双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

東岡忠良

文字の大きさ
上 下
32 / 45

【31】和葉。変態と遭遇し、『CASIO EX-ZS6』が変態のおちんちんを捉え、必殺『シャインスパーク』を炸裂させる。

しおりを挟む
【31】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

略して『ふたいも』です。

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

【31】和葉。変態と遭遇し、『CASIO EX-ZS6』が変態のおちんちんを捉え、必殺『シャインスパーク』を炸裂させる。

※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
 お待ちしています。

──1──

「ここが如月公園よ」
 と新屋敷和葉は全員を引き連れてきた。
「あ~。ここ、久しぶりにきたな。小学校いらいかな」
 と新屋敷竜馬。
「小学生の時に、よく虫取りにきたよね~。特に蝉(せみ)取り~」
 と三上小夏。
「地図で見たことはあったけど、意外と広いところね」
 と相生優子。
「私は地区が違うので初めてきました」
 と瀬川薫。
「僕は引っ越してきたばかりだから、初めてだな」
 と園田春樹。
「でも何を根拠に、この公園に変態が出るって予想したんだよ」
 と竜馬が和葉に疑問を投げかけると、和葉は鞄(かばん)から地図を印刷した紙を取り出した。
「今まで変態が現れた場所に印を付けていくでしょう」
 とその地図を見せた。
「確かに印はついているけど、何で赤い彗星のマークなんだ?」
 と竜馬。
「通常の三倍、女の子達を驚かせているからよ」
 と『よくぞ、いいところに気がついた』という雰囲気を出していたが、
「お前、それ僕達以外で絶対に言うなよな」
 と竜馬。
「分かりやすくていいでしょう」 
「まあ、それは確かだが」
「あ。私が変態を見たところにも印がある……」
 と優子が少し不安そうに言った。
「で、どこの星の間でもいいんだけど、この星から星の半径を取り敢えずコンパスを当てて、星を中心にして赤い線の円を描くの」
 とすでに赤い線で円が描かれている。
「するとね」
「すると?」と全員。
「大体、その中心になるのが、この如月公園なのよ」
「え? そんな理由で?」
 と竜馬は疑問を持たざる得ない。
「まあ、ただ言えることは」
 と言いながら、和葉は制服のスカートを折って、ミニスカートの丈にし始めた。
「今日がダメだったらしばらくは諦めるわ。もうすぐ中間テストだし」
「その方がいいと思うぞって! 和葉! 何でそんなにスカートを短くしてんだよ!」
 と竜馬は指摘した。
 和葉の肉付きの良い太腿(ふともも)が露わになった。
「ちょ! ちょっと和葉さん……」
 と春樹は赤面して慌てている。
「これくらいやらないと変態が出てこないでしょうからね」
「お前な。自分の身体を餌(エサ)にするのかよ」
 と竜馬は賛成できないようだった。
「だからね」
 と和葉は作戦を語った。
 内容はこうだった。
 変態は必ず女子が一人の時に現れる。
 男としては小柄らしいので、大人しそうな女子が狙われていた。それは高校生で特に如月学園高校の生徒が中心であった。
「まあ、小学生や中学生が狙われていないだけ、変態はロリコンじゃないみたいね」
「女子高生を狙う時点で、充分にロリコンだと思うけど」
 と竜馬。
「でね。お兄ちゃんとみんなは、あの垣根の向こうにある東屋(あずまや)で私を見守っていて欲しいの」
 と指さしたところは、テーブルと長椅子の固定された屋根の付いた休憩所であった。
「おい。あそこだと結構、距離あるぞ」
 と心配そうな竜馬。
「もし、危険だと思ったらお兄ちゃん、助けに来て。で、お兄ちゃんがやられたら、みんなで来て」
 と和葉。すると、
「そんなのダメだよ! ボクもすぐ助けに行くよ!」
 と春樹。
「私も行く! 怖いけど!」
 と優子。
「変態! 許せないです! 私も助けます!」
 と一番小柄な薫が怒りを露わにしている。
「私、すぐに飛び出して蹴飛ばしてやるわ! あ~、何だか小学生の時を思い出すな。意地悪ばかりする一つ上の男子を、馬乗りになって殴り続けて前歯を折ってやったっけ~」
 と小夏は清々しい思い出を語るように話す。
 優子と薫と春樹らから悲鳴に近い「え~!」が聞こえた。
「あった、あった。確か小四の時だったはず。正直、怖かったけど、上級生の腕を必死に抑えたよ。小夏が殴られないように」
「私も覚えているわ。おかげでたくさん、殴ることができたわ」
 と小夏。
 すると和葉がしみじみと、
「そうそう。こんなチャンスは滅多にないから、すぐに上級生の足の方に回ったのよ」
「二人を助けたのね」
 と優子。
「ううん。こんなチャンスは滅多にないから、足の方に回って苦労しながら短パンとパンツを脱がして、それを出来るだけ遠くに捨てたのよ。あの時、他人で見た最後のおちんちんだったわ。懐かしい。でも泣いちゃうとは思わなかったけど……」
 と無理やり美化しようする空気感を漂わせていた。だが優子と薫と春樹はドン引きである
「あの後その上級生の親が、うちに怒鳴り込んできたけど、たくさんの下級生をいじめていたことが発覚した上に、うちのお父さんにボロクソ言われていたよね~」
 と小夏。
「小夏んちのお父さん、見た目はプロレスラーみたいだものね」
 と和葉。
「結局、その上級生はみんなに下半身を見られて恥ずかしくなったのか、いつの間にか引っ越していったよな」
 と竜馬。
「でしばらく最強は小夏ちゃんだったわよね。懐かしいわ……」
「え! 小夏さん、そんなに強かったの?」
 と春樹。
「やだあ~。たまたまよ。たまたま」
 と恥ずかしがる小夏。
「女子はもちろん、男子が特に怖がっていたわよね。『玉出しの小夏』って異名まで付いて」
「ちょ! 和ちゃん! それ、言わないでよ! それにズボンを脱がしたのは和ちゃんだったのに、なぜか私が脱がしたことになっていたんだから~!」
 と真っ赤になる小夏。
「ということで、暗くなるまで私、ここのベンチに座っているから、いざとなったら皆さん、助けてね」
 と言い、
「カシオEXILIM(エクシリム)! 激写!」
 と赤い顔の小夏の写真を、和葉は撮った。
 そして、せっかくだからと、この公園で記念写真も撮った。
 そしてここでSDカードを入れ替えた。
「SDカードを入れ替えるのか?」
 と竜馬が訊くと、
「そりゃそうよ。だって学校で写した写真の中に、変態のおちんちん画像が混ざっていたらおかしいでしょう」
 と言った。
「相変わらず、上手く誤魔化す知恵は冴えてるな」
 と竜馬はため息をついた。

