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渡り人は我々にはない技術や知識を持っていることが多いので、通常国によって保護される。
しかし彼女の身なりは裕福な暮らし向きだったとは考えにくい。
朝食を摂りながら、ローヴァンはふとそんなことを考えた。
今日は職務が休みなので久々に昨夜のうちから実家に帰ってきたのだ。
ローヴァン・ランシアは伯爵家の次男で、現在魔物退治を主とする第5騎士団に身を置いている。
家は長兄が継ぐので、最終的には近衛になって生計を立てたいと考えていた。
緩くウェーブ掛かった銀髪は、明るすぎて夜間の任務に差し支えることがあるので、魔法で砂色に染めていることが多かった。
「今日は休みなのだから髪色くらい戻したらよいのに」
苦笑する父マクレガー・ランシア伯爵は40過ぎても若々しく、女性トラブルが多かったという美貌も渋さが加わり、交渉相手を魅了しているようだ。
父に似て整った顔立ちの長兄のフレデリックも伯爵を継ぐことが確定していることもあり、未婚の妙齢の女性たちに人気の物件である。
かく言うローヴァンも端麗な見た目、騎士という華やかそうな職業なので言い寄る女性も多い。
しかし魔獣退治で何カ月も王都を離れ、場所柄相手に便りを送ることも出来ないので、浮気されたと勘違いされることもしばしば…特定の相手とは長続きしないので近年は恋人を作らないでいた。
「そうですよ。せっかくお父様譲りの美しい銀髪なのだから」
と母・ジュリエッタの声。声の調子から咎めているのではなく、軽口のようだ。
「長い休暇なら戻しますよ。…けっこう便利ですよ? 冴えない色のせいか多少は女避けになって」
ランシア伯爵家は海運業で大きな成功と領地を治めていることもあり、貴族なのに結婚に関しては当主の考えが大らかで融通が利く。
海賊上がりであまり血筋を尊ばないし(血筋重視の貴族からは敬遠されているし)コネを必要としないので婚約者もなく、好き合う相手と結婚すれば良いとのことだった。
とは言え、美丈夫の父を見初めた母は、元王女だ。
当時の国王は一つの国としてやっていけそうな伯爵領を、王国に繋ぎとめるために娘を強引に押し付けたのだ。
それでも父はまんざらでもないようなのでわりと円満な夫婦なのだが。
この砂色の髪は顔が映えないようで、街行く人の目線を集めにくく、重宝しているのだ。
最後の一欠片のパンでさらに残ったソースを拭い、口に入れる。
席を立とうとしたところ、慌てた様子で執事のベンが入ってきた。
「旦那様、お食事の所失礼します。屋敷の門の所に現れた人物がこれを持ってきまして…。」
ベンは声を潜めているが、全員押し黙っているのでよく聞こえてしまう。
少し金属部分がくすんでしまっているが、美しい装飾のブレスレットだ。マクレガー伯爵はブレスレットを見た瞬間目を見開いた。
「その方をすぐ応接間にお通ししろ! 不手際があってはならないぞ! 私も身なりを整えすぐ行く」
マクレガー伯爵は執事に厳しく指示し、朝食室を飛び出していく。後を追うようにベンも機敏に去っていく。
「…賓客なのかな? でも先触れもなかったよね」
フレデリックがのんびり言う。
「探し人関連かしらね」
「母上、探し人とは?」
ジュリエッタは近くのメイドに皿を下げるよう指示してから息子たちが知らなかった事実を明かした。
しかし彼女の身なりは裕福な暮らし向きだったとは考えにくい。
朝食を摂りながら、ローヴァンはふとそんなことを考えた。
今日は職務が休みなので久々に昨夜のうちから実家に帰ってきたのだ。
ローヴァン・ランシアは伯爵家の次男で、現在魔物退治を主とする第5騎士団に身を置いている。
家は長兄が継ぐので、最終的には近衛になって生計を立てたいと考えていた。
緩くウェーブ掛かった銀髪は、明るすぎて夜間の任務に差し支えることがあるので、魔法で砂色に染めていることが多かった。
「今日は休みなのだから髪色くらい戻したらよいのに」
苦笑する父マクレガー・ランシア伯爵は40過ぎても若々しく、女性トラブルが多かったという美貌も渋さが加わり、交渉相手を魅了しているようだ。
父に似て整った顔立ちの長兄のフレデリックも伯爵を継ぐことが確定していることもあり、未婚の妙齢の女性たちに人気の物件である。
かく言うローヴァンも端麗な見た目、騎士という華やかそうな職業なので言い寄る女性も多い。
しかし魔獣退治で何カ月も王都を離れ、場所柄相手に便りを送ることも出来ないので、浮気されたと勘違いされることもしばしば…特定の相手とは長続きしないので近年は恋人を作らないでいた。
「そうですよ。せっかくお父様譲りの美しい銀髪なのだから」
と母・ジュリエッタの声。声の調子から咎めているのではなく、軽口のようだ。
「長い休暇なら戻しますよ。…けっこう便利ですよ? 冴えない色のせいか多少は女避けになって」
ランシア伯爵家は海運業で大きな成功と領地を治めていることもあり、貴族なのに結婚に関しては当主の考えが大らかで融通が利く。
海賊上がりであまり血筋を尊ばないし(血筋重視の貴族からは敬遠されているし)コネを必要としないので婚約者もなく、好き合う相手と結婚すれば良いとのことだった。
とは言え、美丈夫の父を見初めた母は、元王女だ。
当時の国王は一つの国としてやっていけそうな伯爵領を、王国に繋ぎとめるために娘を強引に押し付けたのだ。
それでも父はまんざらでもないようなのでわりと円満な夫婦なのだが。
この砂色の髪は顔が映えないようで、街行く人の目線を集めにくく、重宝しているのだ。
最後の一欠片のパンでさらに残ったソースを拭い、口に入れる。
席を立とうとしたところ、慌てた様子で執事のベンが入ってきた。
「旦那様、お食事の所失礼します。屋敷の門の所に現れた人物がこれを持ってきまして…。」
ベンは声を潜めているが、全員押し黙っているのでよく聞こえてしまう。
少し金属部分がくすんでしまっているが、美しい装飾のブレスレットだ。マクレガー伯爵はブレスレットを見た瞬間目を見開いた。
「その方をすぐ応接間にお通ししろ! 不手際があってはならないぞ! 私も身なりを整えすぐ行く」
マクレガー伯爵は執事に厳しく指示し、朝食室を飛び出していく。後を追うようにベンも機敏に去っていく。
「…賓客なのかな? でも先触れもなかったよね」
フレデリックがのんびり言う。
「探し人関連かしらね」
「母上、探し人とは?」
ジュリエッタは近くのメイドに皿を下げるよう指示してから息子たちが知らなかった事実を明かした。
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