上 下
11 / 19

時々、見てしまうゾンビに襲われる夢。だが自分にはあの能力があった。

しおりを挟む
 時々、見てしまうゾンビに襲われる夢。だが自分にはあの能力があった。

 こんな夢を見た。
 自分と見知らぬ数人が高層ビルの最上階まで追い詰められていた。
 下の階では逃げ惑う人々の悲鳴が聞こえ、まさに阿鼻叫喚の様相である。
 原因は人を喰う大量のゾンビだった。
 大型ショッピングセンターが入っている、ビルに逃げ込んだのはいいが、街に溢れたゾンビ達は、開放されている一階の出入り口から、ビル内に侵入して来ていた。
 屋上に逃げた人達もいたが、ここ最上階では下の階から助けを求める悲鳴が聞こえ、屋上からも悲鳴が聞こえ、開閉可能なガラス窓からは、ゾンビに喰われるくらいならと、飛び降りた人達が落ちていく。
 階段や止まったエスカレーターから、人の血肉を喰らって口や手が真っ赤に汚れたゾンビが迫ってくる。
 僕は決心して、最上階から思い切って飛び降りることにした。
 勝算は正直、全くない。
 しかし大型のガラス窓は固定されていて、開けることは出来ない。
 ゾンビの群れはそこまで迫ってきている。
 僕は狭い木製のベンチの下に身体を潜り込ませた。
 扉が勢いよく開いて、ゾンビ達が入ってきた。その場に居た人達は逃げ惑い、男性の叫びと女性らの悲鳴が、肉と骨を齧り取る音に混じって聞こえてくる。
 僕は上を向いたままベンチ下にいたが、何かが僕の左手を掴んだ。そちらに目をやると、老人のゾンビだった。
 どうしたらいいか分からない。声を出したらゾンビ達に見つかり、殺到するだろう。
 老人のゾンビは、ベンチの下に自分の頭を入れてきた。僕の腕を喰うつもりなのだ。
 僕は咄嗟に特に理由もなく勝算もないのに、腹式呼吸をした。
 すると僕の左腕に触れていたゾンビが悲鳴を上げた。何事かとそちらを見てみると、僕の左腕を掴んでいたゾンビの腕が溶け始めて、ドロドロの液体に変わっていた。
 どういう理由かさっぱり分からなかったが、老人ゾンビの頭を掴んで、また腹式呼吸をすると、老人ゾンビは悲鳴と共に、頭が溶けて、そのまま液状になっていった。
 その叫びを聞きつけた他のゾンビらが、僕が隠れている木製ベンチへ集まろうとしていた。
 僕は急いでベンチから飛び出した。
 迫ってくるゾンビ達。
 走ると腹式呼吸が出来ないので、ゆっくりと歩きながら腹で息を吸い込み、ゆっくりと息を吐いていく。
 すると僕に触れたゾンビ達は、一人残らず溶けて言った。ただただ、本能のように迫ってくるゾンビ達を、ひたすら溶かしながら出入り口に歩いて行く。
 突然、噛み付いてくるゾンビらは一瞬で頭部が溶けて、僕を掴もうとするゾンビらは腕が溶ける。前方を塞ごうとしたゾンビらは、ぶつかった胸から溶けて崩れる。
 出入り口を抜けて、ゆっくり歩いて廊下に向かう。
 喰われた死体が点在しているが、何体かは死んでゾンビとなって生き返ろうとしていた。
 それを気にしないように、ひたすら腹式呼吸で歩き続ける。
 その時に気がついた。
「これって、もしや波紋では!」
 と思ったところで、目が覚めました。

終わり。

令和5年6月10日。
    
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後悔と快感の中で

なつき
エッセイ・ノンフィクション
後悔してる私 快感に溺れてしまってる私 なつきの体験談かも知れないです もしもあの人達がこれを読んだらどうしよう もっと後悔して もっと溺れてしまうかも ※感想を聞かせてもらえたらうれしいです

不思議体験日記

A.Y
エッセイ・ノンフィクション
自身がこれまで体験した数々の出来事の全てを語ります。 ほぼ…ありのままの事実、実話で…話の膨張や脚色は一切無いノンフィクションですが…その為、話の内容にも起承転結的な要素もありませんので…ご了承ください。 恐怖体験や、本当にあった怖い話等を期待する方には、少し物足りない内容になります。 *部的に、内容を分かり易くする理由で、若干の物語性要素を含む箇所もあります。

女性は知らない男子トイレの話

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
男子トイレの変な人の話

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

スピリチュアルママの子育て記録

花角瞳
エッセイ・ノンフィクション
昔から予知夢として、夢がいろいろと教えてくれる私が、また予知夢によって我が子を授かり、そんな我が子と私のマタニティ~育児を通しての成長記録を振り返る小説。 マタニティ生活で役立ったことや道具、週ごとのトラブルや出来事など。 これから妊活~妊娠するにあたって、参考になれば幸いです🌸

毎月一本投稿で、9ヶ月累計30000pt収益について

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
9ヶ月で毎月一本の投稿にて累計ポイントが30000pt突破した作品が出来ました! ぜひより多くの方に読んでいただけた事についてお話しできたらと思います!

こんな夢を見ました

真田奈依
エッセイ・ノンフィクション
 不思議な夢、愉快な夢、記録していきます。

処理中です...