元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!

東岡忠良

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【5】ユースルの騎士隊長。ビース・ケールと会い、光力(ビームパワー)を見せる。

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元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!

略して『もといも』です。

     東岡忠良(あずまおか・ただよし)

【5】ユースルの騎士隊長、ビース・ケールと会い、光力(ビームパワー)を見せる。

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 お待ちしています。

──1──

 朝日が昇ると三兄妹は朝食の用意を始めた。
「おい。俺達にも何か食わせてくれよ」
 と言い出す盗賊らが数人現れた。
「悪いけどこんなに大勢の朝食を用意できるほどの材料は積んでいないんだ。恐らく、夕方には『ユースルの騎士達』がたくさんやってくる。それまで辛抱してくれ」
 とのエイジャーの返事に、
「そんな! 見逃してくれよ、頼むよ!」
 と『ユースルの騎士達』と聞いて、賊連中は震え上がっている。
 無理もない。なんせ、盗賊というたけで死罪は免れられないのだから。
「あんた達は自業自得よ。今までどれだけの罪のない人達を襲って殺してきたか、分かったものじゃないわ!」
 とマザリーは腰に手を当てて怒鳴った。 
「もうそろそろ、アユットが戻ってくるかしら」
 とイーナがエイジャーに言った時だった。
 翼が風を切って羽ばたく音が近づいてきた。
「噂(うわさ)をすれば、だな」
 と空を見上げると、こちらへ真っ直ぐに飛んでくる一匹のドラゴンがいた。
「アユットさん。二人の騎士を抱えているわね。重くないのかしら?」
「あの子、最高で五人を載せて飛んだことがあるって言っていました。ただし、速くは飛べないし、かなり疲れるらしいですよ」
 と姉妹は会話をする。
 手を振る三兄妹の上で、一旦空中で停止すると、ゆっくり地上へ下りた。
 二人の騎士が乗っている。
 磨き上げられた白銀の鎧に身を包んでいる男が、
「ありがとう。アユット殿。とても助かった」
 と言った。
 その人物の胸には勲章がある。
 アユットは二人の騎士を下ろし終わると、地上で瞬時に人間の姿になり、
「なあに、そんなのお安いご用さ」
 と微笑む。
「それにしても思った以上に多くの盗賊を捉えたんだね。これは大したものだ」
 と白銀の騎士は驚いている。
 兜から見える顔は色白で、髪は金髪。鼻筋の通った顔立ちで、声を出さずに立っていたら、女性と見間違えそうな美形である。
 エイジャーは少し緊張気味に、 
「初めてお目にかかります。私はカロンデロス・ヘルムス公爵の子息。エイジャー・ヘルムスと申します」
 と自己紹介した。
「これはこれは。ヘルムス家のお方でしたか」
 と握手を交わす。
「私はハーブラブル王国首都ユースル騎士団所属。第二治安維持隊長のビース・ケールと申します。以後、お見知り置きを」
 と微笑んだ。
 この時点でエイジャーは、このビース・ケールと名乗る騎士隊長に好感を持った。
 理由は御三家の一つヘルムス家の息子といえば、『神力と魔力を持たない無能』ということがかなり知られていて、エイジャーは数え切れないくらいの不愉快な目に遭ってきていた。
 それがここまできちんと挨拶を交わしてくれ、社交辞令なのは分かってはいるが『以後、お見知り置きを』などと言われたこともなかった。
「こっちは双子の妹のマザリー・ヘルムス。その横は下の妹のイーナ・ヘルムスです」
 とエイジャーが紹介すると、
「よろしく。ケールさん」
 とマザリーは握手した。
「これはお美しい。あなたがお噂(うわさ)のマザリー樣ですか」
 と言った。マザリーは神力と魔力共に歴代で指折りの持ち主である。がエイジャーの立場を考慮してくれたのか、神力と魔力には一切、触れなかった。
「初めまして。イーナです。よろしく」
 と少女らしく膝を軽く曲げて、ロングスカートの裾を軽く持ち上げて挨拶をした。
「これはこれは可愛らしいお方だ。こちらこそ、よろしく。イーナお嬢様」
 と明るく挨拶を返す。
 そして、
「ここに同行しているのは副隊長のマルクスリ・ヤーカスです」
 と部下を紹介する。
 使い込まれた鎧に身を包んだ大男が、
「マルクスリ・ヤーカスです。よろしく」
 と敬礼した。
 三人は「こちらこそ、よろしくお願いします」と頭を下げると、エイジャーが口を開いた。
「戦闘の最中に賊の者達が言っていたのです。隠れ家に女達を拉致していると」
「なんですって!」
 とケール隊長。
「それでアユットによる説得で」
 と言いながら、近くにいた縄に縛られた男の腕を引っ張って立たせた。
『説得』と聞いて、マザリー、イーナ、アユットの肩が震える。実際は『説得』ではなく『脅し』なのだが。
「この男が隠れ家まで案内してくれるそうです」
 とケール隊長に引き渡した。
「それはあり難い。では早速、様子を見に行き、被害者を助けたいものだな」
 と副隊長のヤーカスの方を向くと、彼は静かに頷き、
「ですが現在、私らの部下達は、第一治安維持隊と共に、こちらへ向かっていますが、大急ぎで馬を走らせても早くて夕方近くになるでしょう」
「そうてすね」
 とエイジャー。
「大部隊で隠れ家に何度か攻め寄せたことがあるのですが、その度(たび)に人質を盾に取られて、逃げられていたのです」
「ということは、盗賊の隠れ家は?」
「はい。現在はどこか分かってはいないのです」
「そうでしたか」
 と言うと、ケール隊長はアユットの方を向いて、
「ところでアユット殿は何人まで運ぶことができるのかな?」
 と訊(たず)ねた。
「そうだな。頑張って五人ってとこかな。女なら六人は運べるぞ」
 と言うと、
「では私と案内人の賊。そして」
 とマザリーを見て、
「マザリー様も同行して頂こうと思っています」
 と言った。

