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【27】和葉。ハードオフでフィルムカメラ『Nikomat』に反応する。ついに発掘!和葉はジャンクデジカメを手に入れる。

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【27】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話

略して『ふたいも』です。

  東岡忠良(あずまおか・ただよし)

【27】和葉。ハードオフでフィルムカメラ『Nikomat』に反応する。ついに発掘!和葉はジャンクデジカメを手に入れる。

※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
 お待ちしています。

──1──

 新屋敷家族は途中でコンビニに寄り、それぞれ好きな飲み物を買った。
 竜馬は唐揚げを買ってもらったが、
「お兄ちゃん、一つちょうだい」
 と言われてあげると、両親も欲しがった。唐揚げをみんなに渡すと、結局買った竜馬は一つしか食べられなかった。
 一軒目のハードオフに着いた。
「私達はお茶でも飲んでいるわ」
「迎えに来るから、終わったら電話してくれ」
 と両親は車に乗って去って行った。
「さあ、お兄ちゃん。探すわよ」
「お、おう」
 いつもクールな和葉だが、今回は鼻息も荒い。やる気満々で表情も生き生きとしている。
 ハードオフ店内に入ると、YouTubeの動画でハードオフへ訪問すると流れるインストルメンタルの曲が聞こえる。
「本当にこの曲が流れているんだ」
 と和葉は嬉しそうである。
「取り敢えずは、カメラコーナーかな?」
 と覗いてみると、ガラスケースの向こうに並ぶデジタルカメラは、高額な一眼のデジカメや、中には古いが価値があるのかフイルム一眼も並んでいる。
 それでも和葉は一台一台丁寧に見ているが、
「……高いわ」
 と呟いた。
「なあ、和葉」
「なに?」
「予算はいくらなんだ?」
 と竜馬は訊く。
「五千円よ」
「五千円かあ~」
 と竜馬。
 片手で扱えるようなコンデジの新品だと、一万円は越えてくる。
「なるほど。それで中古品狙いって訳か」
 と納得した。
「ジャンクコーナーを見るか?」
「そうね」
 と青いコンテナケースを見てみる。
「ダメだわ。ほとんどフイルムカメラばっかりね」
「まあ、そりゃそうだろうな」
 すると、
「おお! これは!」
 と和葉は一台のレンズの付いていない一眼レフカメラを取り出した。
「見つけたか!」
 竜馬が和葉の近くへ笑顔で行くと、
「すごいわ! ニコマートよ!」
 と興奮気味である。
 そこには上部は銀色で『Nikomat』の文字が刻まれた、ボディは黒色のカメラだった。
「おい。それはデジカメじゃないだろ?」
「そうよ。フイルムカメラよ」
「だろう。それなら必要ないだろう」
「ああ……。使えないけど、とってもとってもカッコいいわ」
「まあ、確かにな」
「買おうかしら?」
「え? 買うの?」
 和葉は「う~ん」としばらく考え込んで、その『Nikomat』のフイルム一眼レフカメラの、シャッターを押そうとしたが、
「? あれ? これ、シャッターが押せない。フイルムも巻き取れない」
「ということは、壊れているってことだな」
 と竜馬が言うと、和葉は名残惜しそうに、
「壊れていたら、悲しいけど買えないわ。さようなら、『Nikomat』先生……」
 と青いプラスチックコンテナの中へ返した。
「先生って……。というよりフイルムカメラは元々いらないだろう」
 それにしても、
「和葉、お前何で『Nikomat』何て知っているんだよ?」
 と分かり切っていることを敢えて訊いた。
「そりゃ、毅(たけし)伯父(おじ)さんの影響かしらね」
 と笑って答える。

