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第一話
しおりを挟む不景気な世界、不満あふれるこの世界、娯楽に逃げなければ生きていけない世界。
そんな世界で、全世界の音楽チャートを揺るがすアイドルグループが日本から現れた。
大きな横浜にあるアリーナ会場。
「さあ次の曲は、『ヒールフォーミー』!」
「「「キャー!!!」」」
アイドルの一人が何万人の観客に向かって叫ぶ。それに合わせて、わぁっと湧く観客たち。暗転した世界で、満月を模したペンライトが黄色く輝く。
その中、白と、パステルのタイダイ柄が貴重になったサマールックな衣装を身にまとった男たち。華麗に舞い、踊り、盛り上げる。
彼らの名前は、『グロウルズ』。七人組の日本人アイドルグループだ。
デビュー二年目に出した彼らの曲『ハウリング』が、若者のたちの目に止まり、大流行。
さらには、メンバーの一人の美貌が、「今年一番美しい男性ランキング」の一位をかっ攫っていき、音楽以外でも話題を独占した。
他のメンバーも一人一人が個性豊かで、各メディアを制覇していく。
そして、このグループの核と呼ばれ、楽曲のプロデュースを全てこなしている男がいた。
とある商業会館にて。
「はあ? オレが可愛くない? 当たり前ですよ、可愛いで売ってないんで」
不機嫌そうに離す男性は、男性にしては少し小柄の体躯で、一重の塩顔というアイドルでは珍しい顔立ち。
彼の名前は、芝井虎丸。
そして、先程の言葉は、グループサイン会にて、彼が眼の前にいた自分たちのファンに放ったものだ。
しかも、まだ十八歳の少年である彼が、既に二十半ばの女性のファンに対して。
返された女性は唖然と少年の顔を見つめる。しかし、少年は意図も返さず、女性にサインしたアルバムを返した。
「じゃ、ありがとうございました、隣へどーぞ」
「あ、ありがとうございます」
撃沈した女性は、隣の席へと移動していく。
すると、他のメンバーが彼女へと優しく声を掛ける。茫然自失していた彼女も少しずつ元気を取り戻していた。
何かあっても隣のメンバーがフォローしてくれる。
アイドルたちが横並びに座り、対面するようにファンたちが時間区切りで横へと流れていく、ベルトコンベア式サイン会の利点だろう。
勿論、虎丸の前にもまた一人ファンが腰を掛ける。そのファンはデビュー前から虎丸のファンをしている、言わば古参と呼ばれる少女だった。
「相変わらず、マルちゃんだねぇ」
「何が?」
「もう何度も言われてる有り難い忠告、バッサリ切っちゃうんだもん」
「別に。質問されたから答えただけだし」
先程の女性としては、「もっと可愛いくした方がチーム内で人気出るよ」と親切心の空回りからのアドバイス。しかし、そもそもこのグループのコンセプトから何からをプロデュースしてるのは彼なのだ。
虎丸も長い間応援してくれる彼女には気を許してるのか、口角を少し上げて笑う。
「まあ、私としたらマルちゃんは優しさの塊なんだけどねぇ」
「わかってんじゃん。だろ、崇めろよ」
「そういうとこよね~」
ケラケラ友人同士のように笑い合う最中、そんな二人をじっと見つめる男がいた。
虎丸から二つ隣に座る彼。
黒く艷やかな髪、憂いを帯びた目、薄い唇、すうっと通った鼻筋。なによりも神が配置した美しくバランスの取れた配置。
精巧な芸術品である彼の横顔を見て、誰もが胸を高鳴らすだろう。
その男こそ、このグループで一番人気を誇り、グループの玄関と呼ばれているメンバー。
世界一美しい男として名を馳せる百々屋 千歳十九歳。
「千歳くん……?」
「あ、ごめんごめん」
ファンに呼ばれて、千歳は前を向いた。女性は千歳の美しい顔を見て、顔をぽおっと赤く染める。その女性は先程、虎丸に無用なアドバイスをしていた人だ。
「さっきは、虎丸くんがごめんね」
にっこりと笑顔を貼り付けた千歳は、彼女の手を握って、念押しをするように口を開いた。
その日の夜。
虎丸の作業室、実質彼が今住んでいる会社の部屋。仮眠用のシングルサイズマットレスの上。
ぱちゅんッ、ぱちゅんッ
「はあ、んっ、お前飽きねぇの?」
「あぎなぁいっぇ、す! ぁ、ん、とらぁの、いっぱいほちぃ♡ぁっ、あっ♡」
寝ていただろう虎丸のズボンを脱がし、疲れで逆に反り立つ肉棒を下の肉で咥えているのは、そうあの千歳だ。
騎乗位でじゅぷじゅぷと音を立て、腰を激しく動かしている千歳。しかも、虎丸を汚さないようにと、千歳自身のには、ほぼフラットな男性用貞操帯で抑えている。
虎丸はもう慣れたかのように見上げていた。
「千歳、俺、レコーディングしたいんだけど」
「ふぇっあっ、あ、わがっだぁんんっ♡」
千歳はすぐに自分の中から虎丸のぬぷぷっと出していく。中から出てきた虎丸のには、ちゃんとピンク色の透けたコンドームも装着されているが、それはすべて千歳自らが行ったことだった。
「はあっ、はぁん♡虎くん、生で舐めていいですか?」
「好きにして、俺デモテープ作らなきゃだし」
冷たく言い放つ虎丸に、千歳は下半身を思わずキュンキュンさせる。昔の彼なら嬉しくて小水をしてしまってただろう。けれど、今は彼の使わない肉棒には深々とシリコンチューブが刺さり、小水を堰き止めていた。
二十万ほどするゲーミングチェアに座った虎丸は、パソコンに向き合う。千歳は慣れたようにデスクの下に潜り込む。
そして、虎丸の足を肩に掛けるように股ぐらの間に入った。そして、着けられていたコンドームを外し、戸惑いなく口に含む。
「んちゅんっ♡んっ、んっ♡」
ぺちゃっ、じゅぷっ、ぐちゅっ
唾液で満たされた千歳の口腔内は暖かく、唇によって歯先もガードされているため、ただ心地よい快感だけがある。卑猥な水音を立てるが、虎丸
相当異様な光景。
虎丸にとっては、自動オナホと足置きがあるような感じだ。
作った曲をリラックスした気持ちで聞く。美しい子守唄のような曲。アルバムに入れる曲だが、この曲を寝るときにまで聞いてくれたらいい。
寝る前に聴きたくなる曲は、まさに生活に入り込むには最適だろう。
「んっ……はぁ」
虎丸の口から喘ぎが漏れたと同時に、どぷりっと欲の塊が千歳の口へと放たれた。
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