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【24】ついに決着。野球シリーズ最終話。試合が進むにつれ、ギャラリーが増える。男子は和葉を見るために。女子は竜馬を見に来たことが発覚。
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【24】双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
【24】ついに決着。野球シリーズ最終話。試合が進むにつれ、ギャラリーが増える。男子は和葉を見るために。女子は竜馬を見に来たことが発覚。
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──1──
センターから走ってきた村瀬は、一度川田高校のテント下のベンチに入った。
その時である。
村瀬く~ん!
村瀬君~! 頑張って~!
という川田高校の制服を着た女子が、黄色い声援を送っていた。
「凄い。モテモテね」
と優子は隣りの和葉に言った。
「背は高いし、エースで四番だし、顔も良いし、おちんちんも大きそうだしね」
「おちんちんは関係ないんじゃないかな」
「もう。二人共、おちんちんの話題はそのくらいにして下さい」
と琴美。
「えっ! それ、私も入っているの?」
と優子は慌てた。
先程までマウンドにいた、キャプテンでピッチャーの小島もベンチに戻っていた。
村瀬は外野手用グローブから、投手用グローブに。
小島は投手用グローブから、外野手用グローブに交換して守りについた。
「そう言えば、お兄ちゃんも投手用のグローブを持って来ていたわよね」
と和葉。
「ああ。でも使うことなさそうだけどな」
と少し寂しそうに竜馬は言った。
村瀬が投球練習を始めると、川田高校のテント後ろの女生徒ギャラリーは大盛り上がりである。
小笠原高校からは、どよめきの声が上がった。
速い!
これ、うちの長崎とどっちが速い?
すると村瀬は変化球を投げた。内角から外角に鋭く曲がる変化球だった。
このスライダーは長崎より凄いんじゃないか?
明らかに小笠原ナインは動揺し始めた。
そして極めつけは同じフォームからスローカーブを投げたのである。
「これはかなり厄介だわ……」
と和葉はつぶやいた。
その投球練習を見つめながら、
「俺ってまだまだだな。もっともっと練習しないと」
と隼人は闘志を燃やしているようだった。
その時である。
「遅れてごめ~ん!」と川田高校校門から大声がした。走って来たのは、遅刻していた小笠原のセカンドの二年生だった。
「こら! 遅いぞ!」
と三年生キャプテンは仁王立ちになりご立腹である。
遅刻した二年生は、
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
と連呼し、
「皆さん、本当に申し訳ない! 申し訳ない!」
と必死に言っている。
「思っていたよりも早かったな」
と同級生の二年生ショートの選手が声をかけた。
「親に車で送ってもらったんだ」
車だと渋滞がなければ、電車やバスよりも早い。
遅れた二年生はスコアボードを見る。
「ええ~! 凄い! 川田の村瀬から六点も取ったのか!」
と大げさにも見える驚き方だが、それだけ一年生の村瀬が、超高校級である証拠でもあった。
「いや。今、ちょうど投手交代なんだ。三年生ピッチャーを打ち込んだんだ」
「そうなんですか。それにしても凄いな。六点は」
「長崎が四打点。キャプテンが一打点。そしてお前の代わりにセカンドに入ってくれた、こちらのお嬢さんが二打数二安打一ホームランの一打点なんだ」
とキャプテンはまるで自分の自慢のように、和葉を紹介した。
「えっ! ホームラン!」
と正規レギュラーの二年生は、和葉をマジマジと見つめる。
和葉は、
「どうも初めまして。後はよろしくお願いしますね」
と微笑んだ。
それを見て頬を少し赤らめた二年生は、
「こんなにカワイイ子が、ホームランを打ったのですか?」
とキャプテンに確認する。
「ああ。それにホームランもだけど、セカンドの守備も完璧だ」
「えっ! そうなんですか!」
と和葉を再び見つめた。
「お前、こちらの新屋敷和葉さんに守備もバッティングも教わったらどうだ」
と本気なのか冗談なのか分からないことをキャプテンは言った。
小笠原高校キャプテンは、二番打者とセカンドの交代を主審の柴山顧問に伝えた。
レギュラーメンバーのセカンドの選手が来たために、和葉はベンチに下がったのである。
キャプテンは、
「新屋敷和葉さん。試合に出てくれて本当にありがとう」
と帽子を取って深々と頭を下げた。そこにいた小笠原高校野球部全員が、
「ありがとうございました!」
と立ち上がって、帽子を取った。
和葉は立ち上がり、
「皆さん、ありがとう。こちらこそ、もう二度とやることはないと思っていた野球が、また出来て本当に楽しかったわ」
そして、
「また、機会があったら、お兄ちゃん共々呼んで下さい」
と微笑むと、
おお~!
天使だ~!
カワエエ~!
と野球部員から声が出た。
「あいつ、猫被ってるな~」
と竜馬がつぶやくと、
「和葉ちゃん、本当に面白くて優秀でいい子だよな」
と隼人は言った。
キャプテンは
「もし、よかったらユニフォームを着替えて来てもいいよ」
と言ってくれたが、
「お気遣い、ありがとうございます。でも最後までユニフォームで居させて下さい。もう、二度と着る機会がないかもしれないので」
と言うと、
「さあ! ピッチャーの立ち上がりを狙っていくよ! バッター! ボール、よく見て行こう!」
と声を出した。
「ねえ、和葉」
「何? 優子」
「あなた、本当に野球が好きなのね?」
と言うと、
「かもね。やり始めた頃は頑張れば、女の子でもプロ野球選手になれると信じていたからね」
と少し悲しそうに笑った。
川田の村瀬は本当に凄かった。
変わったばかりの立ち上がりでは、ファーボールで何度かランナーを出してしまったが、投球数が増えると安定して来た。
そうなると一番打者の内野安打とキャプテンと長崎隼人と山上が単発でヒットを打っただけであった。
ヒットと言っても隼人以外は、村瀬からすれば不運なポテンヒットで、ちゃんとバットの芯に当てたのは隼人だけであった。
ここから川田高校側も反撃を開始した。
四回に連打が続き、小笠原は二点を取られた。
ここでピッチャー岸先輩から、長崎隼人へ交代になった。岸先輩は隼人が守っていたセンターへ守りにつく。
変わってから隼人は何とか抑えていたが、八回裏に落ち着きを取り戻した超高校級の村瀬に、ヒットとファーボールで出したランナーを二塁打で返され二点を取られた。
ついに小笠原高校はニ点差に詰め寄られた。
──2──
九回表ノーアウトで竜馬の打席が回ってきた。今までノーヒットである。小笠原も追加点が欲しいところだった。
「お兄ちゃん! ボール、よく見て!」
「竜馬さ~ん! ファイト!」
「新屋敷さ~ん! しっかり~!」
と和葉と優子と琴美が応援すると、
新屋敷く~ん! 頑張って~!