──2──

「え? 私ですか?」
 とマザリーは不思議そうに言った。
「はい。これだけの数の賊の連中を、鎮圧したその手腕をぜひ、私達にお貸し願えないかと思いまして」
 とケール隊長が言うと、
「この賊達を捕(とら)えたのは、お姉様ではありませんわ」
 とイーナがはっきりと言った。
「えっ。ではイーナお嬢様? いや……。あ! そうか。これは失礼しました。アユット殿でしたか」
 とエイジャーは完全に飛ばされた。
「これをやったのは、旦那樣だよ」
 とアユットがエイジャーを指差した。
「えっ……。エイジャー様が……」
 どう返せばよいのか分からないという様子で、ヤーカス副隊長と顔を見合わせた。
「申し訳ないですが、そういう冗談は止めて頂きたいのだが……」
 とケール隊長は苦笑しながら言うと、
「その態度だと二人共、知っているんだろう。エイジャーの神力と魔力が共に『一』ということを。でもなあ。イーナとエイジャーには、二人しか持っていない特別な力があるんだよ」
 とアユットは自分のことのように自慢げに言った。
 そして、
「言ってもいいんだろ? 旦那樣」
 とエイジャーを見た。
「ああ。ケール隊長は信用のおけるお方のようだ。本当のことを話して良いと思う」
 とは答えた。
「本当のこと。とは……?」
 とケール隊長は当然だが疑問を持った。
「信じられないかもしれませんが、僕には神力と魔力以外の三番目の力があったのです。それが最近、はっきりとあると分かり、何とか基本的なことくらいは使えるようになったのです」
 ケール隊長は捕まっている賊達を見つめた。その話を聞いている賊達が震えている。
「あ! そうだ。これをご覧下さい」
 としっかりとした箱に入れられている拳(こぶし)ほどの大きさで紫色の綺麗な石を見せた。
 賊達が魔力を使って、縄から抜け出せないように、『魔力無効化石』の箱のフタを開けていた。
「これは? まさか、『魔力無効化石』では」
「はい。おっしゃる通りです。僕は初めて見ましたが」
「私は何度か見たことがあるし、実際に使ったこともある。出来たらよく見せて欲しい」
 とケール隊長は手に取って紫色に輝く石を眺めた。
「なかなかの大きさの『魔力無効化石』です。影響する範囲は石の大きさで決まる特性があるので、推測ですが半径十五メート(約十五メートル)は魔力が使えなくなるはずです」
「はい。おっしゃる通りです」
「そうなんですよ。それで私がファイヤーを撃(う)とうとしたら、全く出なくて」
 とマザリーが、実際に撃つしぐさをしながら言った
「この石があるということは、賊達も魔力が使えなくなるはず。通常なら剣と剣の闘いになるのですが……」
「つまりな。私の旦那樣の圧倒的な光力(ビームパワー)で、盗賊達はこの通りって訳さ」
 とアユット。
「? 光力(ビームパワー)? とは?」
 とケール隊長がつぶやいた時だった。
 ケール隊長! ケール隊長はどこにおられる~!
 との声が微かに聞こえた。
「聞こえるか! ここだ!」
 と声を張り上げる。
 その時、ケール隊長は『魔力無効化石』を元に置いてあった馬車の御者席(ぎょしゃせき)に戻した。
「あたいが道案内しよう」
 とアユットはゆっくりと空中に浮かぶと、素早くレッドドラゴンの姿になった。
 あれはユースルで見たドラゴン!
 あっちを指さしているぞ!
 と言う声が近づいてくる。
「アユットったら。普通に喋ればいいのに」
 と呆れ気味にイーナが言う。
「ケール隊長! お待たせ致しました!」
 と騎馬隊数人の姿が見えた。
「おお! 早いな!」
 と八人の先行隊が到着した。
 馬を木に繋いで、素早くケール隊長の前に整列する。
「それにしても」
 先行隊の一人が賊達を見渡す。
「これたけの賊を一網打尽とは! 名のある魔術師または剣士ですかな?」
 と感心していると、
「カロンデロス・ヘルムス公爵のご子息エイジャー・ヘルムス殿の活躍によるものだ」
 とケール隊長はエイジャーを紹介した。
「えっ? ヘルムス公爵のご子息と言えば、魔力が『一』で無能と……。あ! こっ、これは失礼いたしました!」
 と慌てて謝罪し、失言を取り消した。
「いえ。事実なので構いません」
 と苦情するエイジャー。
「誰が無能だって~!」
 と空から声がする。ドラゴンの姿のアユットだった。
「旦那様の悪口を言うヤツは、あたいが勘弁しねえ!」
 と吠えたが、
「アユット。もう、地上に下りて人の姿になりなさい」
 とエイジャーが言うと、
「ああ。分かった。旦那様」
 とゆっくりと地上に近づくと、美しい女の子の姿になり、地面を踏んだ。
 ドラゴンが!
 人の姿になった!
 と驚く先行部隊の騎士達。
 そこでケール隊長が言った。
「申し訳ないが、頼みたい仕事がある。お前達とヤーカス副隊長は、治安維持隊が到着するまで、ここに残って賊達を見張ること。賊の仲間が助けにくるかもしれないので、危険な任務だ。頼めるか?」
 と言うと、
 ヤーカス副隊長を筆頭に横に整列して、
「はっ! お任せ下さい!」
 と足を揃えて、敬礼をした。
 ヤーカス副隊長は、
「隊長はどうなされます? まさか!」
 ケール隊長は言った。
「賊の本拠地に乗り込んで、人質を助ける」
 と言った。

