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【12】『セコム(SECOM)』の取り付け担当者「この会社にはセコムを取り付けることが出来ません」
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【12】『セコム(SECOM)』の取り付け担当者「この会社にはセコムを取り付けることが出来ません」
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──【12】──
皆さんは『セコム(SECOM)』をご存じだろうか?
知らない方のために簡単に説明すると、会社や工場にセンサーを取り付けて、室内で何かが動くと『セコム(SECOM)』という警備会社に連絡が行き、駆けつけた警備員が合鍵を使って室内に入り、中を点検してくれるというサービスである。
今では使っている企業は多いと思いますが、この当時はかなり珍しく社長は、
「幽霊なんているはずがない。どこかに浮浪者が住み付いているに決まっている!」
と言って、セコムを取り付けることになったのである。
そしてある日、セコムのセンサーを取り付けにやってきた。
一階の工場。
二階の作業所と休憩室。
三階の倉庫。
取り付け終わると、その日の夜に早速、センサーに反応があった。
セコムの取り付け担当の人がやって来て、
「恐らく動物だと思います。ネコかネズミかもしくはコウモリとか」
社長は、
「分かった。なら全ての隙間を埋めることにするから」
とセコムの支持通り、どんなに小さな隙間や穴も埋めた。
「これで大丈夫です」
と自信たっぷりのセコムだったが、やはり夜になるとセンサーが反応してしまい、警備員が駆けつけることになった。これが数日続いた。
セコムの取り付け担当者は、
「すいません。どうしても原因を知りたいので、暗視カメラを取り付けていいでしょうか?」
と社長に提案した。
「もちろん、構わんよ。しっかり原因を見つけて、セコムを取り付けてよ」
と社長は言った。
そして十日ほど経った日のこと、セコムの取り付け担当者と上司がやって来て、
「社長。本当に申し訳ないです。この会社にはセコムを取り付けることが出来ません。今までの費用は全てお返ししますのでどうか許して下さい」
と上司と共に頭を下げて来た。
社長は、
「どうしたんだ? どういう理由で取り付けられないんだ?」
と当然、理由を知りたがったが、
「今は理由をお教え出来ません。どうするか会議を終えてからまた、お知らせ致します」
と言い残して帰って行った。
支払った費用はきちんと全額が帰ってきた。
それでもどうしても取り付けられない理由を、社長は知りたかった。
ここからは社長が僕らに話してくれたことを書いていきます。
後日、社長はセコムに電話をした。
担当者が電話に出た。
「なあ、君。わしはどうしても納得出来ないだけど。どうしてうちの会社にセコムが付けられないんだ? 納得出来る理由を教えて欲しいんだけどな」
としつこく迫った。
だが、
「それはお教え出来ません。許して下さい」
すると社長は、
「そんなのおかしいやないか! そんなの納得出来るはずがないだろ! セコムを付けるって言って、社内のことを調べてやな。壁の穴も塞がせて。こっちはお金がかかったんやぞ! 挙げ句に合鍵も一ヶ月くらい持っていただろう!」
この時代はまだ、セコムのことはそれ程、浸透されていなかったから、社長はこう言った。
「お前達、まさか会社の間取りや情報を取って、鍵まで持っていって合鍵でも作って、うちの会社に強盗でも入るつもりじゃないだろうな!」
と言うと、
「いえ。そんなことは決して。我が社は信用のある警備会社ですから」
「その警備会社が理由なく『セコムは付けられません』っで納得出来るはずがないやろ!」
「たっ……。確かに」
担当者は困り果てて、近くに居た上司と話をすると、
「お電話、変わりました」
とかなりの上役の方が出てきた。
そして、
「分かりました。理由をお教え致しましょう」
との返事が帰ってきた。
「やっとかいな。どう言う理由なんだ?」
と社長。
そしてセコムの担当者は、
「このような事例はかなり珍しくて、千件に一件あるかないかなのですけど」
「なんや? そんなに珍しいことなんか?」
「はい。出来れば誰にも言わないで欲しいんですけど」
「言わへん。言わへん。だから教えてくれよ」
(僕が知っていると言うことは、社長は会社で働く人達全員に話してくれました。)
「分かりました。実は」
「実は?」
「実は真夜中になると、ほぼ毎日のように男が、そちらの社内を歩き回っている映像が撮れたのです」
「なんや。そうやったんか。ならそいつを捕まえてくれよ」
すると、
「申し訳ありませんが、それは出来ません」
社長は少しムッとなって、
「何でや! 不審な侵入者を捕まえるのがそちらの仕事やないのか?」
「はい。そうです」
「もしかして、ここまで分かったら警察に言えってことかいな?」
と社長が言うと、
「いえ。警察でも捕まえることは出来ません」
「え? どう言うことや? それはどんな男なんや?」
「その男は戦時中の国民服のような服装をしていて、会社内の陰や隙間を覗いて行くのです」
「それって、金目の物を探しとるのと違うんか! やっぱり泥棒なんやろ!」
「いえ。違います……」
「は? 違うってどういうことや! 物を盗むために社内を歩き回っているのと違うんかいな? なら捕まえてくれたらええやろ!」
「いえ。それは出来ません」
