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【13】竜馬。学級委員長にされる。副委員長争奪戦後、優子と薫の足を触る。
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双子の妹の保護者として、今年から共学になった女子高へ通う兄の話
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──1──
今日の最後はホームルームである。
それは前期の学級委員長や係を決める、ある意味重要な日でもあった。
「は~い。注目。今日のホームルームはクラス委員や係を決めま~す」
と女子高生並に若く見える前田先生が教壇で手を叩いた。皆、リラックスした雰囲気で口々に話を交わしている。
「ねえ、お兄ちゃん」
和葉が身体を横に向けて話しかけてきた。
「何だ?」
「お兄ちゃんは何をやるつもり?」
竜馬は少し考えて、
「中学の時にやっていた保健係がいいかなと思ってる」
「ほお。保健係とな」
「ああ。野球部だったせいで、包帯を巻いたり、怪我をした人の補助は慣れているつもりだからね」
確かにそうだった。家でも家族の誰かが包帯を巻かないといけない怪我の場合、竜馬は手際よくやっていた。ただし、
「お兄ちゃんの怪我の場合は、私が巻いていたけどね」
と付け加えた。
「和葉はどうするんだ? 中学三年は副委員長だったんだろ?」
すると、和葉は不機嫌になり、
「そうよ。三年のクラスの連中。『新屋敷さんって頭いいんだから委員長になればいいのよ』って言い出して、半ば強引にやりたくもない委員長にされかけたのよ!」
と言った。
「あ~、あの件か。怒ってたよな」
「当たり前よ! 私、仕方がないのでやりたくもない副委員長に立候補したのよ。委員長よりは少しは楽かと思って」
「だよな」
「で実際になってみたら、委員長に立候補したリア充男子のヤツ、全く何もやらないで、結局殆どの仕事を私がやったのよね。今でも腹が立つわ!」
と頬を膨らませた。
「リア充男子って」
と竜馬。
「あんなヤツの名前も忘れたわ。というか、忘れたいの。余りに腹立たしいから。で担任の先生に委員長の山崎の内申書は『低くして下さい』って伝えておいたわ」
とニヤリとした。
「しっかり覚えてるじゃん」
「そりゃあね。それで山崎のヤツね。私立の受験を落ちたのよ。ざまあみろ、だわ。フフフ」
と含み笑いをした。
「おいおい。悪い顔で笑ってるぞ」
と竜馬は妹を注意した。
「いいのよ。私は悪い女なんだから。フフフ」
「なんだよ。気持ち悪いなあ~」
と竜馬が嫌な予感をした時だった。
「ではまずは学級委員長から。自薦他薦ありますか?」
と前田先生が言った瞬間だった。
「はい!」と和葉が手を上げた。
「お。和葉、やる気だな」
と竜馬は呑気に言った。和葉は立ち上がると、
「お兄ちゃん、新屋敷竜馬君を推薦します!」
と言った。
「え! 何で!」
と思わず竜馬は叫んだ。
和葉は席に座ると、
「私は悪い女なの。フフフ」
と静かに笑う。
「おいおい。僕は学級委員なんて出来ないぞ」
と言ったが、
女生徒らが口々に、
竜馬君がいいと思います!
竜馬君がいいです!
と口々に言い出した。
「ちょ、ちょっと待って」
と龍馬が言っても止まらない。
前田先生は黒板に『新屋敷竜馬』と書いた。
「分かりました。では竜馬君以外で『学級委員長に立候補したい』という人はいますか?」
と前田先生が聞くと、相生優子が手を上げた。
「先生。私、立候補します」
と自信に満ちた表情をしている。
「相生さんね」
と黒板に『相生優子』と書いた。
「相変わらず、優子は空気が読めないわよね」
と和葉。
でも竜馬は少し感心しながら言った。
「学級委員は優子さんが合っている気がするな。勉強は出来るし、しっかりしてそうだし」
「でも空気が読めてないわよ、あの子」
「他にはいないようね。じゃあ、多数決で決めます。新屋敷竜馬君がよいと思う人、手を上げて」
すると、竜馬と優子以外の全員が手を上げた。
「え! 何で!」
と叫ぶ優子。
「では相生優子さんがよいと思う人、手を上げて」
には竜馬と優子が手を上げた。
すると前田先生は、
「竜馬君、学級委員、やりたくないの?」
と直接、聞いてきた。
「やりたくないというか、今までやったことがないので」
と正直に言った。
「そうよ! やりたくない人を無理矢理やらせるのは良くないわ!」
「優子さん……」
そして和葉にだけ聞こえるくらいの声で、竜馬は言った。
「和葉。優子さんは空気が読めないんじゃないだよ。やりたくない僕を助けるために、敢えて学級委員に立候補してくれたんだ……。優子さんって思いやりのある人なんだよ」
と感動していたが、優子は手を上げて、
「学級委員っていうのは、勉強が出来ないとなってはいけないものだと思います! なので私が相応しいと思います。」
と聞かれてもいないのにそう言った。
「どうもお兄ちゃんの勘違いだったみたいね。さすがは優子だわ」
と私の予想通りという顔を和葉はした。
「はい。分かったわ。相生さん」
と優子を座らせて、前田先生は竜馬の方を見て、
「みんながこんなに支持してくれているのよ。もし、よかったら前期だけでもやってみない? 九月からは後期の委員長を決めるから」
と言い続けて、
「ねえ。竜馬君。どうか、お願いします!」
と小柄な前田先生が一生懸命に頼んできた。
「今、教室を覗いた人がいたら、前田先生がお兄ちゃんに告白しているように見えるわね」
と和葉が言うと、前田先生は真っ赤になり、
「ちょ! 和葉さん! 何を言い出すのよ!」
と慌てた。
「先生。お兄ちゃんを狙っているとしたら、せめて卒業してからにして下さい」
「だから、狙ってないって!」
と前田先生。
先生、応援してる!
先生、頑張って!
