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長屋の老人の荷物と、変わった中古販売店。
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こんな夢を見た。
連なって立てられた平屋の長屋に、僕は住んでいた(実際は違います。)。
そこに中型トラックがやって来て、僕の家の隣りに停まった。
すると何だか騒がしい。
玄関を出てみると、中型トラックから降りた作業服姿の若い二人組が、お爺さんが住んでいた長屋の荷物を運び出していた。
「あの。どうしたんですか? 確かここは親切なお爺さんが住んでいたはずなんですけど?」
と言うと、
「そのお爺さんが病院で亡くなったんだよ。それで家族の方からの要望で、この家の中の物を全部出すように言われたんですよ」
と返事が帰ってきた。
見てみると、トラックには古い新聞や本、昭和の花柄家電やフィルムカメラが、無造作に入れられていた。
「良い物がたくさんありますね。高く売れるんじゃないですか」
と冗談交じりで僕が言うと、
「なら、持っていきますか? ご家族からはお好きに処分して下さい、と言われているんです」
と作業着姿の若者は、面倒くさそうに言った。
全ての物が大切にされていたであろうと思えるほどに、古いのに綺麗だった。
こんなに大切にされていた物を、隣りに住んでいるというだけで、僕が貰(もら)うなんて正直、抵抗があった。
「いや。いいですよ。お気持ちだけ頂いておきます」
と言い残して、バイクで出かけることにした。
若い作業員は、
「現金や通帳、貴金属以外は捨てるだけなので、欲しかったら本当に、持って行っていいんですよ」
と言ってくれたが、僕は礼を行ってバイクを走らせた。
用事を終えて、長屋の家に帰ろうとバイクで走っていると、畑の脇に綺麗な建物が出来ていた。
今までなかった建物が、バイクで走って帰ってきた短い時間で建てられていた。それでも自分は夢だと気づきませんでした。
看板を見ると、パン屋と中古家電販売と書いてある。
土の駐車場にバイクを停めて、細いあぜ道を歩いて、その建物に着いた。
自分は中古家電が気になるので、パン屋の入口ではない、倉庫っぽい入り口に入った。
すでに二人の人が陳列している中古品を見ていた。
そこにはスチール製の棚がいくつもあり、その棚には昭和の懐かしい花柄ポットやブラウン管のテレビ。8ミリカメラや投影機。フィルムカメラやショルダー型のビデオカメラまであった。
そこにはいくつも同じ文面で、
『気になったら持って帰って下さい。数日お使いになり、気に入られたら代金をお支払い下さい』
とあった。
僕は、
「えっ? そんな方法で商売が成り立つのか?」
と不思議に思った。
世の中、善人ばかりじゃない。悪人だっている。勝手に持って帰ってしまう人もいるのではないか?
そう思いながら、出口に向かうと、僕以外の二人の見学者も同時に向かった。
すると白い清潔そうな服を着た、この店の主人が待っていた。
「ようこそ、いらっしゃいました。もし、よろしければパンをどうぞ」
とバスケットにはフランスパンが三つあった。
ただ、そのフランスパンは長さが違い、大中小だったのだ。
僕以外の二人は大を掴むと、二人は言い合いの喧嘩を始めた。僕はもうその雰囲気が嫌になってしまい、小をもらって帰ろうとした。
すると、
「お客様。しばらくお待ち下さい」
と声をかけられた。
二人は決着がついたのか、一人はニコニコ顔で大のフランスパンを持って外に出ていき、もう一人は渋い顔をしながら中のフランスパンを持って帰っていた。
残された僕は小のフランスパンを持って待っていると、
「お待たせしました。これをどうぞ」
とさっきの大のフランスパンよりも長い物を僕に下さり、
「あなたは信用出来る方のようです。今後ともご贔屓に」
と微笑んだ。
「はあ。ありがとうございます」
と礼を言って店の外に出た。
特大フランスパンと小フランスパンをもらって『信用の出来る方』と言われて、気分はよかったが、
「バイクでこのパン二本をどうやって持って帰ろうかな?」
と苦心していると、
目が覚めました。