と女子四、五人の声がバックネット側から聞こえてきた。
「え? 今の声は何?」
と和葉達がバックネット裏を見ると、四、五人の女子が竜馬を見つめながら盛り上がっている。
キャー! こっち見たわ!
素敵~! カッコいい~!
とまるでお祭り状態である。
「なんか、嫌な感じね。あの黄色い声が何だかウザいわ」
と優子が悪意を込めて言うと、
「何、言っているの。優子だってお兄ちゃんがファールを打つたびに盛り上がっていたじゃない」
と和葉が言うと、優子は顔を真っ赤にして、
「だって、ヒットとファールの違いが全然分からなかったんだもの。最初に教えてくれていたら、あんなことにはならなかったのに」
と頬を膨らませた。
優子は竜馬が前に打つたびに、ファールラインから外れた打球でも、
「ちょっと! 今のどうして白い座布団のところに行かせないのよ! おかしいでしょう!」
と大声を出していたのだった。
見かねた琴美が、
「相生さん。左右にあるファールラインの外の打球は、ファールと言ってヒットにはならないんです」
と説明してくれたのである。
「それと白い座布団じゃなくて、ベースって名前だから」
と和葉は付け加えた。
「私、全然野球を知らなかったから許してよ」
と言い、
「それにしても、自分の高校の野球部を応援しないで、敵の選手を応援するあの行為はよくないわ!」
と優子は立ち上がりながら言った。
簡単に言えば、小笠原高校側の選手である竜馬を、川田高校の女子生徒が熱く応援しているのが、気に入らないようだった。
竜馬が一塁側に切れるライナーのファールを打つと、バックネット裏の川田の女子高生達が大騒ぎする。
「呆れたわ。あの子達、ヒットとファールの違いも分かってないのね」
と今朝まで自分も分かっていなかったことを棚に上げて、優子は不満げに言った。
「優子、あなた、さっきまで自分も分かっていなかったのに」
とさすがの和葉も引き気味だった。
結局、竜馬はセンターフライでアウトになった。
残念ながら竜馬は全打席ノーヒットで終わった。
「あ~あ。全打席、ノーヒットとはね……」
とテント下のベンチに戻って落ち込んでいたが、
「お兄ちゃん!」と和葉。
「何だよ?」と竜馬。
和葉は竜馬の前に立つと、
「だから私が少し打てないからって、やたらとバッティングフォームを変えるのはよくないって言ったのに、全然私の言うことを聞かないから」
と身体を少し屈ませて説教をした。
すると、
何、あの子、偉そうに言っちゃってさ!
ちょっと、胸が大きいからって調子に乗ってんのよ!
というヤジが女子高生の集団から聞こえてきた。
和葉はそのヤジが聞こえてきた方を睨むと、意地の悪そうな川田の女子生徒らがニヤニヤしながら見ていた。
和葉は竜馬の頭を持つと、思いっ切り抱きついた。和葉の大きな胸が竜馬の顔を挟む形になった。
小笠原野球部員はもちろん、それを見た川田の野球部員や周りのギャラリー、そしてヤジを飛ばした女子生徒らは、激しく驚いた。
「私達は付き合っているの! 邪魔しないで!」
と和葉が言うと、竜馬を応援し、和葉にヤジを飛ばした女子生徒らから悲鳴が上がった。
ウソ~! あの人、もう彼女いるの!
ヤダ~! 私、ショックで立ってらんない~!
と一部は泣き崩れた。
「フフフ。勝った」
と和葉がつぶやくと、
「いっ! 息が出来ない~!」
と竜馬の声がした。
「あ。ごめんなさい、竜馬さん!」
とわざと大きな声で和葉は言った。
「何、すんだよ! いくらなんでもやり過ぎだぞ!」
と顔が真っ赤になった竜馬が怒る。
「フフフ」と笑う和葉。
「な! 何だよ! もうやるなよ!」
と言うと、
「愛よ、あ・い!」
と言い、顔を竜馬の耳元に持って行き、小声で、
「仕返し、成功。お兄ちゃん、協力をありがとう」
と小声で言うと、
「アホか! そんなことで胸を押しつけるな!」
と竜馬は言った。
すると、それを見ていた優子は、自分の胸に手を当てて、
「あ。いいな~」
と言った。
「かっ! 和葉さん! えっ、エッチなのはダメです!」
と赤面した琴美が言った。
「相変わらず、二人は仲いいな。でも仲、良過ぎだな」
と隼人は呆れ気味に言った。
川田高校は、小笠原ピッチャーの岸先輩を四回に打ち崩して、すでにエースピッチャーの長崎隼人に交代しているのだが……。
セカンドのレギュラー選手が来たために、ベンチを温めることになった和葉は、隼人の投球練習を見ていたが、どうも隼人の様子がおかしい。
「長崎さん。何だか調子が良くないみたいね。どうしたのかしら?」
とつぶやくと、
「あのう、和葉さん。ちょっと聞いていいですか?」
と隼人の妹の琴美が話しかけた。
「何かしら? あ。さっきお兄ちゃんにした『胸ギュギュ』は、川田の女子生徒なのに、お兄ちゃんを応援した罰みたいなものだから気にしないで」
と言うと、
「へえ~。あれって『胸ギュギュ』って言うんだ」
と感心する優子。
「優子。覚えない方がいいわよ。『胸ギュギュ』って咄嗟に私が今、考えた造語だから」
「えっ! 造語だったの!」
「そうよ。ちなみに男の人の顔の前に胸を出して自由に触らせることは『パフパフ』って言うのよ」
優子は顔を真っ赤にしながら、
「かっ! 顔の前にむっ! 胸を出して自由触らせる~! 『パフパフ』って言うの!」
と自分の大きな胸に手を当てて言った。
「和葉さん! そんな言葉はありません!」
と琴美。
「何を言っているの。琴美ちゃんは知らないでしょうけど、漫画のドラゴンボールの中に『パフパフ』は出てくるのよ」
「え? そうなんですか?」
と琴美は少し感心している。
「そうよ。だから琴美ちゃんが聞きたい『胸ギュギュ』と『パフパフ』は、その時のシチュエーションで使い分けるといいと思うわ」
と親指を立てて、
「頑張ってね」
と和葉は微笑むと、
「私はそんなことを訊きたいんじゃありません!」
と言った。
「私が聞きたいのは、和葉さんがどうして兄さんのことを『長崎さん』って『さん付け』で呼ぶかなんですけど」
と少々怒りのある言い方だった。
「ああ。そのことね」
と和葉は投球練習を終えた長崎隼人を見つめながら、
