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【28】和葉。セカンドバッグから一秒でデジカメを取り出せる訓練をする。竜馬と優子はお互いを名前呼びの練習をする。
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【28】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話
略して『ふたいも』です。
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
【28】和葉。セカンドバッグから一秒でデジカメを取り出せる訓練をする。竜馬と優子はお互いを名前呼びの練習をする。
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──1──
「お兄ちゃん。ちょっとスマホを持って、私の部屋まで来てくれる」
と寝る前に中学校指定の紺色のスウェット姿に着替えたところで、和葉から声をかけられた。
「どうせ、ろくなことじゃないのだろうな……」
と予測をする。
和葉の部屋をノックした。
「どうぞ」
と言われ、恐る恐る部屋へ入る。
和葉はすでにいつもの水色の縦縞のパジャマ姿だった。だがなぜか、中学時代から持っている小さな肩掛けのポシェットを身に着けていた。
「先に謝っておくわ」
と和葉。
「何をだ?」
「優子のおっぱい飛び出し『お宝』画像を消させてごめんね」
「『お宝』だけ余計だよ」
と少し拗(す)ねてみる。
「でも大丈夫よ。さっき、優子に同じ画像をお兄ちゃんに送るようにお願いしたから」
「え……。え~!」
竜馬の顔色が変わる。
「お兄ちゃん、スマホは?」
「……あるけど」
と和葉に自分のスマホを見せた。
「そろそろ、送られて来るんじゃないかな」
と言った時に、着信を知らせる音が鳴った。
「どう? 来てる?」
と和葉。
「来てる……。優子さんからだ……」
と竜馬は緊張気味である。
メッセージを見てみると、
『竜馬さん。私の画像を消してしまったそうですね。和葉から聞きました。再度、送りますから大事にして下さい。恥ずかしいですけど。(真っ赤なハート)』
というメッセージの後、小さ目のブラジャーから豊かで大きな優子の胸が半分飛び出している、例の画像が現れた。
「あ。優子。ちゃんと送ってきたのね」
と和葉は龍馬に顔を密着させながら、竜馬のスマホを覗き込んだ。
「うわっ! ビックリするだろう!」
と慌てている。
「それにしても、優子は相変わらずいい乳しているわね」
と言ったので、
「和葉。お前はオヤジかよ」
と突っ込んだ。
「ねえねえ。私のおっぱいとどっちが好み?」
竜馬は苦虫を噛み潰した表情になり、
「それ。実の兄に訊くことか……?」
と言うと、和葉はクスクスと笑った。
完全にからかっていることが分かる。
「そうそう。それとね」
と和葉は何事もなかったかのように喋りだす。
「なんだ?」
「優子から、こんなメッセージが来てたわよ」
と和葉は自分のスマホのメッセージを見せた。
『他の人には絶対に送らないけど、竜馬さんならどんな画像でも送るからって、言っといて。頼むわよ、和葉。』
と書かれていた。
「ど! どんな画像って!」
と動揺する竜馬。
「だからお兄ちゃん」
「なんだ?」
「優子は勇気を持って、自分の下着姿の画像を送ったのよ」
「まあ。確かにそうだよな」
「だから」と言うと同時に、肩から掛けているポシェットから目にも止まらない早さで、ハードオフで購入した『CASIO EX-ZS6』を取り出し、
「お兄ちゃんもパンツ姿でポーズを取って。私、写してあげるから」
とデジカメを構えた。一秒くらいですでに、三段階のレンズが前へ飛び出して来ていた。
「このカメラは凄いわ。動画の画像は残念だけど、持っているスマホには叶わないわ。でも写真は負けないくらい綺麗だし、何より素早く撮影体制になれるわ」
とポシェットへ直しては出して、ポシェットへ直しては出してを繰り返す。
まるで早撃ちガンマンのようである。
そして、
「さあ。準備は万端よ。そのスウェットをいつ脱いでも撮影してあげる」
と『CASIO EX-ZS6』を構えた。
竜馬は、
「アホか!」
と突っ込んだ。
カメラを構えたままの和葉を残したまま、「まったく、我が妹ながら……」
と呟きながら、和葉の部屋を出た。
自室に戻ると、優子から送られてきた、おっぱいのはみ出た下着画像を見る。
「優子さんも和葉の頼みを無条件できき過ぎなんじゃないかな?」
と思うと居ても立っても居られなくなった。
「これはお礼と注意の両方を考えて、電話した方がいいな」
と呟いた。
──2──
「あ~。やっぱりまずかったかしら……」
と広い自室にある、大きなベッドに優子は顔を埋めていた。寝返って仰向けになると、ベッドの天蓋(てんがい)が見える。
「和葉に頼まれたからって、自分の恥ずかしい画像を、男の子に間違いじゃなくて送るなんてやっばりおかしいわよね」
と後悔していた。
薄い緑色のルームウェアから伸びる色白の手足を思いっ切り、大の字に伸ばした。
「う~ん。分からない……。竜馬さんはどう考えて頼んできたんだろう? 言いにくかったから和葉に頼んだ? それとも和葉が勝手に頼んだってことかな?」
新屋敷兄妹とは連絡先を交換した。
和葉とはほぼ毎日のように連絡を取っているが、竜馬とは最低限の連絡しか取っていない。
始めの内はモーニングコールをしていたが、
「和葉の言うことを真に受けなくていいよ」
と言われてからは、特に何もなければ連絡をしていない。
「私は毎朝が楽しみだったんだけどな……」
と思っていた。
「竜馬さん……。大変だと思って気を使ってくれたんだよね……」
と枕元のクッションを胸に抱いた。
「でも最近まで持っていたその画像を、和葉に指摘されたからという理由で消してしまったのよね……」
と思うとある意味、優子に取って勝負画像とも言える写真を、指摘されたからと消してしまったってことは!