と笑いと声援が飛んだ。
竜馬は何だか前田先生が気の毒になり、
「あのう。先生。僕、学級委員、やります」
と渋々言った。
前田先生の表情が一気に明るくなり、
「本当に! ありがとう、竜馬君」
と嬉しそうである。
「では学級委員長は新屋敷竜馬君に決定します。皆さん、拍手」
と先生が言うと、拍手喝采が起きた。
相生優子は少し残念そうにしていたが、
「まあ、いいわ。副委員長を狙うから」
とみんなにも聞こえるような大きな声で言った。
「では副委員長になりたい人、手を上げて。自薦他薦は問いません」
と言うと、手を上げたのは和葉と優子と、他に三人現れた。
これは和葉も予想外であった。
──2──
三組は女子による大きな派閥つまりグループが三つ出来ていた。
一つは、手塚香織(てづかかおり)がリーダーで、勉強が得意で、お嬢様ばかりが集まったグループ。
二つ目は、石森楓(いしもりかえで)がリーダーで、見た目つまり容姿にこだわりを持ち、オシャレやファッションに詳しいグループ。
三つ目は、赤塚聡美(あかつかさとみ)がリーダーで、明るく楽しく学校生活をやって行こうというグループ。ただし、勉強は苦手な者が多い。そしてここが人数が少し多い。
それぞれのグループのリーダーの名字が『手塚』『石森』『赤塚』なので、和葉は彼女らグループ全体を『トキワ荘』と読んでいた。
つまり現在、『トキワ荘』に入っていないのは、新屋敷竜馬と和葉。相生優子と瀬川薫の四人であった。
と言っても、グループ同士が仲が悪い訳ではなかった。
二日目に、せっかく同じクラスになったのだから、全員でカラオケに行こう、ということになり、その日に参加しなかったのは、新屋敷兄妹と優子だけであった。
ちなみにその日は、優子の下着を買いに行った日でもあった。
そして、『手塚』『石森』『赤塚』のリーダー同士が比較的仲が良いみたいで、初日から新屋敷兄妹と優子と薫にも挨拶をしてくれ、昼休みも「一緒にお弁当を食べない?」と誘ってくれていた。
それでも四人は今、三つのグループからは、独立しているような形になっている。
理由は単純だった。
『手塚』のグループだと竜馬を除けば、成績主席の和葉と次席の優子、そして上位の薫なのだ。なので手塚よりも成績の良い和葉の方がリーダーに相応しいと思われた。
『石森』のグルーブだと四人は容姿やファッションにそれほど興味はない。にも関わらず、単純に容姿が美しいために、石森よりも綺麗で美人な優子の方がリーダーに相応しいと思われた。
『赤塚』のグループは和葉の良くも悪くも、無自覚のキレのあるボケとツッコミのセンスのために、赤塚よりも和葉の方がリーダーに相応しいと思われた。
簡単に言うと、和葉も優子もグループの長になるのは正直面倒臭く、そして少しでも竜馬の側に居たいということで、四人で行動しているのである。
そんな五人が副委員長をかけての戦いが始まろうとしていた。
「まずいわ。非常にまずい」
とすでに学級委員長になった竜馬に向かって和葉は呟いた。
「どうしたんだい?」
「優子は論外だけど、多数決だとどう考えても、『トキワ荘』の人達が有利だわ。恐らく、組織票で勝負するつもりだわ」
「まあ、そうなるだろうね」
「私、お兄ちゃんと同じクラスになったら、絶対に学級委員長と副委員長になろうと決めていたの」
「そうだったのか」
「その夢が今、叶うと思っていたのに。このままだと……」
と下を向いてしまった。
「では多数決で決めま~す。新屋敷和葉さんがよいと思う人、手を上げて」
手を上げたのは、和葉と薫だった。
だが、竜馬は手を上げなかった。
「お兄ちゃん……。私に入れてくれないの?」
と寂しそうに言ったが、
「僕に考えがあるから」
と呟いた。
「やった! 竜馬くん、私に投票してくれるんだ」
と嬉しそうな優子だったが、優子のために手を上げたのは、優子だけだった。
「わ! 私に入れたの、私だけ……」
とショックを受けた。優子は魂が抜けたように、何もない空間を見つめた。
手塚香織にはクラスの四分の一の者が手を上げた。
「してやられたわ」
と手塚は悔しがった。
石森楓には三分の一の者が手を上げた。
「まあ。仕方がないわね」
と諦めた。
結局、赤塚聡美に三分の一よりも少し多く手を上げた。
「やった! やったわ!」
と喜ぶ手塚とそのグループ達。それで副委員長は決定したかと思われた。
「すいません。いいですか?」
と竜馬は手を上げた。
「どうしたの? 竜馬君」
と前田先生。
「そう言えば、お兄ちゃんって手を上げなかったわね」
と和葉。
「これは僕の家庭の事情なのですが、両親の希望で僕と和葉は高校三年間を、絶対に登下校を一緒にするよう言われているんです」
と竜馬は切実に話した。
「あら。そうだったの」
と前田先生。
「なので、僕の学級委員の仕事のせいで、和葉を待たせる訳にもいかないので、出来たらですが」
と一呼吸置いて、
「和葉を副委員長にしてもらうと凄く助かるのですが」
と言った。
「え! そんな!」
と席から立ち上がったのは、赤塚聡美だった。
「私、ぜひ副委員長になって、この学級のために仕事をしたかったんです! それなのに!」
と必死に訴えた。
すると和葉は手を上げて意見した。
「前田先生。お兄ちゃんと私は家庭の事情があるので、どうしても私を副委員長にして欲しいんです。確かに多数決は大事なんですが、個人の希望を優先することもあって良いと思うのですけど」
「う~ん。なるほどね」
と前田先生は、右手を顎(あご)に当てて考えていたが、
「分かりました。では副委員長は新屋敷和葉さんになっていただきましょう」
と言った。
「え! そんなあ~!」
と赤塚聡美。
「事情があるのですから仕方がありません。赤塚さん、ごめんなさい。代わりに後期の副委員長になって下さいね」
と前田先生は言ったが、
「学級委員長が竜馬君でないと、なる意味がないわよ!」
と机へうつ伏せになった。
「赤塚さん、少し可愛そうね……」
と和葉は口ではそう言いながら、顔は勝利で笑っていた。
「では改めて。副委員長は新屋敷和葉さんに決定します。はい、拍手!」
と前田先生が言ったが、拍手はほとんどなかった。
ここから『トキワ荘』の人達は完全にやる気を失った。グループのリーダー達は、ただ単に竜馬と仕事を一緒にして、話す機会が欲しかっただけだったのだ。
「まあ、私の思った通りだったわね。そう簡単にお兄ちゃんとの機会は与えないわ」
と和葉は呟いた。
あれだけ盛り上がった副委員長とは正反対に、会計には相生優子しか立候補せず、あっさりと決定した。
「まあ、後期の学級委員を狙うための布石みたいなものね」
とみんなに聞こえる声の大きさで言う。
「優子だけね。純粋に学級のことを考えているのは。でも、そういうの嫌いじゃないわ」
と和葉は言った。
「では書紀をやりたい人?」
と言う前田先生に反応したのは、瀬川薫だった。これも他の候補者が現れずあっさりと決定した。
そして、
「では、新屋敷竜馬君と、和葉さん、相生さんと瀬川さんは、教職員や生徒会から何かあったら、出来るだけ四人で行動するように」
と言ったから、クラス中が騒ぎになった。
えっ! 会計や書紀って学級委員らと一緒に行動するの!
