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xx話 戦時を翔ける龍
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「敵は、蹄鉄連合国、緋天国!!!」
武将の一人が大声で叫ぶ。それは、空の彼方で聴いている僕たちは、その様子を仙師の一人が生み出した水鏡で見ていた。
龍髭国の西側の荒野にある国だ。二つの軍が国境線で睨み合っていた。僕たち龍髭国と対峙するのは、侵略してきた緋天国。彼らの一番後ろには、緋天国の若き女王が甲冑を着て、戦場に立っていた。
「約束を反故にした龍髭国、お前たちに鉄槌を!」
女王の声が響いた。それに追随する兵たちの声が段々と段々と大きくなる。それをじっとすごい形相で見つめるのは、一般武官と錦衣衛たちだ。
「約束なんて破ってないのに」
水鏡を覗いていた姫が自分の龍の上で、信じられないものを見るかのように、震えながら目を離せずにいた。
たしか、この女王は姫にとても可愛がられていたはずだ。
天に浮かぶは様々な色・形をした龍十数匹。その上には龍を操りし、龍とともに生きる仙師、龍仙師たちが居る。
仙師というのは、修行をしたことで仙術という不思議な力を使える仙人のこと。そして、龍髭国では龍と共に戦う仙師たちを、龍仙師と読んでいた。
僕もまた、自分の龍の上に立ち、いつでもこの戦いを止められるようにその時を待っていた。睨み合い、睨み合い、そして、一人の緋天国の兵士が特攻をする。それを合図に兵たちが戦闘を開始した。
「リュウユウ、行ってこい、お前の力で全員の動きを封じろ。他の奴らもリュウユウに続け」
「はい!」
総督が僕に指示を出す。たしかに、足止めするなら僕が一番最適だろう。なにせ、足場は土でできている。
「任務遂行します!トゥファ行くよ!」
僕の声掛けに、乗っていた緑の龍が「キュイイッ!」と可愛く鳴き、地面に向けて垂直に落ち始めた。目的地は戦場の中心。そこにめがけて、自分の仙力を鳩尾辺りにぐっと溜め始める。兵たちの一人が僕と龍に気づいたのか、目を見開き叫んだ。
「龍仙師だ!!!!避けろ!!!!」
そして、印を指で組み、その意味を一つ一つ積み上げていく。次第に龍の鼻先が地面にぶつかる瞬間、練り上げた技を地面に向けて放った。
「はあっ!!!!」
龍と共に仙力が波紋のように広がっていくのが、土の盛り上がりでわかる。そして、荒野に少し残っていた生命の息吹が強力な力となって、両方の兵士たちの周りに現れた。
「蔦が!足に!!!」
「土に引き込まれる!!」
「草のせいで、何も見えない!」
「こんなデカい食虫植物見たことない!」
「木が!!!くそ!!!!降りれない!!!」
兵士たちの叫び声が木霊する。足止めするなら、僕の仙力が一番いいだろう。荒野が一瞬にして、恐ろしい魔の森となる。僕もまた、その中心に、生えた木に押し戻され、大きく伸びた木の上で息絶え絶えの状態だ。
他の龍仙師たちは、総督の指示があるまで動けないだろう。
どうしよう。仙力使い切ったから、龍を呼ぶにも難しい。少しばかりしくじった自分に嫌気がさす。もう少し使い方が上手くなれたらいいのにと思う。
その時、ふと遠くから見たことあるものが見えた。それは、美しい夜空の空飛ぶ絨毯だ。
「リュウユウ!どこだ!リュウユウ!」
僕の名前を呼ぶその人は、美しい白い布の服を着て、俺に向かって飛んでくる。
「セイッ!」
名前を呼び返せば、セイはこちらに気づいたのか、風を切る速さで僕の元に飛んでくる。それを見た瞬間、身体ぐらりと揺れ、僕は枝から身体が傾き、するりと背中から倒れる。
しまった。