「長崎さんって、中学の野球部で一緒だった。まあ。私は陸上部との掛け持ちだったんだけど。一切練習をサボらない人だったわ。それでいて登校前に新聞配達をして、全額お給料をお母さんに渡して家計を助けたり、それでも試験は常に二位だったのよ。あっ、ちなみに常に一位は私ね」
といらない情報を差し込んだ。
「和葉さんが凄いことは分かりました。それでどうして兄さんのことは同じ歳なのに『さん付け』なんですか?」
と訊いた。
和葉は琴美から視線を外して、バッターに投げ込む隼人を見つめながら、
「私、心から尊敬出来る人は年齢に関わらず『さん付け』で呼ぶことにしているの」
と教えてくれたが、隼人が投げたボールは外れて、ストレートのファーボールになり、ノーアウト一塁になってしまった。
そして次は足元へのデッドボールを投げてしまい、隼人は帽子を取って謝っている。ノーアウト一・二塁となってしまった。
それを見た和葉は、
「でも今日は『くん』で呼んでもいいかもしれないわね~」
と言った。
「え? それって相手の状況に合わせて、使い分けるものなの?」
と優子がツッコミを入れた。
この日の隼人はコントロールが異常に悪かった。ファーボールとデッドボールでランナーを出しながらも、何とか八回までは抑えたが、九回裏を迎えることになった。
小笠原高校六点。川田高校四点。
ニ点差で迎えた川田の攻撃は、八番の二年生バッターからだった。
ここでも隼人はボールとストライクがはっきりしていた。
球速は村瀬にも負けないスピードボールで、川田のバッターはバットに当てるのも苦慮している。ストライクのコースだと振り遅れたり、かすりもしない。
三振かファーボールかの投球は、ついにツーアウト満塁になってしまった。
そこで川田は一年生エースピッチャーで四番の村瀬が打席に立った。
──3──
「これはまずいわね……」
と和葉。
「そうですね」
と琴美。
「え? 何で?」
と聞く優子。
二人は同時に優子を見た。
「説明してあげるわ」
と言っている間に、小笠原の三年生キャッチャー山上先輩が、マスクを外して隼人の側に行き、話をしている。
「今はツーアウトの一・二・三塁が埋まっているの。つまり満塁なの」
「うん。それは分かる」
「ということは、ボール四球でファーボールで一塁に出てしまうの」
「そうなの? それだと塁は全部、人がいるわよね」
「人がいる! まあ、表現は間違ってないけど、野球の言い方として『塁が埋まっている』って言うんだけど」
と和葉。
優子は落ち着いた様子で、
「うん。でどうなるの?」
「ファーボールのランナーが一塁に行くと、今一塁にいるランナーは二塁に行くの」
「そうなんです。二塁にいるランナーは三塁に」
と琴美。
「え? なら今三塁にいるランナーは?」
「ホームに行くの。つまりホームイン。そうなると?」
「まさか、一点が入るの?」
「そういうこと」
「……ちょっと待って……。その理屈だと、ストライクしか投げられなくない?」
「そう。だからいくら球が速くても、コントロールが定まらなければ」
「ファーボールになるか、ストライクを投げたところを打たれるかってことなの?」
「そう! その通りよ!」と和葉。
「そう! その通りです!」と琴美。
「それって、大ピンチじゃん!」
と優子は慌てだした。
「それもバッターは今日、当たっている村瀬君なのよ」
「ええ~。これってもしかして負けちゃうの!」
「長打が出たら、逆転されるわ」
「ねえ、どうしたらいいの? どうしたらいいの?」
と優子。
「とりあえず」
「とりあえず?」
「長崎さんを応援しましょう」
と言うと、
フレー! フレー! ナ・ガ・サ・キ!
と三人は熱い声援を送った。
第一球のストレートは村瀬が見逃してのストライク。ここで優子と琴美は盛り上がったが、和葉は黙ったままだ。
「ストライクなのに反応薄いわね」
と優子は和葉に言う。
「まずいわ。完全に球筋を見てるわ。ストレートを狙うつもりね」
二球目は変化球だが大きく外れてボール。
「変化球が入らないのね。苦しいわ」
三球目も変化球だが外角低めではっきりと分かるボール。
四球目はストレートだったが、外角高めのボールとすぐに判断される球だった。
「スリーボール。ワンストライク。もう、思い切ってストレートをストライクに投げるしかないわ」
「これはもう、ボールを投げて歩かせた方がいいかもですね」
と琴美は言ったが、
「他のバッターならそうするかもだけど、長崎さんは村瀬くんを意識しているから」
「はい。やっぱり」
「勝負するでしょうね」
キャッチャー山上先輩は大きく手を広げた。長崎隼人はセットポジションではなく、大きく振りかぶった。
それを見た塁上の選手は大きくリード取る。
「長崎さん、全力で投げるのね」
放たれたストレートは外角低めギリギリの最高のボールだった。村瀬はフルスイングで空振りする。
「やっぱりストレート狙いね」
「あ~。ドキドキする」
と優子。
「今のはスピードもコースも最高だったわ。でもまた同じところに投げられるかどうかは?」
と和葉が言うと同時に、隼人はストレートを投げた。
「ダメ! ど真ん中だわ!」
と和葉が言った瞬間だった。
村瀬は隼人のボールを芯で捉えた。だが、少し振り遅れたせいで、勢いのある打球はライトに飛んだ。
「ライト! 竜馬!」
と隼人は振り向きざまに叫んだ。
「お兄ちゃん! バック、バック!」
竜馬は全力で後ろに向かって走る。
「ああ……。竜馬さん……」
と優子は立ち上がった。
琴美は目を閉じてしまい、手を組んで祈っている。
「ああ、ダメだわ! 抜ける!」
と和葉は叫んだ。
満塁の長打コースである。ツーアウトなのでランナーは全力で塁を駆け抜けていた。
抜けたら川田に三点が入り、逆転負けが確定する。
「竜馬! 頼む!」と隼人。
「お兄ちゃん! バック! バックよ!」
と和葉。
「竜馬さん! 竜馬さん!」
と優子。
竜馬は大きく左手を伸ばして、ボールに飛びついた。審判役の川田の部員が走って確認しに行く。
選手も観客も静かになり、少しの沈黙が訪れた。
審判の川田部員がボールの行方を探す。
打った村瀬も二塁上でそれを見ていた。
審判の手が上がった。
「アウト! ゲームセット!」
ナイス! 竜馬!