「私って、竜馬さんから見たら、どうでもいい存在なのかな……」
と想像すると、悲しくなってきて涙が滲(にじ)んでくるのだった。
そんな時だった。
相生優子の、新屋敷兄妹と同機種の赤いスマホが鳴った。同機種と言ってもすでに型落ちで、今ではよく安売りされているスマートフォンである。
「誰かしら?」
と起き上がって見てみると、
「りょ! 竜馬さん!」
メッセージは何度か来たことはあるが、電話は初めてである。
「あっ。どうしよう、どうしよう」
と大慌てだが、出ない訳にはいかない。
出来るだけ平静を装って、
「もしもし。相生ですけど?」
と電話に出た。
「もしもし。優子さん。新屋敷竜馬です」
ととても丁寧な物言いである。
「はい。竜馬さん。優子です」
と学校とは違い、何だかよそよそしい。
「そのう……。和葉が勝手に頼んで、優子さんのその……。恥ずかしい画像を送るように言ってごめん……」
と暗い言い方だった。
優子はしばらく黙っていた。
「ん? 優子さん? 優子さん? 聞こえてる?」
と竜馬が言うと、
「聞こえてるわ……」
と微かに聞こえる声が帰ってきた。
「そのう……。何というか。下着姿の画像を男に送るなんてやっぱりよくないと思うんだよ……」
と竜馬は間を開けて、
「せっかく、送ってもらったけど、やっぱり消すからね。安心して」
と居うと、
「どうして消すの?」
と優子。
「いや……。だって……。もし、あんな際どい画像が外部に流出でもしたら」
と意外な返事だったのか、竜馬は慌てている。
「竜馬さん。竜馬さんはあの画像をSNSにばら撒いたりするの?」
と優子。
「いや! それは絶対にしないから! 絶対に!」
と竜馬は力強く言った。
「竜馬さんは、お友達とかに送ったりするの?」
「しない! 絶対にしない!」
すると、優子のクスリと笑う声がして、
「なら大切に持っていて下さい……」
と静かな声がした。
「いいの?」
「いいわ……」
「分かった。大事にする」
「ありがとう……」
「でも僕からお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん」
しばらく間が空いて、
「もっと凄い画像を送って欲しいの……?」
と優子は声を震わせながら言うと、
「違う! 違うよ!」
と竜馬。
「その、普通の格好の優子さんの画像も欲しいなって……。思って」
と照れながら竜馬が言うと、
「ふーん。そうなんだ……」
と平静を保ちながら言っているが、優子の頬は嬉しさと、竜馬が少なくとも優子のことを気にかけていることが知れて、顔がほのかに赤くなった。
「いいわ。私、普段の様子の画像を竜馬さんにだけ送るわ」
「ありがとう」
そこで優子は大きく深呼吸する。薄い緑のルームウェアの胸の膨らみが、より高くなった。
「二つお願いがあるんたけど、いいかしら?」
「うん。僕が出来ることなら何でも」
少し間が空いて、
「もし、よかったら竜馬さんの普段の様子の画像も欲しいわ」
と優子。
「うん。分かった。じゃあ、この電話が終わったら一枚送るよ」
と竜馬。
「ほんとに! 嬉しい……」
と優子は言った。
「じゃあ、私も送る!」
と明るい相生優子が戻ってきた。
「ありがとう。でも気をつけてね。優子さんは女の子だから、変な画像を送ってきたらダメだよ」
「もしかして、心配してくれているの?」
「そりゃ、そうだよ」
優子は竜馬が自分のことを心配してくれていることが、嬉しくて仕方がない。クッションに顔を埋めて、のたうち回りそうになる。
それをグッと我慢していると、
「それともう一つのお願いってなに?」
と竜馬が言った。
ここは思い切って言おうと優子は思った。
「竜馬さんにお願いなんだけど……」
「何かな?」
「私のこと『優子さん』ではなくて、『優子』って呼んでくれる?」
と出来るだけ落ち着いて言った。
「えっ。あっ。いいのかい?」
と少し慌てる竜馬。
「だって和葉も小夏ちゃんも春樹くんも呼び捨てなのに、私だけ『さん』付けなのっておかしいでしょう」
と言う。
「確かにそうだけど、和葉と小夏は小さい頃から知っているからだし、春樹は男同士だし。そうだ。薫ちゃんは『薫ちゃん』だよ」
「薫ちゃんは小柄だし可愛いから『薫ちゃん』でいいと思うの。でも何で私だけ『さん』付けなの?」
「えっ。それはその……」
「私だけ何だかよそよそしい。『優子』って呼んで欲しい」
と思い切って言った。
少し間が空いて、
「分かった。じゃあ、これからは『優子』って呼ぶよ」
「本当に!」
と優子は嬉しさが爆発しそうだが、平静を保っている。
「その代わりにさ」
「はい……」
「優子さん……。いや、優子も僕のことを『竜馬』って呼んでよ」
と静かな口調でスマートフォンから聞こえてきた。
優子は顔がみるみる真っ赤になり、
「そのいいのかな……。竜馬さん」
と言うと、
「竜馬さんじゃなくて、『竜馬』で……」
と耳元で囁(ささや)いたように感じた。
優子は今にも感情が爆発しそうになるが、そこは押さえて出来るだけクールに、
「分かったわ……。竜馬……」
と静かに言うと、
「ありがとう。優子」
と返してくれた。
そして、
「何回か練習していい?」
と優子。
「練習? 竜馬って呼ぶ練習かい?」
「うん……。いいかな?」
「いいよ」
と返すと、
「竜馬……」
という優子の澄んだ声が聞こえた。
竜馬が困惑気味に黙っていると、
「竜馬も私の名前を練習して……」
と催促する。
「僕もやるのかい?」
「やって……。お願い……」
と頼まれると、さすがに断れない。
「分かったよ。優子……」
と言うと、恥ずかしそうな声がする。
優子も恥ずかしさの中にも精一杯の気持ちを込めて、
「竜馬……」
と返す。
「優子」
「竜馬……」
を何度か繰り返し、
「ありがとう。竜馬。もう遅いから切るね」
と優子が言うと、
「うん。分かったよ。お休み、優子……」
「お休みなさい、竜馬」
と言ってお互いに電話を切った。
スマートフォンを切ると優子は、
「ウニャ~ウニャ~、ウー! ウー!」
と叫びながら、クッションに顔を埋(うず)めて、手足をバタバタさせた。
すると、
「何事ですか? お嬢様!」
と扉がノックされ、メイドの平山の声がした。
