悪の献身 〜アイドルを夢見る少年は、優しい大人に囲まれて今日も頑張ります〜

木曜日午前

文字の大きさ
上 下
22 / 58

第23話 夢を見る前

しおりを挟む
念入りに俺を見るその目に、どう反応すべきかと迷い、そのせいかされるがままだ。
 
「ふぅん」
 
 やっと手が離れた後、お兄さんはぎゅっと俺を抱きしめる。服からは汗と強めのスパイシーな香水の匂いがした。
 
「あ、俺は、ユン・ノウル。ああああ、それにしても、可愛い子癒やされるぅ」
 
 ぎゅっと抱きしめられたまま、持ち上げられて、そのままベッドに連れてかれる。そして、そのまま二人でベッドに倒れ込んだ。
 
「まじ、やっと、あのクソどもに協力した甲斐あったわぁ」
 
 ぎゅうっと抱きしめてくるので、その背中をとんとんと撫でてあげると、更にきゅうっと丸まるように抱きしめてきた。
 
「いやぁ、ほんと、シグレちゃん、お兄さんとたのしい遊びしような」
「は、はあ」
 
 そう言ったまま、お兄さんは俺を抱きしめ、俺の首元に顔を埋めたまま息を吸い続けている。それを邪魔するのもなと、俺はただただ背中を撫でてて、子供のようにをあやしつづけた。
 
 なんとなくだが、自分が小学生の頃を思い出す。
 自分よりも小さい子たちや、甘えん坊な同級生たちをよくこうやってあやしていた。
 もちろん最初からそういう役割だったわけではない。
 自分の記憶の始まりは、小学校一年生。児童養護施設で、プリンを食べていたのだ。安くて、小さい、プリン。それを他の子供たちと食べていた。
 こんなに、甘くて、美味しいものを、食べていいのかな。と子供ながら思いつつ、誰にも奪われないように身を縮めて食べていたくらい。人の事を信用できなかった。
 
 けど、他の子供たちと過ごすうちに、変わらなきゃと思った俺は、自分の居場所を求め始めたのだ。
 そこで見つけたのが、率先してお手伝いをしたり、話を聞いてあげる役目。
 小さい子たちには、母親のようにお世話をしてあげて、同い年の子たちや上の子たちには話し役になって、どうにか居場所にしがみついていた。それを、今の親元に行くまで続けていた。
 
 よく考えれば、今もあまり変わりないなあと思う。お兄さんの痛みきった髪の毛を撫でてると、ふとお兄さんが顔を上げてきた。
 
「シグレちゃんはさ、思えばMV作りたいんだよね?」
 
 その問いかけに、俺は目を見開く。
 
「はい、作りたいです」
 
 ほぼ間髪入れず即答する俺。お兄さんは楽しそうに笑う。
 
「じゃあ、お兄さんに任せておいてよ、俺こう見ても映像系の会社の社長なんだー。大丈夫、予算もね、上手く落とし所は見つけてるし、はあ、ほんと毎度こうならいいのに。まあでも、今回は本当にいいマッチングだったと思うんだよね、俺とシグレちゃん」
 
 思ったよりもおしゃべりなお兄さんに、俺は目をパチクリしつつ、その顔を見つめる。
 
「そうだと嬉しいです」
「そうだよそうだよ! あ、勿論、安心してよ、嘘ついたらセファンに怒られるしね。だからさ、シグレちゃんも協力してくれるよね?」
 
「……はい、勿論です。よろしくおねがいします」
 
 またぎゅうっと抱きしめながら、俺の首をべろりと舐める。熱くぬったりとした舌の感触。しかも、その舌には鉄の玉のようなものが着いているのか、小さくて固い球体が喉の筋をなぞる。
 その舌はゆったりと上に向かい、喉から耳へ、耳から頬へと舐めあげていく。
 舌が頬から目の周りを舐める。ぬちゃりぬちゃりと唾液が滴り、俺は慌てて目を閉じた。
 
「流石に眼球は舐めちゃだめか」 
 
 不穏な言葉、更に力強く目を瞑ると、舌が目尻から涙袋、目頭、瞼をぐるりと回るように舐めていく。そこから眉の毛を一本一本撫でるように舌で小刻みに舐める。
 その舌は大きな額をべろりと舐め、逆側へと。
 
 眉を、目を、頬を、鼻を。
 すべてを唾液で覆い尽くす。鼻先は唇で甘噛みされ、その舌は、鼻から唇へと。
 どろどろとした唾液は乾く前に、重力に従うまま肌をつたい、下に落ちていく。
 
 お兄さんの舌は自分の唇を割り、ぬるりとした感触が歯を撫でる。
 
 すでに唾液の乾いた臭いが鼻につくが、そこまで辛くない。正直、この前の乳首イジメのが辛かったと思う。そんなことを思いながら、キスをしていると、お兄さんの手によってバスローブの前が開けた。
 さわさわと自分の体を撫でる手、最初は横腹を撫でる。そのこそばゆい感覚に身をよじる。次に腹。おへその下あたりを優しく何度も押した。何をしているのかと思っていると、その手は臍を撫で、助骨の下あたりを触る。
 
「んんっ……」
 
 そんなところを触るとは思わず声を出すと、お兄さんは一度唇を離した。
 
「舌出して」
 
 そのお願いに、俺は小さく頷くと舌を突きだす。お兄さんも自分の舌を俺に見せつけてきた。
 舌の先端よりの中央に輝く銀色の玉。生で見るのは初めての、舌ピアスというものだ。
 そのお兄さんの舌の先端が、俺の舌の先端をちろちろと舐め始める。その動きが面白くて、俺も真似をすると、次第にお互いの動きが激しく、絡みつくように舌を動かし、深い深いキスへと繋がる。それに伴うように、手の動きも大きく大胆に、ゆったりと撫で、俺の絆創膏で抑えた敏感な乳首を何度も掌で撫でる。思わず目を見開いた。
 
「ぁあっ……んぅ……」
 
 漏れ出た甘ったるい声。お兄さんは顔を離すと、キレイな顔を歪めて、意地悪そうに笑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!

toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」 「すいません……」 ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪ 一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。 作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

婚約者に会いに行ったらば

龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。 そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。 ショックでその場を逃げ出したミシェルは―― 何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。 そこには何やら事件も絡んできて? 傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

処理中です...