お兄ちゃん! お兄ちゃん!
竜馬さん!
竜馬のファインプレーに高校全体から、大きな歓声が上がった。
負けた川田の野球部員も拍手を送っている。
竜馬はゆっくりと立ち上がり、グローブを高々と上げてキャッチしたボールを見せた。
小笠原ナインが拍手し、声をかけ、背中を軽く叩いていく。
観客らの拍手が続く。
「全員、整列!」
との川田の柴山顧問が続ける。
ベンチにいた和葉も走って行き、ホームベース脇に並んだ。
「小笠原高校と川田高校の練習試合は」
と少し溜めると、小笠原ナインは胸を張り、川田ナインは俯いたり、悔しい表情をした。
「六対四で小笠原高校の勝ち」
ありがとうございました!
と両方の部員が帽子を取って頭を下げた。
小笠原野球部員らにもみくちゃにされる竜馬の側に隼人が行く。
「竜馬。さすがだな」
「いや。たまたまだよ」
と爽やかに微笑む。
「本当にお前の守備は凄いよ。小笠原に来て欲しいくらいだ」
と隼人も顔を崩した。
「無理言うなよ。でもまた機会があったら呼んでくれ」
「当たり前だろ。また、頼むよ」
と拳と拳を軽く合わせた。
「お兄ちゃん」と和葉が声をかける。
「おお」と笑う竜馬。
「お兄ちゃん。カッコよかった……」
「おお。そうか」
「最高にカッコよかった」
「おお。ありがとう」
と竜馬は少し照れる。
「私、とても興奮したわ」
「そうか」
「私、興奮しながら『お兄ちゃん、バック、バック』って言っちゃったわ」
「おお。え?」
竜馬は困惑し始める。
「お兄ちゃん。私と結婚しよう!」
「え? ええ~!」
「今夜、バックで待っているから」
と和葉。
「あ! ああ~?」
「バックで子供を作って、ルーマニアに行こう!」
と和葉は竜馬に抱きついた。
「あっ! アホか!」
と竜馬は和葉を引き剥がそうとする。
「ハハハ! やっぱり和葉ちゃんは面白いな」
と笑う隼人。
「竜馬さん、カッコいい……」
と優子と琴美は憧れと愛情のこもった視線を送る。
和葉の奇行に困り果てている竜馬を、いつまでも見つめていた。
つづく。
※いつも読んで下さり、本当にありがとうございます。
今回、ライト文芸大賞にエントリーしました。
応援の方をよろしくお願いいたします!
登場人物。
長崎琴美(ながさきことみ)。
竜馬の野球繋がりの友人の妹。中学三年生。密かに竜馬のことが好き。
家庭の事情から野球部はあるが人数がギリギリの公立小笠原(おがさわら)高校に入学した兄の隼人を持つ。
兄隼人は野球の才能があり努力家で、中学時代と現在の高校でもエースピッチャーで四番。
「兄さん」と呼んでいる。
二年前に父親が亡くなり母子家庭。
来年は高校受験で志望校は電車通学で一時間の公立北村第一高校。
長崎隼人(ながさきはやと)
公立小笠原(おがさわら)高校野球部一年。新屋敷兄妹とは同級生。小学校から東道中学校まで同じだった。
竜馬は小学校時代は小柄だったが、隼人はずっと大柄で運動神経は飛び抜けてよかった。中学校時代には野球はもちろん陸上競技でも男子は長崎隼人。女子は三上小夏と言われていた。
野球名門の私立富坂高校の特別推薦をもらうが、学費は無料でも高額の寮生活を理由に受験しなかった。
そして交通費のかかる遠方の偏差値の高い公立高校にも十分に受かる学力はあったが辞めて、走って通える公立小笠原高校へ入学する。
一つ年下の琴美という妹がいる。
小笠原高校野球部では一年生ながら、エースピッチャーで四番を打つ。
竜馬は「竜馬」。和葉は「和葉ちゃん」と呼ぶ。
一人称は「俺」。
二年前に父親が亡くなり母子家庭。
岸(きし)先輩。
公立小笠原高校三年生。長崎隼人が入部するまではエースピッチャーだった。今回の練習試合では先発する。控えに回った隼人はセンターを守る。
山上(やまがみ)先輩。
小笠原高校三年生のキャッチャーで五番打者。一八五センチ体重は百キロ近いの巨漢。長打力はあるが打率は低い。元々四番を打っていたが、隼人のバッティングを見て、四番を譲った。
柴山顧問。
川田高校野球部顧問。試合中は審判を務める。ボディビルダーのような身体で、和葉は名前が分かるまで「マッチョ先生」と呼んでいた。
村瀬。
川田高校一年生の四番で投手。
身長一九〇センチの堂々たる体格。
東北地方からこちらに引っ越してきて、川田高校を受験して野球部に入った。
鋭い眼光で長崎隼人と同じ位の整った顔立ちだが、性格は大人しくて恥ずかしがり屋。
野球の実力は本物だか、女子に弱く、和葉におちんちんの大きさを指摘され赤面して動揺してしまう。
一人称は「僕」。
公立小笠原(おがさわら)高校野球部。
一番。二年生。ショート。
二番。一年生。新屋敷和葉。セカンド。正規は二年生メンバー。坂本。
三番。三年生。キャプテン。サード。
四番。一年生。長崎隼人。現在、センター。
五番。三年生の山上先輩。キャッチャー。
六番。二年生。ファースト。
七番。一年生。新屋敷竜馬。ライト。
八番。一年生。レフト。和葉にグローブオイルを貸した。和葉と同じくらいの身長。
九番。三年生。岸先輩。ピッチャー。
公立川田(かわた)高校野球部。
一番。二年生。セカンド。
二番。二年生。ショート。
三番。三年生。サード。
四番。二年生。センター。実はエースピッチャー。村瀬。
五番。三年生。ファースト。土井。
六番。二年生。ライト。
七番。二年生。キャッチャー。
八番。二年生。レフト。
九番。三年生。ピッチャー。キャプテン。小島。
小笠原 一回 三点(六人) 二回(三人) 〇点 三回 三点 四回 〇点 五回 〇点 六回 〇点 七回 〇点 八回 〇点 九回 〇点 合計 六点
川田 一回 〇点(三人) 二回(三人)〇点 三回 〇点 四回 二点 五回 〇点 六回 〇点 七回 〇点 八回 二点 九回 〇点 合計 四点
2023年5月3日
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東岡忠良(あずまおか・ただよし)
【24】ついに決着。野球シリーズ最終話。試合が進むにつれ、ギャラリーが増える。男子は和葉を見るために。女子は竜馬を見に来たことが発覚。
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──1──
センターから走ってきた村瀬は、一度川田高校のテント下のベンチに入った。
その時である。
村瀬く~ん!
