上 下
1 / 19

修学旅行の途中で下りた駅に自分のバイクがあった。

しおりを挟む
 その電車は今ではもう走っていないであろう、茶色く古い客車だった。
『銀河鉄道999』に出てくるような四人がけの客車の座席に、制服を着た学生が多数座って騒いでいる。
 自分もその学生の一人だった。聞こえてくる話に耳を傾けていると、どうも彼らも自分も修学旅行の最中だった。
 ところが。
 烈車が止まり、駅員によるその駅名が放送されると、それを聞いた自分は、
「降りなきゃ」
 ととっさに思い、急いで列車を降りてホームに立った。
 すると、列車の扉が締まり、ホームに一人自分を残して、列車は行ってしまった。
 それでも自分はなぜか、その駅に降りて急いで行かないといけない場所があることが分かっていた。
 その駅はホームが四つほどある大きな駅なのに、改札口は自動改札口ではなかった。昔ながらの人が入って切符を確認する作りなのたが、いないといけない駅員が改札に立っていなかった。
 しかし、自分は修学旅行の途中の学生なのだから、切符はない。
 そして改札口のすぐ前に、廃車にしてしまったお気に入りだった青いスクーターがあった。間違いなく自分のスクーターなのだ。
 躊躇なく改札を出て、そのスクーターに近づいた。キーホルダーから鍵を取り出し、頑丈なタイヤロックを外して、スクーターにキーを差し込むと、エンジンがかかった。
 確かに自分が昔、乗っていたスクーターだったが、何だか見た目がおかしい。
 よくよく見てみると、フロントつまり前輪のブレーキがごっそりと外されていた。
 元は油圧でのフロントブレーキのはずだが、そこには外された跡が残っている。
 エンジンはかかる。走ることはできる。
 でも後輪しかブレーキはない。
 自分は仕方なくそのスクーターを押して歩くことにした。
 時代錯誤だが、スマートフォンは持っていて、このすぐ近くに知り合いの会社があるので、取り敢えずそこにバイクを置かせてもらい、修理を呼ぼうと考えていたのだが、電話をかけた相手の受付の女性に拒否されたのである。
「あの。僕、東岡ですけど?」
 と言うと、
「東岡さんでも、うちの会社にバイクを置くことはできません。それよりも東岡さん」
「はい」
「あなた、修学旅行はどうしたのですか?」
 と言われ、
「自分のバイクのブレーキが壊されて、盗まれているんですよ。そんなの、修学旅行どころじゃないでしょう」
 と言って、電話を切った。
 そう、修学旅行よりもバイクの修理の方が優先だ。修学旅行と言っても、どうせ二三日しか日程はない。後で担任の女の先生には、
「修学旅行は抜けます」
 と後で伝えることにした。
 バイクを優先的に修理して乗れるようにしないと。
 と強く決心しながら、長い直進する舗装されていない土道を、延々と歩いて行くと、大きな川にさしかかったところで、目が覚めました。

終わり。

令和5年4月17日。

※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

幽子さんの謎解きレポート~しんいち君と霊感少女幽子さんの実話を元にした本格心霊ミステリー~

しんいち
キャラ文芸
オカルト好きの少年、「しんいち」は、小学生の時、彼が通う合気道の道場でお婆さんにつれられてきた不思議な少女と出会う。 のちに「幽子」と呼ばれる事になる少女との始めての出会いだった。 彼女には「霊感」と言われる、人の目には見えない物を感じ取る能力を秘めていた。しんいちはそんな彼女と友達になることを決意する。 そして高校生になった二人は、様々な怪奇でミステリアスな事件に関わっていくことになる。 事件を通じて出会う人々や経験は、彼らの成長を促し、友情を深めていく。 しかし、幽子にはしんいちにも秘密にしている一つの「想い」があった。 その想いとは一体何なのか?物語が進むにつれて、彼女の心の奥に秘められた真実が明らかになっていく。 友情と成長、そして幽子の隠された想いが交錯するミステリアスな物語。あなたも、しんいちと幽子の冒険に心を躍らせてみませんか?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

処理中です...