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21.ダンスのレッスン
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そんなわけで小規模なボールルームの方にローヴァン、ミカエラ、ジュリエッタ夫人がいる。
ジュリエッタ夫人はダンスもさることながら、ピアノの腕も一流だ。今回は曲を奏でるためにピアノの前で待機している。
「ではワルツからやろう。足は…一歩目はこう斜め後ろに下がるように動かすんだ…1・2・3、1・2・3…そうそう、上手だね」
ミカエラはローヴァンに並んで足の動きを真似る。
簡単な型だし、飲み込みも早い。
「あら、上手ね。…じゃあちょっとミカエラはこちらに来て。…演奏するからローはシャドーで踊ってみて」
「男性パートを?」
「女性パートに決まっているでしょ! ミカエラが動きを覚えるのだから」
「ですよね…」
ミカエラはジュリエッタ夫人の傍に行き、ローヴァンはボールルームの中央に立つ。
「あの…シャドーってなんです?」
「パートナーがいると仮定して1人で踊ることをシャドーダンスと言うの。足はさっきので大体出来ていたから…これからローの腕や上体、顔の向きを見ていてね?」
そう言ってジュリエッタ夫人は鍵盤に指を置いた。
ピアノの音とほんの少しフェルトハンマーの音、そしてローヴァンの靴音がホール内に響く。
背も腕もピンと伸ばし体が回転していく中で全くブレない。鍛え上げられている証拠だ。
二分程度の曲だったと思うがこめかみを汗が伝う。
「じゃあ次は私とローが踊るから、2人で踊るとどんな足さばきになるか見ていてね」
ジュリエッタ夫人が先ほどのローヴァンのパート…女性パートの姿勢を取り、ローヴァンは本来の男性パートの姿勢を取る。
初めて見る男性パートだ。
女性が一歩下がると同時に、男性は一歩斜め前へと踏み出す。
(歩幅合わないと足踏みそう…)
ミカエラの心配を余所に、2人は淀みなくステップを踏む。
「…と、こんな感じよ。最初はローの足を踏んでもいいから、やってみてね」
にこやかにジュリエッタ夫人に背を押され、ローヴァンの前に立つ。
「…義兄様の足を踏んだらごめんなさい」
「腕は僕が支えるから…足の方に集中して、さっきと同じように足を動かせばいいよ。ミカエラの歩幅は覚えたから、上手く踊れると思う」
「月義兄様が笑ってそう言ってくれると安心できます」
ミカエラも小さく微笑み返した。
(背中や腕が吊りそうに痛い。立て続けに踊っている義兄様はすごい…)
何とか1曲分踊り切ったが、普段と異なる筋肉の使い方に驚いた体が悲鳴を上げている。
「義兄様もお義母様も…すごいんですね」
能力の高いミカエラにすごいと言われるとちょっと気分がいい。
「すごいわけじゃないのよ。社交界ではどうしても必要なことだから覚えているの。…ローヴァンはちょっと右足の動きが荒いから、そこの修正も含めてまたやりましょうね」
母親の厳しい指摘にローヴァンの気分が降下していく。
「次はポルカもやってみましょうか。煌雪祭で踊るのはポルカだものね~」
「煌雪祭?」
「収穫を終えて冬を迎えるこの辺の祭りだよ。僕たちと出掛けようね」
(月義兄様に笑いかけられると何だか心が温かいな…)
ミカエラはコクリと頷いた。
ジュリエッタ夫人はダンスもさることながら、ピアノの腕も一流だ。今回は曲を奏でるためにピアノの前で待機している。
「ではワルツからやろう。足は…一歩目はこう斜め後ろに下がるように動かすんだ…1・2・3、1・2・3…そうそう、上手だね」
ミカエラはローヴァンに並んで足の動きを真似る。
簡単な型だし、飲み込みも早い。
「あら、上手ね。…じゃあちょっとミカエラはこちらに来て。…演奏するからローはシャドーで踊ってみて」
「男性パートを?」
「女性パートに決まっているでしょ! ミカエラが動きを覚えるのだから」
「ですよね…」
ミカエラはジュリエッタ夫人の傍に行き、ローヴァンはボールルームの中央に立つ。
「あの…シャドーってなんです?」
「パートナーがいると仮定して1人で踊ることをシャドーダンスと言うの。足はさっきので大体出来ていたから…これからローの腕や上体、顔の向きを見ていてね?」
そう言ってジュリエッタ夫人は鍵盤に指を置いた。
ピアノの音とほんの少しフェルトハンマーの音、そしてローヴァンの靴音がホール内に響く。
背も腕もピンと伸ばし体が回転していく中で全くブレない。鍛え上げられている証拠だ。
二分程度の曲だったと思うがこめかみを汗が伝う。
「じゃあ次は私とローが踊るから、2人で踊るとどんな足さばきになるか見ていてね」
ジュリエッタ夫人が先ほどのローヴァンのパート…女性パートの姿勢を取り、ローヴァンは本来の男性パートの姿勢を取る。
初めて見る男性パートだ。
女性が一歩下がると同時に、男性は一歩斜め前へと踏み出す。
(歩幅合わないと足踏みそう…)
ミカエラの心配を余所に、2人は淀みなくステップを踏む。
「…と、こんな感じよ。最初はローの足を踏んでもいいから、やってみてね」
にこやかにジュリエッタ夫人に背を押され、ローヴァンの前に立つ。
「…義兄様の足を踏んだらごめんなさい」
「腕は僕が支えるから…足の方に集中して、さっきと同じように足を動かせばいいよ。ミカエラの歩幅は覚えたから、上手く踊れると思う」
「月義兄様が笑ってそう言ってくれると安心できます」
ミカエラも小さく微笑み返した。
(背中や腕が吊りそうに痛い。立て続けに踊っている義兄様はすごい…)
何とか1曲分踊り切ったが、普段と異なる筋肉の使い方に驚いた体が悲鳴を上げている。
「義兄様もお義母様も…すごいんですね」
能力の高いミカエラにすごいと言われるとちょっと気分がいい。
「すごいわけじゃないのよ。社交界ではどうしても必要なことだから覚えているの。…ローヴァンはちょっと右足の動きが荒いから、そこの修正も含めてまたやりましょうね」
母親の厳しい指摘にローヴァンの気分が降下していく。
「次はポルカもやってみましょうか。煌雪祭で踊るのはポルカだものね~」
「煌雪祭?」
「収穫を終えて冬を迎えるこの辺の祭りだよ。僕たちと出掛けようね」
(月義兄様に笑いかけられると何だか心が温かいな…)
ミカエラはコクリと頷いた。
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