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【34-3】優子「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
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【34-3】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話
【34-3】優子「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
略して『ふたいも』です。
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
【34-3】優子「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──【34-3】──
五人がトイレから帰ってくると、
「さあ。今から真剣に試験勉強よ」
と和葉は数学の教科書を開いた。
「今まで中心になって遊んでいたからな」
と竜馬が茶化すと、
「お兄ちゃん。集中したいの。黙っててくれる」
と怒気を少し込めて言った。
「え? あ! ごめん……」
と竜馬も教科書を開いた。
「ねえねえ。優子お姉さん。和葉お姉ちゃんとはどこまで進んでるんですか? デートはしましたか~?」
と由紀が言うと、
「由紀ちゃん。今は勉強の時間。私語は慎んでちょうだい」
とこれもキツ目に注意した。
「あ……。ごめんなさい……」
と由紀は素直に謝った。
それから数十分間の沈黙が流れたが、
「数学はある程度、理解したわ。次は気分を変えて地歴よ」
と和葉は独り言を言って、地歴の教科書を開いた。
「地歴って範囲が広くて覚えるのが大変じゃない?」
と優子は和葉に言うと、
「実はね。私は覚えようと思って集中しながら見たものは、映像として頭の中に記憶することができるのよ」
と和葉は優子へ自慢げに言った。
「え? それ、本当なの?」
「そうよ。じゃあ、見せてあげる」
と言うと、和葉はその場にいる全員に地歴の世界史のあるページを見せると、
「じゃあ、今からこのページを覚えるわ」
と言うと、開いたページを真剣な面持ちで眺め始めた。
その場にいる全員が半信半疑で、その様子を見つめていると、
「よし。覚えたわ」
と言って開いていたページを閉じて、メモ代わりに使っていたノートに何かを書き始めた。
和葉がシャープペンシルを走らせる音が延々と聞こえる。
「ねえ。私、見てていい?」
と小夏が席を立つと、
「私も見たい。いいでしょう?」
と一子も席を立って、和葉の後ろへ歩いて行った。
隣りに座っていた由紀も、
「和葉お姉ちゃん、私にも見せて」
と和葉の方に身体を寄せた。
シャッシャッというシャープペンシルの芯が、紙の上を走る音がする。
すると、
「凄い……。本当に?」
と一子。
「和ちゃんとは長い付き合いだけど、まさかこんな能力があったなんてね」
と驚いているのは小夏。
「うわ~。和葉お姉ちゃん、凄~い」
と由紀。
するとアッという間に、地歴の教科書の世界史のページをノートに描き写してしまった。もちろん、イラスト入りで。
「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
と優子は大きくため息をついた。
「それってもしかして瞬間記憶能力ですか? あれ? 竜馬さん、どうしました?」
と薫。
「いや。和葉は確かに凄いよ。見た物をすぐに絵に出来ることは知ってる。でも文章や文字までも瞬時に見て覚えるなんてできたかな?」
と頭を傾げながら龍馬は言った。
すると、
「新屋敷さん。それってもしかして頑張って覚えたページを、ただノートに描いてるだけなんじゃないの?」
と一子は指摘した。
「あら。一子さん、言うわね。分かったわ。なら、一子さんが適当に開いたページを描き写してあげるわ。それなら納得するでしょう」
と和葉は自信満々で言った。
「え? いいの?」
「いいわよ。中間テストの範囲なら、どの教科でも構わないわよ。どうぞ」
「本当に?」
「本当よ。さあ、時間がもったいないから早く選んでよ」
「分かったわ。ならこの生物なんてどう? 今回のテストの範囲で覚えないといけない大事なページをだけど」
と該当する生物の教科書で染色体のページを開いて見せた。
「あら。一子さん、なかなか優しいわね。もっと無意味なページでも言ってくるのかと思ったわ」
と和葉は少し驚いて見せた。
「言っとくけど、私はそんなに意地悪な人間じゃないから」
と少し照れながら言うと、
「こんなに性格がいいのに、何で自分のクラスの二組に友達がいないのかしらね?」
と和葉はとても言いにくいことをハッキリと指摘した。
「はっ! そっ、そんなの知らないわよ!」
と少し悲しい気持ちの籠(こ)もった言い方をした。
「それって多分だけど、入学早々に生徒会に誘われて、休み時間や放課後にたくさん仕事を手伝ったせいじゃないの?」
と優子がポツリと言った。
「えっ。そうなの?」
と和葉。
すると、
「だって、この学校の生徒会って、会計を必ず一年生から選ぶじゃない。お金も扱う大切な仕事だから、必ず成績上位者から選ぶみたいなのよね」
と優子。
「そうなの? つまり成績の悪い者はお金をネコババする可能性が高いって判断なのかしら?」
と和葉。
「そこまでは知らないわよ」
と言い優子は、
「和葉って、言いにくいことをズバズバ言うのね」
と呆れたような、それでいて感心したような言い方をした。
「勉強が出来るからお金を盗まないという発想に、私は正直引っかかるわね」
と和葉が言うと、
「確かに考えようによっては、勉強が出来ない生徒はお金を盗むかもしれない、とまでは行かなくても、何だか疑られているみたいでよい気持ちではないわね」
と優子。
「私も詳しくは知らないけど、会計を成績優秀な一年生から選ぶのは、伝統みたいなものだから、そこまで考えてないと思うわよ」
と一子は言った。
「それにしてもよ。よくよく考えたら真っ先に和葉が生徒会に誘われたはずよね」
と優子は不思議そうに言った。
和葉は少し考えて、
「あ~。そう言えば入学早々に上級生二人に話しかけられて、会計の仕事を頼めないかって言われたわ」
と思い出していた。
「ちょっと! 上級生二人って、それ九条会長と大葉副会長だったんじゃないの?」
と一子。
「あ~。そう言えばそうかも」
「あなた、本当に一目見て記憶できる能力を持ってるの?」
と鋭く一子に指摘されると、
「今、考えたら確かに会長さんと副会長さんだったわ。でもね」
「でも何よ?」
「二人の大きな胸に正直、圧倒されてしまって、思わず断わってしまったわ」
と和葉は答えた。
「えっ! 何、その断わる理由。胸が大きいから断わるって!」
と一子は引き気味である。
「実は私も誘われたのよね。会計に。多分、和葉が断ってからだと思うけど」
と優子。
「そうなの? でも優子はやらなかったのよね」
と和葉。
「ええ。まあ」
と少し優子は照れた。
すると和葉は少し考えて、
「それって、やらなかったんじゃなくて、断られたんじゃないの?」
と優子にそう言うと、
「え? 何で私だと断られるのよ! 失礼しちゃうわ!」
と優子は怒気を込めて言った。
すると和葉は、
「その大きなHカップの胸に、小銭を挟んで隠すからとか」
「そ! そんなことする訳ないでしょう!」
と優子は顔を真っ赤にして机に手を付いて、立ち上がった。
「だから、一子が会計に選ばれたって訳ね」
と和葉が言うと、
「誰だ! 今、胸から小銭が落ちる想像をしたヤツは!」
と一子は怒鳴ったのだった。
「まあ、一子もそんなに怒らないで。楽しい冗談はこのくらいにしておいて」
との和葉の言葉に、
「私は全然、楽しくないんですけど!」
と怒り心頭の一子を無視して、
「本当のところ、和葉は何で生徒会の会計を断ったの? 大学受験の内申書が有利になるらしいから、和葉ならやりそうなんだけど」
と優子は訊ねた。
「そんなの決まっているじゃない」
「なに?」
「優子よりもおっぱいで小銭が挟めないからよ」
と明らかにふざけていると、
「あんたねえ~。いい加減に!」
と優子。
「ウソウソ。ごめんなさい。ねえ、一子さん」
「そこで私の名前を出すのは、やめてくれないかしら!」
と胸の話題は一子に取っては禁句に近いようだった。
「断わった理由はね。お兄ちゃんと毎日、下校したかったからよ」
と和葉は言って竜馬を見つめた。
「竜馬君。愛されているね」
と春樹は竜馬へ微笑む。
「そ、そうだね。でも僕は和葉が会計になったとしても、一緒に帰るために待つけどね」
と言うと、
「竜馬さん、優しい……」
と薫が頬を少し赤らめながら言った。
「そんな。優しいだなんて。そうだ! 優子さんはどうして会計を断わったんだい?」
と竜馬は照れ隠しに訊いた。
「優子さんじゃなくて、優子で」
「あ。ごめん。優子」
と竜馬が訂正すると、少し嬉しそうに微笑み、
「それは会計になったら、ある友達と一緒に帰れなくなるからよ。一目見た時から今もだけど、その人と一緒にいつかは帰りたいなあ~、って思ったから……」
と頬を仄(ほの)かに染めて恥ずかしさからか、あからさまに竜馬から視線を外して言った。
「まあ、それは正解ね。実際に一子さんに友達がいなくて困っているものね」
と和葉が一子に言うと、
「べっ、別に友達がいなくても困ってないわよ」
と赤面し、焦っている様子だった。
「そんなことよりも、生物の染色体のページを見させてもらっていいかしら? やるならさっさと記憶して、さっさと終わらせたいんだけど」
と和葉は不満げに言ったが、
「生徒会の会計の無関係な話の中心は、明らかに和ちゃんだったような気がするけどなあ~」
と小夏が指摘した。
2024年7月12日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
【34-3】優子「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
略して『ふたいも』です。
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
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──【34-3】──
五人がトイレから帰ってくると、
「さあ。今から真剣に試験勉強よ」
と和葉は数学の教科書を開いた。
「今まで中心になって遊んでいたからな」
と竜馬が茶化すと、
「お兄ちゃん。集中したいの。黙っててくれる」
と怒気を少し込めて言った。
「え? あ! ごめん……」
と竜馬も教科書を開いた。
「ねえねえ。優子お姉さん。和葉お姉ちゃんとはどこまで進んでるんですか? デートはしましたか~?」
と由紀が言うと、
「由紀ちゃん。今は勉強の時間。私語は慎んでちょうだい」
とこれもキツ目に注意した。
「あ……。ごめんなさい……」
と由紀は素直に謝った。
それから数十分間の沈黙が流れたが、
「数学はある程度、理解したわ。次は気分を変えて地歴よ」
と和葉は独り言を言って、地歴の教科書を開いた。
「地歴って範囲が広くて覚えるのが大変じゃない?」
と優子は和葉に言うと、
「実はね。私は覚えようと思って集中しながら見たものは、映像として頭の中に記憶することができるのよ」
と和葉は優子へ自慢げに言った。
「え? それ、本当なの?」
「そうよ。じゃあ、見せてあげる」
と言うと、和葉はその場にいる全員に地歴の世界史のあるページを見せると、
「じゃあ、今からこのページを覚えるわ」
と言うと、開いたページを真剣な面持ちで眺め始めた。
その場にいる全員が半信半疑で、その様子を見つめていると、
「よし。覚えたわ」
と言って開いていたページを閉じて、メモ代わりに使っていたノートに何かを書き始めた。
和葉がシャープペンシルを走らせる音が延々と聞こえる。
「ねえ。私、見てていい?」
と小夏が席を立つと、
「私も見たい。いいでしょう?」
と一子も席を立って、和葉の後ろへ歩いて行った。
隣りに座っていた由紀も、
「和葉お姉ちゃん、私にも見せて」
と和葉の方に身体を寄せた。
シャッシャッというシャープペンシルの芯が、紙の上を走る音がする。
すると、
「凄い……。本当に?」
と一子。
「和ちゃんとは長い付き合いだけど、まさかこんな能力があったなんてね」
と驚いているのは小夏。
「うわ~。和葉お姉ちゃん、凄~い」
と由紀。
するとアッという間に、地歴の教科書の世界史のページをノートに描き写してしまった。もちろん、イラスト入りで。
「和葉。あなた、そんな凄い能力を持っていたのね。これじゃあ、私がいくら勉強しても、和葉に勝てるはずはないわ」
と優子は大きくため息をついた。
「それってもしかして瞬間記憶能力ですか? あれ? 竜馬さん、どうしました?」
と薫。
「いや。和葉は確かに凄いよ。見た物をすぐに絵に出来ることは知ってる。でも文章や文字までも瞬時に見て覚えるなんてできたかな?」
と頭を傾げながら龍馬は言った。
すると、
「新屋敷さん。それってもしかして頑張って覚えたページを、ただノートに描いてるだけなんじゃないの?」
と一子は指摘した。
「あら。一子さん、言うわね。分かったわ。なら、一子さんが適当に開いたページを描き写してあげるわ。それなら納得するでしょう」
と和葉は自信満々で言った。
「え? いいの?」
「いいわよ。中間テストの範囲なら、どの教科でも構わないわよ。どうぞ」
「本当に?」
「本当よ。さあ、時間がもったいないから早く選んでよ」
「分かったわ。ならこの生物なんてどう? 今回のテストの範囲で覚えないといけない大事なページをだけど」
と該当する生物の教科書で染色体のページを開いて見せた。
「あら。一子さん、なかなか優しいわね。もっと無意味なページでも言ってくるのかと思ったわ」
と和葉は少し驚いて見せた。
「言っとくけど、私はそんなに意地悪な人間じゃないから」
と少し照れながら言うと、
「こんなに性格がいいのに、何で自分のクラスの二組に友達がいないのかしらね?」
と和葉はとても言いにくいことをハッキリと指摘した。
「はっ! そっ、そんなの知らないわよ!」
と少し悲しい気持ちの籠(こ)もった言い方をした。
「それって多分だけど、入学早々に生徒会に誘われて、休み時間や放課後にたくさん仕事を手伝ったせいじゃないの?」
と優子がポツリと言った。
「えっ。そうなの?」
と和葉。
すると、
「だって、この学校の生徒会って、会計を必ず一年生から選ぶじゃない。お金も扱う大切な仕事だから、必ず成績上位者から選ぶみたいなのよね」
と優子。
「そうなの? つまり成績の悪い者はお金をネコババする可能性が高いって判断なのかしら?」
と和葉。
「そこまでは知らないわよ」
と言い優子は、
「和葉って、言いにくいことをズバズバ言うのね」
と呆れたような、それでいて感心したような言い方をした。
「勉強が出来るからお金を盗まないという発想に、私は正直引っかかるわね」
と和葉が言うと、
「確かに考えようによっては、勉強が出来ない生徒はお金を盗むかもしれない、とまでは行かなくても、何だか疑られているみたいでよい気持ちではないわね」
と優子。
「私も詳しくは知らないけど、会計を成績優秀な一年生から選ぶのは、伝統みたいなものだから、そこまで考えてないと思うわよ」
と一子は言った。
「それにしてもよ。よくよく考えたら真っ先に和葉が生徒会に誘われたはずよね」
と優子は不思議そうに言った。
和葉は少し考えて、
「あ~。そう言えば入学早々に上級生二人に話しかけられて、会計の仕事を頼めないかって言われたわ」
と思い出していた。
「ちょっと! 上級生二人って、それ九条会長と大葉副会長だったんじゃないの?」
と一子。
「あ~。そう言えばそうかも」
「あなた、本当に一目見て記憶できる能力を持ってるの?」
と鋭く一子に指摘されると、
「今、考えたら確かに会長さんと副会長さんだったわ。でもね」
「でも何よ?」
「二人の大きな胸に正直、圧倒されてしまって、思わず断わってしまったわ」
と和葉は答えた。
「えっ! 何、その断わる理由。胸が大きいから断わるって!」
と一子は引き気味である。
「実は私も誘われたのよね。会計に。多分、和葉が断ってからだと思うけど」
と優子。
「そうなの? でも優子はやらなかったのよね」
と和葉。
「ええ。まあ」
と少し優子は照れた。
すると和葉は少し考えて、
「それって、やらなかったんじゃなくて、断られたんじゃないの?」
と優子にそう言うと、
「え? 何で私だと断られるのよ! 失礼しちゃうわ!」
と優子は怒気を込めて言った。
すると和葉は、
「その大きなHカップの胸に、小銭を挟んで隠すからとか」
「そ! そんなことする訳ないでしょう!」
と優子は顔を真っ赤にして机に手を付いて、立ち上がった。
「だから、一子が会計に選ばれたって訳ね」
と和葉が言うと、
「誰だ! 今、胸から小銭が落ちる想像をしたヤツは!」
と一子は怒鳴ったのだった。
「まあ、一子もそんなに怒らないで。楽しい冗談はこのくらいにしておいて」
との和葉の言葉に、
「私は全然、楽しくないんですけど!」
と怒り心頭の一子を無視して、
「本当のところ、和葉は何で生徒会の会計を断ったの? 大学受験の内申書が有利になるらしいから、和葉ならやりそうなんだけど」
と優子は訊ねた。
「そんなの決まっているじゃない」
「なに?」
「優子よりもおっぱいで小銭が挟めないからよ」
と明らかにふざけていると、
「あんたねえ~。いい加減に!」
と優子。
「ウソウソ。ごめんなさい。ねえ、一子さん」
「そこで私の名前を出すのは、やめてくれないかしら!」
と胸の話題は一子に取っては禁句に近いようだった。
「断わった理由はね。お兄ちゃんと毎日、下校したかったからよ」
と和葉は言って竜馬を見つめた。
「竜馬君。愛されているね」
と春樹は竜馬へ微笑む。
「そ、そうだね。でも僕は和葉が会計になったとしても、一緒に帰るために待つけどね」
と言うと、
「竜馬さん、優しい……」
と薫が頬を少し赤らめながら言った。
「そんな。優しいだなんて。そうだ! 優子さんはどうして会計を断わったんだい?」
と竜馬は照れ隠しに訊いた。
「優子さんじゃなくて、優子で」
「あ。ごめん。優子」
と竜馬が訂正すると、少し嬉しそうに微笑み、
「それは会計になったら、ある友達と一緒に帰れなくなるからよ。一目見た時から今もだけど、その人と一緒にいつかは帰りたいなあ~、って思ったから……」
と頬を仄(ほの)かに染めて恥ずかしさからか、あからさまに竜馬から視線を外して言った。
「まあ、それは正解ね。実際に一子さんに友達がいなくて困っているものね」
と和葉が一子に言うと、
「べっ、別に友達がいなくても困ってないわよ」
と赤面し、焦っている様子だった。
「そんなことよりも、生物の染色体のページを見させてもらっていいかしら? やるならさっさと記憶して、さっさと終わらせたいんだけど」
と和葉は不満げに言ったが、
「生徒会の会計の無関係な話の中心は、明らかに和ちゃんだったような気がするけどなあ~」
と小夏が指摘した。
2024年7月12日
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