「まだ、話は終わってなかったのに~」
 と不機嫌そうに東屋の椅子に座り、ブツブツ文句を小夏は言っている。
「正直、今の小夏ちゃんからは想像できないエピソードよね」
 と薫が言う。
「小学校の同級生から未だに言われるのよね。だから三人には知られたくなかったわ」
「『玉出しの小夏』をか?」
 と竜馬。
「竜ちゃん、二度も言わないの! それに何度も言うけど脱がしたのは和ちゃんなんだからね~」
「小夏は小四の時点で身長が一五五センチはあったものね。小五の男子にも負けないくらいの体格だったし」
「和ちゃんが一四五くらいで、竜ちゃんが一四〇あったかな?」
 と小夏は竜馬に訊(たず)ねた。
「ギリなかったかも」
 と答えると、
「えっ。竜馬って小四の時ってそんなに小柄だったの?」
 と優子。
「実はそうなの~。で今もそうだけど散髪が嫌いでね。髪を肩まで伸ばしていたことがあってね~」
「おい。その話は……」
 と竜馬は恥ずかしいのか止めようとする。
「あれは小三の時だったかな? 夢中で遊んでいたら、いつの間にか日が暮れちゃって、犬の散歩のおばさんに注意されてね」
「あ~。あの時のことか」
「そしたら、そのおばさんがね。言うの。『あなた、お兄さんなんだから、女の子達を早めに帰らせないといけませんよ』って」
 一同は黙って聞いている。
「それを私に言うのよね~」
 と小夏がため息をついた。
「え! 小夏ちゃんに言ったの?」
 と優子。
「竜馬さんじゃなくて?」
 と薫。
「え! 何で?」
 と春樹。
「それはもちろん、竜ちゃんが三人の中で一番女の子っぽくて、可愛かったからじゃないかな~」
 とニヤリと笑いながら、竜馬を見た。
 竜馬は恥ずかしいのか俯いている。
「和ちゃんも可愛かったけと、あの時の竜ちゃんには敵わなかったものね」
 竜馬は恥ずかしそうにしながら、
「小四まで全然、背が伸びなくてさ。上級生からは『カワイイ、カワイイ』って言われていたら、同級生まで同じように言われ始めてさ」
 とその時の状況を思い出したのか、竜馬は横を向いて暗い顔をした。
「でも今はこ~んなに背が伸びて男らしくなったよね~」
 と小夏は右手首を曲げたまま、それを自分の頭よりも上にあげた。
「本当に。本当に背が伸びて良かったよ」
 と竜馬が言うと、
「本当に羨ましい……」
 と春樹と薫が呟いた。
「あ。ごめん。そんなつもりじゃ……」
 と竜馬は焦った。
「僕もあるよ。ちょっと散髪に行かないで、髪が肩近くまで伸びた時に、女の子に間違われたことあるよ」
 と悲しい思い出を語るように春樹が言った。
「あの一件からすぐに髪を切りに行くようになったんだよな~」
 と話すと、
「春樹。僕も当時はそうだった……」
 と返すと、
「竜馬……」
「春樹……」
 と向かい合わせで、両腕をお互いの肩に乗せ合った。
 すると、
「和ちゃんが今のを見たら、絶対に『出来てる』とか『ボーイズラブ』とか言い出しそう」
 と小夏がからかうと、
 えっ!
 という表情になり、二人は離れた。 
 