──3──

 ヤーカス副隊長と先行部隊の八人の顔色が変わった。
「危険です! お止め下さい!」
「そうです。何人の賊がいるか分からない、敵の砦(とりで)に乗り込むなんて無謀過ぎます。味方が揃ってからでも遅くないのではありませんか?」
 とヤーカス副隊長が反対する。
「なら聞くが、もしお前達が人質にされて、我々治安維持隊が来たということを耳にしたのに、なかなか助けに来なかったらどう思う?」
「……いや。それは……」
「それに時(とき)を与えれば与えるほど、賊達は戦いに備えるかもしれない。もしくは砦に火を放って逃げ出すかもしれない」
「……はい」
「そうなったらどうだ? 足手まといの女の人質などその場で殺されかねない」
「……おっしゃる通りです……」
「それに、もしここにいる賊達よりも大人数なら、必ずこの賊らを助けにくるはずだ。それが来ないと言うことは?」
「賊の本拠地には、少なくともここにいる人数よりは少ないと!」
「そういうことだ。ということですから」
 とケール隊長はヘルムス三兄妹とアユットの方に向き直り、
「一刻を争います。お急ぎの旅とは思いますが、人命救出のために、皆様のお力をお借りしたいのです」
 と深く頭を下げた。
「頭をお上げ下さい、ケール隊長。元々、僕は人質を助けに行くつもりでした。僕はぜひ、同行致します」
 と答えたが、
 隊員達からは、
 誰だ? あの若者は?
 服装からして名のある領主のご子息だと思うが……。
 とヒソヒソと話した。
「おい。我(わが)、治安維持隊がヒソヒソ話とはみっともないぞ」
 と注意すると、
 はっ! 失礼いたしました!
 と一斉に気を付けの体制になった。
「紹介しよう。こちらはカロンデロス・ヘルムス公爵のご子息で、エイジャー・ヘルムス殿。そして妹君のマザリー殿とイーナ殿。そしてご友人のアユット殿だ」
 と言うと、
 ヘルムス公爵のご子息……。
 噂で聞いたぞ。確か神力と魔力が『一』だと……。
「お前達! 私語は慎(つつ)めと言っているだろう!」
 と再び、注意する。
 すると、
「僕は気にしていません。いつものことですから」
 と微笑むエイジャー。
 続けて、
「それでですが、ケール隊長。危険仕事になるのは間違いないので、僕とケール隊長と賊の案内人で歩いて行こうと思うのですが」
 と提案した。
「何、言っているの? 私達も行くわよ」
 とマザリー。
「お兄様。実戦は昨日が初めてじゃないですか! 私が付いて助言しないと、また動けなくなりますよ」
 とイーナ。
「旦那様。あたいが付いていかないと、賊の砦までどれだけ時間がかかると思ってんだ? あたいは付いていくよ」
 とアユット。
「アユットは出来たら、マザリーとイーナと一緒にいて、二人を守って欲しいんだけどな」
 と言った。
「それなら、みんな一緒に行きましょうよ。ということで、ケール隊長さんと、案内人。兄さんと、私と、イーナを載せて飛んでくれますか?」
 とマザリーがアユットに言うと、
「それは構わねえが、男三人と女が二人だと、重くて空中を狙われた時に動作が遅くなるな~」
 とチラリとマザリーと目が合った。
「わっ、私はそんなに重くないわよ!」
 と訴えた。
「ならこうしましょう。私とお兄様は飛んで行きます」
 と当たり前のことのようにイーナが言った。
 とっ? 飛んで行く……?
 と一同は、何か聞き間違いではないかと思った。
「イーナ。飛ぶってどういうことだ?」