人は死ぬ時は、走馬灯を浮かべてしまうようだ。
僕は昔は昔、すべての始まりから、頭を駆け巡った。
武将の一人が大声で叫ぶ。それは、空の彼方で聴いている僕たちは、その様子を仙師の一人が生み出した水鏡で見ていた。
龍髭国の西側の荒野にある国だ。二つの軍が国境線で睨み合っていた。僕たち龍髭国と対峙するのは、侵略してきた緋天国。彼らの一番後ろには、緋天国の若き女王が甲冑を着て、戦場に立っていた。
「約束を反故にした龍髭国、お前たちに鉄槌を!」
女王の声が響いた。それに追随する兵たちの声が段々と段々と大きくなる。それをじっとすごい形相で見つめるのは、一般武官と錦衣衛たちだ。
「約束なんて破ってないのに」
水鏡を覗いていた姫が自分の龍の上で、信じられないものを見るかのように、震えながら目を離せずにいた。
たしか、この女王は姫にとても可愛がられていたはずだ。
天に浮かぶは様々な色・形をした龍十数匹。その上には龍を操りし、龍とともに生きる仙師、龍仙師たちが居る。
仙師というのは、修行をしたことで仙術という不思議な力を使える仙人のこと。そして、龍髭国では龍と共に戦う仙師たちを、龍仙師と読んでいた。
僕もまた、自分の龍の上に立ち、いつでもこの戦いを止められるようにその時を待っていた。睨み合い、睨み合い、そして、一人の緋天国の兵士が特攻をする。それを合図に兵たちが戦闘を開始した。
「リュウユウ、行ってこい、お前の力で全員の動きを封じろ。他の奴らもリュウユウに続け」
「はい!」
総督が僕に指示を出す。たしかに、足止めするなら僕が一番最適だろう。なにせ、足場は土でできている。
「任務遂行します!トゥファ行くよ!」
僕の声掛けに、乗っていた緑の龍が「キュイイッ!」と可愛く鳴き、地面に向けて垂直に落ち始めた。目的地は戦場の中心。そこにめがけて、自分の仙力を鳩尾辺りにぐっと溜め始める。兵たちの一人が僕と龍に気づいたのか、目を見開き叫んだ。
「龍仙師だ!!!!避けろ!!!!」
そして、印を指で組み、その意味を一つ一つ積み上げていく。次第に龍の鼻先が地面にぶつかる瞬間、練り上げた技を地面に向けて放った。
「はあっ!!!!」
龍と共に仙力が波紋のように広がっていくのが、土の盛り上がりでわかる。そして、荒野に少し残っていた生命の息吹が強力な力となって、両方の兵士たちの周りに現れた。
「蔦が!足に!!!」
「土に引き込まれる!!」
「草のせいで、何も見えない!」
「こんなデカい食虫植物見たことない!」
「木が!!!くそ!!!!降りれない!!!」
兵士たちの叫び声が木霊する。足止めするなら、僕の仙力が一番いいだろう。荒野が一瞬にして、恐ろしい魔の森となる。僕もまた、その中心に、生えた木に押し戻され、大きく伸びた木の上で息絶え絶えの状態だ。
他の龍仙師たちは、総督の指示があるまで動けないだろう。
どうしよう。仙力使い切ったから、龍を呼ぶにも難しい。少しばかりしくじった自分に嫌気がさす。もう少し使い方が上手くなれたらいいのにと思う。
その時、ふと遠くから見たことあるものが見えた。それは、美しい夜空の空飛ぶ絨毯だ。
「リュウユウ!どこだ!リュウユウ!」
僕の名前を呼ぶその人は、美しい白い布の服を着て、俺に向かって飛んでくる。
「セイッ!」
名前を呼び返せば、セイはこちらに気づいたのか、風を切る速さで僕の元に飛んでくる。それを見た瞬間、身体ぐらりと揺れ、僕は枝から身体が傾き、するりと背中から倒れる。
しまった。
人は死ぬ時は、走馬灯を浮かべてしまうようだ。
僕は昔は昔、すべての始まりから、頭を駆け巡った。
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