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第34話 夢から溢れた黒
しおりを挟む流れてきた音楽と共に、自然と身体が動く。
求めるものは唯一つ。
欲が欲しい、ねえ、ちょうだい。
俺の、すべてを欲塗りつぶして
心の底から溢れ出る気持ちを、このダンスにぶつけた。黒い長い髪がふわりふわりと、動いていく。
「ハイカット! OK! 確認!」
踊りきった俺に聞こえてきたノウル監督の声は、明らかに高調したもの。
そして、このテイクでダンス撮影を終えることができた。
その日の夜、俺はコテージに泊まる。部屋にはジノ兄さん、ノウル監督、ドユンさん、ヨンスンさんがいた。
「最終日だね、明日には皆元の生活か、ねぇ、寂しいねシグレ」
「ぁあッ! さ、ぅびッ、しィ、れ! ……ぅん、ンン!!」
少し寂しそうなジノ兄さんの膝の上で、ジノ兄さんに背中を向けるように座っている。
そして、下腹の中にはずっぷりと凶器が占拠していた。そうとは微塵も感じさせないように、涼しい顔したジノ兄さん。しかし、その手は容赦なく腰を掴み、激しく俺の体を上下してくる。奥を突かれる度に長い髪がふわふわと体を撫でる。
「ほんとね、けど、こんな最終日最高だよね」
「いぃッ、ぎィッ! ……だぁ……アぁ、お、奥うぅう!」
ユドンさんも俺と同じようにノウル監督の上で、貫かれているが、ユドンさんの乳首や男性器にはクリップと、それに繋がる重り、そしてコックリングというものを着けられている。
どうやら、俺のことを助けたから、お仕置きとノウル監督は言っていた。
「シグレ、余所見はだめだよ」
ジノ兄さんは、一番深部までドスッと突く。俺は背中を仰け反らせた、
「ンッッ!? ご、ごォ、めぇ……っンあ、さぁ……いッ!」
びゅーっ、と自分のアソコから精液なのか何なのかが飛び散る。すでに目の前机の上は俺のせいでびちゃびちゃだ。
「ほんと、シグレ頑張ったね、お疲れ様」
ジノ兄さんはぐずぐずに甘やかす言葉を俺に掛けながら、こんなことするから酷い人だ。
そして、その様子をヨンスンさんは食い入るように見ている。ヨンスンさんは色々あってセックスは出来ないが、こうやって見るのが好きらしい。
「すごい、こんな若いのに……」
時節ヨンスンさんの独り言が聞こえるけれど、それに構う余裕は俺にはない。
体位を変えてエッチをし、気づけば机の上でユドンさんとシックスナインという体位をしながら、それぞれに犯される。一度だけノウル監督のも挿れられ、ユドンさんもその時はジノ兄さんに犯されていた。
あまりにも刺激の強いセックス。
アイドルなら絶対にしてはいけない。
けど、これがアイドルとして成功するためなら、俺はそれでいいし、なにより、この状況に興奮する自分がいる。
本当にあの時、セファン兄さんに声を掛けてもらえて良かった。
ジノ兄さんにもう何度目かわからないキスをされながら、あの時の真っ白な自分を思い出して、そのまま眠るように気を失った。
コテージから宿舎へ帰宅する。正直、マネージャーが迎えに来るギリギリまで、セックスをしていたせいで、体はクタクタでバンの中ではぐっすり眠っていた。
夜明けギリギリに出発をし、また数時間かけて宿舎の前まで帰ってきたのだ。
バンから重い腰を上げて降りると、また宿舎の前で数人の女の子が立っており、そのうちの一人はとても見たことある子がいた。
「あ、シグくん!」
それはいつかの俺のマスターを宣言した子だった。
たしかに、前回もこの位の時間に帰宅したが、今回は事務所のバン。マネージャーもいる。
マネージャーはその子を含む女の子たちを見ると、険しい表情で見つめた。
「宿舎来るのは、禁止事項ですよ」
マネージャーの言葉に女の子たちは不満そうに顔を歪める。これはお互いに不利益がある雰囲気だと、思ったので俺は口を開いた。
「こんな場所で女の子達だけで待ってるのは危ないよ。この前、大きな事件もあったから気をつけてね、すぐに会える場所を作るから、それまではSNSで会おうね」
俺がそう言うと、女の子達は「はーい」と返事をしてくれて、ゆるゆると退去していく。そのうち、俺のマスターもこっちを見てキラキラした目で俺を見ると、大きく手を降って他の女の子たちと去っていった。
その様子を見たマネージャーは、「ほんと、甘い」と俺に言い捨てるように言うと、バンに乗り込んでいく。多分この後会社に行くのだろう。
俺は、一人荷物を持って、宿舎へと戻っていった。
宿舎の扉の前に立つと、思えば今は正直殆ど知らない子が三人と久々に暮らす人が一人増えた状態だということを思い出す。
そんな状態で、部屋は大丈夫なのだろうか。
もしかしたら、宿舎がもうどうにもならない状況な場合もある。今日は撮影オフではあるが、明日からは宿舎での撮影の方に合流する。
現実から目を背けても、どうせ直視するハメになる。
そういうことは遅くなっても、良いことはない。
心の中でどうにか言い聞かせて、頭に過ぎる一抹の不安を抱えて、扉を開ける
そこにはあの日出ていった時よりも、綺麗な宿舎がそこにあった。
「ただいま……」
呆気に取られながら、玄関から部屋を眺める。通る道に脱ぎ捨てられた服どころか無駄なモノが一つもない。
それは、リビングでも同じだし、服も綺麗にラックに収納されている。
そして、リビングに行くと、ヒュイルとピョユンソルくんがお互いテーブルを挟んで睨めっこしていた。
「ただいま」
そう俺が声をかけると、ヒュイルはゆっくり俺の方を向き、そして、次の瞬間、ヒュイルが俺に抱きついてきた。
「シグ兄!!!! おかえり!!!!」
「えっ? え、どしたの?」
「貴方がシグレさんですね、すみません、本当に帰りを待っていました」
状況が読めない俺は呆気に取られていると、他の部屋からもメンバーが出てきて、ソンジュンたちは大喜び。あのダウンくんすらも「遅いぞ!!!」と俺の帰りを待っていたかのような発言。
い、一体なにがあったんだ?
俺はただただ、呆気に取られるしかなかった。
そして、話を聞いてさらに脱力してしまった。
なんと、俺がいない間、このメンバーで家事をすることを課せられたのだ。
何故、そんな自体になったかというと、俺が居ない時の宿舎があまりにも汚いのと、ご飯もまた我儘放題なところがあるから。
マネージャーによる『基本的な家事ぐらい出来るようになろう』という課題を出されたらしい。
しかも、この一日の家事の出来具合によって、支給される食材のグレードが変わるらしい。
しかも、食材なためこの一週間、練習の合間に料理をすることも課せられていたらしく、それぞれの課題に沿ったものを熟しながら、家事すべてを行っていたようだ。
「シグ兄がこまめに掃除したり、常備菜作ってた理由わかったわ」
比較的綺麗好きで何でも食べれるハオランがそういうのだから、相当堪えたようだ。
「おにぎり、簡単だと思ってた」
ジウもそう言って、落ち込んでいるし、その隣のダウンは「まじで米って水加減間違えると芯残ったりするんだな」と厭味ったらしく言っている。
皆もこの一週間を思い出しては、余程疲れた表情をしている。
「じゃあ、今日は俺がご飯作るね」
そんな皆に対し、俺はそうやって言うしか道がないことを感じた。
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