 と言っていることが全く理解できないエイジャー。
「いいですか? よく聞いて下さいね。足首の辺りを意識して下さい」
「足首か? なぜなんだ?」
 とエイジャーは不思議そうに訊いた。
「本当は足の裏がいいんですけど、足の裏に光力(ビームパワー)を集中させると、靴がどこかに飛んでいっちゃいますからね。足首を意識して下さい」
 と言うのを聞いている隊員達は?
 飛ぶ? そんなバカな?
 ビームパワー、って何だ?
 と言う。
 すると、エイジャーのズボンパンツの裾が自然とめくれ上がった。履いている靴下も人が下ろしているかのように、勝手に下にずれていくと、足首が銀色に光りだした。
 隊員達はそれを不思議そうに見ている。
「お兄様。靴が落ちないように、光力(ビームパワー)を内側に巻き込むイメージで、足首からゆっくりと出して下さい。こういう感じです」
 と言うと、イーナはゆっくりと上昇して、自分の身長程の高さで止まった。
 隊員達から驚きの声が出た。
「さあ、お兄様。やってみて下さい」
 と言った時だった。
「おい。イーナ」
「何、アユット?」
「それ以上、上昇するとパンツ見えそうだぞ」
 と言ったので、イーナの顔が瞬時に真っ赤になり、
「もう! アユットったら!」
 と怒ると、指先から光を発してクルリと小さく一回転させると、刺繍の入ったロングスカートの裾を光の輪で固定した。
「これならいいでしょう?」
「おお~。大丈夫だ。見えない、見えない。でもさあ」
「何よ?」
「イーナみたいなチビッコのスカートの中を好きで見る大人の男なんているのか?」
 と言ったものだから、イーナは瞬時にアユットの後ろに立って、頭を叩(はた)いた。
「痛って~! 何、すんだよ!」
「何って当たり前じゃない! アユットはもっとデリカシーを持ってよ! あなた以外のドラゴンの人達は、みんなきちんとしていると言うのに!」
「なんだあ! あたいはきちんとしていないって言いたいのか?」
「そうよ! もっと反省しなさいよ!」
「なにィ~!」
「何よ~!」
 と二人が睨み合っていると、
 おお~! 
 と再び感嘆の声が上がった。二人がそちらを見てみると、エイジャーが自分の身長くらいまで高く上がっていた。足首からは銀色の光が放射されていて、とても安定した飛行である。
「お兄様。お上手です」
「兄さん、凄いわ。魔力でも飛べないことはないけど、飛行はとても難しいし、何よりたくさんの魔力を消費するわ。だから飛べる人や飛ぼうと思う人は、ほとんどいないのに」
 とマザリーは感心する。
「これは……。信じられない光景だ」
 とケール隊長がつぶやいた時だった。
「はっ! しまった! 『魔力無効化石』の箱を開けたままだった!」
 と馬車の御者席を見たら、『魔力無効化石』は箱からむき出しになって光っていた。
「これでは魔力は使えない。ということは、この銀色の光は魔力とは別物なのか……」
 とケール隊長は驚いた。
「よし! じゃあ、早速行こうか!」
 とアユットは人の姿のまま、ケール隊長とマザリーと賊の道案内を抱えると、ゆっくりと上昇したかと思うと、安全な高さになって瞬時にレッドドラゴンの姿になった。
「見るのは二回目だが、驚きしかないな」
 とヤーカス副隊長は感嘆している。
「ではみんな、行ってくる。賊達の見張りと味方との合流をよろしく頼む」
 とケール隊長の声に、
 はっ! お任せ下さい!
 とヤーカス副隊長と隊員達は、空を見上げながら敬礼をした。