──2──

 その頃、制服のスカートを短くして、ベンチに座り、教科書やノートのチェックをしている和葉を、離れた東屋で五人は見ている。
「あの子、こんな時でも勉強しているのね」
 と優子。
「和葉は確かに時間の使い方がうまいかもな。まあ、そのお陰でこっちはよく振り回されるんだけど」
「あ~。何となくわかる~」
 と竜馬以外全員が言った。
「それにしても、あそこでデジカメを用意して、変態が現れるのを持っている和葉が、うちの進学校でのトップ合格だなんて」
 と優子は悔しいやら、呆れるやら、何と言ったらよいのか分からないという空気感を出していた。
「それも二位は私以外にもう一人いるのよね。それも悔しい」
 と続けた。
「えっ。誰なんだい?」
 と竜馬が訊くと、
「生徒会にいたでしょう。橘一子よ」
 と答えた。
「どうして知っているの?」
 と薫。
「入学式の数日前に連絡があったの。新入生代表のスピーチを、一位の和葉が欠席した時に、どちらがやるかを決めることがあって」
「あ~。なるほど」
 と春樹。
「その時は橘さんがもうやる気満々で、私はもう辞退したんだよね」
「あ~。なんかそういうの好きそうな気がする」
 と竜馬は生徒会での橘一子の様子を見て、何だか納得してしまっていた。
「橘さん、当日きちんとスピーチを考えて来ていてね。和葉が来ていたのを見て、少し残念そうだったわ」
 と優子が言うと、
「そうそう。それと私と和葉との点数の差って二十八点も差があるのに、三位の人と私は二点差しかないのも、何だか悔しいのよね」
 と優子は和葉を睨んだ。
「だからなんだ。三位のボクが特待生扱いになっていたから、不思議に思っていたんだ」
 と春樹が照れながら言った。
「えっ! 春樹、三位で特待生なのかい?」
 と竜馬は驚いている。
「うん。とても助かってるよ。うち、普通の家庭だから」
 と後ろ頭を搔くと、
「えっ。私も三位で特待生なんです」
 と薫が驚いた表情で言った。
「えっ! そうなの瀬川さん」
 と春樹。
「はい。普段の年だと、優子さんや橘さんのテスト結果の人が一位らしいんですよ。なのでその流れで三位ですけど私も特待生なんです。あ。私達ですね」
 と春樹の方を向いてペロッと舌を出した。
「つまり、私達三人は打倒新屋敷和葉ってことなのね」
 と優子は離れたベンチに座っている和葉を凝視した。
「私も負けませんよ」
 と薫。
「ボクも」
 と春樹。
 すると、
「私達には関係のないお話だねえ~。ねえ~、竜ちゃん……」
 と暗い表情の小夏。
「うん……。そうだな~」
 と竜馬も下を向いた。
 そんな時だった。
「変な男が和葉さんに近づいているよ!」
 と春樹が言った。
 それは黒いコートにマスクをして、灰色の帽子を深く被った男だった。
「あ! あの男よ! あの男が私に出てきた変態よ!」
 優子は変態に会った時のことを思い出したのか、足が震えていた。

