届き、ほっそりとした身体には、透き通るほどの白い絹衣を纏っている。絹衣は膝丈よりも短く、白い脚を長い革の靴で覆っている。
月下の麗人。
耕作は別の意味でもう一度生唾を飲み込んでしまった。
いまだに性への執着はそこまでない彼でも思わず唾を飲み込んでしまうほど、その女性は月の色香をたっぷり含んでいる。人を狂わせてしまいそうなほどの美だ。
「ふむ。今回のまれびとは、人の子か」
その言葉は奇妙だった。耕作の耳にはまったくわからない言葉。だが、なぜか意味はわかってしまう。
「まあよい。私から名乗るのが礼儀だな。私の名は、スザーカ。この召喚の祭壇を守護する神官だ」
そう言ってスザーカは名乗り上げ、寂しげな微笑みをたたえる。
「貝塚耕作。俺は貝塚耕作です」
耕作はただ彼女の美しさに見とれてそう言うことしかできなかった。
背には石でできた小さな遺跡の入り口が蔦に覆われている。蔦には赤い小さな花が咲いており、緑色の蔦と無数の花、そして茶色の壁が覗いていた。
「異世界かぁ~」
ここでやっと耕作は悩んだような声を上げた。
突如として異世界に飛ばされた自分を両親が心配しているのではないかと気になったのだ。いきなり息子が消えたら普通の家庭では蜂の巣を突っついたような大騒ぎとなる。捜索願が出され、警察が動きもしかしたらテレビで報道される可能性がある。
が、両親がどんな顔をしているかを思い出すと、二人とも笑っていた。
(親父も母さんもたぶん喜ぶんだろうな)
耕作の両親は特殊だった。貝塚夫妻は、日本でも有名な冒険家夫婦。父は作家兼冒険家で、母は大学の非常勤講師の考古学者。そんな二人にくっついて小さな頃より全世界を旅し、耕作の義務教育ではなくなる中学から日本へ住んでいるが、両親は年がら年中外国へ行って家を留守にしていた。
耕作は幼少の頃より父に聞かされていた言葉がある。
『耕作。俺を超えてみろ。俺を超えるような冒険をしたらお前は一人前だ』
ガシガシと耕作の小さな頭を無精髭をニカっと笑わせて揺さぶる父。
それを思い出すと耕作の心から悩みは消え去った。
「冒険だ。俺は親父を超える冒険ができるぞ!」
憧れ。
耕作の胸にはずっとその憧れが潜んでいた。父を超えるような冒険。エベレストやゴビ砂漠横断など数々の大冒険をしてきた彼の父親に勝てるような冒険計画を妄想したこともある。しかし、自分の知恵で行けるような場所が父を超えるような場所とは思えなかった。
そして、耕作はいま異世界にいる。
これぞまさしく大冒険も大冒険。
誰もなし得ない冒険の世界が広がっていた。
耕作は満足そうに笑った後で
「まずはここを拠点にするか」
彼はここを根城にして調査に出るつもりだった。異世界も、現実世界の外国も大して耕作には変わらない。言語、生活習慣、通貨、そして信じる宗教や社会規範。自分とは全く違う人種というものを理解している彼は、気楽な頭の割に慎重な考えだ。
さしあたり、今は飲み水の確保と何処まで続くかわからない森を過ごすために食料を集めなければならない。遺跡の扉は誰か、あるいは他の生き物にあらされた形跡はない。彼は遺跡を安全地帯だと決めて、行動を開始する。
「寝るか」
選択した行動は実に気楽な物だった。
だが、月が二つあってかなり明るいが今は夜。人間が行動するには十分暗かった。森に入れば更に暗くなり、足下もおぼつかなくなる。太陽が昇ったあとでゆっくりと調査すればいい。そう判断して、彼は自分が壊した扉を手に持ち、起こす。扉は色々と活用できる。一番は生物が遺跡に侵入するのを防ぐ防御壁となり、よく乾いた板は燃やせばいい燃料にもなるだろう。
ずるずると重そうな扉を片手で引きずりながらふと耕作は首を傾げる。
(なんか…筋力上がってない?)
どう見ても30kgはありそうなずしりと重たい木の扉を片腕でなんなく引っ張ることができる。それに自分がタックルをして千切った蔦も人の腕ほどありそうなほど太かった。
耕作は自分の腕を見る。日焼けした普通の腕だった。一応父に言われたように筋トレを欠かさないようにしていたので年齢の割に太い。だが、それでもプロレス部や柔道部の学生と比べればなんとも頼りない細腕である。
不思議に思いつつも筋力が上がったならラッキーだと勝手に納得して耕作は、また扉を引きずろうとすると。
―――ガサガサガサ。
不意に森の茂みから音が鳴った。
耕作は警戒してさっと木の扉を縦にして隠れる。
(なんだ? 獣か? それともモンスターってやつか?)
頭の中にあるのは熊や犬といった獣だが、嫌な予感がした。異世界特有のモンスターや魔物。そういった人の命を脅かす存在にひやりとした。
(魔物とか魔族じゃ…ないよな?)