登場人物。

エイジャー・ヘルムス。
 ハーブラブル王国御三家貴族の一つ、ヘルムス公爵家の父カロンデロス・ヘルムスと、母ソフィアの両親から生まれたヘルムス家唯一の嫡男。 
 十五歳現在の能力値(ステータス)は、
 知力『一三〇』。
 体力『一二〇』。
 精神力『一一五』。
 防御力『一〇八』。
 神力『一』。
 魔力『一』。
 そして能力計測器には現れない能力。
 光力『二九九九』
 を持っている。
 神力『一』魔力『一』は宿無しか奴隷くらいしかいないほど最弱の数字。
 しかし、実際には神しか持たない光力(ビームパワー)を中級の神レベルほど持っている。
 三兄妹とアユットは同時に、国立ユースル高等魔法学校に入学した。
セブンの技。
『エメリー光線』アユットを一撃で死に追いやった必殺技。光力(ビームパワー)を圧縮した額から出る光線技。
ウルトラの技。
『円盤光輪』イーナから教わった光力(ビームパワー)を使った技。思ったところに投げられ、物を簡単に切り裂くことができる。生き物を切ると高熱のために血は一滴も出ない。
『スペシュー光線』
立てた右手の手首辺りに、左手先を添え発射される白い熱線。
 ユースル高等魔法学校に姉妹のオマケ同然の状態で合格し、妹ら二人と通う。
 旅をする場合は、危険を避けるために偽名「サーダスト」を使っている。
 現在、馬車で首都『ユースル』に向かっている。一日目はヘルムス領『ニカル村』で宿泊。二日目は『剣の山』を避けて『魔物の森』での野宿をした。

マザリー・ヘルムス。
エイジャー・ヘルムスの双子の妹。
赤ん坊時の能力計測器の数値は、
 知力『一二八』。
 体力『一二〇』。
 精神力『四〇』。
 防御力『一三』。
 神力『ニ三〇』。
 魔力『ニ〇九』。
 献身的に兄エイジャー・ヘルムスを助ける秀才。男性から見て、胸と腰のサイズが大きいのが魅力だが、本人は気にしている。

