東岡忠良の奇想天外な夢日記

東岡忠良

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親子のヒグマに襲われる夢。

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 こんな夢を見た。
 北海道に引っ越しをした。
 そこには自分の家族は居らず、普通の家なのだが見知らぬ男女が一緒に住んでいた。
 裏は広い草原と森になっている。
 回覧板が回ってきた。
 この地域の裏の草原にヒグマが穴に籠もっているということが書いてあった。
「さすがは北海道だな」
 と思っていたら、同居している人達が騒がしい。
「一体、何をやっているのか?」
 と草原の見える一階の部屋へ行ってみると、若い男が、
「カワイイ。カワイイ」
 と大騒ぎしている。
 見ると、その男はバルコニーに出ていた。
 そしてサッシ窓越しに見ていると、可愛らしい子熊が手すり子のところへよじ登って小さな顔を出している。
 僕は、
「何、やってんだ! 早く部屋へ戻れよ!」
 と叫んだが、
「は? こんなカワイイ子熊が来てくれたんだぞ。頭の一つでも撫でないでどうする!」
 と僕を睨みつけた。
「中に入られたら、この家の中の人達が危険に及ぶからサッシ窓を閉めて鍵をかけるぞ! お前だけ犠牲になるんだな」
 と言うと、
「犠牲になる? お前、バカか! こんなカワイイ子熊がオレを襲うってか? お前はどこまでバカなんだ!」
 と笑うので、僕はこの家にいる人達を守るためと、このバカな男を懲(こ)らしめる意味も込めて、子熊の頭を撫でるこのバカな男を、バルコニーに残したまま、思い切ってサッシ窓に鍵をかけた瞬間だった。
 大きな身体の母親ヒグマが、子熊の後ろから顔を出した。そして唸(うな)り声を上げたのである。
 バルコニーで子熊の頭を撫でていた男は、さっきと態度を変えて、
「助けてくれ! 開けてくれ!」
 と騒ぎ出した。
 僕は、
「どこまでもバカな僕の言うことを聞かなかったんだ。一人の犠牲でここのみんなの命が助かるんだ。開ける訳にはいかないな」
 と言うと、泣きながら、
「オレが悪かった! 許してくれ! 開けてくれ!」
 と言うので、仕方なくその部屋にあった小さな威嚇用の、火薬で音の出るプラスチック製の銃を手に取り、
 パンパン!
 と二発、音を出した。
 すると驚いた子熊と母親のヒグマはバルコニーから離れた。
 僕は急いでサッシ窓を開けて、腰を抜かしている男の襟首を掴んで、大急ぎで部屋に入れた。
 泣きながら、
「……あっ、ありがとう」
 と男は言ったが、隣りの台所から女達の声が聞こえた。
 カワイイ! ちっちゃい! 早く窓を開けてよ!
 と。
 台所のサッシ窓には、この部屋のように手すり子が付いていない。
 僕は、
「ああ。この家に居たら殺されるな」
 と思った僕は大急ぎで草原側とは反対にある玄関から、この家を飛び出した。
 大急ぎで走る僕の背中の方から、
 カワイイ! カワイイ! 
 と聞こえていた黄色い声は、すぐに悲鳴に変わり、
 助けて! 助けて! 誰か!
 と言う声と、野生のヒグマの唸(うな)り声が響いた。
 僕が急いでたどり着いたのは、この辺りで一番高い建物であるマンションだった。
 そこは大人がやっと入れるような細い階段があり、ここならあの大きなヒグマが入れなさそうな場所だった。
 自分のような見知らぬ人がやって来て、緊急とはいえ部屋に入れてもらえるか分からなかったが、僕は玄関の呼び鈴を押して、
「助けて下さい! ヒグマが出たんです! 部屋に入れて下さい!」
 と言うと、ありがたいことに、しっかりとしたドアが開き、
「ささ。どうぞ」
 と美しい女性が玄関を開けてくれた。
 僕は「ありがとうございます」と言いながら、玄関に崩れるように腰を下ろした。
「クマが出たのですか?」
 と聞かれたので、今まで遭ったことを説明すると、
「よかったですわ。もうすぐこの子と買い物に行くところでしたの」
 と言うので見ると、部屋には可愛らしい赤ちゃんが眠っていた。
 ここで目が冷めた。

終わり。

2024年4月5日

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