全能ソーサラーの義妹ができました?

招杜羅147

文字の大きさ
上 下
37 / 54

36.オーボンヌ領へ

しおりを挟む
「ここのチャルニア草、根が食べられるの」
「…お嬢様、食べるために摘んでいるのですか?」
「オーボンヌ領は人が溢れて食料が無さそうだから、食べられそうなものを集めておこうかと…。あそこの木、キンベイラの実も食べられるけど、実がついているかな…」
「ミカエラ、我々はオーボンヌ伯爵の客人の扱いだから、食うには困らないはずだよ。野営する場合もヤルマールとアネッサに任せておけば獲物は取ってくれるから…」

貧しい村で生活していたからだろう、ミカエラは食べられる野草や木の実に詳しかった。
だが今は従者もいるし、伯爵が後見となっている今はそのような心配はいらないのだ、とフレデリックは説き伏せた。

「じゃあ…アネッサたちにお願いすることにします」

少し落ち込んだ様子のミカエラの手をフレデリックは苦笑しながら取る。
ジュリエッタ夫人に手入れされて大分手荒れは減ってきたものの、皮膚に硬い部分が残る。労働者の…今武器を握っている淑女のものとは異なる手だ。

「私のお姫様はたくましいな」
「お姫様…」

ミカエラがうつむく。おそらく顔を赤らめているのだろうが、子爵に借りた馬に2人乗りしているため表情が見れない。

「お姫様というのはもっと綺麗で身分の高い方のことを指すのですよ」
「ミカエラはとても可愛らしくて強さも持ち合わせている…私の素敵なお姫様だよ」

後方ではアネッサが小さく、だが力強くガッツポーズを取っている。
アネッサがフレデリックに助言したのだ。
ミカエラはフレデリックに対してほんのり好意は持っているから甘い言葉をたくさん掛けて心を掴め! と。

(魔獣侵攻が起きていなければデートもしてもらいたかったが…次に訪れる国が平和だったら2人でお出掛けしてもらおう)

「他人の色恋にかまけて疎かになるなよ」

隣を行くヤルマールがポツリと釘を刺してくる。

「警戒は怠ってないし、コレは最重要事項なの。王家に取られて籠の鳥になるより、若様と結婚してくれた方が私たちに直接大きな益があるでしょ?」
「伯爵家の益のためか」
「旦那様がそれをお望みだから。…僻地に追いやられた渡り人様への贖罪もあるかもしれないけど。本来は豊かな暮らしを約束された方だったのでしょ?」

アネッサの雇い主はマクレガー伯爵なので、彼の命令と願望に忠実であろうとする。
ヤルマールの雇い主はジュリエッタ夫人なので2人を守り抜くことが受けた命だ。ターゲットが恋仲だろうが不仲だろうが気にしない。
ただジュリエッタ夫人は少女の方をいたく気に入っているので、彼女が傷つかないよう注意を払わなければならない。でないとあの美しい顔が般若になりかねない。

シグヘイム子爵が記した書簡を持って4人はオーボンヌ伯爵の元へと向かう。
近くに魔獣の気配はないものの、オーボンヌ領に近づくにつれ瘴気の気配は強くなっているので、ヤルマールはアネッサに先頭に回るよう合図した。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!

日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」 見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。 神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。 特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。 突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。 なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。 ・魔物に襲われている女の子との出会い ・勇者との出会い ・魔王との出会い ・他の転生者との出会い ・波長の合う仲間との出会い etc....... チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。 その時クロムは何を想い、何をするのか…… このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

薬漬けレーサーの異世界学園生活〜無能被験体として捨てられたが、神族に拾われたことで、ダークヒーローとしてナンバーワン走者に君臨します〜

仁徳
ファンタジー
少年はとある研究室で実験動物にされていた。毎日薬漬けの日々を送っていたある日、薬を投与し続けても、魔法もユニークスキルも発動できない落ちこぼれの烙印を押され、魔の森に捨てられる。 森の中で魔物が現れ、少年は死を覚悟したその時、1人の女性に助けられた。 その後、女性により隠された力を引き出された少年は、シャカールと名付けられ、魔走学園の唯一の人間魔競走者として生活をすることになる。 これは、薬漬けだった主人公が、走者として成り上がり、ざまぁやスローライフをしながら有名になって、世界最強になって行く物語 今ここに、新しい異世界レースものが開幕する!スピード感のあるレースに刮目せよ! 競馬やレース、ウマ娘などが好きな方は、絶対に楽しめる内容になっているかと思います。レース系に興味がない方でも、異世界なので、ファンタジー要素のあるレースになっていますので、楽しめる内容になっています。 まずは1話だけでも良いので試し読みをしていただけると幸いです。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた

山田空
ファンタジー
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。 ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。 だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。 そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。 ……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。 そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。 俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。 最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。 そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。 俺は女主人公を影で助ける。 そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

とまどいの花嫁は、夫から逃げられない

椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ 初夜、夫は愛人の家へと行った。 戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。 「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」 と言い置いて。 やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に 彼女は強い違和感を感じる。 夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り 突然彼女を溺愛し始めたからだ ______________________ ✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定) ✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです ✴︎なろうさんにも投稿しています 私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

処理中です...