村瀬君~! 頑張って~!
という川田高校の制服を着た女子が、黄色い声援を送っていた。
「凄い。モテモテね」
と優子は隣りの和葉に言った。
「背は高いし、エースで四番だし、顔も良いし、おちんちんも大きそうだしね」
「おちんちんは関係ないんじゃないかな」
「もう。二人共、おちんちんの話題はそのくらいにして下さい」
と琴美。
「えっ! それ、私も入っているの?」
と優子は慌てた。
先程までマウンドにいた、キャプテンでピッチャーの小島もベンチに戻っていた。
村瀬は外野手用グローブから、投手用グローブに。
小島は投手用グローブから、外野手用グローブに交換して守りについた。
「そう言えば、お兄ちゃんも投手用のグローブを持って来ていたわよね」
と和葉。
「ああ。でも使うことなさそうだけどな」
と少し寂しそうに竜馬は言った。
村瀬が投球練習を始めると、川田高校のテント後ろの女生徒ギャラリーは大盛り上がりである。
小笠原高校からは、どよめきの声が上がった。
速い!
これ、うちの長崎とどっちが速い?
すると村瀬は変化球を投げた。内角から外角に鋭く曲がる変化球だった。
このスライダーは長崎より凄いんじゃないか?
明らかに小笠原ナインは動揺し始めた。
そして極めつけは同じフォームからスローカーブを投げたのである。
「これはかなり厄介だわ……」
と和葉はつぶやいた。
その投球練習を見つめながら、
「俺ってまだまだだな。もっともっと練習しないと」
と隼人は闘志を燃やしているようだった。
その時である。
「遅れてごめ~ん!」と川田高校校門から大声がした。走って来たのは、遅刻していた小笠原のセカンドの二年生だった。
「こら! 遅いぞ!」
と三年生キャプテンは仁王立ちになりご立腹である。
遅刻した二年生は、
「ごめんなさい! ごめんなさい!」
と連呼し、
「皆さん、本当に申し訳ない! 申し訳ない!」
と必死に言っている。
「思っていたよりも早かったな」
と同級生の二年生ショートの選手が声をかけた。
「親に車で送ってもらったんだ」
車だと渋滞がなければ、電車やバスよりも早い。
遅れた二年生はスコアボードを見る。
「ええ~! 凄い! 川田の村瀬から六点も取ったのか!」
と大げさにも見える驚き方だが、それだけ一年生の村瀬が、超高校級である証拠でもあった。
「いや。今、ちょうど投手交代なんだ。三年生ピッチャーを打ち込んだんだ」
「そうなんですか。それにしても凄いな。六点は」
「長崎が四打点。キャプテンが一打点。そしてお前の代わりにセカンドに入ってくれた、こちらのお嬢さんが二打数二安打一ホームランの一打点なんだ」
とキャプテンはまるで自分の自慢のように、和葉を紹介した。
「えっ! ホームラン!」
と正規レギュラーの二年生は、和葉をマジマジと見つめる。
和葉は、
「どうも初めまして。後はよろしくお願いしますね」
と微笑んだ。
それを見て頬を少し赤らめた二年生は、
「こんなにカワイイ子が、ホームランを打ったのですか?」
とキャプテンに確認する。
「ああ。それにホームランもだけど、セカンドの守備も完璧だ」
「えっ! そうなんですか!」
と和葉を再び見つめた。
「お前、こちらの新屋敷和葉さんに守備もバッティングも教わったらどうだ」
と本気なのか冗談なのか分からないことをキャプテンは言った。
小笠原高校キャプテンは、二番打者とセカンドの交代を主審の柴山顧問に伝えた。
レギュラーメンバーのセカンドの選手が来たために、和葉はベンチに下がったのである。
キャプテンは、
「新屋敷和葉さん。試合に出てくれて本当にありがとう」
と帽子を取って深々と頭を下げた。そこにいた小笠原高校野球部全員が、
「ありがとうございました!」
と立ち上がって、帽子を取った。
和葉は立ち上がり、
「皆さん、ありがとう。こちらこそ、もう二度とやることはないと思っていた野球が、また出来て本当に楽しかったわ」
そして、
「また、機会があったら、お兄ちゃん共々呼んで下さい」
と微笑むと、
おお~!
天使だ~!
カワエエ~!
と野球部員から声が出た。
「あいつ、猫被ってるな~」
と竜馬がつぶやくと、
「和葉ちゃん、本当に面白くて優秀でいい子だよな」
と隼人は言った。
キャプテンは
「もし、よかったらユニフォームを着替えて来てもいいよ」
と言ってくれたが、
「お気遣い、ありがとうございます。でも最後までユニフォームで居させて下さい。もう、二度と着る機会がないかもしれないので」
と言うと、
「さあ! ピッチャーの立ち上がりを狙っていくよ! バッター! ボール、よく見て行こう!」
と声を出した。
「ねえ、和葉」
「何? 優子」
「あなた、本当に野球が好きなのね?」
と言うと、
「かもね。やり始めた頃は頑張れば、女の子でもプロ野球選手になれると信じていたからね」
と少し悲しそうに笑った。
川田の村瀬は本当に凄かった。
変わったばかりの立ち上がりでは、ファーボールで何度かランナーを出してしまったが、投球数が増えると安定して来た。
そうなると一番打者の内野安打とキャプテンと長崎隼人と山上が単発でヒットを打っただけであった。
ヒットと言っても隼人以外は、村瀬からすれば不運なポテンヒットで、ちゃんとバットの芯に当てたのは隼人だけであった。
ここから川田高校側も反撃を開始した。
四回に連打が続き、小笠原は二点を取られた。
ここでピッチャー岸先輩から、長崎隼人へ交代になった。岸先輩は隼人が守っていたセンターへ守りにつく。
変わってから隼人は何とか抑えていたが、八回裏に落ち着きを取り戻した超高校級の村瀬に、ヒットとファーボールで出したランナーを二塁打で返され二点を取られた。
ついに小笠原高校はニ点差に詰め寄られた。
──2──
九回表ノーアウトで竜馬の打席が回ってきた。今までノーヒットである。小笠原も追加点が欲しいところだった。
「お兄ちゃん! ボール、よく見て!」
「竜馬さ~ん! ファイト!」
「新屋敷さ~ん! しっかり~!」
と和葉と優子と琴美が応援すると、
新屋敷く~ん! 頑張って~!
