星降る世界の龍仙師

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闇夜の咆哮編

2話 南部屯所にて

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 龍髭国南部の屯所。南部らしく極彩色に彩られたやぐらが見える。
 そのやぐらの上で、青い長い髪を荒れ狂う風になびかせている男がいた。

「おお! リュウユウ、ジョウシェン! 無事に帰ってきたか!」

 風を切る轟音の中で、よく聞こえる・・・・・・声。彼はずっと変わらず、龍髭深衣と呼ばれる龍の髭を柄とした着物を大袖衫はおりとして着ている。
 二匹の龍は大きな蔦籠を掴み、そのやぐらへと向かって、更に速度を上げた。

「ルオ、ただいま!」
「ルオ様、おまたせして申し訳ございません」

 それぞれの龍からやぐらへと飛び降りる僕たちに、ルオは駆け寄ってきた。相変わらずの眉目秀麗作りの良い顔立ちは、何度見てもかっこいいなと思う。だからこそ、左の頭から黄金に輝く枝のような角と左目が金色の目が、なんとも言えぬ異様さを放っていた。

「ルオ様! また、仙力を具現化しようとしましたね!  今朝はなかった鱗が目の下に!」
 ジョウシェンは慌てて、ルオの目の下に触れる。そこには微かに透明な鱗のようなものが生えていた。

「すまぬすまぬ、つい、な」
 今にも泣き出しそうな声で叫ぶジョウシェンに、留守番をしていたルオはあっけらかんと軽く謝った。リュウユウはその声から心から反省していないだろうと思った。

 誰よりも先に龍を生める素質を持っていた彼は、現在「龍化りゅうか」という龍仙師の中でも珍しい状況下に置かれていた。

「まあ、どうせ、私の目を使うのだから構わぬだろう。どれ、見てやろう・・・・・

 ルオはそう言うと、トゥファとティエクァンが持つジッと蔦籠を、金色の瞳で見つめる。瞳孔どうこうが縦に長細くなり、ルオの仙力がその目に集まるのがわかる。
 この目は、ルオが龍化した時に偶然手に入れた力。真実を見れるという「龍の瞳」。
 そもそも龍化は、龍仙師が龍を生む際、何かしらの手違いで龍と身体が融合してしまい、その部分に産むはずだった龍の力が宿る。何よりも厄介なのは、その龍の力を使う度に、ルオの人間性は失われ、龍へと変わっていくのだ。

「いるな。ただ、この者自体は悪意も何もない。霊たちもこの者を庇うように守っておる」
 ただ、ルオは龍化を恐れず、力を使っていく。ちらりと横を見ると、彼の目の下にはまた新たな鱗が生まれていた。

「私達を昔襲ったのにですか?」
「もしかしたら、錯乱してたのかも。何せ、国を侵攻されて逃げてたんだよね」
 何かを見たルオの言葉に、ジョウシェンが確認する。たしかに、彼は自分たちを襲った人だろう。しかし、僕は一度追われた事があるからわかるが、追われている時は脳内が混乱してもおかしくはない。

 それに以前、が蹄鉄連合国・緋天国の女王にそれとなく尋ねた所、「黒鳶国という国はない」と言われたそう。
 あったはずの国がない。暗に近くの国に侵攻されたという事を言ってきたのだ。母国がなくなった混乱による凶行があってもおかしくはない。

「詳細はわからないが、とりあえず、総帥は呼んだので近々くるだろう。リュウユウ、蔦でこの者を無力化はしておいてくれ。場所は教える」
「もし、ルオの言葉が正しいなら、可哀想だけど。仕方ないよね」

 僕は鞭を取り出し、鞭を籠に向けて振るった。すると鞭先は、蔦が伸びるようにするすると伸びていく。籠の中へと伸びていった鞭、横にいたルオが瞳に力を宿して、その鞭と籠の中を見る。

「リュウユウ、右斜め下へ、そこで止まって奥へ真っすぐ、そこだ。よし」
「ああ、これね。籠の上へと引きずり出すよ」
 がちゃがちゃとした骸骨やら木やらを掻き分けた先にある、なにか柔らかいもの。鞭の感触で、今一番話を聞きたい人だろう。

「よいしょっ!」

 籠の中から、鞭を巻き付けたそれ・・を一気に引きずり出した。
 
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