一瞬、優子は静かになったが、
「あ~! 私、どうしましょう~!」
とまた暴れ出した。
「お嬢様! 入りますよ! 失礼!」
と平山は優子の部屋へ入ってきた。
「何事ですか! お嬢様! もしや、暴漢ですか?」
と合気道の構えをした。
優子はメイドの平山を少し見つめた後、
「あ~! もう~! 私、幸せ~!」
とベッドの上で暴れ出した。
──3──
「ふう~」
と竜馬は大きなため息をついた。
極度の緊張感から開放されたからであるが、もちろん嫌だからではない。少しでも優子と仲良くなれたことが嬉しいのである。
「今度、学校であったら、ちゃんと優子って呼ばないとな」
と相生優子と少しだが親密になれたことが、段々と実感してきた。
すると竜馬の部屋の引き戸がノックと同時に勢いよく開いた。
「うわ! なんだよ、和葉! ノックをしてからすぐに開けないでくれよ!」
と怒ってみるが、和葉は動じずスタスタと竜馬の側にやってきた。
「な? なんだよう?」
と困惑していると、
「竜馬って呼ぶ練習かい?」
と和葉は得意の竜馬のモノマネを始めた。
「竜馬」「優子」「竜馬」「優子」を繰り返す。
「な! 和葉、お前、いつから聞いていたんだよ!」
と竜馬の顔は真っ赤である。
「『もしもし。優子さん。新屋敷竜馬です』からよ」
「メチャメチャ最初からじゃないかよ!」
と竜馬は耳まで真っ赤になった。
「『竜馬』『優子』『竜馬』『優子』」
と繰り返す。ご丁寧に竜馬と優子に似せている。
「やっ! やめろー! やめてくれ~!」
そして、
「うん。分かったよ。お休み、優子……」
で締めくくった。
そして、
「お互いに名前呼びなんかして、何をやってたの?」
と和葉は顔を近づけた。
「それに最初は間を置いて『優子』『優子』って繰り返すから、とうとうお兄ちゃんもイッちゃったかと思ったわよ」
「電話なんだから一人で名前を連呼する訳ないだろ」
と言う竜馬に、
「それは仕方がないわよ。私は優子の声は聞こえてないんだから。まあ、予想は出来たけどね」
と少し自慢げに言った。
すると竜馬のスマホから着信音がした。
「お兄ちゃん、着信よ。その感じは優子からね」
と和葉。
竜馬は後でゆっくり見るつもりだったが、
「ちょっと、私にも見せてよ」
と覗き込んでくる。
「分かった。分かったから」
と確認してみると、やはり優子からだった。
その画像は高級ホテルのような装飾の付いた大きな窓のところに、薄緑のルームウェアに赤いカーディガンを羽織った優子が写っていた。
竜馬は、
「どこかの高級ホテルで撮った画像かな?」
と言ったが、和葉は、
「おかしいわ。これ」
と言った。
「え? 何がおかしいんだよ」
と竜馬が尋ねると、
「私がお兄ちゃんに、優子のおっぱい飛び出し『スペシャル』画像を送ってくれるように頼んだ時には」
「だから、その言い方はやめてくれ!」
「優子は自分がホテルに泊まっているなんて、一言も言わなかったわ」
と和葉。
「お兄ちゃんは電話で優子から『今、ホテルに泊まっている』とか聞いた?」
と訊くと、
「いや。そんな話は出なかったよ」
と答えた。
「明日は日曜日だから、旅行にでも行っていてもおかしくないわ。でもそんな話題は一切、出ていなかった」
「確かにな」
「優子の家庭って何か特別なのかしら?」
と推理を巡らし始めた。
「それにこの画像」
「何か気づいたのか?」
「明らかに誰かに撮ってもらっているわよね」
確かに高級ホテルにしかないような、大きな窓枠の側で寝巻きで立っているところを、誰かに撮ってもらっているとすると?
「はっ! うっ……」
と和葉は急に俯いて、
「そんな……。そうだったのね……。優子……。私、気づけなくてごめんね」
と竜馬の部屋の畳に、足から崩れ落ちた。
「おい。どうした?」
と慌てる竜馬。
「……お兄ちゃん」
「何だ?」
「これはパパ活よ……」
「え? パパ活? パパ活って何だ?」
和葉は、
「優子の持ち物のほとんどは百円ショップの商品なのよ。で私達の家に遊びにきた時はバスに乗って来なかったのよ。あの子、バスの乗り方を知らなかったの」
「つまり、長い距離を歩いてきたってことか」
「そう。そしてこの画像よ」
竜馬は落ち着こうとしたのか、喉がゴクリと鳴った。
「今、優子はお金をもらって、この窓のある高級ホテルに泊まっているのよ」
「……お金をもらって、泊まっているって。まさか!」
「そう……。優子は家庭が余りに貧乏のために、お金を払った男と一夜を過ごそうとしているのよ……」
「えっ……!」
竜馬は目の前が真っ暗になり、その場に崩れるように座り込んだ。
「優子ったら……。お兄ちゃんとの絆を確かめたかったのかもね……」
「だから『竜馬』って呼んで、お兄ちゃんに『優子』って呼んでもらいたかったのよ……。優子……。あの子ったら……」
と竜馬を見つめながら言った。
「……貧困は優子のせいじゃない。今からでも遅くないわ。優子を説得して、そこから逃げるように言うわ」
「和葉……。お前……」
和葉は立ち上がり、すぐに自室からスマートフォンを持って来て、
「今から電話していい?」
と優子にメッセージを送った。
その頃、優子は上機嫌だった。
自室の窓際でメイドの平山に撮ってもらった写真が、とても綺麗に写っていたからだ。
「平山さん、写真を写すの上手ね」
「恐れ入ります」
「それにね」
「はい」
「次に竜馬さんと会う時は『竜馬』って呼ぶのよ。でさ。私のことは『優子』って呼んでくれるの」
と言うと「キャッ」と自分の大きなベッドにダイブした。
「それはようございましたね。お嬢様」
「でしょ、でしょ」
と満面の笑みである。
そんな時に優子のスマホが鳴った。相手は和葉だった。
「あ。和葉だわ。きっと竜馬さんに送った画像を見たのね」
と平山に言うと、
「お友達からですか? では私は退出致します」
と言うと、
「ダメダメ。平山さんはそこに居て。紹介したいから」
と優子。
「しかしそれではお嬢様がお金持ちだと、お友達に知られてしまいますが……」
と心配すると、
優子は少し考えで、
「ならこうしましょう。平山さんは年上の私の信頼できるお友達という設定で」
「年上の友達ですね。分かりました。出来るだけ上手く話を合わさせて頂きます」