──3──

「お嬢ちゃん。一人かい……」
 と和葉は声をかけられた。
 和葉は顔をそちらに向けると、灰色の帽子を被り、大きめのマスクをし、黒いコートを着た男が立っていた。
すると、
「おお!」
 と和葉は立ち上がった。すると膝の上に置いていた教科書やノートが地面に落ちたが、全く気にせず、
「来たわね! 待ってたわ!」
 と叫ぶと、
「カシオEXILIM(エクシリム)! セット!」
 とポシェットから一秒もかからずに、中古のデジタルカメラを取り出した。
「な! なんだ?」
 と戸惑う変態。
「さあ、早く!」
 と片足を立てて地面に座った。完全に変態のおちんちんの高さにカメラを合わせている。
 すると、
「お嬢ちゃん。そんな座り方をしたら。ほら。その短いスカートの奥の下着が見えてるよ~」
 と言い、
「白くていい足してるね~。パンツも見えてるよ~。おじさん、もうたまんないよ~」
 と言いながら、黒いコートを開いた。
 すると、そこには何も着ていなかった。
 その瞬間!
「来た!」
 と和葉は叫ぶと、今までの女の子達との反応の違いに、さすがの変態も少し後ずさりした。
「カシオEXILIM(エクシリム)! 連続シャッター! オン! 名付けて」
 と一呼吸置いて、
「シャイン・スパーク!」
 と言いながら、シャコ~ン、シャコ~ンと連射した。
 それを少し離れたところから見ていた優子が言った。
「……ねえ。あの子ってうちの名門の進学校で一番の成績なのよね……」
 シャコ~ン、シャコ~ン!
「はい。そうですね、優子さん」
 と薫。
 シャコ~ン、シャコ~ン!
「ボクももっと勉強しよう。なんか、これじゃあ良くない気がする」
 と春樹。
 シャコ~ン、シャコ~ン!
「ホント。ごめん……。みんな、ごめん……」
 と謝る竜馬。
「ねえ。これ、助けに行った方がいいのかな? もう少し様子を見た方がいいかな? それと『シャイン・スパーク』って何?」
 と小夏。
「多分、古いアニメの必殺技の名前だと思う。和葉、そういうの好きだから」
 シャコ~ン、シャコ~ン!
 すると変態が言った。
「君みたいに可愛くて、オッパイ大きくて、足も舐めたくなる女の子が、パンツ見せながら写真を撮ってくれるなんて! おじさんのおちんちん、興奮して元気になっちゃったよ~」
 と言った時だった。
「え!」
 と和葉は言うと、シャッター音が消えた。
 するとカメラで撮るのをやめて、変態のおちんちんを凝視した。
「確認していい?」
「ああ。してくれ、お嬢ちゃん」
「それって、元気になっているの?」
「ああ。そうだよ~」
 と言うと、
「はあ~! 何よ、それ!」
 と怒りを込めた大きなため息をした後に、デジカメを操作し始め、
「カシオEXILIM(エクシリム)! データ削除!」
 とついさっき写した変態のおちんちん画像を一気に消した。
「おっ、おい! お前、何で消すんだ!」
 となぜか慌てる変態。
「何で消すかって? 何よ、その小さな物体」
「ち! 小さな物体!」
「物体じゃないわね。デキモノ? イボ? ウオノメ? ウオノメは足の裏にしか出来ないか」
「デキモノ? イボ? ウオノメって。どういう意味だ?」
 和葉はとても残念そうに、
「そこについているのって、おちんちんのつもり? ウソでしよう? そんなに小さいのは、おちんちんって言わないわよ。何よ、それ?」
「そ! それはどういうことだよ?」
 和葉は立ち上がり、変態のおちんちんを指さして大声で言った。
「あなた、その大きさで『元気になっている』って言ったわよね! 冗談じゃないわ! そんなに小さくて粗末なモノを、おちんちんって呼ぶのは止めて欲しいわ!」
 と怒りがこもっている。
「はっきり言うわ。それは、おちんちんじゃない! そんなに小さいのは、おちんちんじゃない! おちんちんていうのはね!」
 と和葉は素早くデジカメをポシェットに直すと、
「おちんちんっていうのはね。大きくなる前は、これくらいの大きさがあるのよ!」
 と両手のひらを左右に広げて、自分の顔の横幅くらいの長さにした。
