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第13話 夢にみたもの
しおりを挟む二週間後、早速という形でネット局に打ち合わせに向かった。
先に渡されていた資料に目を通すと、どうやら自分たちの暮らしと、貧乏だからこその手作りでのデビューMV撮影を通して、色んなミッションに挑戦するというものだ。
ミッションもまた色々あり、遊園地でミニペンミをしたり、アルバム写真のための衣装作成をするらしい。
マネージャーから渡された資料を見ながら、ワクワクと胸を高鳴らせる。
なによりも、これがジノ兄さんのおかげなのだから、より一層気合を入れなければならないと思ったのだ。
他のメンバーもかなり楽しみにしているらしく、普段クールなヒュイルも念入りに服を用意するくらいに浮足立っていた。
実際に局についてからの、担当のプロデューサーさんやディレクターさんとの話し合いも実にスムーズで、本当に「貧乏事務所からの大型新人」として番組を打ち出してくれることになった。
タイトルは「金がなくても夢がある!」というタイトル。ちょっとキャッチーなタイトルで、たしかに何だ何だ? となる番組だ。
ソンジュンは「まさか、貧乏が売りになるとはな」と呆れ気味ではあったが、少しでも注目されることが大事なのだから諦めてほしい。
その中でジウはその資料をまじまじ見た後、声を上げて笑った。
「ハハッ、俺達らしいと思います、この事務所に金もコネもないけど、自由と夢と責任はあるし、俺それでここに決めたし」
まさに強者の発言で、流石ジウだなとその姿を目に焼き付ける。選択肢がなかった俺とは違い、選択肢があった上でうちの事務所にしたカリスマ性しかない男だ。
「ジウの言う通りです。それに、皆がいますから、夢は詰まってます」
そう俺が言葉を続けると、他のメンバーたちも自信に満ち溢れた顔で頷く。皆を見ても思う、やはり貪欲に上に進まなければいけないと改めて感じた。
そんな感じで、一回目の打ち合わせを終えると、マネージャーに俺だけ呼ばれた。どうやら、少し先のスケジュールにはなるが日本人の子が集まって出る予定の番組があるらしく、プロデューサーに顔合わせをしてほしいとのこと。
勿論、断る理由もないので、宿舎に帰るメンバーと別れ、マネージャーと共に別室に向かった。
そして、別室を開けると、そこにはジノ兄さんが椅子に座っていた。
「こんにちはです。ジノ兄さん」
「やあ、シグレ。さあこっちにおいで」
あまりにも嬉しくて、言われたとおりに近寄る。
「この前はお土産ありがとうございます! 大切にしますね?」
「いやいや、気に入ってもらえて嬉しいよ。それにしても番組決定おめでとう。局内でも『ラニュイ』の関心度が高くてね。最近はマイナー事務所のアイドルが流行ってるから、うちで一つお抱え作ってもいいかなって思ってたんだよ」
そう笑うジノ兄さんは、俺の喉の付け根に手を触れながら話す。指の細かく撫でる動きに、ぞくりと身体を震わせる。
「嬉しいです……頑張ります!」
俺はついついエッチな事を思い出しそうになる脳内を振り払い、今回のお礼を言う。お土産として直接的な言葉を伏せたのは、多分そうした方がいいかなって思ってるから。実際に、貰ったスマートフォンは大事に使っている。今までのは本当に最低限の機能しかないものだったから、貰ったのは持て余しているが。
「そう、呼び出したのは聞いてるよね? 特番やるんだよ」
「日本人の集まる番組もするんですか?」
「ああ、日本向けの番組でね、他の韓国で活躍する日本人アイドルの子たちも出るよ。少し先にはなるんだけど、シグレももちろん出てくれるよね?」
「もちろんです。嬉しいです」
そのお誘いは純粋に嬉しいもので、実際に日本人の友達が一人もいない俺には、願ってもいないチャンスだ。
「そう、シグレ、この後、ご飯行こうよ。今日私も上がれるからさ」
「マネージャー判断は必要ですが、是非行きましょう」
「勿論」
ジノ兄さんの前で、マネージャーに連絡すると、すぐさま「問題ないが一泊まで」と返信が来た。その返信を当たり前のようにジノ兄さんは、覗き込んで見ていた。
「一泊までか……まあ、大事なアイドルだからね、わかってるよ。じゃあ、いい店あるから俺の車で行こうか」
「はい! たのしみです!」
そう言ってジノ兄さんに連れてかれた場所は、とある和風の小料理屋さん。見た目からして高そうなお店で、思わず恐縮してしまう。けれど、ジノ兄さんに言われるまま、そのお店に入っていく。
エレベーターに乗り、着いた階の奥の部屋へと通された。
「どう、シグレ恥ずかしい?」
「はい、恥ずかしいです……」
部屋について、俺はジノ兄さんの指示に従って目と鼻を覆う白いレザーマスクを着けた。身体は全部白で統一された、レースのコルセットと、フリルだらけの透けている女性用パンツ、長いレース手袋と、エナメルのハイヒールを履いている。
乳首は露出し、自分の膨らみは辛うじてパンツの中に収まっているだけ。しかも殆ど隠れていない。
ジノ兄さんは楽しそうにオペラマスクを着けており、その手には、白くてデザインだけは可愛い革の手枷が握られている。
なによりも、この部屋はよくわからないものが多かった。バーカウンターらしきものがあり、カウンター以外もテーブルがいくつか置かれていた。下の小料理屋とは雰囲気が違いすぎるのだ。
しかもなぜかこの服も用意されており、この前自分を縛った縄も色違いや太さ違いでたくさん用意されており、壁に陳列されていた。また、縄だけではなく、長い鞭と、乗馬鞭、布ハタキのような複数の革がまとめられた鞭みたいな何かもある。
「ご飯もそろそろ来るからね。ご飯は下のお店で作ってるから美味しいぞ」
ジノ兄さんはそんなことを言いながら俺の腕に手枷を着けた。
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