と微笑んだ。
優子は電話に出た。
「もしもし、和葉。どうしたの?」
と明るい声で答える。
「……優子。お兄ちゃんに送った画像を見たわ……」
と暗い声で言う。
「ん。見てくれた。どう、なかなか上手く撮れているでしょう」
と嬉しそうである。
「確かに上手く撮れていたわ。それでね、優子……」
「ん? なに?」
「自分を大切にしないといけないわ……」
「え? 自分を大切に?」
優子はいくら綺麗に撮れたとはいえ、寝巻き姿を男子のスマホに送ったことを、和葉は注意してくれているのだと思った。
「ああ~。確かに、ちょっと行き過ぎちゃったかもね……」
と返すと、
「優子。そこにもう一人、いるでしょう?」
と和葉。
「あら。よく分かるのね。さすがは和葉ね」
と言うと、
「いいから、その人と変って! 言いたい事があるの!」
と和葉は強い口調で言った。
「分かった。すぐ近くにいるから、スマホをスピーカーに切り替えるね。名前は平山さんって言うのよ」
とスマホをスピーカーに切り替えた。
「もしもし。平山さんですか?」
と和葉が言うと、
「はい。私が平山です」
と女性の声だった。
すると、
「お兄ちゃん! 大変よ! 優子と同室の人って女の人よ! 優子って女性が好きだったのよ!」
と言う声が聞こえてきた。
「え? 和葉、あなた、何をいっているの?」
と困惑する優子。
「あのう。私はどうしましょうか?」
と意外な展開に慌てる平山。
「平山さんっておっしゃったわね」
と和葉。
「はい。平山ですが」
「あなた、優子にいくら払ったんですか?」
と訊(たず)ねると、
「どちらかというと、私が優子さんからお金を頂いておりますが」
と返した。
和葉は、
「ええっ! 優子が同性の平山さんにお金を払って関係を持ったの!」
と驚く様子に、
「ちょっと! 和葉! あなた、何を言っているの!」
と混乱したが、
「誤解も誤解。何で私が同性の、それも平山さんとそんないかがわしいことをするのよ! 失礼しちゃうわ!」
と優子は言ったが、和葉は、
「ごめんなさい。送られた画像を見て、立派な窓枠なので高そうな部屋にいることは分かったのよ。だから優子は今、パパ活中なのかと思っちゃって」
「パパ活? パパ活って何なの?」
和葉はハッキリと、
「知らないオジサンにお金をもらって、身体を売ることよ。またの名を」
「売春と言うわ」
と言ったから優子は、
「バッ、バカね! 私がそんないかがわしいことをする訳がないでしょう!」
と優子は怒った。
「それもまさかの女の人が相手なんて」
という勘違いにも、
「平山さんは昔からの仲の良い友人なのよ。和葉、何を言っているのよ!」
「でも立派な部屋じゃない。それはどうして?」
ここで優子は言葉に詰まったが、閃いて、
「実は懸賞に当たって高級ホテルに平山さんと泊まりに来てるの」
とウソをついた。
「でもさ。学校でもさっきのお兄ちゃんの電話でも、泊まりに行く話は出なかったじゃないの?」
と和葉はなかなか納得してくれない。
優子はまた、思いつきで、
「これって懸賞なんだけど、ホテルのモニターでもあるのよ。私達が泊まっていることは、ある意味秘密の仕事なの。だから人に話しちゃダメなのよ」
と返した。
すると、
「お嬢様。言い訳がお上手ですね」
と小声で平山が言った。
優子は、
「ちょっと、和葉聞こえない~!」
とわざと大きな声を出して誤魔化しながら、自分の口の前に人差し指を立てた。
「そうだったのね。ごめんね。私、完全に勘違いしていたわ」
と和葉は謝罪し、
「私も、スピーカーにするね」
と言って、
「お兄ちゃん。安心して。優子は今、懸賞で当たったホテルに泊まっていて、その感想を書くモニターを、お友達の平山さんとやっている、そうよ」
と説明した。
「なんだ。よかった……」
と心底、竜馬は心配していたようだった。
「優子、ごめんね。高級ホテルでの宿泊、楽しんでね。じゃあ、月曜日に」
という和葉の後に、
「優子。お休み。楽しんで来てね」
と言う竜馬の声がした。
「ありがとう。和葉。竜馬。お休み」
と電話を切った。
そして、
「平山さん! 悪いんだけど、明日でいいからこの家で一番狭い部屋があったでしょう。確か二階の物置の部屋が」
「はい。確か、六畳ほどの広さの物置が」
「そこを空けて下さる。そこを普通の女子高生らしい部屋にするわ。そこで写真を撮って竜馬さんに送ることにします」
と言いつけた。
つづく。
登場人物。
新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)。
妹の和葉のボディガードを頼まれて、同じ私立如月(きさらぎ)学園高校へ入学した野球少年。
東道町(ひがしみちまち)に住む。
公立東道中学校でギリギリレギュラーの実力。勉強は普通。運動も普通。妹からは慕われている。
就寝する時は、中学校時代の指定の紺色のスウェットを着用している。
妹和葉は「和葉」。優子は「優子さん」。小夏は「小夏」。春樹は「春樹」。薫は「薫さん」または最近は「薫ちゃん」と呼ぶ。
【28】から優子のことは「優子」と呼ぶことになる。
新屋敷和葉(しんやしきかずは)。
新屋敷竜馬の双子の妹。二卵性双生児なので顔はあまり似ていない。勉強と運動共に優秀な美少女。身長は竜馬よりも二十センチ低い一六〇センチ。
兄のことは大好きでどうしても兄と同じ高校に通いたいという目標を実現した。冗談を言ったり、兄をからかうのが大好き。一見、ぼんやり系に見られがちだが、実際は誰よりも考えを巡らせている。
就寝する時は、水色の縦縞のパジャマを着用している。
相生優子(あいおいゆうこ)。
三組では出席番号一番。入学試験第二位で入学した秀才。ちなみに一位は和葉。一六五センチと女子としては長身で、やたらと竜馬に絡みにいく。
非常に真面目な性格なのだが、身体は細くバストサイズがHカップなので、エロいと思われるのが嫌で、胸が小さく見える下着をつけていた。今は普通の下着を着用している。
優子は竜馬に一目惚れしているのだが、素直になれないでいる。実は財閥の娘だがそれを隠している。
十歳、年の離れた兄がいる。
西道町にある大豪邸に住むが、金持ちだということは隠している。