「普通はこれくらいはあるのよ! ちなみにこの大きさは!」
 と一呼吸置いて、より大声で、
「私のお兄ちゃんのおちんちんの大きさよ!」
 と公園中に響くよく通る声で言った。
「りょ、竜馬のおちんちんってあんなに大きいの!」
 と驚く優子。
「竜馬さん、す! 凄い!」
 と薫も驚いている。
「凄いんだね。竜馬くんは……」
 となぜか、尊敬の眼差しで見てくる春樹。
「いや! ちょっと待ってくれ! そんな訳ないだろ! なあ、小夏?」
 と竜馬は小夏に助けを求めたが、
「確かに、あれくらいはあるんじゃない」
 と小夏も和葉と同じくらいの大きさを、両手で表した。
「いやいや! ちょっと待ってくれ~!」
 と竜馬から悲鳴に近い声が上がった。
 その声は変態と和葉にも届いていたが、二人にはそんな竜馬の叫びが聞こえないのか、
「言っとくけど、元気になったおちんちんの大きさはね。これくらいはあるのよ!」
 と明らかに和葉の顔よりも、大きな幅を両手で表した。
 そして、
「ちなみにこの大きさだけど、元気になったおちんちんは、私のお兄ちゃんのよ!」
 とこれも公園中に響くような大きな声で言った。
「竜馬……。あれって本当なの……」
 と優子は頬を赤らめて、和葉と竜馬を交互に見ている。
「竜馬さん。凄いんですね。私、小柄だから大丈夫かな……」
 と薫は俯く。
「竜馬くんって凄いんだね! いや~」
 と春樹は目を輝かせている。
 すると、
「和葉のやつ! みんな、あれはウソだから。あんなに大きい訳ないから」
 と言うと、
「なら、本当はどれくらいの大きさのなの?」
 と意外なことに優子が訊いてきた。
「えっ!」
 と狼狽(ろうばい)する竜馬。
「じゃあさ。大きくなる前って、本当はどれくらいの大きさなの?」
 と続けて訊くと、
「優子さん。そこは大きくなった方の、大きさを訊いた方がいいんじゃないかな」
 と意外にも薫が言った。
「かっ、薫ちゃんがそんなに食いついてくるなんて意外だね」
 と何とか誤魔化そうと竜馬はしようとしたが、
「だって私、小柄なんであんまり大きかったら、受け止められないなと思って……。ハッ! やだ! 私ったら……!」
 と赤面すると、顔を両手で覆った。
 すると、
「? ねえ、薫ちゃん。何で竜馬のおちんちんが元気になって大きかったら、小柄だと受け止められないの?」
 ととても不思議そうに質問してきた。
「えっ! えっとそのう……」
 と薫は答えられない。
「もう。教えてくれないの? なら、竜馬」
 と矛先が変わった。
「えっ! 僕かい?」
「そう。ねえ、何で竜馬のおちんちんが元気になって大きかったら、小柄な薫ちゃんが受け止められない訳?」
 と顔を近づけた。
「そんなの……。その……。あの……」
 としどろもどろにしていると、和葉が変態に対してはっきりと言った。
「あなたね。私は大いに期待したのよ。自分から女の子達におちんちんを見せに行くぐらいだから、さぞ! さそ! 立派なおちんちんなのだと想像したわ! それが何よ!」
 と言い、和葉の身体中から、怒りのオーラを感じる。
 そして、
「あなたね。大人のくせに、私のお兄ちゃんの小一時代よりも、小さなおちんちんをこちらは見せられて、心底ガッカリ。いや、そんなレベルじゃないわね! こうしてわざわざデジカメまで買ったというのに!」
 と東屋まで聞こえる大声で言った。
「わざわざデジカメまで買ったって、二千二百円のジャンク品だけどな」
 と竜馬。
 そして変態のおちんちんを指差し、
「そんな小さくて粗末で、ガチャガチャで出てきそうなおちんちん! 見せられたこっちが大迷惑よ!」
 と言うと、
 変態のおちんちんはいつの間にか、元気がなくなり萎(しぼ)んでより小さくなっていた。そして身体を震わせ始めた。
「まさか! あいつ、逆上するのか!」
 と竜馬は助けに行こうとしたが、
「あ~あ~あ~!」
 と変態は子供のように泣き出して、
「もう帰る……。もうやらない……。もうやだ~」