 新屋敷毅は僕達の父の兄である。末っ子の父親と長男の毅伯父さんとは十歳以上離れている。
 和葉は小さい頃から、この毅伯父さんと馬が合うようで、子供の頃から出張の多かった父親と、その出張に付いて行きたがる母親が不在になると、代わりに独身の毅伯父さんが何日も泊まってくれて、僕達兄妹の面倒を見てくれていた。
 僕達兄妹も毅伯父さんが大好きで、男性なのに家事をきちんとやってくれ、優しくてよく僕達二人の話を、笑顔で訊いてくれるような人である。
 特に和葉は小学校低学年まで、毅伯父さんの膝の上に座るのが好きで、毅伯父さんが持ってくる古いアニメや古い番組や本を一緒によく見ていた。
 小学四年生になっても毅伯父さんの膝の上に座ろうとした時はさすがに、
「おいおい、和葉ちゃん。もう、四年生なんだから膝の上に座るのはよそうよ」
 と言った。和葉は、
「何で? どうして? 私のことが嫌いになったの!」
 と悲しそうにする和葉を、何度も微笑みながらなだめていた。
 高校一年になった和葉は、さすがに毅伯父さんの膝の上には座らないが、スマートフォンではちゃんと繋がっていて、
「お兄ちゃん。毅伯父さんから面白い動画が送られてきた」
 と言っては、僕に見せてくれたりするし、毅伯父さんの家に遊びに行ったりするのである。
 
 残念ながらその大型店舗のハードオフには、和葉が希望するデジカメはなかった。
 竜馬が母に電話をする。
 家族全員が揃って、次の店舗に向かった。
 一軒目にくまなくデジカメを見たせいか、和葉は疲れ気味に見えた。
「次、良さそうなデジカメ、あるかなあ……」
 と車窓から見える山々を見つめて、哀愁が漂(ただよ)ってはいるが、目的は変態のおちんちんを撮影する機材を探しているのである。
 そして中規模のハードオフに到着した。もう、夕方になろうとしていた。
「父さんと母さんも店内を軽く見るけど、見終わったら車の中で待っているからな」
 と和葉と僕に言い残して、アウトドア商品の置いてあるコーナーへ向かった。
「じゃあ。探すか」
 とまずはカメラコーナーのガラスケースを確認したが、目ぼしい物はない。
「高いわ……。どうしても今日欲しいのに……」
 と悲しそうな和葉。
「ああ。私がデジカメを手に入れる前に、変態が警察に捕まってしまったら……。 そう想像するだけで気持ちが沈んでしまうわ……」
 とカメラコーナーのガラスケースに手を置きながら言った。
「え? それって良いことだろう」
「お兄ちゃん、何を言っているの! 女として生まれてきたら、おちんちんって遠い遠い夢の存在なのよ! 一生のうちにいつ巡り会えるかどうかも分からない、尊いものなのよ……」
 と遠い目をした。そして、
「そりゃ、お兄ちゃんは毎日見て、触りまくっているから珍しくないかもだけどね」
 と言った。
「そんなに触る訳ないだろ!」
 と竜馬は言った。
 だが、そんな竜馬のツッコミを最後まで聞かず、カメラのジャンクコーナーの青箱を、和葉は漁り出した。
 棚の上を見ていたが目ぼしい物がなかったようで、腰を下ろして下段の青箱を探し始める。
 座ったために和葉の大きめのお尻がタイトなミニスカートのせいか強調されている。白くて肉付きのよい太腿(ふともも)が、我が妹ながら眩しい。
「なんだよ……。無視かよ……」
 と見てはいけないものを見てしまった罪悪感からか、不貞腐れたように言った。
 すると、
「お兄ちゃん! これ見て!」
 と一台のカメラを高々と上げた。
「おお! ついにあったのか!」
 と竜馬が側に行こうとすると、
「見て!『Nikomat』よ!」
 とまた例のフィルムカメラを見つけていた。
「おいおい。もう、『Nikomat』はいいだろう」
 と言うと、
「見て! このカメラ、シャッターが下りるわ。それにフィルムを巻く機能も使えるわ」
 と興奮気味である。
「へえ~。そうなんだ」
 と少し感心して見せたが、正直言って竜馬は興味がない。
「でも値段が高いわ。ジャンクなのに千円もするのね……」
 と悲しげに言うと、
「さようなら『Nikomat』、もう会うことはないわ……」
 と魚を放流するかのように、『Nikomat』を青箱に返した。
 そのすぐのことである。
「お兄ちゃん! これ見て!」
 とまた言ってきた。
「なんだよ。また『Nikomat』かよ。もっと真面目に探したらどうた?」
 と呆れ気味に竜馬は言った。
「お兄ちゃん……。あったわ……。動作確認をしてみないと分からないけど、CASIO(カシオ)のデジカメを見つけたわ……」
 と銀色のボディにストラップの付いたデジカメだった。黒いコードが透明のテープによって巻かれている。 