ちょっと! うちの中学では会計や書紀って一緒に行動しないのに!
それならそうと言ってよ、先生!
あ~ん! 失敗した~!
口々に騒ぐ三組に業を煮やしたのか、隣の二組の担任の女教師がやって来て、
「お前達! うるさいぞ! 前田先生を困らせるな!」
と怒鳴った。
──3──
結局、以下の結果になった。
学級委員長。新屋敷竜馬。
副委員長。新屋敷和葉。
会計。相生優子。
書紀。瀬川薫。
と黒板に書かれていた。
係ももちろん決まった。
「紆余曲折(うよきょくせつ)あったけど、結局クラス代表は、私達四人になったわね。とても嬉しいわ」
と和葉。
「そうだな。特にこの中でも和葉が一番危なかったけどな」
と竜馬。
「そうよ! 何で私の副委員長が一番なるのが難しかったのよ。まったく、多数決というのは厄介だわ」
「まあ、それは仕方がないだろうな」
他の者と同じように帰り支度を竜馬がしていると、和葉は竜馬の顔を見つめながら、ジッとしている。
「うん? どうした? 帰らないのか?」
と言うと、
「学級委員長のことで忘れちゃったかな? お兄ちゃん、体育教官室に呼ばれてなかったっけ?」
竜馬は、
「あっ! そうだった!」
と本当に今まで忘れていたようだった。
「竜馬さん、体育教官室に呼ばれているのですか?」
と薫がやって来た。
「そうなんだよ。山田先生が僕を呼んでいるらしい」
「竜馬くん、一体、何をやったのよ?」
と優子もやって来た。
「何もやっていない……。とは言いがたいかも。だな……」
体育の授業中に、一組の椎名さんの右足首を擦り、出川さんのこむら返りを治すのに左足首を触ったからか?
「この二つはある意味、治療なんだけどな……」
と呟く。その治療と言ったのを、和葉は聞き逃さなかった。
「お兄ちゃん。その治療とやらを、ここでやって見せてよ。セーフかアウトか判断するから」
「え! 何、言ってんだよ! セーフに決まってるだろ!」
と思わず熱くなった。
そのタイミングでスポーツ科八組の三上小夏がやって来た。
「竜ちゃん、和ちゃん、優子ちゃん、薫ちゃん、放課後暇かな?」
と四人に言った。
「小夏ちゃん。私達、放課後メッチャ暇だけど」
と和葉が言うと、
「ちょっと、勝手に決めないでよ」
と優子は返す。
薫は苦笑いしている。
「今から、お兄ちゃんが一組の女の子に行った『治療』という名目のセクハラを再現するわ。小夏ちゃんもアウトかセーフかの判断をお願い」
「こら! セクハラとか言うな!」
と竜馬は慌てた。
「ならそうね。お兄ちゃん、優子を使って一組の子達にやった事を、ここで再現してちょうだい」
と言った。
「優子を使ってって! 和葉、あなたねえ!」
と抵抗して見せるが、少し嬉しそうである。
「え! 今、ここでやるの!」
と大慌ての竜馬。
「あれ? 竜ちゃん、やけに慌てているねえ。もしかして本当はアウトなのかなあ~?」
と小夏。
薫は相変わらず苦笑しながら様子を見ている。
「分かったよ。やればいいんだろ、やれば!」
と竜馬は言って、席を立ち、
「じゃあ、優子さんは僕の席に座ってよ」
と言うと、
「え……。りょ、竜馬くんの席に座るの……?」
と頬を少し赤くして、内股になりもじもじし始めた。
「優子、あなた、もしかして今日、生理?」
と和葉。
「ち! 違うわよ!」
とより顔を赤くした。
「優子さん、嫌だったら別の人に変わってもらうけど?」
と竜馬が言うと、
「だ、大丈夫。大丈夫だから、私を好きにしていいわ」
と竜馬の席に座った。
「お兄ちゃん、好きにしていいんだって。じゃあ、お兄ちゃん、優子のおっぱいを取り敢えず触ってみようか」
と和葉。
「え!」と慌てる優子。
「あ! アホか!」と竜馬。
「いくらなんでもそれは……」と薫。
「いいなあ~。ここのクラスは楽しそうで」と小夏。
楽しくない!