彼は声をひそめている。自分の気配を消して、扉から顔を少し覗かせて月明かりに照らし出されている森の方へと目を向けていた。
そしてまたガサガサと音がして何かが月明かりの影を地面に落として這い出てきた。長い胴体と凶悪な顔つき。
(やばい…ヘビだ。しかもデカすぎ…)
我が物顔で悠然と出てきたのは自、分の背丈の数倍を優に超えるような大きさのヘビだった。首周りだけでも耕作の胴体ぐらいはあった。それを持ち上げる姿は、耕作が隠れる扉を圧迫するような迫力がある。
灰色の巨大なヘビはチロチロと舌を出して、匂いを嗅いでいた。ヘビの口内には嗅覚を感じ取る感覚器と顔には獲物の熱を感じ取る感覚器が備わっている。それを正確に耕作へと向けていた。
(………反則だろ)
耕作は命の危険を感じ取り、頭が真っ白になりそうになる。
熱に敏感なヘビは優秀なハンター。例え森に逃げ込んだとしても匂いと熱で簡単に見つかってしまうだろう。
(あれほどデカいヘビだ。動きも遅いはず。全力で逃げればなんとななるかも)
しかし、耕作は森に逃げることを考えていた。
幾ら早いヘビでも人間の足には勝てない。全力で逃げ回り相手よりも体力で勝れば―――。
(なんとなかるか)
そう考えて耕作は扉を支える手に力を込めた。
扉を投げつけて怯ませ、後は一目散に森に逃げる。後のことは考えない。むしろ考えたところでどうにもならないと彼は腹をくくる。
ずるりとヘビが動いた。鎌首を上げたまま蛇腹を芝生にこすりつけて、耕作へ近付いてくる。
耕作は顔を扉の影に引っ込めて、ヘビの影でタイミングを見計らう。
1、2、3とリズムを刻み、影が完全に扉を覆った。
(今だ!)
腕に力を込めて耕作は叫ぶ。
「おりゃあああああああああ!」
耕作は全力で扉をぶん回す。その扉がグルグルと回ってヘビに襲いかかることも見ずに耕作は走り出そうと―――。
「シャァァァァァ!」
バシャリと液体が扉にかかる音。そしてその扉がジュウジュウと激しい音を出して煙が舞い上がる。
木製の扉は、ヘビが吐き出した溶解液で溶けた。
「なぁっ!?」
耕作は悲鳴を上げた。逆に怯んでしまった。白い煙をかき分けるように一筋の影が息を飲むような速さで耕作に襲いかかる。
「ぐっ!」
耕作はワザと芝生に転がり、そのままその勢いで立ち上がる。
が、双子の月を背にした耕作は、自分が最後に見る光景だと直感した。
既にヘビの口角が大きく開かれ、鋭い牙と二股の舌から生臭い息が耕作の顔にかかるほど近い。
(俺の冒険もこんなものなのか…)
噛み付かれるまでの一瞬の時間が以上に引き延ばされる。まるで時間が止まったようだった。
その一瞬、耕作の心の中で冷たい諦観がヘドロのように彼を覆い尽くそうとしていた。それはヘビの口の形をしたヘドロ。
耕作は目を閉じない。
例え自分の最後だとしても、今までに生きた16年間の幕をしっかりと見ようと心に決めていたのだ。
―――ビュウ。
鋭い音。風を切るような音と頬を掠める風。
視界の端で何か細い物が一閃通った。それは月の光に照らされ、目に焼き付くような煌めきだった。
ぶしゃりと何かが貫かれる音。貫かれて血が弾けた音だった。
ヘビを貫いたのは一条の槍だった。ヘビの口角から槍が入り込み、そのまま脳みそを貫通している。ヘビの身体はそのまま槍に持って行かれて、遺跡の中へと吹き飛んでいった。
ごくりと唾を飲み込んで耕作は後ろを振り返る。
そこには一人の女性。
双子の月を背にして、燃える松明が名刀のように引き締まった美しい顔を輝かせていた。松明と同じ燃え上がるような赤毛は腰まで届き、ほっそりとした身体には、透き通るほどの白い絹衣を纏っている。絹衣は膝丈よりも短く、白い脚を長い革の靴で覆っている。
月下の麗人。
耕作は別の意味でもう一度生唾を飲み込んでしまった。
いまだに性への執着はそこまでない彼でも思わず唾を飲み込んでしまうほど、その女性は月の色香をたっぷり含んでいる。人を狂わせてしまいそうなほどの美だ。
「ふむ。今回のまれびとは、人の子か」
その言葉は奇妙だった。耕作の耳にはまったくわからない言葉。だが、なぜか意味はわかってしまう。
「まあよい。私から名乗るのが礼儀だな。私の名は、スザーカ。この召喚の祭壇を守護する神官だ」
そう言ってスザーカは名乗り上げ、寂しげな微笑みをたたえる。
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