──2──

 しかし、見つけたのはジャンク用の青箱である。
「動かないんじゃないか?」
 と竜馬は心配そうに言う。
 和葉はカメラの品番を探す。
「『CASIO EX-ZS6』ってあるわ」
 とすぐにスマートフォンで検索する。
「二〇一二年に発売された製品なのね」
「もう、十年以上前の物なのか。大丈夫なのか?」
 と竜馬は心配そうである。
「値段は二千円よ」
「それなら買えるな」
 と和葉に微笑むが、
「これが動くかどうかが問題なのよね」
「確かにな。動かないならどうしようもないし、動いても撮影できなければ意味ないし」
 そして、
「すいませ~ん」と和葉は近くで作業していたハードオフの店員に話しかけた。
「はい。いらっしゃいませ」
 と眼鏡をかけた店員は愛想よく振り返った。
「このデジカメなんですけど、動作確認をしたいんですけどいいですか?」
 と人にものを頼む時に使う、和葉お得意の『スマイル攻撃』を仕掛けた。
「えっ、あっ。大丈夫ですよ。こちらへ」
 と店員は少し動揺していたが、レジの近くへ行き、カシオのデジカメに巻かれていたビニールテープをハサミで切った。
「切っちゃっていいんですか?」
 と心配そうな和葉。
「ええ。構いませんよ。私、以前にカシオのデジカメを持っていましたので、使い方は知っているんですよ」
 と言いながら、小さな灰色のカバーキャップを外す。そこにはケーブルを差す端子が出てきた。付属していたケーブルを起動しているノートパソコンへUSBに差すと、反対側の端子をデジカメの凹んでいる端子に入れた。すると本体の上部に赤いランプが点いた。
「充電は出来ているようですね。充電が出来るまでしばらく店内を見ていて下さい」
 と言われた。
「分かりました。しばらくしてから、またここに来ますね」
 と軽く会釈をして振り返り、
「お兄ちゃん、また別のを探そう」
 と十数分、ジャンク箱を漁った。
「ないわね。なかなか」
「というか、ほとんどがフィルムカメラばかりだな」
「そうね。デジカメのジャンクって唯一、あのカシオのだけだったわね」
 と再び充電中のデジカメのところに戻ってきた。
 先程の眼鏡の店員に、
「少し触っていいですか?」
 と聞くと、
「はい。どうぞ」
 と言われた。
 和葉はまだ赤いランプが消えていない、つまり充電中のデジカメ本体と、ケーブルを外した。
「じゃあ、電源を入れてみるね」
 とデジカメの上部を見ていた。
「なあ、和葉。どれが電源スイッチなのか分かるのか?」
 と竜馬は聞いた。
「分かるよ。だって私、毅伯父さんの家で、色々なデジカメを使わせてもらっていたもの」
「えっ! そうなのかい」
 と驚く竜馬。
 和葉はそのデジカメのレンズをハードオフ店内の大きな窓に向けた。
「上部左にある丸いのはシャッターボタンで、その小さな長方形横に『ON/OFF』って書いてあるから、きっと電源ボタンね」
 と和葉は言いながら、電源ボタンを押した。
 心地いい機械音と共にレンズが飛び出し、『ピピッ』というアラーム音の後に背面のモニターが点いた。
「凄い! このカメラ、動くわ!」
 と和葉は興奮気味である。
「おお!」と竜馬もテンションが上がっている。
「後は写るかどうかね」
 と電源を切った。
「ん? 写さないのか?」
 と竜馬は不思議がると、
「このデジカメの記録メモリーを調べないといけないわ。ちょっと待って」
 と自分のスマートフォンを取り出し、デジカメの底を見ながら『CASIO EX-ZS6』と打ち込むと検索した。
 答えはすぐに見つかった。
「SDカードが使えるわ」
 と嬉しそうだったが、
「……うっかりしていたわ。動作確認のためにSDカードを持ってくればよかったわ。気づかなかった……」
 と残念そうに俯いた。だが、
「ん? 内蔵メモリ46MB ですって!」
 と驚いている。
「内蔵メモリって! このデジカメってSDカードがなくても、少しは撮影出来るってことかしら」
 和葉はスマートフォンをテーブルに置くと、『CASIO EX-ZS6』を店の窓に向けてシャッターを切った。
 カシャッ。
 というシャッター音が響くと、ついさっき和葉が写した窓から見えていた、道路の車の往来が映し出される。
「凄い! 問題なく写るわ!」
 ととても嬉しそうである。
「でもおかしいわね。写りには問題なさそうなのに、何で二千円なんて破格値で売られていたのかしら?」
 と言うと、電源を点けたまま外観を見た。
「パッと見ただけだけど、落としたんでしょうね。打痕があるわ」
「そうなのかい」
 と竜馬がデジカメを覗き込んだ時だった。
「ん? 何だ? この黒い線は?」
 と竜馬が言うと、
「あっ。何かしら、これ? モニターの傷かしら?」
 とわざとテーブルを写して、モニター画面を一色にした。すると、
「これって液晶の不具合だわ。詳しくは分からないけどモニターの液晶漏れかしら? それとも撮影に関係する部品の故障?」
 と和葉は言った。
「なあ、どうする? この黒い線が写した画像にも出るようなら使い物にならないかも」
 と竜馬は残念そうに言った。
「確かにお兄ちゃんの言う通りね。平均価格一万円はするデジカメなのに、モニターの不具合だけで二千円にまで下がるということは……」
 と顎(あご)に手を当てて考えていた。
  
