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44.謁見
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オーボンヌ伯爵に伝令があり、フレデリックたちは伯爵と共にサンドレア国王に謁見することになった。
「謁見にはこちらのドレスにいたしましょう。基本的な形が現在の流行りに近いので少し修正すれば見劣りしません」
「じゃあそれでお願い」
現在オーボンヌ伯爵の王都にあるタウンハウスだ。
ホテルを取ろうとしたが、『領地を救うため尽力した領主と、スタンピートと戦かった英雄たち』という見られ方なので、ホテルでは記者や商人等が押し寄せて危険だということで、タウンハウスに世話になることになったのだ。
思惑通りにいけばいいな とミカエラは思った。
持てる力をふんだんに使い注目を集めたミカエラは、他国にも渡り人の知恵を知らしめ、ラエドニアが独占しようものならそれを牽制してくれる”抑止力”となる権力を求めていた。有体に言えば他国の王家の後ろ盾だ。
(ランシア家には王妹のお義母様がいらっしゃるけれど、『王命』が発せられてしまえば伯爵家では逆らうことが難しい。…特に画廊にいた私を見つけ出せるようなクリスヴァルト王子の御世になると…お義母様やお義父様では抑えつけるのは無理でしょうね…)
伯爵令嬢のおさがりでは胸回りが足りず、軽くショックを受けている間にささっと詰め物をされて仕上げられる。
「後ろをボリューム持たせれば…バッスルのソレっぽい感じになりましたね!」
「アネッサはすごいのね。ありがとう」
「お嬢様付はとてもやりがいがありますからね…とっても可愛く出来ましたよ!」
迎えに来たフレデリックも頬を緩めて褒めそやす。
「綺麗だね、ミカエラ。可憐な花のようだ」
「…日義兄様も素敵な装いです」
伯爵領ではフレデリックもローヴァンも”裕福な商人”くらいの恰好をしているのでなかなか正装は見ない。
整いすぎた顔もあって5割増しの容貌になっている。
(ラエドニアでも騒がれるからあまり王都を歩かないようだし、義兄様の登城はサンドレアの王城の人たちに相当騒がれそう…)
「こんなに可愛いと王宮にいる貴族の子息たちに求婚されてしまうかもしれないな」
「それは無いです。どちらかというと義兄様の方が縁談を持ってこられそうですよね」
アネッサやフレデリックは可愛いと言ってくれるが人並みの顔だ。着飾ったところで上方修正はされない。
「でも伯爵領的には他国の方と縁を結ぶのは悪くないことですよね…」
「まぁそういう考え方もあるけれど、ランシア家は結婚に関しては自由意志だからね。…私はミカエラ以外と結婚しようとは思ってないよ。だからここの貴族令息たちの求婚は受けないでくれるかな?」
「そもそも求婚されませんよ」
今は二頭立て馬車の中。ミカエラとフレデリックは向かい合って座っている。オーボンヌ伯爵は別の馬車に乗っており、2台で城へ移動中だ。
フレデリックはプレタポルテだが白を基調とし、濃緑を差し色として品の良い装いだ。
前髪を上げて全体的にまとめているため、普段より大人っぽく見える。
ミカエラは…伯爵の息女とは髪色が違うので淡い色味が少々浮くが、白から菫色のグラデーションになっているドレスを纏っている。
伯爵領では2人に合わせて比較的楽な服を着て、ローヴァンに任せて夜会も出なかったミカエラにはかっちりとしたドレスを着ているのは苦行だ。
フレデリックにエスコートしてもらいつつ、ジュリエッタ夫人に教えてもらったことを思い出してミカエラはサンドレア国王に拝謁した。
主に説明・報告するのはオーボンヌ伯爵、問われた際にフレデリックが説明する。
サンドレア国王は一行を労い、恩に報いるために渡り人が搾取されないよう人権を保護することを約した。
「謁見にはこちらのドレスにいたしましょう。基本的な形が現在の流行りに近いので少し修正すれば見劣りしません」
「じゃあそれでお願い」
現在オーボンヌ伯爵の王都にあるタウンハウスだ。
ホテルを取ろうとしたが、『領地を救うため尽力した領主と、スタンピートと戦かった英雄たち』という見られ方なので、ホテルでは記者や商人等が押し寄せて危険だということで、タウンハウスに世話になることになったのだ。
思惑通りにいけばいいな とミカエラは思った。
持てる力をふんだんに使い注目を集めたミカエラは、他国にも渡り人の知恵を知らしめ、ラエドニアが独占しようものならそれを牽制してくれる”抑止力”となる権力を求めていた。有体に言えば他国の王家の後ろ盾だ。
(ランシア家には王妹のお義母様がいらっしゃるけれど、『王命』が発せられてしまえば伯爵家では逆らうことが難しい。…特に画廊にいた私を見つけ出せるようなクリスヴァルト王子の御世になると…お義母様やお義父様では抑えつけるのは無理でしょうね…)
伯爵令嬢のおさがりでは胸回りが足りず、軽くショックを受けている間にささっと詰め物をされて仕上げられる。
「後ろをボリューム持たせれば…バッスルのソレっぽい感じになりましたね!」
「アネッサはすごいのね。ありがとう」
「お嬢様付はとてもやりがいがありますからね…とっても可愛く出来ましたよ!」
迎えに来たフレデリックも頬を緩めて褒めそやす。
「綺麗だね、ミカエラ。可憐な花のようだ」
「…日義兄様も素敵な装いです」
伯爵領ではフレデリックもローヴァンも”裕福な商人”くらいの恰好をしているのでなかなか正装は見ない。
整いすぎた顔もあって5割増しの容貌になっている。
(ラエドニアでも騒がれるからあまり王都を歩かないようだし、義兄様の登城はサンドレアの王城の人たちに相当騒がれそう…)
「こんなに可愛いと王宮にいる貴族の子息たちに求婚されてしまうかもしれないな」
「それは無いです。どちらかというと義兄様の方が縁談を持ってこられそうですよね」
アネッサやフレデリックは可愛いと言ってくれるが人並みの顔だ。着飾ったところで上方修正はされない。
「でも伯爵領的には他国の方と縁を結ぶのは悪くないことですよね…」
「まぁそういう考え方もあるけれど、ランシア家は結婚に関しては自由意志だからね。…私はミカエラ以外と結婚しようとは思ってないよ。だからここの貴族令息たちの求婚は受けないでくれるかな?」
「そもそも求婚されませんよ」
今は二頭立て馬車の中。ミカエラとフレデリックは向かい合って座っている。オーボンヌ伯爵は別の馬車に乗っており、2台で城へ移動中だ。
フレデリックはプレタポルテだが白を基調とし、濃緑を差し色として品の良い装いだ。
前髪を上げて全体的にまとめているため、普段より大人っぽく見える。
ミカエラは…伯爵の息女とは髪色が違うので淡い色味が少々浮くが、白から菫色のグラデーションになっているドレスを纏っている。
伯爵領では2人に合わせて比較的楽な服を着て、ローヴァンに任せて夜会も出なかったミカエラにはかっちりとしたドレスを着ているのは苦行だ。
フレデリックにエスコートしてもらいつつ、ジュリエッタ夫人に教えてもらったことを思い出してミカエラはサンドレア国王に拝謁した。
主に説明・報告するのはオーボンヌ伯爵、問われた際にフレデリックが説明する。
サンドレア国王は一行を労い、恩に報いるために渡り人が搾取されないよう人権を保護することを約した。
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