イーナ・ヘルムス。
 エイジャー・ヘルムスの三つ下の妹。
 イーナ・ヘルムスの正体はエイジャーの転生を担当した女神イーナ。
 女神時代の記憶と光力を持つが、まだ新人である下級神であるために、
 能力計測器の数値は、
 知力『一〇〇』。
 体力『一三〇』。
 精神力『一〇〇』。
 防御力『一〇〇』。
 神力『二〇〇』。
 魔力『一〇〇』。
 光力『七五』。
 駆け出しの神であるために、元々神力『一七五』であったが、人として転生するために、光力『五〇』を神力『二〇〇』に、光力『五〇』を魔力『一〇〇』に変換して、この世界の平均値に合わせている。
 このため光力が使える人間は現在、エイジャー・ヘルムスと妹イーナ・ヘルムスだけである。
 イーナが人間として転生した理由は「エイジャーに光力の使い方を教えるため」だった。
 十二歳で可愛い顔立ちでまだ幼(おさな)さが残るが、その歳にしては大きな胸なのが悩み。

アユット・フォン・レッドドラゴン(レッドドラゴン竜族)。
 竜人族でもブラック・ホワイト・レッドが存在し、最も神に近い知的ドラゴン種族の一人。
 ヘルムス兄妹を突然襲うが、それはイーナに頼まれて、エイジャーの光力を目覚めさせるためだったが、エイジャーの光力(ビームパワー)が余りに強く死亡してしまう。
 だがエイジャーの光力を神力へ変換して、蘇生により生き返る。
 エイジャーは命の恩人であり、そして蘇生時に男子のエイジャーに胸を直接触られたこと(不可抗力でエイジャーに罪はない。)を運命の出会いだと感じている。
 胸のサイズはマザリーよりも大きくて立派。スタイルは完全に大人の女性で、顔も美しい。
 能力値(ステータス)は、
 知力『?』。
 体力『一〇〇〇』。
 精神力『?』。
 防御力『一三〇〇』。
 神力『?』。
 魔力『?』。
 光力はない。
 ※実際には体力と防御力を合わせた数値を、攻撃によってマイナスにされると死亡する。
 ※防御力は防具によって上昇する。実際、銀の鎧の力で防御力は『九〇』上がっていた。
 竜人族を蘇生させるには、神力『七〇〇〇』が必要。
 言葉遣いは場面によって使い分けている。
 レッドドラゴンの村長(むらおさ)の娘であり、姫なのだが本人は粗暴で普段は「あたい」を使う。だが大切な場面や目上の者や重要な場面では「私」に変化する。
 
カロンデロス・ヘルムス。
 カロンデロス・ヘルムス公。通称カロン公爵と呼ばれている。
 ハーブラブル王国の御三家の一つのヘルムス家の現領主。
 慈悲深く、家族と領民を大切にする名君。    王宮の政(まつりごと)には関心があるが、宮廷内の謀略や陰謀などには、ほとんど興味がなく、逆に疎(うと)ましいと思っている。真面目で誠実で正義感が強い。

ソフィア。
 カロンデロス・ヘルムス公爵の正妻。他の貴族らには当たり前に存在する側室や妾がカロン公にはおらず、子供は全員、ソフィアから生まれた。心優しく慈悲深く絵に描いたような良妻賢母である。

キャスター。
 ヘルムス公爵家に使えるメイド。二十代後半の未婚女性で住み込みで働いている。
 家事は完璧で、特に料理が得意で、よくカロン公の妻ソフィアと共に、台所に立つことが多い。

剣山(つるぎやま)の盗賊。
 男ばかりの盗人(ぬすっと)の集団。
『魔法痕跡発見器』という青銅でできた真四角で、そこには半円に目盛りがあり、その目盛りを刺す針がついている魔法道具を持つ。
『魔力無効化石』という紫色に光る石を持つ。この石の大きさだと半径十五メート(十五メートル)では魔力を源とする魔法が使えなくなる。石の大きさにより、影響範囲が変わる。
 普段は特殊な鉛製の箱に入れられている。理由は魔力を無力化する力は鉛を通さないからである。
 二つ共、レアまでいかないが、珍しい魔法道具である。

ビース・ケール。
 ハーブラブル王国首都ユースル騎士団所属。第二治安維持隊長。
エイジャーを「エイジャー樣」と呼ぶ。
マザリーを「マザリー樣」と呼ぶ。
イーナを「イーナお嬢様」と呼ぶ。
アユットを「アユット殿」と呼ぶ。
第三者や部下にヘルムス家の者を紹介する場合は全員『殿』を付ける。

マルクスリ・ヤーカス。
 ハーブラブル王国首都ユースル騎士団所属。第二治安維持副隊長

2023年9月24日

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結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

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