39 / 54
38.友軍
しおりを挟む
「よろしくお願いします」
オーボンヌ伯爵の私兵に挨拶すると怪訝な顔をされる。
シグヘイム子爵からの応援はたった4人でそのうち2人は女性、1人は子供だ。
不安しかないだろう。
「子供がこんなところに来るもんじゃない。遊びじゃないんですよ。…ランシア伯爵の名代も帰った方が良いでしょう」
「私もこの子自身も戦力にはならないけれど、この子は召喚士で戦力を召喚できる。私も元王女の護衛を投入出来るよ」
「…若様。私は若様とお嬢様の護衛のみ命じられました」
主旨が異なる とヤルマールが割り込む。
「うん。私が死んでは元の子もないのだろう? スタンピートに巻き込まれないよう頼んだよ」
にこやかに返すフレデリックに、無表情に礼を取る。態度には出ないが渋々といったところだろう。
大きな引っ掛き傷がついた鎧をまとった壮年の男性が近付いてくる。
「で、お嬢ちゃんが召喚するのは何だ? 強いヤツだとありがたいんだが」
「蜂です」
「…蜂? あんなちっこいの役に立たないだろう?」
明らかに落胆した様子で4人を見た。
「こっちは大きく。こっちは…手の平くらいの大きさで」
5枚、6枚と折形を宙に放ると5枚は小鳥程度の大きさに、6枚は人くらいの大きさになる。
異様に大きな体長のため、羽音が低く周囲を震わせるように唸っている。
肢先には鋭い鉤爪を持ち、大鎌のような顎をガチガチと鳴らし威嚇している。
―己は危険だから安易に近づくな…と―。
メリハリのある体色が毒々しいまでの鮮やさを持つオオススメバチだ。
オオスズメバチーインドから東アジアにかけて分布する大型種の昆虫。
体長は女王蜂が40 ~60 mm、働き蜂が27~40 mm程度で、日本に生息する蜂類の中のみならず、陸海空の全ての有毒生物中トップクラスの毒を持ち(オオスズメバチが持っている毒の半数致死量 (LD50) は4.1mg/kg)、かつ攻撃性も高い危険な種である。
飛行能力も高く、時速約40 kmで飛翔し、狩りをする時は1日で約100 kmもの距離を移動できる持久力も持つ。
世界的に人間を最も多く殺傷している生物は蚊だが、日本で最も多く人間を殺傷している生物はスズメバチである。
天敵は熊。そのため黒く、より速く動くものを優先的に狙う。
「小柄な5匹はスタンピートのコアを探してもらいます。破壊が難しいようならここまで運んでもらいます」
「持てるのかい?」
「自分の体重の50倍は持てますから…。ただ水の中にあるようなら無理ですね」
人間大の6匹はある程度まとまって傭兵が相手にしている魔獣を目指し飛んでいき、6匹は魔獣が多くいる方向を目指しバラバラに飛んでいく。
「…渡り人様の世界にはこんな蜂がいるのかな? 随分恐ろしい見た目だが…」
「お母さんの国でも脅威になっていた蜂だそうです。狂暴で指くらいの大きさだったと話していました」
「しかもかなり速いですね…」
「オーボンヌ伯爵が昨日のうちに傭兵に話を通してくれていたはずですけど…驚いて攻撃しそうですね」
呆気にとられながらそれぞれ感想を述べる3人。
大きい方の蜂たちは傭兵が相手にしていた魔獣に近づくと1匹が肢で抱えたまま飛び空に放り上げ、残りの蜂が毒針で刺したり四肢や首を強靭な顎で掻き切っていく。
何故か傭兵たちからも悲鳴が上がる。
「外殻が硬質だと顎や針が通らないので、硬そうな魔獣は皆さんにお任せします」
ミカエラが私兵たちに頭を下げる。
「…すごいな。しかし数匹だけで対応できるのか?」
「皆さんが見慣れてきたら増やします。オオスズメバチが他のスズメバチの巣を襲う時は大体500匹程度で襲撃を行いますから」
オーボンヌ伯爵の私兵に挨拶すると怪訝な顔をされる。
シグヘイム子爵からの応援はたった4人でそのうち2人は女性、1人は子供だ。
不安しかないだろう。
「子供がこんなところに来るもんじゃない。遊びじゃないんですよ。…ランシア伯爵の名代も帰った方が良いでしょう」
「私もこの子自身も戦力にはならないけれど、この子は召喚士で戦力を召喚できる。私も元王女の護衛を投入出来るよ」
「…若様。私は若様とお嬢様の護衛のみ命じられました」