──3──

 和葉は少しの間考えると、
「すいません。これ、下さい」
 とレジに持って行き、二千二百円を支払った。
 店を出るさいに竜馬は、
「写した画像に問題があったらどうするんだ?」
 とジャンクカメラを買った妹を心配していたが、
「何かトラブルがあるかもしれないけど、ないかもしれないじゃない」
 と嬉しそうである。
「まあ、本人が気に入ったならいいんじゃないかな」
「そうよ。それに」
 と言い、両親が待っている車に乗り込みながら、
「電源ボタンを押すだけですぐに撮影できるし」
 と運転席と助手席に並ぶ父と母の写真を撮った。
「もう。和ちゃんたら、びっくりするじゃない」
 と母は微笑む。
「和葉。そのデジカメを買ったのか」
 と父は和葉が買ったデジカメに興味深々である。
「そのカメラ、お父さんによく見せてよ。そうだ。少し早いが食事にするか」
 と家族三人の顔を見たが、
「お父さん。悪いんだけどもう一件、行って欲しいところがあるの」
 と和葉。
「ああ、いいとも。どこに行くんだい?」
「百円ショップのダイソーよ。そこでMicroSDカードを買うわ」
 父は、
「ダイソーに行かなくても、余っているSDカードがあるのであげるよ」
 と言った。
 和葉は労せずしてSDカードを手に入れた。
 家族でファミリーレストランで食事を済ませて帰宅すると、父は和葉に早速SDカードを渡した。
「まだまだ、あるからいつでも言ってくれ」
 と高校生の娘と話せて嬉しそうである。
「ありがとう。お父さん」
 と言って、受け取ったSDカードを、デジカメの底をスライドさせて現れたら取り付け口に、ゆっくりと挿入する。
「やけに慎重だな」
 と竜馬。
「やっぱり。裏表が逆だったわ」
 と正確な方向を見つけて、最後まで押し込み、底のフタを閉じた。
「まずはフォーマットしなきゃ」
 とデジカメを触っている。
「もしかして毅伯父さんのところで、同じカメラを触ったことがあるのか?」
 と竜馬が聞くと、
「ううん。初めて触るわよ」
 と言う。
「それにしてはスイスイと触れるんだな?」
 と不思議そうに見つめる竜馬。
「お兄ちゃん。デジカメってね。目的は写真を撮ることだから、ほとんどのメーカーのデジカメの操作方法は、ほぼ同じと行ってもいいのよ。もちろん、若干の違いや特殊な機種もあるかもしれないけど」
 と『SET』と書かれたボタンを押すと、縦に選ぶ項目が出てきて、
「フォーマットってほとんどの場合は『MENU』の中にあるものよ」
 と選んで、迷わず右端の『設定』を押した。
「えっ。三つも選ぶところがあるのに、なんですぐに『設定』って分かるんだ?」
 と竜馬からすれば不思議で仕方がない。
「『撮影設定』『画質設定』『設定』ってあるけど、『フォーマット』って撮影と画質に関係ないでしょう」
「確かに」
「ということは、必然的に右の『設定』にあるってことになるのよ。ほら、あった」
 とフォーマットをして、
「じゃあ、お兄ちゃん、ポーズ」
 とカメラを向けた。
「えっ。えっ」
 と思わずガチガチになって起立のポーズになったところを、一枚撮られた。
「次は動画を録るから動いてみて」
 と急に言われて、竜馬は取り敢えず手足を無意味に動かす『不思議な踊り』を始めた。
「良いわよ。良いわよ」
 と和葉は喜んでいる。
 撮影が終わると、
「じゃあ、お兄ちゃん。今からお兄ちゃんの部屋に行こう」
 と和葉は竜馬の手を取った。
「おい。ちょっと待てよ」
「ん? 何?」
「お前、まさか。僕の部屋で『ズボンを脱げ』とか言い出すんじゃないだろうな?」
 と小声で言うと、
「はあ~。お兄ちゃん、何を言っているのよ!」
 と大声で返した。
「えっ。何だよ。違うのかよ」
 とその反応に竜馬は慌てている。
「私がそんなことを言うはずがないでしょう!」
 と今日の昼過ぎには確かに、和葉の部屋で本人が言っていた記憶が蘇る。