竜馬のことを「竜馬さん」と呼ぶ。
就寝する時は、薄い緑色のルームウェアを着用している。
【28】から竜馬のことは「竜馬」と呼ぶことになる。
メイドの平山(ひらやま)
大学を卒業して相生グループの会社に三年ほど勤めていた。非常に有能だったため、メイドの仕事をこなしながら、相生家を助けている。
メインは執事の森本源三だが、森本の次席の仕事をしており、男の森本では出来ない優子の生活面を担当している。
合気道の有段者。
2023年5月31日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
略して『ふたいも』です。
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
【28】和葉。セカンドバッグから一秒でデジカメを取り出せる訓練をする。竜馬と優子はお互いを名前呼びの練習をする。
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──1──
「お兄ちゃん。ちょっとスマホを持って、私の部屋まで来てくれる」
と寝る前に中学校指定の紺色のスウェット姿に着替えたところで、和葉から声をかけられた。
「どうせ、ろくなことじゃないのだろうな……」
と予測をする。
和葉の部屋をノックした。
「どうぞ」
と言われ、恐る恐る部屋へ入る。
和葉はすでにいつもの水色の縦縞のパジャマ姿だった。だがなぜか、中学時代から持っている小さな肩掛けのポシェットを身に着けていた。
「先に謝っておくわ」
と和葉。
「何をだ?」
「優子のおっぱい飛び出し『お宝』画像を消させてごめんね」
「『お宝』だけ余計だよ」
と少し拗(す)ねてみる。
「でも大丈夫よ。さっき、優子に同じ画像をお兄ちゃんに送るようにお願いしたから」
「え……。え~!」
竜馬の顔色が変わる。
「お兄ちゃん、スマホは?」
「……あるけど」
と和葉に自分のスマホを見せた。
「そろそろ、送られて来るんじゃないかな」
と言った時に、着信を知らせる音が鳴った。
「どう? 来てる?」
と和葉。
「来てる……。優子さんからだ……」
と竜馬は緊張気味である。
メッセージを見てみると、
『竜馬さん。私の画像を消してしまったそうですね。和葉から聞きました。再度、送りますから大事にして下さい。恥ずかしいですけど。(真っ赤なハート)』
というメッセージの後、小さ目のブラジャーから豊かで大きな優子の胸が半分飛び出している、例の画像が現れた。
「あ。優子。ちゃんと送ってきたのね」
と和葉は龍馬に顔を密着させながら、竜馬のスマホを覗き込んだ。
「うわっ! ビックリするだろう!」
と慌てている。
「それにしても、優子は相変わらずいい乳しているわね」
と言ったので、
「和葉。お前はオヤジかよ」
と突っ込んだ。
「ねえねえ。私のおっぱいとどっちが好み?」
竜馬は苦虫を噛み潰した表情になり、
「それ。実の兄に訊くことか……?」
と言うと、和葉はクスクスと笑った。
完全にからかっていることが分かる。
「そうそう。それとね」
と和葉は何事もなかったかのように喋りだす。
「なんだ?」
「優子から、こんなメッセージが来てたわよ」
と和葉は自分のスマホのメッセージを見せた。
『他の人には絶対に送らないけど、竜馬さんならどんな画像でも送るからって、言っといて。頼むわよ、和葉。』
と書かれていた。
「ど! どんな画像って!」
と動揺する竜馬。
「だからお兄ちゃん」
「なんだ?」
「優子は勇気を持って、自分の下着姿の画像を送ったのよ」
「まあ。確かにそうだよな」
「だから」と言うと同時に、肩から掛けているポシェットから目にも止まらない早さで、ハードオフで購入した『CASIO EX-ZS6』を取り出し、
「お兄ちゃんもパンツ姿でポーズを取って。私、写してあげるから」
とデジカメを構えた。一秒くらいですでに、三段階のレンズが前へ飛び出して来ていた。
「このカメラは凄いわ。動画の画像は残念だけど、持っているスマホには叶わないわ。でも写真は負けないくらい綺麗だし、何より素早く撮影体制になれるわ」
とポシェットへ直しては出して、ポシェットへ直しては出してを繰り返す。
まるで早撃ちガンマンのようである。
そして、
「さあ。準備は万端よ。そのスウェットをいつ脱いでも撮影してあげる」
と『CASIO EX-ZS6』を構えた。
竜馬は、
「アホか!」
と突っ込んだ。
カメラを構えたままの和葉を残したまま、「まったく、我が妹ながら……」
と呟きながら、和葉の部屋を出た。
自室に戻ると、優子から送られてきた、おっぱいのはみ出た下着画像を見る。
「優子さんも和葉の頼みを無条件できき過ぎなんじゃないかな?」
と思うと居ても立っても居られなくなった。
「これはお礼と注意の両方を考えて、電話した方がいいな」
と呟いた。
──2──
「あ~。やっぱりまずかったかしら……」
と広い自室にある、大きなベッドに優子は顔を埋めていた。寝返って仰向けになると、ベッドの天蓋(てんがい)が見える。
「和葉に頼まれたからって、自分の恥ずかしい画像を、男の子に間違いじゃなくて送るなんてやっばりおかしいわよね」
と後悔していた。
薄い緑色のルームウェアから伸びる色白の手足を思いっ切り、大の字に伸ばした。
「う~ん。分からない……。竜馬さんはどう考えて頼んできたんだろう? 言いにくかったから和葉に頼んだ? それとも和葉が勝手に頼んだってことかな?」
新屋敷兄妹とは連絡先を交換した。
和葉とはほぼ毎日のように連絡を取っているが、竜馬とは最低限の連絡しか取っていない。
始めの内はモーニングコールをしていたが、
「和葉の言うことを真に受けなくていいよ」
と言われてからは、特に何もなければ連絡をしていない。
「私は毎朝が楽しみだったんだけどな……」
と思っていた。
「竜馬さん……。大変だと思って気を使ってくれたんだよね……」
と枕元のクッションを胸に抱いた。
「でも最近まで持っていたその画像を、和葉に指摘されたからという理由で消してしまったのよね……」
と思うとある意味、優子に取って勝負画像とも言える写真を、指摘されたからと消してしまったってことは!