主旨が異なる とヤルマールが割り込む。
「うん。私が死んでは元の子もないのだろう? スタンピートに巻き込まれないよう頼んだよ」
にこやかに返すフレデリックに、無表情に礼を取る。態度には出ないが渋々といったところだろう。
大きな引っ掛き傷がついた鎧をまとった壮年の男性が近付いてくる。
「で、お嬢ちゃんが召喚するのは何だ? 強いヤツだとありがたいんだが」
「蜂です」
「…蜂? あんなちっこいの役に立たないだろう?」
明らかに落胆した様子で4人を見た。
「こっちは大きく。こっちは…手の平くらいの大きさで」
5枚、6枚と折形を宙に放ると5枚は小鳥程度の大きさに、6枚は人くらいの大きさになる。
異様に大きな体長のため、羽音が低く周囲を震わせるように唸っている。
肢先には鋭い鉤爪を持ち、大鎌のような顎をガチガチと鳴らし威嚇している。
―己は危険だから安易に近づくな…と―。
メリハリのある体色が毒々しいまでの鮮やさを持つオオススメバチだ。
オオスズメバチーインドから東アジアにかけて分布する大型種の昆虫。
体長は女王蜂が40 ~60 mm、働き蜂が27~40 mm程度で、日本に生息する蜂類の中のみならず、陸海空の全ての有毒生物中トップクラスの毒を持ち(オオスズメバチが持っている毒の半数致死量 (LD50) は4.1mg/kg)、かつ攻撃性も高い危険な種である。
飛行能力も高く、時速約40 kmで飛翔し、狩りをする時は1日で約100 kmもの距離を移動できる持久力も持つ。
世界的に人間を最も多く殺傷している生物は蚊だが、日本で最も多く人間を殺傷している生物はスズメバチである。
天敵は熊。そのため黒く、より速く動くものを優先的に狙う。
「小柄な5匹はスタンピートのコアを探してもらいます。破壊が難しいようならここまで運んでもらいます」
「持てるのかい?」
「自分の体重の50倍は持てますから…。ただ水の中にあるようなら無理ですね」
人間大の6匹はある程度まとまって傭兵が相手にしている魔獣を目指し飛んでいき、6匹は魔獣が多くいる方向を目指しバラバラに飛んでいく。
「…渡り人様の世界にはこんな蜂がいるのかな? 随分恐ろしい見た目だが…」
「お母さんの国でも脅威になっていた蜂だそうです。狂暴で指くらいの大きさだったと話していました」
「しかもかなり速いですね…」
「オーボンヌ伯爵が昨日のうちに傭兵に話を通してくれていたはずですけど…驚いて攻撃しそうですね」
呆気にとられながらそれぞれ感想を述べる3人。
大きい方の蜂たちは傭兵が相手にしていた魔獣に近づくと1匹が肢で抱えたまま飛び空に放り上げ、残りの蜂が毒針で刺したり四肢や首を強靭な顎で掻き切っていく。
何故か傭兵たちからも悲鳴が上がる。
「外殻が硬質だと顎や針が通らないので、硬そうな魔獣は皆さんにお任せします」
ミカエラが私兵たちに頭を下げる。
「…すごいな。しかし数匹だけで対応できるのか?」
「皆さんが見慣れてきたら増やします。オオスズメバチが他のスズメバチの巣を襲う時は大体500匹程度で襲撃を行いますから」
0
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。

白い結婚をめぐる二年の攻防
藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」
「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」
「え、いやその」
父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。
だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。
妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。
※ なろうにも投稿しています。
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる