双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

東岡忠良

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【0】小説の宣伝を竜馬と和葉にお願いしてみた。『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』の宣伝。

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【0】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

略して『ふたいも』です。

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

【0】小説の宣伝を竜馬と和葉にお願いしてみた。『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』の宣伝。

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──1──

「お兄ちゃん、『もといも』って知ってる?」 
 高校から帰宅して落ち着いた頃に、和葉が訊いた。
「え? 『ふたいも』だろう?」
 和葉は竜馬に身体を寄せて見上げた。
「違うわよ。『もといも』よ。『ふたいも』は私達の日常の記録でしょう?」
「あ~。僕達のことは、日常の記録って表現するのか」
「でね。記録者の『東岡忠良(あずまおかただよし)』って人にね。頼まれたの」
「頼まれたのか?」
「うん。お金で」
「お金かよ!」
 と竜馬。
「はい。これが報酬よ」
 と和葉は竜馬に二千円を渡した。
 その時に、一通の封筒が落ちた。でも二人共、気がついていない。
「……結構、リアルな報酬だな……」
 と二千円を受け取った。
「まあ、もっと欲しいところだけど、そこはね。私達、まだ学生だから」
「そうだな」
「ということで、今回紹介する作品は!」
「作品は?」
「東岡忠良の書く『ファンタジー小説大賞』エントリー作品!」
「勿体ぶり過ぎじゃないか?」
「『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』の宣伝です!」
「誰に言ってんだ?」
「誰って前に置いてあるスマホによ」
「え! 撮影しているのかよ! 早く言えよ!」
 と竜馬は制服の身だしなみを整えた。
「『ファンタジー小説大賞』にエントリーするくらいだからね」
「うん」
「ファンタジー小説なのよ」
「それはそうだろう」
「でね。その作品はね」
「作品は?」
「最強クラスの魔力を持つ双子の妹とね」
「なんか、聞いたことのある設定だな」
「魔力『一』しかない双子のお兄さんが主人公なの」
「え? 魔力『一』って。そんなに弱い主人公で大丈夫なのか?」
「でも実はそのお兄さんには、表に出てこない神様だけが持つ光力(ビームパワー)という強い力が隠されているのよ」
「ほうほう」
「でも転生されたその世界にはね。光力(ビームパワー)を計測する技術がなくてね」
 竜馬はじっと聞いている。
「お兄さんは魔法学校に入学する直前まで、周りの学生達からは『無能扱い』を受けてしまうの」
「あ~。何だかその主人公の気持ちが分かるなあ~」
「それでね。せっかくの光力(ビームパワー)を持って転生したのに、このままでは一生無能として生きなければならないと思った、転生させた女神様がね」
「うん」
「妹として生まれ変わって、光力(ビームパワー)の概念や使い方を教えるって内容なの」
「なるほど」
「そんな時に、突然兄妹らはドラコンに襲われるわ」
「おい。それ、大丈夫なのか?」
「有能な双子の妹と、女神が転生した三歳下の妹を、主人公はドラコンから守ることができるのか? という第一話なのよ」
「ふ~ん。そうなのか……」
「あまり、興味がないみたいね」
「というか。先に光力(ビームパワー)の事を聞いちゃったからな。その力に目覚めてドラコンをやっつけるんだろ?」
 少しの沈黙の後、
「お兄ちゃん。宣伝する気ある?」
「え。あ、あるよ」
 と慌てる竜馬。
「……。あ、そうだわ。お兄ちゃんが食いつく内容があったんだわ」
「? 何なんだ?」
「双子の妹も、女神の妹もね」
「うん」
「胸が大きいみたい」
「おい。何でそれが僕が食いつく内容になるんだよ!」
「え。お兄ちゃん、大きな胸って嫌いなの?」
「え……。そりゃあ~。嫌いじゃないけど」
「でしょう。それでね。主人公のお兄さんはね。自分が原因で死なせてしまった美しい女の子の命を助けるの」
「うんうん」
「それでね。命を助けた女の子に結婚を迫られるのよ」
「え! それってどういう状況?」
「少しは『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』を読みたくなったでしょう」
「まあ。そうだな」
「ちなみに」
「ちなみに?」
「求婚してきた女の子は美人でオッパイも大きいわ」
「オッパイ、言うなよ」
「ということで、騙されたと思って一度、読んでみて下さい。『もといも』で検索したら出てきます」
「え~っと、よろしくです」
「もし、気に入られたら、『お気に入り』と『大賞ポイント』を押して下さいね」
「押して下さい」
「東岡忠良さんだけがやる気を出すと思います」
「宣伝を頼まれたんだから、僕らもやる気を出そうよ」
 と竜馬は言った時にふと下を見ると、和葉の落とした開封された封筒を見つけて拾った。
「では!『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』をよろしくお願いします!」
 と前に一歩出て、和葉は宣伝した。
竜馬は封筒の中を見ると、表情が険しくなった。
「和葉さん……」
「なに? あ!」
 と和葉は焦った。
「これは何かな~?」
「いや~。それはその~」
 と和葉は竜馬と目を合わせない。
「新屋敷竜馬さま。新屋敷和葉さま。お世話になっております。今回、新作の『元女神の妹から「光の力は神の力」と急に言われても!』略して『もといも』の宣伝をお願いします。そのお礼として」
 と竜馬はここでわざと一旦区切り、
「お礼として『二万円』をここに同封致します。って書いてあるぞ。確かに二万円が入っているし、この封筒は現金書留だし」
 和葉は顔を背(そむ)けたままである。
「僕が受け取ったのは、間違いなく二千円だったよな……」
 と竜馬は怒りよりも呆れていた。
 しばらく、和葉は黙っていたが、
「お兄ちゃん!」
「なんだよ」
「お兄ちゃんは『ドリフターズ』ってお笑いのグループを知ってる?」
「まあ、名前だけは」
「そこでね。リーダーのいかりや長介さんは、ギャラをこういう分け方をしたの」
「どういう分け方だよ」
「いかりや長介さんはギャラの六割を自分が取って、残りを他のメンバー四人で分けたのよ」
「え? つまり、和葉がリーダーだから六割取って、僕はメンバーだから一割の二千円ってことかよ!」
 和葉はゆっくりと竜馬を見て、
「まあ、そういうことになるわね」
 と「えへっ!」と言うと、
「和葉さん~! ちょっとこっちに来なさい! 説教してやる~!」
 と竜馬は言った。
 和葉はスマホのカメラに向かって、
「皆さんは、こういうお金の分配をしたらダメですよ。それと『双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話』略して『ふたいも』もお願いします!」
 と言い残して、スマホのカメラ機能を切った。

2023年9月16日。

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