「私って、竜馬さんから見たら、どうでもいい存在なのかな……」
と想像すると、悲しくなってきて涙が滲(にじ)んでくるのだった。
そんな時だった。
相生優子の、新屋敷兄妹と同機種の赤いスマホが鳴った。同機種と言ってもすでに型落ちで、今ではよく安売りされているスマートフォンである。
「誰かしら?」
と起き上がって見てみると、
「りょ! 竜馬さん!」
メッセージは何度か来たことはあるが、電話は初めてである。
「あっ。どうしよう、どうしよう」
と大慌てだが、出ない訳にはいかない。
出来るだけ平静を装って、
「もしもし。相生ですけど?」
と電話に出た。
「もしもし。優子さん。新屋敷竜馬です」
ととても丁寧な物言いである。
「はい。竜馬さん。優子です」
と学校とは違い、何だかよそよそしい。
「そのう……。和葉が勝手に頼んで、優子さんのその……。恥ずかしい画像を送るように言ってごめん……」
と暗い言い方だった。
優子はしばらく黙っていた。
「ん? 優子さん? 優子さん? 聞こえてる?」
と竜馬が言うと、
「聞こえてるわ……」
と微かに聞こえる声が帰ってきた。
「そのう……。何というか。下着姿の画像を男に送るなんてやっぱりよくないと思うんだよ……」
と竜馬は間を開けて、
「せっかく、送ってもらったけど、やっぱり消すからね。安心して」
と居うと、
「どうして消すの?」
と優子。
「いや……。だって……。もし、あんな際どい画像が外部に流出でもしたら」
と意外な返事だったのか、竜馬は慌てている。
「竜馬さん。竜馬さんはあの画像をSNSにばら撒いたりするの?」
と優子。
「いや! それは絶対にしないから! 絶対に!」
と竜馬は力強く言った。
「竜馬さんは、お友達とかに送ったりするの?」
「しない! 絶対にしない!」
すると、優子のクスリと笑う声がして、
「なら大切に持っていて下さい……」
と静かな声がした。
「いいの?」
「いいわ……」
「分かった。大事にする」
「ありがとう……」
「でも僕からお願いがあるんだけど」
「お願い?」
「うん」
しばらく間が空いて、
「もっと凄い画像を送って欲しいの……?」
と優子は声を震わせながら言うと、
「違う! 違うよ!」
と竜馬。
「その、普通の格好の優子さんの画像も欲しいなって……。思って」
と照れながら竜馬が言うと、
「ふーん。そうなんだ……」
と平静を保ちながら言っているが、優子の頬は嬉しさと、竜馬が少なくとも優子のことを気にかけていることが知れて、顔がほのかに赤くなった。
「いいわ。私、普段の様子の画像を竜馬さんにだけ送るわ」
「ありがとう」
そこで優子は大きく深呼吸する。薄い緑のルームウェアの胸の膨らみが、より高くなった。
「二つお願いがあるんたけど、いいかしら?」
「うん。僕が出来ることなら何でも」
少し間が空いて、
「もし、よかったら竜馬さんの普段の様子の画像も欲しいわ」
と優子。
「うん。分かった。じゃあ、この電話が終わったら一枚送るよ」
と竜馬。
「ほんとに! 嬉しい……」
と優子は言った。
「じゃあ、私も送る!」
と明るい相生優子が戻ってきた。
「ありがとう。でも気をつけてね。優子さんは女の子だから、変な画像を送ってきたらダメだよ」
「もしかして、心配してくれているの?」
「そりゃ、そうだよ」
優子は竜馬が自分のことを心配してくれていることが、嬉しくて仕方がない。クッションに顔を埋めて、のたうち回りそうになる。
それをグッと我慢していると、
「それともう一つのお願いってなに?」
と竜馬が言った。
ここは思い切って言おうと優子は思った。
「竜馬さんにお願いなんだけど……」
「何かな?」
「私のこと『優子さん』ではなくて、『優子』って呼んでくれる?」
と出来るだけ落ち着いて言った。
「えっ。あっ。いいのかい?」
と少し慌てる竜馬。
「だって和葉も小夏ちゃんも春樹くんも呼び捨てなのに、私だけ『さん』付けなのっておかしいでしょう」
と言う。
「確かにそうだけど、和葉と小夏は小さい頃から知っているからだし、春樹は男同士だし。そうだ。薫ちゃんは『薫ちゃん』だよ」
「薫ちゃんは小柄だし可愛いから『薫ちゃん』でいいと思うの。でも何で私だけ『さん』付けなの?」
「えっ。それはその……」
「私だけ何だかよそよそしい。『優子』って呼んで欲しい」
と思い切って言った。
少し間が空いて、
「分かった。じゃあ、これからは『優子』って呼ぶよ」
「本当に!」
と優子は嬉しさが爆発しそうだが、平静を保っている。
「その代わりにさ」
「はい……」
「優子さん……。いや、優子も僕のことを『竜馬』って呼んでよ」
と静かな口調でスマートフォンから聞こえてきた。
優子は顔がみるみる真っ赤になり、
「そのいいのかな……。竜馬さん」
と言うと、
「竜馬さんじゃなくて、『竜馬』で……」
と耳元で囁(ささや)いたように感じた。
優子は今にも感情が爆発しそうになるが、そこは押さえて出来るだけクールに、
「分かったわ……。竜馬……」
と静かに言うと、
「ありがとう。優子」
と返してくれた。
そして、
「何回か練習していい?」
と優子。
「練習? 竜馬って呼ぶ練習かい?」
「うん……。いいかな?」
「いいよ」
と返すと、
「竜馬……」
という優子の澄んだ声が聞こえた。
竜馬が困惑気味に黙っていると、
「竜馬も私の名前を練習して……」
と催促する。
「僕もやるのかい?」
「やって……。お願い……」
と頼まれると、さすがに断れない。
「分かったよ。優子……」
と言うと、恥ずかしそうな声がする。
優子も恥ずかしさの中にも精一杯の気持ちを込めて、
「竜馬……」
と返す。
「優子」
「竜馬……」
を何度か繰り返し、
「ありがとう。竜馬。もう遅いから切るね」
と優子が言うと、
「うん。分かったよ。お休み、優子……」
「お休みなさい、竜馬」
と言ってお互いに電話を切った。
スマートフォンを切ると優子は、
「ウニャ~ウニャ~、ウー! ウー!」
と叫びながら、クッションに顔を埋(うず)めて、手足をバタバタさせた。
すると、
「何事ですか? お嬢様!」
と扉がノックされ、メイドの平山の声がした。
一瞬、優子は静かになったが、
「あ~! 私、どうしましょう~!」
とまた暴れ出した。
「お嬢様! 入りますよ! 失礼!」
と平山は優子の部屋へ入ってきた。
「何事ですか! お嬢様! もしや、暴漢ですか?」
と合気道の構えをした。