と女子四、五人の声がバックネット側から聞こえてきた。
「え? 今の声は何?」
と和葉達がバックネット裏を見ると、四、五人の女子が竜馬を見つめながら盛り上がっている。
キャー! こっち見たわ!
素敵~! カッコいい~!
とまるでお祭り状態である。
「なんか、嫌な感じね。あの黄色い声が何だかウザいわ」
と優子が悪意を込めて言うと、
「何、言っているの。優子だってお兄ちゃんがファールを打つたびに盛り上がっていたじゃない」
と和葉が言うと、優子は顔を真っ赤にして、
「だって、ヒットとファールの違いが全然分からなかったんだもの。最初に教えてくれていたら、あんなことにはならなかったのに」
と頬を膨らませた。
優子は竜馬が前に打つたびに、ファールラインから外れた打球でも、
「ちょっと! 今のどうして白い座布団のところに行かせないのよ! おかしいでしょう!」
と大声を出していたのだった。
見かねた琴美が、
「相生さん。左右にあるファールラインの外の打球は、ファールと言ってヒットにはならないんです」
と説明してくれたのである。
「それと白い座布団じゃなくて、ベースって名前だから」
と和葉は付け加えた。
「私、全然野球を知らなかったから許してよ」
と言い、
「それにしても、自分の高校の野球部を応援しないで、敵の選手を応援するあの行為はよくないわ!」
と優子は立ち上がりながら言った。
簡単に言えば、小笠原高校側の選手である竜馬を、川田高校の女子生徒が熱く応援しているのが、気に入らないようだった。
竜馬が一塁側に切れるライナーのファールを打つと、バックネット裏の川田の女子高生達が大騒ぎする。
「呆れたわ。あの子達、ヒットとファールの違いも分かってないのね」
と今朝まで自分も分かっていなかったことを棚に上げて、優子は不満げに言った。
「優子、あなた、さっきまで自分も分かっていなかったのに」
とさすがの和葉も引き気味だった。
結局、竜馬はセンターフライでアウトになった。
残念ながら竜馬は全打席ノーヒットで終わった。
「あ~あ。全打席、ノーヒットとはね……」
とテント下のベンチに戻って落ち込んでいたが、
「お兄ちゃん!」と和葉。
「何だよ?」と竜馬。
和葉は竜馬の前に立つと、
「だから私が少し打てないからって、やたらとバッティングフォームを変えるのはよくないって言ったのに、全然私の言うことを聞かないから」
と身体を少し屈ませて説教をした。
すると、
何、あの子、偉そうに言っちゃってさ!
ちょっと、胸が大きいからって調子に乗ってんのよ!
というヤジが女子高生の集団から聞こえてきた。
和葉はそのヤジが聞こえてきた方を睨むと、意地の悪そうな川田の女子生徒らがニヤニヤしながら見ていた。
和葉は竜馬の頭を持つと、思いっ切り抱きついた。和葉の大きな胸が竜馬の顔を挟む形になった。
小笠原野球部員はもちろん、それを見た川田の野球部員や周りのギャラリー、そしてヤジを飛ばした女子生徒らは、激しく驚いた。
「私達は付き合っているの! 邪魔しないで!」
と和葉が言うと、竜馬を応援し、和葉にヤジを飛ばした女子生徒らから悲鳴が上がった。
ウソ~! あの人、もう彼女いるの!
ヤダ~! 私、ショックで立ってらんない~!
と一部は泣き崩れた。
「フフフ。勝った」
と和葉がつぶやくと、
「いっ! 息が出来ない~!」
と竜馬の声がした。
「あ。ごめんなさい、竜馬さん!」
とわざと大きな声で和葉は言った。
「何、すんだよ! いくらなんでもやり過ぎだぞ!」
と顔が真っ赤になった竜馬が怒る。
「フフフ」と笑う和葉。
「な! 何だよ! もうやるなよ!」
と言うと、
「愛よ、あ・い!」
と言い、顔を竜馬の耳元に持って行き、小声で、
「仕返し、成功。お兄ちゃん、協力をありがとう」
と小声で言うと、
「アホか! そんなことで胸を押しつけるな!」
と竜馬は言った。
すると、それを見ていた優子は、自分の胸に手を当てて、
「あ。いいな~」
と言った。
「かっ! 和葉さん! えっ、エッチなのはダメです!」
と赤面した琴美が言った。
「相変わらず、二人は仲いいな。でも仲、良過ぎだな」
と隼人は呆れ気味に言った。
川田高校は、小笠原ピッチャーの岸先輩を四回に打ち崩して、すでにエースピッチャーの長崎隼人に交代しているのだが……。
セカンドのレギュラー選手が来たために、ベンチを温めることになった和葉は、隼人の投球練習を見ていたが、どうも隼人の様子がおかしい。
「長崎さん。何だか調子が良くないみたいね。どうしたのかしら?」
とつぶやくと、
「あのう、和葉さん。ちょっと聞いていいですか?」
と隼人の妹の琴美が話しかけた。
「何かしら? あ。さっきお兄ちゃんにした『胸ギュギュ』は、川田の女子生徒なのに、お兄ちゃんを応援した罰みたいなものだから気にしないで」
と言うと、
「へえ~。あれって『胸ギュギュ』って言うんだ」
と感心する優子。
「優子。覚えない方がいいわよ。『胸ギュギュ』って咄嗟に私が今、考えた造語だから」
「えっ! 造語だったの!」
「そうよ。ちなみに男の人の顔の前に胸を出して自由に触らせることは『パフパフ』って言うのよ」
優子は顔を真っ赤にしながら、
「かっ! 顔の前にむっ! 胸を出して自由触らせる~! 『パフパフ』って言うの!」
と自分の大きな胸に手を当てて言った。
「和葉さん! そんな言葉はありません!」
と琴美。
「何を言っているの。琴美ちゃんは知らないでしょうけど、漫画のドラゴンボールの中に『パフパフ』は出てくるのよ」
「え? そうなんですか?」
と琴美は少し感心している。
「そうよ。だから琴美ちゃんが聞きたい『胸ギュギュ』と『パフパフ』は、その時のシチュエーションで使い分けるといいと思うわ」
と親指を立てて、
「頑張ってね」
と和葉は微笑むと、
「私はそんなことを訊きたいんじゃありません!」
と言った。
「私が聞きたいのは、和葉さんがどうして兄さんのことを『長崎さん』って『さん付け』で呼ぶかなんですけど」
と少々怒りのある言い方だった。
「ああ。そのことね」
と和葉は投球練習を終えた長崎隼人を見つめながら、