と優子と竜馬の声は同時だった。
「まあ、そんなの冗談よ」
と和葉が言うと、
「当たり前だ!」
「当たり前です!」
も二人同時だった。
「じゃあ、正直に再現してよ。まず、椎名さんにやったことを」
と和葉が言ったのに、竜馬は驚いた。
「え! 椎名さんって! 和葉、もしかして!」
「ええ。私、しっかり見てたもの。おかげでうちの班の計測が効率よく計れなかったわ」
「だからなのね。あんた、しょっちゅう、どこかに行っていたのは」
と優子。
「授業はきちんと受けましょうね。和葉さん」
と薫。
「だから、お兄ちゃん。違うことをやったら、すぐに分かるのよ」
と竜馬の顔を見つめながら、ニヤリと笑った。
「分かったよ。分かったから、その顔、やめろ」
と竜馬は渋々、優子の前に腰を下ろした。
「じゃ、じゃあ。優子さん。やるよ」
「は、はい……。や、優しくお願いします……」
と緊張か恥ずかしさか優子は顔を背(そむ)けた。
「ついに二人共、初体験ね」
と和葉。
「しょ! 初体験!」と優子。
「和葉、ちっとも先に進まないだろ!」と竜馬。
「ほんの冗談じゃない。さ、続けて」
と右掌(みぎてのひら)を見せて促(うなが)した。
「まったく……。優子さんが嫌嫌(いやいや)付き合ってくれているのに悪いだろう」
と言う竜馬に、
「竜馬くん、私、嫌嫌じゃないよ」
と真っ直ぐ、竜馬の目を見ながら言った。
「あ? ああ。分かったよ。じゃあ、椎名さんのを再現するから、右足の上靴を脱がすよ」
と優しく言った。
「は、はい……」
と優子。
竜馬が上靴をゆっくりと脱がす。
「次は靴下だね。脱がすよ」
「は、はい。竜馬さん……」
と言った時に、静まり返った教室から『ゴクリ』と喉がなる音が響いた。周りをよく見ると、教室に残っている女子全員が、竜馬と優子のその様子に集中していた。
「あのねえ。こんなの、普通じゃない。何、みんな期待しているの? まあ、お兄ちゃんが優子の足を舐めたら話は変わるけど」
と言う和葉の言葉に、周りの緊張が解けて、笑いが起きた。
「はあ。舐める訳ないだろ!」
と言うと、
「えっ……。竜馬くん、舐めるの?」
と震え出す優子。
「優子さん、舐めないから!」
と竜馬。
「えっと。椎名さんは走っている最中に右足を捻ってしまったんだよ。だから右足首を見て欲しいって言われて」
と白くて綺麗な優子の右足首を竜馬は掴んで、
「右足首の関節のところが赤くなっていたから、こうして軽く撫でたんだ」
と優しく触ると、
「あっ……。ああ……。そこは……」
と優子。
「はい! アウト~!」
と和葉は席から立ち上がり言った。
「え! どこがだよ!」
と竜馬。
「勘違いしないで。アウトは優子よ! あんた、何て声、出しているのよ!」
「え! ちょっとくすぐったかったから、つい」
「お兄ちゃん、椎名さんの件は問題なかったわ。ただ、優子に問題があったから、次の出川さんの治療と称したセクハラを薫ちゃんで再現して」
「え~! 私、ですか~!」
とこれまたまんざらでもない薫。
「だから、セクハラじゃないって!」
と竜馬。
「じゃあ、優子はそっちの空席に移動して靴下と上履きを履いて」
「もう、分かったわよ」
と右手に上靴、左手に片方の靴下を持ったまま、片足でケンケンしながら移動しようとすると、運動神経の良くない優子はバランスを崩した。
そこは側にいた龍馬が素早く支えた。
竜馬は問題のない優子の背中とウエスト辺りで支えたのだが、優子が自分の身体を預けるようにしたために、大きな優子の胸が、竜馬の胸辺りに当たった。そして当たった後、しばらくの間優子は幸せそうな表情でそのままでいた。
和葉はそれを見逃さなかった。
「優子。あなた、お兄ちゃんにそのHカップのデカいおっぱいを押し付けるのを止めなさいな」
「な! 押し付けてない! たまたまよ! たまたま!」
「え~。本当かなあ~」
と横目で優子を睨む和葉。
「本当にたまたまだけど、後半はちょっと押し付けたかも……」
と本音を言った。
女の子達から黄色い悲鳴が上がる。
「まあ、いいわ。偶然とはいえチャンスをものにした優子の勝ちでいいわ。というか、お兄ちゃんもいつまでもジッとしてないで!」
「あ! ご、ごめん」
「まったく。さ。薫ちゃん、よろしく」
「はい」と薫はさっきまで優子が座っていた竜馬の席に座った。
優子は近くの空席に座って、せっせと靴下を履いている。
「じゃあ、次は出川さんがこむら返りを起こしたので、左足を治療した件の再現だな。薫さん、よろしく」
「はい。よろしくお願いします。じゃあ、取るよ」
と竜馬は薫の左足の上履きと靴下を脱がした。
「はい。どうぞ」
と薫。
「お客さん、こういう店は初めて? 学生さんよね」
とどこで覚えたのか、和葉は臨場感たっぷりに言った。
「おい。誤解をされるようなことをいうな」
「フフフ。私は悪い子なのよ」
と和葉。
「このクラス、楽しそうだなあ~。いいなあ~」
と小夏。
「全然、楽しくないよ!」
と竜馬が言う。
左だけ素足になった薫の足首を、
「こうしてゆっくり曲げて、出川さんのこむら返りを治しただけだよ」
と竜馬は優しく曲げると、
「ああ。とても気持ちいいです。竜馬君……」
と薫は言った。すると、
「結論が出たわ。薫ちゃん、あなたもアウトよ!」
「え! 私がですか?」
「声だけ聞いていたら、一体何をされたのかと想像しちゃうわよ」
と和葉。
「そうよ! 薫ちゃん、エッチだわ!」
と言った優子に、
「優子。あなたは人の事が言えないわよ」
と突っ込んだ。
「どうだ。問題なかっただろう?」
と竜馬が言うと、
「確かに、椎名さんの件も、出川さんの件も問題なかったわ。でもお兄ちゃんに問題があったわ」
「え? 僕に? どんな?」
すると和葉は、
「お兄ちゃん、優子と薫の足を触りながら、二人のスカート中を覗いていたでしょう」
と言ったから、教室全体から悲鳴が上がった。
「覗いてないよ! 何を言ってんだ!」
と竜馬。
「じゃあ、次は井山さんにしたことを、私にやってよ」
と和葉が言った時だった。
学校放送が入った。
「一年三組の新屋敷竜馬。至急、体育教官室に来なさい。話があります」
という山田先生直々のアナウンスだった。言葉は丁寧でも言い方に怒りが込もっていた。
「しまった! すっかり忘れていた!」
竜馬は右手を額に当てて、天井を仰いだ。