優子はメイドの平山を少し見つめた後、
「あ~! もう~! 私、幸せ~!」
とベッドの上で暴れ出した。
──3──
「ふう~」
と竜馬は大きなため息をついた。
極度の緊張感から開放されたからであるが、もちろん嫌だからではない。少しでも優子と仲良くなれたことが嬉しいのである。
「今度、学校であったら、ちゃんと優子って呼ばないとな」
と相生優子と少しだが親密になれたことが、段々と実感してきた。
すると竜馬の部屋の引き戸がノックと同時に勢いよく開いた。
「うわ! なんだよ、和葉! ノックをしてからすぐに開けないでくれよ!」
と怒ってみるが、和葉は動じずスタスタと竜馬の側にやってきた。
「な? なんだよう?」
と困惑していると、
「竜馬って呼ぶ練習かい?」
と和葉は得意の竜馬のモノマネを始めた。
「竜馬」「優子」「竜馬」「優子」を繰り返す。
「な! 和葉、お前、いつから聞いていたんだよ!」
と竜馬の顔は真っ赤である。
「『もしもし。優子さん。新屋敷竜馬です』からよ」
「メチャメチャ最初からじゃないかよ!」
と竜馬は耳まで真っ赤になった。
「『竜馬』『優子』『竜馬』『優子』」
と繰り返す。ご丁寧に竜馬と優子に似せている。
「やっ! やめろー! やめてくれ~!」
そして、
「うん。分かったよ。お休み、優子……」
で締めくくった。
そして、
「お互いに名前呼びなんかして、何をやってたの?」
と和葉は顔を近づけた。
「それに最初は間を置いて『優子』『優子』って繰り返すから、とうとうお兄ちゃんもイッちゃったかと思ったわよ」
「電話なんだから一人で名前を連呼する訳ないだろ」
と言う竜馬に、
「それは仕方がないわよ。私は優子の声は聞こえてないんだから。まあ、予想は出来たけどね」
と少し自慢げに言った。
すると竜馬のスマホから着信音がした。
「お兄ちゃん、着信よ。その感じは優子からね」
と和葉。
竜馬は後でゆっくり見るつもりだったが、
「ちょっと、私にも見せてよ」
と覗き込んでくる。
「分かった。分かったから」
と確認してみると、やはり優子からだった。
その画像は高級ホテルのような装飾の付いた大きな窓のところに、薄緑のルームウェアに赤いカーディガンを羽織った優子が写っていた。
竜馬は、
「どこかの高級ホテルで撮った画像かな?」
と言ったが、和葉は、
「おかしいわ。これ」
と言った。
「え? 何がおかしいんだよ」
と竜馬が尋ねると、
「私がお兄ちゃんに、優子のおっぱい飛び出し『スペシャル』画像を送ってくれるように頼んだ時には」
「だから、その言い方はやめてくれ!」
「優子は自分がホテルに泊まっているなんて、一言も言わなかったわ」
と和葉。
「お兄ちゃんは電話で優子から『今、ホテルに泊まっている』とか聞いた?」
と訊くと、
「いや。そんな話は出なかったよ」
と答えた。
「明日は日曜日だから、旅行にでも行っていてもおかしくないわ。でもそんな話題は一切、出ていなかった」
「確かにな」
「優子の家庭って何か特別なのかしら?」
と推理を巡らし始めた。
「それにこの画像」
「何か気づいたのか?」
「明らかに誰かに撮ってもらっているわよね」
確かに高級ホテルにしかないような、大きな窓枠の側で寝巻きで立っているところを、誰かに撮ってもらっているとすると?
「はっ! うっ……」
と和葉は急に俯いて、
「そんな……。そうだったのね……。優子……。私、気づけなくてごめんね」
と竜馬の部屋の畳に、足から崩れ落ちた。
「おい。どうした?」
と慌てる竜馬。
「……お兄ちゃん」
「何だ?」
「これはパパ活よ……」
「え? パパ活? パパ活って何だ?」
和葉は、
「優子の持ち物のほとんどは百円ショップの商品なのよ。で私達の家に遊びにきた時はバスに乗って来なかったのよ。あの子、バスの乗り方を知らなかったの」
「つまり、長い距離を歩いてきたってことか」
「そう。そしてこの画像よ」
竜馬は落ち着こうとしたのか、喉がゴクリと鳴った。
「今、優子はお金をもらって、この窓のある高級ホテルに泊まっているのよ」
「……お金をもらって、泊まっているって。まさか!」
「そう……。優子は家庭が余りに貧乏のために、お金を払った男と一夜を過ごそうとしているのよ……」
「えっ……!」
竜馬は目の前が真っ暗になり、その場に崩れるように座り込んだ。
「優子ったら……。お兄ちゃんとの絆を確かめたかったのかもね……」
「だから『竜馬』って呼んで、お兄ちゃんに『優子』って呼んでもらいたかったのよ……。優子……。あの子ったら……」
と竜馬を見つめながら言った。
「……貧困は優子のせいじゃない。今からでも遅くないわ。優子を説得して、そこから逃げるように言うわ」
「和葉……。お前……」
和葉は立ち上がり、すぐに自室からスマートフォンを持って来て、
「今から電話していい?」
と優子にメッセージを送った。
その頃、優子は上機嫌だった。
自室の窓際でメイドの平山に撮ってもらった写真が、とても綺麗に写っていたからだ。
「平山さん、写真を写すの上手ね」
「恐れ入ります」
「それにね」
「はい」
「次に竜馬さんと会う時は『竜馬』って呼ぶのよ。でさ。私のことは『優子』って呼んでくれるの」
と言うと「キャッ」と自分の大きなベッドにダイブした。
「それはようございましたね。お嬢様」
「でしょ、でしょ」
と満面の笑みである。
そんな時に優子のスマホが鳴った。相手は和葉だった。
「あ。和葉だわ。きっと竜馬さんに送った画像を見たのね」
と平山に言うと、
「お友達からですか? では私は退出致します」
と言うと、
「ダメダメ。平山さんはそこに居て。紹介したいから」
と優子。
「しかしそれではお嬢様がお金持ちだと、お友達に知られてしまいますが……」
と心配すると、
優子は少し考えで、
「ならこうしましょう。平山さんは年上の私の信頼できるお友達という設定で」
「年上の友達ですね。分かりました。出来るだけ上手く話を合わさせて頂きます」
と微笑んだ。
優子は電話に出た。
「もしもし、和葉。どうしたの?」
と明るい声で答える。
「……優子。お兄ちゃんに送った画像を見たわ……」
と暗い声で言う。
「ん。見てくれた。どう、なかなか上手く撮れているでしょう」
と嬉しそうである。
「確かに上手く撮れていたわ。それでね、優子……」
「ん? なに?」
「自分を大切にしないといけないわ……」
「え? 自分を大切に?」