 と黒いコートを閉じると、和葉に背を向けて、鼻をすすりながらゆっくりと去って行った。
 それを見ていた小夏は、
「あの変態さん。女性恐怖症になるんじゃないかな~」
 と言うと、
「男の人の、それも変態のおちんちんが『小さい!』って怒る女子高生って、初めてじゃないですかね?」
 と薫。
「和葉……。あの子と下手にケンカって出来ないわね。……泣かされそう」
 と優子が言った。
 和葉は何事もなかったかのように、教科書などを拾って、鞄に詰め込むと、みんながいる東屋の方に歩いてきた。
「和葉。無事でよかったよ……」
 と竜馬は安堵している。
 すると、
「お兄ちゃんにお願いがあるんだけど……」
 と恥ずかしそうにしている。スカートはまだ短いままで、身体を横に向けて、横目で竜馬に視線を送った。
「なんだ? 僕に出来ることなら何でもやるけど」
 と言うと、和葉の表情がパッと明るくなり、
「ホント! よかったあ~。じゃあ、お兄ちゃん」
「ん。なんだ?」
「ここでパンツ脱いで。私、写真を撮るから」
 と言うと、
「カシオEXILIM(エクシリム)! セット!」
 とデジカメを素早く構えた。
「ちょっ! 何、考えてんだよ!」
 と怒りを表す竜馬。すると、
「だって、不完全燃焼なんだもの。あんな小指の出来損ないみたいな、おちんちんを見せられて、なんの参考にもならなかったわ」
 と言うと、
「さあ! お兄ちゃんのアメリカンドッグ並みの太さと、私の腕くらいの長さのある、自慢のおちんちんを出してちょうだい!」
 と言いながら、竜馬に近づくと、カメラを構えたまま、竜馬のベルトを外そうとした。
「ばっ! バカ! 何をするんだよ!」
 と慌てると、
「アメリカンドッグ並みの太さ!」
 と薫。
「和葉の腕と同じくらいの長さ!」
 と優子。
「やっぱり凄いんだね。竜馬は」
 となぜか感心する春樹。
「これ、もしかして止める人、いない?」
 と呆れ気味の小夏。
 そしてここで、
「ねえねえ、和ちゃん」
 と小夏が和葉の肩を叩いた。
「小夏ちゃん。今、忙しいから」
 と言うと、
「多分だけどさあ。竜ちゃんのおちんちんって、和ちゃんが思っているほど、大きくないと思うよ」
 と言った。これには和葉も反応し、
「小夏ちゃん、何を言っているの。私は確かに見たのよ。子供の頃のお兄ちゃんのおちんちんの立派さを!」
 と言い、続けて、
「小夏ちゃんも見たでしょう。一緒にお風呂に入った時の、あのお兄ちゃんのおちんちんの存在感……」
 とまるで、とても美しい思い出でも語るように言った。
「分かってる。でもさ。和ちゃんって、子供の頃にこーんな大きいバッタやカマキリを見たことあるでしょう」
 と小夏は両手を出して、顔ほどの幅を表した。
「あるわよ。それが何なの?」
「私、思うんだけどさあ~。子供の頃に見た物って、何でも大きくなかった? 動物でも昆虫でも何でも、とても大きく見えたり、感じたりしたじゃない」
 と諭すように言った。
「まあ、言われてみたら確かにそうだけど。でもそれは子供なんで、小柄で小さかったから、何でも大きく感じたからだと……。えっ! もしかして!」
 と和葉は何かに気づいた。
「竜ちゃんのおちんちんが大きく感じたのは、バッタやカマキリが大きく感じたのと、同じ理由だと私は思うんだけど?」
 と小夏。
 すると和葉は考え込んで、
「確かに一理あるわね……。いや、そうなのかも……」
 と考え込む。 
 すると、小夏は竜馬の横に立ち、 
「よかったわね。これで見せなくて済むね」
 と言った。
「あ? ああ。助かったよ、ありがとう」
 と竜馬が言った時だった。
「そうね。それは確かに。小夏ちゃん、ありがとう。じゃあ、お兄ちゃん」
「ん? なんだ?」
 と安心仕切った竜馬が返事をすると、
「本当の大きさを確認するために今、おちんちんを見せてくれるかな? あ。ここで出すのが恥ずかしいなら、家に帰ってでもいいけど」
 と言った。
「アハハ~。な~んの解決にもならなかったね~」
 と小夏。
竜馬は、
「あっ、あっ、アホか~!」
 と響き渡る声で叫んだ。