「作戦、成功。お兄ちゃん、一杯怒られて来てね。それと怒られた後に一組の井山さんの件も再現してね」
とクスクス笑った。
「和葉。お前~」
と恨めしそうに竜馬は和葉を見つめると、
「お兄ちゃん、私は悪い女なのよ。フフフ」
と言った。
つづく。
新しい登場人物。
手塚香織(てづかかおり)。
勉強が得意で、お嬢様ばかりが集まったグループのリーダー的存在。
石森楓(いしもりかえで)。
容姿にこだわりを持ち、オシャレやファッションに詳しいグループのリーダー的存在。
赤塚聡美(あかつかさとみ)。
明るく楽しく学校生活をやって行こうというグループのリーダー的存在。ただし、勉強は苦手な者が多い。
2022年8月31日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
東岡忠良(あずまおか・ただよし)
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──1──
今日の最後はホームルームである。
それは前期の学級委員長や係を決める、ある意味重要な日でもあった。
「は~い。注目。今日のホームルームはクラス委員や係を決めま~す」
と女子高生並に若く見える前田先生が教壇で手を叩いた。皆、リラックスした雰囲気で口々に話を交わしている。
「ねえ、お兄ちゃん」
和葉が身体を横に向けて話しかけてきた。
「何だ?」
「お兄ちゃんは何をやるつもり?」
竜馬は少し考えて、
「中学の時にやっていた保健係がいいかなと思ってる」
「ほお。保健係とな」
「ああ。野球部だったせいで、包帯を巻いたり、怪我をした人の補助は慣れているつもりだからね」
確かにそうだった。家でも家族の誰かが包帯を巻かないといけない怪我の場合、竜馬は手際よくやっていた。ただし、
「お兄ちゃんの怪我の場合は、私が巻いていたけどね」
と付け加えた。
「和葉はどうするんだ? 中学三年は副委員長だったんだろ?」
すると、和葉は不機嫌になり、
「そうよ。三年のクラスの連中。『新屋敷さんって頭いいんだから委員長になればいいのよ』って言い出して、半ば強引にやりたくもない委員長にされかけたのよ!」
と言った。
「あ~、あの件か。怒ってたよな」
「当たり前よ! 私、仕方がないのでやりたくもない副委員長に立候補したのよ。委員長よりは少しは楽かと思って」
「だよな」
「で実際になってみたら、委員長に立候補したリア充男子のヤツ、全く何もやらないで、結局殆どの仕事を私がやったのよね。今でも腹が立つわ!」
と頬を膨らませた。
「リア充男子って」
と竜馬。
「あんなヤツの名前も忘れたわ。というか、忘れたいの。余りに腹立たしいから。で担任の先生に委員長の山崎の内申書は『低くして下さい』って伝えておいたわ」
とニヤリとした。
「しっかり覚えてるじゃん」
「そりゃあね。それで山崎のヤツね。私立の受験を落ちたのよ。ざまあみろ、だわ。フフフ」
と含み笑いをした。
「おいおい。悪い顔で笑ってるぞ」
と竜馬は妹を注意した。
「いいのよ。私は悪い女なんだから。フフフ」
「なんだよ。気持ち悪いなあ~」
と竜馬が嫌な予感をした時だった。
「ではまずは学級委員長から。自薦他薦ありますか?」
と前田先生が言った瞬間だった。
「はい!」と和葉が手を上げた。
「お。和葉、やる気だな」
と竜馬は呑気に言った。和葉は立ち上がると、
「お兄ちゃん、新屋敷竜馬君を推薦します!」
と言った。
「え! 何で!」
と思わず竜馬は叫んだ。
和葉は席に座ると、
「私は悪い女なの。フフフ」
と静かに笑う。
「おいおい。僕は学級委員なんて出来ないぞ」
と言ったが、
女生徒らが口々に、
竜馬君がいいと思います!
竜馬君がいいです!
と口々に言い出した。
「ちょ、ちょっと待って」
と龍馬が言っても止まらない。
前田先生は黒板に『新屋敷竜馬』と書いた。
「分かりました。では竜馬君以外で『学級委員長に立候補したい』という人はいますか?」
と前田先生が聞くと、相生優子が手を上げた。
「先生。私、立候補します」
と自信に満ちた表情をしている。
「相生さんね」
と黒板に『相生優子』と書いた。
「相変わらず、優子は空気が読めないわよね」
と和葉。
でも竜馬は少し感心しながら言った。
「学級委員は優子さんが合っている気がするな。勉強は出来るし、しっかりしてそうだし」
「でも空気が読めてないわよ、あの子」
「他にはいないようね。じゃあ、多数決で決めます。新屋敷竜馬君がよいと思う人、手を上げて」
すると、竜馬と優子以外の全員が手を上げた。
「え! 何で!」
と叫ぶ優子。
「では相生優子さんがよいと思う人、手を上げて」
には竜馬と優子が手を上げた。
すると前田先生は、
「竜馬君、学級委員、やりたくないの?」
と直接、聞いてきた。
「やりたくないというか、今までやったことがないので」
と正直に言った。
「そうよ! やりたくない人を無理矢理やらせるのは良くないわ!」
「優子さん……」
そして和葉にだけ聞こえるくらいの声で、竜馬は言った。
「和葉。優子さんは空気が読めないんじゃないだよ。やりたくない僕を助けるために、敢えて学級委員に立候補してくれたんだ……。優子さんって思いやりのある人なんだよ」
と感動していたが、優子は手を上げて、
「学級委員っていうのは、勉強が出来ないとなってはいけないものだと思います! なので私が相応しいと思います。」
と聞かれてもいないのにそう言った。
「どうもお兄ちゃんの勘違いだったみたいね。さすがは優子だわ」
と私の予想通りという顔を和葉はした。
「はい。分かったわ。相生さん」
と優子を座らせて、前田先生は竜馬の方を見て、
「みんながこんなに支持してくれているのよ。もし、よかったら前期だけでもやってみない? 九月からは後期の委員長を決めるから」
と言い続けて、
「ねえ。竜馬君。どうか、お願いします!」
と小柄な前田先生が一生懸命に頼んできた。
「今、教室を覗いた人がいたら、前田先生がお兄ちゃんに告白しているように見えるわね」
と和葉が言うと、前田先生は真っ赤になり、
「ちょ! 和葉さん! 何を言い出すのよ!」
と慌てた。
「先生。お兄ちゃんを狙っているとしたら、せめて卒業してからにして下さい」
「だから、狙ってないって!」
と前田先生。
先生、応援してる!
先生、頑張って!