優子はいくら綺麗に撮れたとはいえ、寝巻き姿を男子のスマホに送ったことを、和葉は注意してくれているのだと思った。
「ああ~。確かに、ちょっと行き過ぎちゃったかもね……」
と返すと、
「優子。そこにもう一人、いるでしょう?」
と和葉。
「あら。よく分かるのね。さすがは和葉ね」
と言うと、
「いいから、その人と変って! 言いたい事があるの!」
と和葉は強い口調で言った。
「分かった。すぐ近くにいるから、スマホをスピーカーに切り替えるね。名前は平山さんって言うのよ」
とスマホをスピーカーに切り替えた。
「もしもし。平山さんですか?」
と和葉が言うと、
「はい。私が平山です」
と女性の声だった。
すると、
「お兄ちゃん! 大変よ! 優子と同室の人って女の人よ! 優子って女性が好きだったのよ!」
と言う声が聞こえてきた。
「え? 和葉、あなた、何をいっているの?」
と困惑する優子。
「あのう。私はどうしましょうか?」
と意外な展開に慌てる平山。
「平山さんっておっしゃったわね」
と和葉。
「はい。平山ですが」
「あなた、優子にいくら払ったんですか?」
と訊(たず)ねると、
「どちらかというと、私が優子さんからお金を頂いておりますが」
と返した。
和葉は、
「ええっ! 優子が同性の平山さんにお金を払って関係を持ったの!」
と驚く様子に、
「ちょっと! 和葉! あなた、何を言っているの!」
と混乱したが、
「誤解も誤解。何で私が同性の、それも平山さんとそんないかがわしいことをするのよ! 失礼しちゃうわ!」
と優子は言ったが、和葉は、
「ごめんなさい。送られた画像を見て、立派な窓枠なので高そうな部屋にいることは分かったのよ。だから優子は今、パパ活中なのかと思っちゃって」
「パパ活? パパ活って何なの?」
和葉はハッキリと、
「知らないオジサンにお金をもらって、身体を売ることよ。またの名を」
「売春と言うわ」
と言ったから優子は、
「バッ、バカね! 私がそんないかがわしいことをする訳がないでしょう!」
と優子は怒った。
「それもまさかの女の人が相手なんて」
という勘違いにも、
「平山さんは昔からの仲の良い友人なのよ。和葉、何を言っているのよ!」
「でも立派な部屋じゃない。それはどうして?」
ここで優子は言葉に詰まったが、閃いて、
「実は懸賞に当たって高級ホテルに平山さんと泊まりに来てるの」
とウソをついた。
「でもさ。学校でもさっきのお兄ちゃんの電話でも、泊まりに行く話は出なかったじゃないの?」
と和葉はなかなか納得してくれない。
優子はまた、思いつきで、
「これって懸賞なんだけど、ホテルのモニターでもあるのよ。私達が泊まっていることは、ある意味秘密の仕事なの。だから人に話しちゃダメなのよ」
と返した。
すると、
「お嬢様。言い訳がお上手ですね」
と小声で平山が言った。
優子は、
「ちょっと、和葉聞こえない~!」
とわざと大きな声を出して誤魔化しながら、自分の口の前に人差し指を立てた。
「そうだったのね。ごめんね。私、完全に勘違いしていたわ」
と和葉は謝罪し、
「私も、スピーカーにするね」
と言って、
「お兄ちゃん。安心して。優子は今、懸賞で当たったホテルに泊まっていて、その感想を書くモニターを、お友達の平山さんとやっている、そうよ」
と説明した。
「なんだ。よかった……」
と心底、竜馬は心配していたようだった。
「優子、ごめんね。高級ホテルでの宿泊、楽しんでね。じゃあ、月曜日に」
という和葉の後に、
「優子。お休み。楽しんで来てね」
と言う竜馬の声がした。
「ありがとう。和葉。竜馬。お休み」
と電話を切った。
そして、
「平山さん! 悪いんだけど、明日でいいからこの家で一番狭い部屋があったでしょう。確か二階の物置の部屋が」
「はい。確か、六畳ほどの広さの物置が」
「そこを空けて下さる。そこを普通の女子高生らしい部屋にするわ。そこで写真を撮って竜馬さんに送ることにします」
と言いつけた。
つづく。
登場人物。
新屋敷竜馬(しんやしきりょうま)。
妹の和葉のボディガードを頼まれて、同じ私立如月(きさらぎ)学園高校へ入学した野球少年。
東道町(ひがしみちまち)に住む。
公立東道中学校でギリギリレギュラーの実力。勉強は普通。運動も普通。妹からは慕われている。
就寝する時は、中学校時代の指定の紺色のスウェットを着用している。
妹和葉は「和葉」。優子は「優子さん」。小夏は「小夏」。春樹は「春樹」。薫は「薫さん」または最近は「薫ちゃん」と呼ぶ。
【28】から優子のことは「優子」と呼ぶことになる。
新屋敷和葉(しんやしきかずは)。
新屋敷竜馬の双子の妹。二卵性双生児なので顔はあまり似ていない。勉強と運動共に優秀な美少女。身長は竜馬よりも二十センチ低い一六〇センチ。
兄のことは大好きでどうしても兄と同じ高校に通いたいという目標を実現した。冗談を言ったり、兄をからかうのが大好き。一見、ぼんやり系に見られがちだが、実際は誰よりも考えを巡らせている。
就寝する時は、水色の縦縞のパジャマを着用している。
相生優子(あいおいゆうこ)。
三組では出席番号一番。入学試験第二位で入学した秀才。ちなみに一位は和葉。一六五センチと女子としては長身で、やたらと竜馬に絡みにいく。
非常に真面目な性格なのだが、身体は細くバストサイズがHカップなので、エロいと思われるのが嫌で、胸が小さく見える下着をつけていた。今は普通の下着を着用している。
優子は竜馬に一目惚れしているのだが、素直になれないでいる。実は財閥の娘だがそれを隠している。
十歳、年の離れた兄がいる。
西道町にある大豪邸に住むが、金持ちだということは隠している。
竜馬のことを「竜馬さん」と呼ぶ。
就寝する時は、薄い緑色のルームウェアを着用している。
【28】から竜馬のことは「竜馬」と呼ぶことになる。
メイドの平山(ひらやま)
大学を卒業して相生グループの会社に三年ほど勤めていた。非常に有能だったため、メイドの仕事をこなしながら、相生家を助けている。
メインは執事の森本源三だが、森本の次席の仕事をしており、男の森本では出来ない優子の生活面を担当している。
合気道の有段者。
2023年5月31日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
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