終わり。
2024年6月3日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
連なって立てられた平屋の長屋に、僕は住んでいた(実際は違います。)。
そこに中型トラックがやって来て、僕の家の隣りに停まった。
すると何だか騒がしい。
玄関を出てみると、中型トラックから降りた作業服姿の若い二人組が、お爺さんが住んでいた長屋の荷物を運び出していた。
「あの。どうしたんですか? 確かここは親切なお爺さんが住んでいたはずなんですけど?」
と言うと、
「そのお爺さんが病院で亡くなったんだよ。それで家族の方からの要望で、この家の中の物を全部出すように言われたんですよ」
と返事が帰ってきた。
見てみると、トラックには古い新聞や本、昭和の花柄家電やフィルムカメラが、無造作に入れられていた。
「良い物がたくさんありますね。高く売れるんじゃないですか」
と冗談交じりで僕が言うと、
「なら、持っていきますか? ご家族からはお好きに処分して下さい、と言われているんです」
と作業着姿の若者は、面倒くさそうに言った。
全ての物が大切にされていたであろうと思えるほどに、古いのに綺麗だった。
こんなに大切にされていた物を、隣りに住んでいるというだけで、僕が貰(もら)うなんて正直、抵抗があった。
「いや。いいですよ。お気持ちだけ頂いておきます」
と言い残して、バイクで出かけることにした。
若い作業員は、
「現金や通帳、貴金属以外は捨てるだけなので、欲しかったら本当に、持って行っていいんですよ」
と言ってくれたが、僕は礼を行ってバイクを走らせた。
用事を終えて、長屋の家に帰ろうとバイクで走っていると、畑の脇に綺麗な建物が出来ていた。
今までなかった建物が、バイクで走って帰ってきた短い時間で建てられていた。それでも自分は夢だと気づきませんでした。
看板を見ると、パン屋と中古家電販売と書いてある。
土の駐車場にバイクを停めて、細いあぜ道を歩いて、その建物に着いた。
自分は中古家電が気になるので、パン屋の入口ではない、倉庫っぽい入り口に入った。
すでに二人の人が陳列している中古品を見ていた。
そこにはスチール製の棚がいくつもあり、その棚には昭和の懐かしい花柄ポットやブラウン管のテレビ。8ミリカメラや投影機。フィルムカメラやショルダー型のビデオカメラまであった。
そこにはいくつも同じ文面で、
『気になったら持って帰って下さい。数日お使いになり、気に入られたら代金をお支払い下さい』
とあった。
僕は、
「えっ? そんな方法で商売が成り立つのか?」
と不思議に思った。
世の中、善人ばかりじゃない。悪人だっている。勝手に持って帰ってしまう人もいるのではないか?
そう思いながら、出口に向かうと、僕以外の二人の見学者も同時に向かった。
すると白い清潔そうな服を着た、この店の主人が待っていた。
「ようこそ、いらっしゃいました。もし、よろしければパンをどうぞ」
とバスケットにはフランスパンが三つあった。
ただ、そのフランスパンは長さが違い、大中小だったのだ。
僕以外の二人は大を掴むと、二人は言い合いの喧嘩を始めた。僕はもうその雰囲気が嫌になってしまい、小をもらって帰ろうとした。
すると、
「お客様。しばらくお待ち下さい」
と声をかけられた。
二人は決着がついたのか、一人はニコニコ顔で大のフランスパンを持って外に出ていき、もう一人は渋い顔をしながら中のフランスパンを持って帰っていた。
残された僕は小のフランスパンを持って待っていると、
「お待たせしました。これをどうぞ」
とさっきの大のフランスパンよりも長い物を僕に下さり、
「あなたは信用出来る方のようです。今後ともご贔屓に」
と微笑んだ。
「はあ。ありがとうございます」
と礼を言って店の外に出た。
特大フランスパンと小フランスパンをもらって『信用の出来る方』と言われて、気分はよかったが、
「バイクでこのパン二本をどうやって持って帰ろうかな?」
と苦心していると、
目が覚めました。
終わり。
2024年6月3日
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