「おいおい。どうした?」
 と父が割り込んできた。
「お父さん。気にしないで。お兄ちゃんが私にいたずらっぽい事を言っただけなの。それで私、びっくりしちゃっただけだから」
 と悲劇のヒロインもどきの名演技を見せた。
「竜馬。和葉に変なことを言ってはいけないぞ」
 と父は怒気を込めて言った。
「え~。僕が悪いのかい」
 と大きなため息をつく。
「まあ、いいわ。お兄ちゃん、許してあげるから、お兄ちゃんの部屋へ行きましょう」
「だから、僕の部屋で何をするんだよ」
 すると、
「そんなの、このデジカメのデータが正常にパソコンへ入るかどうかの確認をするのに決まっているじゃない」
 と買ったばかりのジャンクカメラを見せた。
「あ。そうか。そう言えば黒い筋も入っていたしな」
「そういうことよ」
 と二人は竜馬の部屋に入っていった。
「陰キャのゲーマーなのに、意外と部屋が綺麗なのよね」
 と竜馬の部屋に入って、和葉は言う。
「陰キャのゲーマーで悪かったな」
 と如月学園高校への入学で買ってもらったゲーミングパソコンを立ち上げる。
 和葉はそれを見つめながら、
「立ち上がるのが早いわね。さすがは高性能デスクトップね」
 と言い、
「私の、お父さんからのお古ノートパソコンとは偉い違いだわ」
 と羨ましそうにしている。
「でももうすぐ、このパソコンよりも上のゲーミングパソコンを買ってもらえるだろう」
 と返すと、
「まあ、そうよね」
 と和葉との会話の間に、竜馬は素早くパソコンのUSBに『CASIO EX-ZS6』に付属していた黒いUSBコードを繋げると、カメラボディ右にあるストラップの上にある灰色のゴムキャップを爪で開けた。
「なんだ。お兄ちゃんも知っているじゃない」
 と和葉はその手際に少し感心した。
「まあ、たまに友達のスマホやデジカメ、自分のスマホのデータも移すからな」
 と言いながら、ワイヤレスのマウスを操作している。
「うん。ちゃんと認識しているな。そうか、USBドライブとして認識するんだな」
 と順にファイルを開いていくと、和葉が写した車内とファミレスでの家族写真と、竜馬のガチガチの起立と不思議な踊りの動画を見ることができた。
 ただ、
「画像はとても綺麗なのに、動画はイマイチね。ノイズが多い」
 と和葉は不満げである。
「カメラの設定かもしれないから、後でチェックしてみたら」
 と竜馬が言った時だった。
「ねえ。お兄ちゃん」
「何だ?」
「この『ドラえもん』って言うファイルはなに?」
「えっ!」
 と焦る竜馬。
「お兄ちゃん、特に『ドラえもん』のファンって訳じゃなかったわよね?」
「……う、うん……」
「中身、見せてくれる」
「いや。それはプライベートのことだから」
「じゃあ、私が開ける」
 と竜馬の手からワイヤレスマウスを取り上げると、ススッと操作して開けてしまった。
「こっ! これは!」
 と和葉。
 そこには竜馬のスマートフォンからは消したはずの、優子が間違って竜馬に送った、おっぱいがはみ出ていた優子の下着画像だった。
「お兄ちゃん! これ!」
 と和葉は怒りを込めている。
「ごっ、ごめん! その、余りにその……。あれなんで、その……」
 と言うと、
「すぐに消すよ……。消すから、マウスを返してくれ」
 と力を落とした状態で言った。
「お兄ちゃん!」
 竜馬はきっと「最低!」「変態!」「ドエッチ!」等、罵られるだろうと思った。
 すると、
「今すぐファイル名を『ドラえもん』から『優子のオッパイはみ出し画像』に変更してくれる! そして私にも頂戴」
「えっ? 消すんじゃないの?」
「消せって言ったことは、実は後悔していたの。お兄ちゃんだって男でしょう。自分の意志よりも、おちんちんの方が強いってことを忘れていたわ」
 と言った。
 それを聞いた竜馬は、
「ごめん。本当にごめん……。」
 とファイル『ドラえもん』を削除した。 