と笑いと声援が飛んだ。
竜馬は何だか前田先生が気の毒になり、
「あのう。先生。僕、学級委員、やります」
と渋々言った。
前田先生の表情が一気に明るくなり、
「本当に! ありがとう、竜馬君」
と嬉しそうである。
「では学級委員長は新屋敷竜馬君に決定します。皆さん、拍手」
と先生が言うと、拍手喝采が起きた。
相生優子は少し残念そうにしていたが、
「まあ、いいわ。副委員長を狙うから」
とみんなにも聞こえるような大きな声で言った。
「では副委員長になりたい人、手を上げて。自薦他薦は問いません」
と言うと、手を上げたのは和葉と優子と、他に三人現れた。
これは和葉も予想外であった。
──2──
三組は女子による大きな派閥つまりグループが三つ出来ていた。
一つは、手塚香織(てづかかおり)がリーダーで、勉強が得意で、お嬢様ばかりが集まったグループ。
二つ目は、石森楓(いしもりかえで)がリーダーで、見た目つまり容姿にこだわりを持ち、オシャレやファッションに詳しいグループ。
三つ目は、赤塚聡美(あかつかさとみ)がリーダーで、明るく楽しく学校生活をやって行こうというグループ。ただし、勉強は苦手な者が多い。そしてここが人数が少し多い。
それぞれのグループのリーダーの名字が『手塚』『石森』『赤塚』なので、和葉は彼女らグループ全体を『トキワ荘』と読んでいた。
つまり現在、『トキワ荘』に入っていないのは、新屋敷竜馬と和葉。相生優子と瀬川薫の四人であった。
と言っても、グループ同士が仲が悪い訳ではなかった。
二日目に、せっかく同じクラスになったのだから、全員でカラオケに行こう、ということになり、その日に参加しなかったのは、新屋敷兄妹と優子だけであった。
ちなみにその日は、優子の下着を買いに行った日でもあった。
そして、『手塚』『石森』『赤塚』のリーダー同士が比較的仲が良いみたいで、初日から新屋敷兄妹と優子と薫にも挨拶をしてくれ、昼休みも「一緒にお弁当を食べない?」と誘ってくれていた。
それでも四人は今、三つのグループからは、独立しているような形になっている。
理由は単純だった。
『手塚』のグループだと竜馬を除けば、成績主席の和葉と次席の優子、そして上位の薫なのだ。なので手塚よりも成績の良い和葉の方がリーダーに相応しいと思われた。
『石森』のグルーブだと四人は容姿やファッションにそれほど興味はない。にも関わらず、単純に容姿が美しいために、石森よりも綺麗で美人な優子の方がリーダーに相応しいと思われた。
『赤塚』のグループは和葉の良くも悪くも、無自覚のキレのあるボケとツッコミのセンスのために、赤塚よりも和葉の方がリーダーに相応しいと思われた。
簡単に言うと、和葉も優子もグループの長になるのは正直面倒臭く、そして少しでも竜馬の側に居たいということで、四人で行動しているのである。
そんな五人が副委員長をかけての戦いが始まろうとしていた。
「まずいわ。非常にまずい」
とすでに学級委員長になった竜馬に向かって和葉は呟いた。
「どうしたんだい?」
「優子は論外だけど、多数決だとどう考えても、『トキワ荘』の人達が有利だわ。恐らく、組織票で勝負するつもりだわ」
「まあ、そうなるだろうね」
「私、お兄ちゃんと同じクラスになったら、絶対に学級委員長と副委員長になろうと決めていたの」
「そうだったのか」
「その夢が今、叶うと思っていたのに。このままだと……」
と下を向いてしまった。
「では多数決で決めま~す。新屋敷和葉さんがよいと思う人、手を上げて」
手を上げたのは、和葉と薫だった。
だが、竜馬は手を上げなかった。
「お兄ちゃん……。私に入れてくれないの?」
と寂しそうに言ったが、
「僕に考えがあるから」
と呟いた。
「やった! 竜馬くん、私に投票してくれるんだ」
と嬉しそうな優子だったが、優子のために手を上げたのは、優子だけだった。
「わ! 私に入れたの、私だけ……」
とショックを受けた。優子は魂が抜けたように、何もない空間を見つめた。
手塚香織にはクラスの四分の一の者が手を上げた。
「してやられたわ」
と手塚は悔しがった。
石森楓には三分の一の者が手を上げた。
「まあ。仕方がないわね」
と諦めた。
結局、赤塚聡美に三分の一よりも少し多く手を上げた。
「やった! やったわ!」
と喜ぶ手塚とそのグループ達。それで副委員長は決定したかと思われた。
「すいません。いいですか?」
と竜馬は手を上げた。
「どうしたの? 竜馬君」
と前田先生。
「そう言えば、お兄ちゃんって手を上げなかったわね」
と和葉。
「これは僕の家庭の事情なのですが、両親の希望で僕と和葉は高校三年間を、絶対に登下校を一緒にするよう言われているんです」
と竜馬は切実に話した。
「あら。そうだったの」
と前田先生。
「なので、僕の学級委員の仕事のせいで、和葉を待たせる訳にもいかないので、出来たらですが」
と一呼吸置いて、
「和葉を副委員長にしてもらうと凄く助かるのですが」
と言った。
「え! そんな!」
と席から立ち上がったのは、赤塚聡美だった。
「私、ぜひ副委員長になって、この学級のために仕事をしたかったんです! それなのに!」
と必死に訴えた。
すると和葉は手を上げて意見した。
「前田先生。お兄ちゃんと私は家庭の事情があるので、どうしても私を副委員長にして欲しいんです。確かに多数決は大事なんですが、個人の希望を優先することもあって良いと思うのですけど」
「う~ん。なるほどね」
と前田先生は、右手を顎(あご)に当てて考えていたが、
「分かりました。では副委員長は新屋敷和葉さんになっていただきましょう」
と言った。
「え! そんなあ~!」
と赤塚聡美。
「事情があるのですから仕方がありません。赤塚さん、ごめんなさい。代わりに後期の副委員長になって下さいね」
と前田先生は言ったが、
「学級委員長が竜馬君でないと、なる意味がないわよ!」
と机へうつ伏せになった。
「赤塚さん、少し可愛そうね……」
と和葉は口ではそう言いながら、顔は勝利で笑っていた。
「では改めて。副委員長は新屋敷和葉さんに決定します。はい、拍手!」
と前田先生が言ったが、拍手はほとんどなかった。
ここから『トキワ荘』の人達は完全にやる気を失った。グループのリーダー達は、ただ単に竜馬と仕事を一緒にして、話す機会が欲しかっただけだったのだ。
「まあ、私の思った通りだったわね。そう簡単にお兄ちゃんとの機会は与えないわ」
と和葉は呟いた。
あれだけ盛り上がった副委員長とは正反対に、会計には相生優子しか立候補せず、あっさりと決定した。
「まあ、後期の学級委員を狙うための布石みたいなものね」
とみんなに聞こえる声の大きさで言う。
「優子だけね。純粋に学級のことを考えているのは。でも、そういうの嫌いじゃないわ」
と和葉は言った。
「では書紀をやりたい人?」
と言う前田先生に反応したのは、瀬川薫だった。これも他の候補者が現れずあっさりと決定した。
そして、
「では、新屋敷竜馬君と、和葉さん、相生さんと瀬川さんは、教職員や生徒会から何かあったら、出来るだけ四人で行動するように」
と言ったから、クラス中が騒ぎになった。
えっ! 会計や書紀って学級委員らと一緒に行動するの!