「長崎さんって、中学の野球部で一緒だった。まあ。私は陸上部との掛け持ちだったんだけど。一切練習をサボらない人だったわ。それでいて登校前に新聞配達をして、全額お給料をお母さんに渡して家計を助けたり、それでも試験は常に二位だったのよ。あっ、ちなみに常に一位は私ね」
といらない情報を差し込んだ。
「和葉さんが凄いことは分かりました。それでどうして兄さんのことは同じ歳なのに『さん付け』なんですか?」
と訊いた。
和葉は琴美から視線を外して、バッターに投げ込む隼人を見つめながら、
「私、心から尊敬出来る人は年齢に関わらず『さん付け』で呼ぶことにしているの」
と教えてくれたが、隼人が投げたボールは外れて、ストレートのファーボールになり、ノーアウト一塁になってしまった。
そして次は足元へのデッドボールを投げてしまい、隼人は帽子を取って謝っている。ノーアウト一・二塁となってしまった。
それを見た和葉は、
「でも今日は『くん』で呼んでもいいかもしれないわね~」
と言った。
「え? それって相手の状況に合わせて、使い分けるものなの?」
と優子がツッコミを入れた。
この日の隼人はコントロールが異常に悪かった。ファーボールとデッドボールでランナーを出しながらも、何とか八回までは抑えたが、九回裏を迎えることになった。
小笠原高校六点。川田高校四点。
ニ点差で迎えた川田の攻撃は、八番の二年生バッターからだった。
ここでも隼人はボールとストライクがはっきりしていた。
球速は村瀬にも負けないスピードボールで、川田のバッターはバットに当てるのも苦慮している。ストライクのコースだと振り遅れたり、かすりもしない。
三振かファーボールかの投球は、ついにツーアウト満塁になってしまった。
そこで川田は一年生エースピッチャーで四番の村瀬が打席に立った。
──3──
「これはまずいわね……」
と和葉。
「そうですね」
と琴美。
「え? 何で?」
と聞く優子。
二人は同時に優子を見た。
「説明してあげるわ」
と言っている間に、小笠原の三年生キャッチャー山上先輩が、マスクを外して隼人の側に行き、話をしている。
「今はツーアウトの一・二・三塁が埋まっているの。つまり満塁なの」
「うん。それは分かる」
「ということは、ボール四球でファーボールで一塁に出てしまうの」
「そうなの? それだと塁は全部、人がいるわよね」
「人がいる! まあ、表現は間違ってないけど、野球の言い方として『塁が埋まっている』って言うんだけど」
と和葉。
優子は落ち着いた様子で、
「うん。でどうなるの?」
「ファーボールのランナーが一塁に行くと、今一塁にいるランナーは二塁に行くの」
「そうなんです。二塁にいるランナーは三塁に」
と琴美。
「え? なら今三塁にいるランナーは?」
「ホームに行くの。つまりホームイン。そうなると?」
「まさか、一点が入るの?」
「そういうこと」
「……ちょっと待って……。その理屈だと、ストライクしか投げられなくない?」
「そう。だからいくら球が速くても、コントロールが定まらなければ」
「ファーボールになるか、ストライクを投げたところを打たれるかってことなの?」
「そう! その通りよ!」と和葉。
「そう! その通りです!」と琴美。
「それって、大ピンチじゃん!」
と優子は慌てだした。
「それもバッターは今日、当たっている村瀬君なのよ」
「ええ~。これってもしかして負けちゃうの!」
「長打が出たら、逆転されるわ」
「ねえ、どうしたらいいの? どうしたらいいの?」
と優子。
「とりあえず」
「とりあえず?」
「長崎さんを応援しましょう」
と言うと、
フレー! フレー! ナ・ガ・サ・キ!
と三人は熱い声援を送った。
第一球のストレートは村瀬が見逃してのストライク。ここで優子と琴美は盛り上がったが、和葉は黙ったままだ。
「ストライクなのに反応薄いわね」
と優子は和葉に言う。
「まずいわ。完全に球筋を見てるわ。ストレートを狙うつもりね」
二球目は変化球だが大きく外れてボール。
「変化球が入らないのね。苦しいわ」
三球目も変化球だが外角低めではっきりと分かるボール。
四球目はストレートだったが、外角高めのボールとすぐに判断される球だった。
「スリーボール。ワンストライク。もう、思い切ってストレートをストライクに投げるしかないわ」
「これはもう、ボールを投げて歩かせた方がいいかもですね」
と琴美は言ったが、
「他のバッターならそうするかもだけど、長崎さんは村瀬くんを意識しているから」
「はい。やっぱり」
「勝負するでしょうね」
キャッチャー山上先輩は大きく手を広げた。長崎隼人はセットポジションではなく、大きく振りかぶった。
それを見た塁上の選手は大きくリード取る。
「長崎さん、全力で投げるのね」
放たれたストレートは外角低めギリギリの最高のボールだった。村瀬はフルスイングで空振りする。
「やっぱりストレート狙いね」
「あ~。ドキドキする」
と優子。
「今のはスピードもコースも最高だったわ。でもまた同じところに投げられるかどうかは?」
と和葉が言うと同時に、隼人はストレートを投げた。
「ダメ! ど真ん中だわ!」
と和葉が言った瞬間だった。
村瀬は隼人のボールを芯で捉えた。だが、少し振り遅れたせいで、勢いのある打球はライトに飛んだ。
「ライト! 竜馬!」
と隼人は振り向きざまに叫んだ。
「お兄ちゃん! バック、バック!」
竜馬は全力で後ろに向かって走る。
「ああ……。竜馬さん……」
と優子は立ち上がった。
琴美は目を閉じてしまい、手を組んで祈っている。
「ああ、ダメだわ! 抜ける!」
と和葉は叫んだ。
満塁の長打コースである。ツーアウトなのでランナーは全力で塁を駆け抜けていた。
抜けたら川田に三点が入り、逆転負けが確定する。
「竜馬! 頼む!」と隼人。
「お兄ちゃん! バック! バックよ!」
と和葉。
「竜馬さん! 竜馬さん!」
と優子。
竜馬は大きく左手を伸ばして、ボールに飛びついた。審判役の川田の部員が走って確認しに行く。
選手も観客も静かになり、少しの沈黙が訪れた。
審判の川田部員がボールの行方を探す。
打った村瀬も二塁上でそれを見ていた。
審判の手が上がった。
「アウト! ゲームセット!」
ナイス! 竜馬!