つづく。

登場人物。

橘一子(たちばないちこ)
 一年生で生徒会会計。入学試験では相生優子と同点数の次席の成績で、奨学金をもらっている。
 徒歩で通えるという理由で如月学園高校へ入学した。竜馬や和葉の隣りの学区で、中学校は別である。
 胸のサイズはAカップで身長は一五〇センチないのだが、本人は一五〇センチジャストと言い張っている。 

2023年9月15日

※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

昔義妹だった女の子が通い妻になって矯正してくる件

マサタカ
青春
 俺には昔、義妹がいた。仲が良くて、目に入れても痛くないくらいのかわいい女の子だった。 あれから数年経って大学生になった俺は友人・先輩と楽しく過ごし、それなりに充実した日々を送ってる。   そんなある日、偶然元義妹と再会してしまう。 「久しぶりですね、兄さん」 義妹は見た目や性格、何より俺への態度。全てが変わってしまっていた。そして、俺の生活が爛れてるって言って押しかけて来るようになってしまい・・・・・・。  ただでさえ再会したことと変わってしまったこと、そして過去にあったことで接し方に困っているのに成長した元義妹にドギマギさせられてるのに。 「矯正します」 「それがなにか関係あります? 今のあなたと」  冷たい視線は俺の過去を思い出させて、罪悪感を募らせていく。それでも、義妹とまた会えて嬉しくて。    今の俺たちの関係って義兄弟? それとも元家族? 赤の他人? ノベルアッププラスでも公開。

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

処理中です...