つづく。

登場人物。

新屋敷兄弟の父。
 商社に勤めるサラリーマン。英語が得意でよく海外出張に出かけることが多い。
 父の旅費は会社持ち。母は同行することが多く、会社の計らいで母は『臨時アルバイト』として旅費を出してもらっている。父ほどではないが、日常会話くらいの英語は話せる。
 家族の中で英語が苦手なのは竜馬だけである。そのせいか両親は和葉を溺愛し、竜馬には少し諦めたような空気が漂う。
 竜馬のことは『竜馬』。和葉のことは『和葉』と呼ぶ。

新屋敷兄弟の母。
 普段は専業主婦だか、父の海外出張にはよく付いて行き、アルバイトとして一緒に働くことが多い。
 父ほどではないが、日常会話程度なら英語を話せる。
 期待以上に優秀な和葉を溺愛している。逆に期待に答えられなかった竜馬を、嫌ってはいないが諦めたような対応をしている。
 竜馬のことは『竜馬』。和葉のことは『和ちゃん』と呼ぶ。

新屋敷毅(しんやしきたけし)
新屋敷兄妹の父親は末っ子で、兄の毅は長男で年齢は十歳以上離れている。和葉は小さな頃から毅伯父さんと馬が合うようで、「どうしてこんな古いことを知っているのか?」と思う和葉の言動は、この毅伯父さんの影響である。独身。
  
令和5年5月25日

※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
 また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
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