ちょっと! うちの中学では会計や書紀って一緒に行動しないのに!
それならそうと言ってよ、先生!
あ~ん! 失敗した~!
口々に騒ぐ三組に業を煮やしたのか、隣の二組の担任の女教師がやって来て、
「お前達! うるさいぞ! 前田先生を困らせるな!」
と怒鳴った。
──3──
結局、以下の結果になった。
学級委員長。新屋敷竜馬。
副委員長。新屋敷和葉。
会計。相生優子。
書紀。瀬川薫。
と黒板に書かれていた。
係ももちろん決まった。
「紆余曲折(うよきょくせつ)あったけど、結局クラス代表は、私達四人になったわね。とても嬉しいわ」
と和葉。
「そうだな。特にこの中でも和葉が一番危なかったけどな」
と竜馬。
「そうよ! 何で私の副委員長が一番なるのが難しかったのよ。まったく、多数決というのは厄介だわ」
「まあ、それは仕方がないだろうな」
他の者と同じように帰り支度を竜馬がしていると、和葉は竜馬の顔を見つめながら、ジッとしている。
「うん? どうした? 帰らないのか?」
と言うと、
「学級委員長のことで忘れちゃったかな? お兄ちゃん、体育教官室に呼ばれてなかったっけ?」
竜馬は、
「あっ! そうだった!」
と本当に今まで忘れていたようだった。
「竜馬さん、体育教官室に呼ばれているのですか?」
と薫がやって来た。
「そうなんだよ。山田先生が僕を呼んでいるらしい」
「竜馬くん、一体、何をやったのよ?」
と優子もやって来た。
「何もやっていない……。とは言いがたいかも。だな……」
体育の授業中に、一組の椎名さんの右足首を擦り、出川さんのこむら返りを治すのに左足首を触ったからか?
「この二つはある意味、治療なんだけどな……」
と呟く。その治療と言ったのを、和葉は聞き逃さなかった。
「お兄ちゃん。その治療とやらを、ここでやって見せてよ。セーフかアウトか判断するから」
「え! 何、言ってんだよ! セーフに決まってるだろ!」
と思わず熱くなった。
そのタイミングでスポーツ科八組の三上小夏がやって来た。
「竜ちゃん、和ちゃん、優子ちゃん、薫ちゃん、放課後暇かな?」
と四人に言った。
「小夏ちゃん。私達、放課後メッチャ暇だけど」
と和葉が言うと、
「ちょっと、勝手に決めないでよ」
と優子は返す。
薫は苦笑いしている。
「今から、お兄ちゃんが一組の女の子に行った『治療』という名目のセクハラを再現するわ。小夏ちゃんもアウトかセーフかの判断をお願い」
「こら! セクハラとか言うな!」
と竜馬は慌てた。
「ならそうね。お兄ちゃん、優子を使って一組の子達にやった事を、ここで再現してちょうだい」
と言った。
「優子を使ってって! 和葉、あなたねえ!」
と抵抗して見せるが、少し嬉しそうである。
「え! 今、ここでやるの!」
と大慌ての竜馬。
「あれ? 竜ちゃん、やけに慌てているねえ。もしかして本当はアウトなのかなあ~?」
と小夏。
薫は相変わらず苦笑しながら様子を見ている。
「分かったよ。やればいいんだろ、やれば!」
と竜馬は言って、席を立ち、
「じゃあ、優子さんは僕の席に座ってよ」
と言うと、
「え……。りょ、竜馬くんの席に座るの……?」
と頬を少し赤くして、内股になりもじもじし始めた。
「優子、あなた、もしかして今日、生理?」
と和葉。
「ち! 違うわよ!」
とより顔を赤くした。
「優子さん、嫌だったら別の人に変わってもらうけど?」
と竜馬が言うと、
「だ、大丈夫。大丈夫だから、私を好きにしていいわ」
と竜馬の席に座った。
「お兄ちゃん、好きにしていいんだって。じゃあ、お兄ちゃん、優子のおっぱいを取り敢えず触ってみようか」
と和葉。
「え!」と慌てる優子。
「あ! アホか!」と竜馬。
「いくらなんでもそれは……」と薫。
「いいなあ~。ここのクラスは楽しそうで」と小夏。
楽しくない!