お兄ちゃん! お兄ちゃん!
竜馬さん!
竜馬のファインプレーに高校全体から、大きな歓声が上がった。
負けた川田の野球部員も拍手を送っている。
竜馬はゆっくりと立ち上がり、グローブを高々と上げてキャッチしたボールを見せた。
小笠原ナインが拍手し、声をかけ、背中を軽く叩いていく。
観客らの拍手が続く。
「全員、整列!」
との川田の柴山顧問が続ける。
ベンチにいた和葉も走って行き、ホームベース脇に並んだ。
「小笠原高校と川田高校の練習試合は」
と少し溜めると、小笠原ナインは胸を張り、川田ナインは俯いたり、悔しい表情をした。
「六対四で小笠原高校の勝ち」
ありがとうございました!
と両方の部員が帽子を取って頭を下げた。
小笠原野球部員らにもみくちゃにされる竜馬の側に隼人が行く。
「竜馬。さすがだな」
「いや。たまたまだよ」
と爽やかに微笑む。
「本当にお前の守備は凄いよ。小笠原に来て欲しいくらいだ」
と隼人も顔を崩した。
「無理言うなよ。でもまた機会があったら呼んでくれ」
「当たり前だろ。また、頼むよ」
と拳と拳を軽く合わせた。
「お兄ちゃん」と和葉が声をかける。
「おお」と笑う竜馬。
「お兄ちゃん。カッコよかった……」
「おお。そうか」
「最高にカッコよかった」
「おお。ありがとう」
と竜馬は少し照れる。
「私、とても興奮したわ」
「そうか」
「私、興奮しながら『お兄ちゃん、バック、バック』って言っちゃったわ」
「おお。え?」
竜馬は困惑し始める。
「お兄ちゃん。私と結婚しよう!」
「え? ええ~!」
「今夜、バックで待っているから」
と和葉。
「あ! ああ~?」
「バックで子供を作って、ルーマニアに行こう!」
と和葉は竜馬に抱きついた。
「あっ! アホか!」
と竜馬は和葉を引き剥がそうとする。
「ハハハ! やっぱり和葉ちゃんは面白いな」
と笑う隼人。
「竜馬さん、カッコいい……」
と優子と琴美は憧れと愛情のこもった視線を送る。
和葉の奇行に困り果てている竜馬を、いつまでも見つめていた。
つづく。
※いつも読んで下さり、本当にありがとうございます。
今回、ライト文芸大賞にエントリーしました。
応援の方をよろしくお願いいたします!
登場人物。
長崎琴美(ながさきことみ)。
竜馬の野球繋がりの友人の妹。中学三年生。密かに竜馬のことが好き。
家庭の事情から野球部はあるが人数がギリギリの公立小笠原(おがさわら)高校に入学した兄の隼人を持つ。
兄隼人は野球の才能があり努力家で、中学時代と現在の高校でもエースピッチャーで四番。
「兄さん」と呼んでいる。
二年前に父親が亡くなり母子家庭。
来年は高校受験で志望校は電車通学で一時間の公立北村第一高校。
長崎隼人(ながさきはやと)
公立小笠原(おがさわら)高校野球部一年。新屋敷兄妹とは同級生。小学校から東道中学校まで同じだった。
竜馬は小学校時代は小柄だったが、隼人はずっと大柄で運動神経は飛び抜けてよかった。中学校時代には野球はもちろん陸上競技でも男子は長崎隼人。女子は三上小夏と言われていた。
野球名門の私立富坂高校の特別推薦をもらうが、学費は無料でも高額の寮生活を理由に受験しなかった。
そして交通費のかかる遠方の偏差値の高い公立高校にも十分に受かる学力はあったが辞めて、走って通える公立小笠原高校へ入学する。
一つ年下の琴美という妹がいる。
小笠原高校野球部では一年生ながら、エースピッチャーで四番を打つ。
竜馬は「竜馬」。和葉は「和葉ちゃん」と呼ぶ。
一人称は「俺」。
二年前に父親が亡くなり母子家庭。
岸(きし)先輩。
公立小笠原高校三年生。長崎隼人が入部するまではエースピッチャーだった。今回の練習試合では先発する。控えに回った隼人はセンターを守る。
山上(やまがみ)先輩。
小笠原高校三年生のキャッチャーで五番打者。一八五センチ体重は百キロ近いの巨漢。長打力はあるが打率は低い。元々四番を打っていたが、隼人のバッティングを見て、四番を譲った。
柴山顧問。
川田高校野球部顧問。試合中は審判を務める。ボディビルダーのような身体で、和葉は名前が分かるまで「マッチョ先生」と呼んでいた。
村瀬。
川田高校一年生の四番で投手。
身長一九〇センチの堂々たる体格。
東北地方からこちらに引っ越してきて、川田高校を受験して野球部に入った。
鋭い眼光で長崎隼人と同じ位の整った顔立ちだが、性格は大人しくて恥ずかしがり屋。
野球の実力は本物だか、女子に弱く、和葉におちんちんの大きさを指摘され赤面して動揺してしまう。
一人称は「僕」。
公立小笠原(おがさわら)高校野球部。
一番。二年生。ショート。
二番。一年生。新屋敷和葉。セカンド。正規は二年生メンバー。坂本。
三番。三年生。キャプテン。サード。
四番。一年生。長崎隼人。現在、センター。
五番。三年生の山上先輩。キャッチャー。
六番。二年生。ファースト。
七番。一年生。新屋敷竜馬。ライト。
八番。一年生。レフト。和葉にグローブオイルを貸した。和葉と同じくらいの身長。
九番。三年生。岸先輩。ピッチャー。
公立川田(かわた)高校野球部。
一番。二年生。セカンド。
二番。二年生。ショート。
三番。三年生。サード。
四番。二年生。センター。実はエースピッチャー。村瀬。
五番。三年生。ファースト。土井。
六番。二年生。ライト。
七番。二年生。キャッチャー。
八番。二年生。レフト。
九番。三年生。ピッチャー。キャプテン。小島。
小笠原 一回 三点(六人) 二回(三人) 〇点 三回 三点 四回 〇点 五回 〇点 六回 〇点 七回 〇点 八回 〇点 九回 〇点 合計 六点
川田 一回 〇点(三人) 二回(三人)〇点 三回 〇点 四回 二点 五回 〇点 六回 〇点 七回 〇点 八回 二点 九回 〇点 合計 四点
2023年5月3日
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