「どういうことや?」
「それは……」
とセコムの上役は一呼吸置いて、
「その男は人間じゃないからです……」
「は? 人間じゃないだって! 冗談はやめてくれよ。なら何で人間じゃないって分かるんだよ?」
と社長が問い詰めると、
「その男は床から三〇センチほど浮いているんです……」
2024年4月21日
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今では使っている企業は多いと思いますが、この当時はかなり珍しく社長は、
「幽霊なんているはずがない。どこかに浮浪者が住み付いているに決まっている!」
と言って、セコムを取り付けることになったのである。
そしてある日、セコムのセンサーを取り付けにやってきた。
一階の工場。
二階の作業所と休憩室。
三階の倉庫。
取り付け終わると、その日の夜に早速、センサーに反応があった。
セコムの取り付け担当の人がやって来て、
「恐らく動物だと思います。ネコかネズミかもしくはコウモリとか」
社長は、
「分かった。なら全ての隙間を埋めることにするから」
とセコムの支持通り、どんなに小さな隙間や穴も埋めた。
「これで大丈夫です」
と自信たっぷりのセコムだったが、やはり夜になるとセンサーが反応してしまい、警備員が駆けつけることになった。これが数日続いた。
セコムの取り付け担当者は、
「すいません。どうしても原因を知りたいので、暗視カメラを取り付けていいでしょうか?」
と社長に提案した。
「もちろん、構わんよ。しっかり原因を見つけて、セコムを取り付けてよ」
と社長は言った。
そして十日ほど経った日のこと、セコムの取り付け担当者と上司がやって来て、
「社長。本当に申し訳ないです。この会社にはセコムを取り付けることが出来ません。今までの費用は全てお返ししますのでどうか許して下さい」
と上司と共に頭を下げて来た。
社長は、
「どうしたんだ? どういう理由で取り付けられないんだ?」
と当然、理由を知りたがったが、
「今は理由をお教え出来ません。どうするか会議を終えてからまた、お知らせ致します」
と言い残して帰って行った。
支払った費用はきちんと全額が帰ってきた。
それでもどうしても取り付けられない理由を、社長は知りたかった。
ここからは社長が僕らに話してくれたことを書いていきます。
後日、社長はセコムに電話をした。
担当者が電話に出た。
「なあ、君。わしはどうしても納得出来ないだけど。どうしてうちの会社にセコムが付けられないんだ? 納得出来る理由を教えて欲しいんだけどな」
としつこく迫った。
だが、
「それはお教え出来ません。許して下さい」
すると社長は、
「そんなのおかしいやないか! そんなの納得出来るはずがないだろ! セコムを付けるって言って、社内のことを調べてやな。壁の穴も塞がせて。こっちはお金がかかったんやぞ! 挙げ句に合鍵も一ヶ月くらい持っていただろう!」
この時代はまだ、セコムのことはそれ程、浸透されていなかったから、社長はこう言った。
「お前達、まさか会社の間取りや情報を取って、鍵まで持っていって合鍵でも作って、うちの会社に強盗でも入るつもりじゃないだろうな!」
と言うと、
「いえ。そんなことは決して。我が社は信用のある警備会社ですから」
「その警備会社が理由なく『セコムは付けられません』っで納得出来るはずがないやろ!」
「たっ……。確かに」
担当者は困り果てて、近くに居た上司と話をすると、
「お電話、変わりました」
とかなりの上役の方が出てきた。
そして、
「分かりました。理由をお教え致しましょう」
との返事が帰ってきた。
「やっとかいな。どう言う理由なんだ?」
と社長。
そしてセコムの担当者は、
「このような事例はかなり珍しくて、千件に一件あるかないかなのですけど」
「なんや? そんなに珍しいことなんか?」
「はい。出来れば誰にも言わないで欲しいんですけど」
「言わへん。言わへん。だから教えてくれよ」
(僕が知っていると言うことは、社長は会社で働く人達全員に話してくれました。)
「分かりました。実は」
「実は?」
「実は真夜中になると、ほぼ毎日のように男が、そちらの社内を歩き回っている映像が撮れたのです」
「なんや。そうやったんか。ならそいつを捕まえてくれよ」
すると、
「申し訳ありませんが、それは出来ません」
社長は少しムッとなって、
「何でや! 不審な侵入者を捕まえるのがそちらの仕事やないのか?」
「はい。そうです」
「もしかして、ここまで分かったら警察に言えってことかいな?」
と社長が言うと、
「いえ。警察でも捕まえることは出来ません」
「え? どう言うことや? それはどんな男なんや?」
「その男は戦時中の国民服のような服装をしていて、会社内の陰や隙間を覗いて行くのです」
「それって、金目の物を探しとるのと違うんか! やっぱり泥棒なんやろ!」
「いえ。違います……」
「は? 違うってどういうことや! 物を盗むために社内を歩き回っているのと違うんかいな? なら捕まえてくれたらええやろ!」
「いえ。それは出来ません」
「どういうことや?」
「それは……」
とセコムの上役は一呼吸置いて、
「その男は人間じゃないからです……」
「は? 人間じゃないだって! 冗談はやめてくれよ。なら何で人間じゃないって分かるんだよ?」
と社長が問い詰めると、
「その男は床から三〇センチほど浮いているんです……」
2024年4月21日
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