と優子と竜馬の声は同時だった。
「まあ、そんなの冗談よ」
と和葉が言うと、
「当たり前だ!」
「当たり前です!」
も二人同時だった。
「じゃあ、正直に再現してよ。まず、椎名さんにやったことを」
と和葉が言ったのに、竜馬は驚いた。
「え! 椎名さんって! 和葉、もしかして!」
「ええ。私、しっかり見てたもの。おかげでうちの班の計測が効率よく計れなかったわ」
「だからなのね。あんた、しょっちゅう、どこかに行っていたのは」
と優子。
「授業はきちんと受けましょうね。和葉さん」
と薫。
「だから、お兄ちゃん。違うことをやったら、すぐに分かるのよ」
と竜馬の顔を見つめながら、ニヤリと笑った。
「分かったよ。分かったから、その顔、やめろ」
と竜馬は渋々、優子の前に腰を下ろした。
「じゃ、じゃあ。優子さん。やるよ」
「は、はい……。や、優しくお願いします……」
と緊張か恥ずかしさか優子は顔を背(そむ)けた。
「ついに二人共、初体験ね」
と和葉。
「しょ! 初体験!」と優子。
「和葉、ちっとも先に進まないだろ!」と竜馬。
「ほんの冗談じゃない。さ、続けて」
と右掌(みぎてのひら)を見せて促(うなが)した。
「まったく……。優子さんが嫌嫌(いやいや)付き合ってくれているのに悪いだろう」
と言う竜馬に、
「竜馬くん、私、嫌嫌じゃないよ」
と真っ直ぐ、竜馬の目を見ながら言った。
「あ? ああ。分かったよ。じゃあ、椎名さんのを再現するから、右足の上靴を脱がすよ」
と優しく言った。
「は、はい……」
と優子。
竜馬が上靴をゆっくりと脱がす。
「次は靴下だね。脱がすよ」
「は、はい。竜馬さん……」
と言った時に、静まり返った教室から『ゴクリ』と喉がなる音が響いた。周りをよく見ると、教室に残っている女子全員が、竜馬と優子のその様子に集中していた。
「あのねえ。こんなの、普通じゃない。何、みんな期待しているの? まあ、お兄ちゃんが優子の足を舐めたら話は変わるけど」
と言う和葉の言葉に、周りの緊張が解けて、笑いが起きた。
「はあ。舐める訳ないだろ!」
と言うと、
「えっ……。竜馬くん、舐めるの?」
と震え出す優子。
「優子さん、舐めないから!」
と竜馬。
「えっと。椎名さんは走っている最中に右足を捻ってしまったんだよ。だから右足首を見て欲しいって言われて」
と白くて綺麗な優子の右足首を竜馬は掴んで、
「右足首の関節のところが赤くなっていたから、こうして軽く撫でたんだ」
と優しく触ると、
「あっ……。ああ……。そこは……」
と優子。
「はい! アウト~!」
と和葉は席から立ち上がり言った。
「え! どこがだよ!」
と竜馬。
「勘違いしないで。アウトは優子よ! あんた、何て声、出しているのよ!」
「え! ちょっとくすぐったかったから、つい」
「お兄ちゃん、椎名さんの件は問題なかったわ。ただ、優子に問題があったから、次の出川さんの治療と称したセクハラを薫ちゃんで再現して」
「え~! 私、ですか~!」
とこれまたまんざらでもない薫。
「だから、セクハラじゃないって!」
と竜馬。
「じゃあ、優子はそっちの空席に移動して靴下と上履きを履いて」
「もう、分かったわよ」
と右手に上靴、左手に片方の靴下を持ったまま、片足でケンケンしながら移動しようとすると、運動神経の良くない優子はバランスを崩した。
そこは側にいた龍馬が素早く支えた。
竜馬は問題のない優子の背中とウエスト辺りで支えたのだが、優子が自分の身体を預けるようにしたために、大きな優子の胸が、竜馬の胸辺りに当たった。そして当たった後、しばらくの間優子は幸せそうな表情でそのままでいた。
和葉はそれを見逃さなかった。
「優子。あなた、お兄ちゃんにそのHカップのデカいおっぱいを押し付けるのを止めなさいな」
「な! 押し付けてない! たまたまよ! たまたま!」
「え~。本当かなあ~」
と横目で優子を睨む和葉。
「本当にたまたまだけど、後半はちょっと押し付けたかも……」
と本音を言った。
女の子達から黄色い悲鳴が上がる。
「まあ、いいわ。偶然とはいえチャンスをものにした優子の勝ちでいいわ。というか、お兄ちゃんもいつまでもジッとしてないで!」
「あ! ご、ごめん」
「まったく。さ。薫ちゃん、よろしく」
「はい」と薫はさっきまで優子が座っていた竜馬の席に座った。
優子は近くの空席に座って、せっせと靴下を履いている。
「じゃあ、次は出川さんがこむら返りを起こしたので、左足を治療した件の再現だな。薫さん、よろしく」
「はい。よろしくお願いします。じゃあ、取るよ」
と竜馬は薫の左足の上履きと靴下を脱がした。
「はい。どうぞ」
と薫。
「お客さん、こういう店は初めて? 学生さんよね」
とどこで覚えたのか、和葉は臨場感たっぷりに言った。
「おい。誤解をされるようなことをいうな」
「フフフ。私は悪い子なのよ」
と和葉。
「このクラス、楽しそうだなあ~。いいなあ~」
と小夏。
「全然、楽しくないよ!」
と竜馬が言う。
左だけ素足になった薫の足首を、
「こうしてゆっくり曲げて、出川さんのこむら返りを治しただけだよ」
と竜馬は優しく曲げると、
「ああ。とても気持ちいいです。竜馬君……」
と薫は言った。すると、
「結論が出たわ。薫ちゃん、あなたもアウトよ!」
「え! 私がですか?」
「声だけ聞いていたら、一体何をされたのかと想像しちゃうわよ」
と和葉。
「そうよ! 薫ちゃん、エッチだわ!」
と言った優子に、
「優子。あなたは人の事が言えないわよ」
と突っ込んだ。
「どうだ。問題なかっただろう?」
と竜馬が言うと、
「確かに、椎名さんの件も、出川さんの件も問題なかったわ。でもお兄ちゃんに問題があったわ」
「え? 僕に? どんな?」
すると和葉は、
「お兄ちゃん、優子と薫の足を触りながら、二人のスカート中を覗いていたでしょう」
と言ったから、教室全体から悲鳴が上がった。
「覗いてないよ! 何を言ってんだ!」
と竜馬。
「じゃあ、次は井山さんにしたことを、私にやってよ」
と和葉が言った時だった。
学校放送が入った。
「一年三組の新屋敷竜馬。至急、体育教官室に来なさい。話があります」
という山田先生直々のアナウンスだった。言葉は丁寧でも言い方に怒りが込もっていた。
「しまった! すっかり忘れていた!」
竜馬は右手を額に当てて、天井を仰いだ。
「作戦、成功。お兄ちゃん、一杯怒られて来てね。それと怒られた後に一組の井山さんの件も再現してね」
とクスクス笑った。
「和葉。お前~」
と恨めしそうに竜馬は和葉を見つめると、
「お兄ちゃん、私は悪い女なのよ。フフフ」
と言った。
つづく。
新しい登場人物。
手塚香織(てづかかおり)。
勉強が得意で、お嬢様ばかりが集まったグループのリーダー的存在。
石森楓(いしもりかえで)。
容姿にこだわりを持ち、オシャレやファッションに詳しいグループのリーダー的存在。
赤塚聡美(あかつかさとみ)。
明るく楽しく学校生活をやって行こうというグループのリーダー的存在。ただし、勉強は苦手な者が多い。
2022年8月31日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
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