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【11】「二階に誰か居るのかなあ!」と言うと突然、エレベーターのブザーが鳴り響いた。
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【11】「二階に誰か居るのかなあ~!」と言うと突然、エレベーターのブザーが鳴り響いた。
※この小説へのご意見・ご感想・誤字脱字・等がありましたら、お気軽にコメントして下さい。
お待ちしています。
──【11】──
誰もいない倉庫の三階から聞こえてくる足音。
夜になると非常階段を上り下りする足音。
それがアルバイトに行くと毎回、聞こえてくるので、僕達は完全に慣れてしまい、
「ああ。また、聞こえるな」
という認識に変わっていき、いつの間にか『怖い』という感情がなくなっていきました。
ただし、今から書く『荷物用エレベーター』の出来事から、その認識はガラリと変わってしまうのでした。
ある日の深夜のことでした。
二階で組み立てた商品の入った箱を、一階に下ろす作業をしていました。
やり方はまず三人で二階に行き、商品の箱を荷物用エレベーターへ一杯に詰め込みます。
二階で積み込み終わると、エレベーターの一階のボタンを押して、荷物用エレベーターは一階に下ります。
社員さんを含めた僕達三人も非常階段ではなく、表階段を下りていきます。
そして下りたエレベーターの中の物を全部降ろして、一階に積んでいきます。
一階で空になったエレベーターを、二階のボタンを押して動かして二階へ上げます。
これを繰り返していました。
これもまた、量が凄かったので、結構時間がかかっていました。エレベーターと言っても一人の人間が入れるほどの大きさなので、大して載らないのです。
それを繰り返していると、さすがに疲れて、
「まだまだあるけど、エレベーターに積み込み終わったら少し休憩しようか」
と社員さんが二階で言いました。
休憩するということで、二階の事務所の電気を切りました。つまり二階は真っ暗になりました。
荷物用エレベーターのスイッチを押して一階に下ろすと、僕達は一階に下りて、自動販売機でコーヒーを買って休憩していました。
すると、
ブッ。
というブザー音が鳴りました。
僕と僕の友人そして社員さんが一斉にエレベーターの方を見ました。
「今、ブザーが鳴ったよな?」
と社員さん。
「鳴りました」
と僕。
「おかしいな? 一階のブザーを鳴らすには、二階のブザーボタンを押さないといけないのに?」
そのブザーは一階で扉を閉め忘れていたり、早く作業を終えるように伝えるものなのです。
つまり一階のエレベーターのブザーを鳴らすには!
誰かが二階のブザーボタンを押さないと鳴らないのです。
僕達は幽霊の足音は何度も聞いていましたが、物理的にエレベーターのボタンを、幽霊が押したのではないか、と思うと何だか怖くなりました。
ですが、その時に居た社員さんは気の強い人で、友人同様に幽霊なんて全く信じていない人でした。
その人は大きな声で、
「二階に誰かいるのかなあ~!」
とふざけて大声を出した時でした。
ブーーー!
とブザーが鳴り止まないのです。
そうなるには!
誰かが二階のブザーボタンを延々と押しっぱなしにしないと、ブザーは鳴り続けないのでした。
僕と友人は正直怖くなってきたのてすが、社員さんは、
「これは間違いない! 泥棒だ! 今から捕まえに行くから付いてきてくれ!」
と言うのです。
僕はこの時期、やたらと変な体験が続いていたので、正直付いて行きたくなかったのですが、
「面白そうですね。行きましょうか!」
と幽霊を信じていない友人はノリノリで二階への階段を上って行くのです。
行かない訳にもいかず、僕も階段を上って行きました。
一階のブザーはまだ鳴り続けています。
二階のドアの前に三人が並びました。
ドアに付いている磨りガラス越しに二階の事務所を見ると真っ暗です。
そしてドアのすぐ前が荷物用エレベーターなのです。
ブザーはまだ鳴り続けています。
「まだ誰か押してるぞ。いいか。オレが取り押さえるから援護してくれ」
と言って、社員さんは勢いよくドアを開けて、
「この泥棒が!」
と叫びながら突入し、二階の電気のスイッチをすぐに点けたのです。
そこには誰もいませんでした。
社員さんが突入すると同時に、ブザーは鳴り止みました。
僕達三人は不思議で仕方がありません。
なぜならドアを開けるよりも早く、荷物用エレベーターから離れるなんて出来るはずがないからです。
もちろん、人間なら……。
社員さんは、
「おかしいな。おかしいな」
と辺りを見回し、
「もしかして、泥棒が隠れているかもしれないので調べてくれ」
と僕らは言われ、怖かったのですが、二階を見回りました。
当然、誰もいません。
「おかしいな~」
と社員さん。
そして社員さんは、
「おい! 誰かいるのかよ!」
とまた大声で言うと、
ブッ。ブッ。
と二回鳴ったのです。
つまり、
一階に誰かが居て、一階のブザーボタンを二回押したことになるのでした。
僕達二人は黙っていると、社員さんは、
「これ、故障だわ。故障。明日、社長に言って修理してもらおう」
ということになったのです。
次の日の午後に荷物用エレベーターの業者がやって来て、すべて点検したのですが、
「すいません。どこも悪くないんですけど」
と業者さんが困っていると、社長が、
「困るのはこっちだから。今はブザーだけの誤作動かもしれないが、もし事故でもあったらどうするんだよ!」
と業者の人に言っていました。
業者の人は困り果てて、
「分かりました。ボタンはすべて新品に交換いたします。それで許して下さい」
と言って、交換を終えると帰っていきました。
そしてその日、
また、二階の商品を一階に下ろし、同じように一階で僕達バイトと気の強い社員さんとで、一階でコーヒーを飲んでいると、
ブッ。ブッ。
と二回ブザーが鳴ったのでした。
すると社員さんは、
「おい! どこの誰だか知らないけどな! 今日、業者の人が来てボタンを全部、交換していったんだよ! なのにまたこうやって鳴ったら、社長やその業者さんが困るだろう! そういう悪戯(いたずら)はやめろ!」
と怒りを込めて大声で怒鳴りました。
するとこれ以来、ブザーの誤作動は起こらなくなったのです。
ですが、この工場には何かがいるということになり、
「もしかして浮浪者か何かが、どこかに隠れているのかもしれんな」
と社長は考え、この工場にセコムを付けることになったのです。
2024年4月15日
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また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
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──【11】──
誰もいない倉庫の三階から聞こえてくる足音。
夜になると非常階段を上り下りする足音。
それがアルバイトに行くと毎回、聞こえてくるので、僕達は完全に慣れてしまい、
「ああ。また、聞こえるな」
という認識に変わっていき、いつの間にか『怖い』という感情がなくなっていきました。
ただし、今から書く『荷物用エレベーター』の出来事から、その認識はガラリと変わってしまうのでした。
ある日の深夜のことでした。
二階で組み立てた商品の入った箱を、一階に下ろす作業をしていました。
やり方はまず三人で二階に行き、商品の箱を荷物用エレベーターへ一杯に詰め込みます。
二階で積み込み終わると、エレベーターの一階のボタンを押して、荷物用エレベーターは一階に下ります。
社員さんを含めた僕達三人も非常階段ではなく、表階段を下りていきます。
そして下りたエレベーターの中の物を全部降ろして、一階に積んでいきます。
一階で空になったエレベーターを、二階のボタンを押して動かして二階へ上げます。
これを繰り返していました。
これもまた、量が凄かったので、結構時間がかかっていました。エレベーターと言っても一人の人間が入れるほどの大きさなので、大して載らないのです。
それを繰り返していると、さすがに疲れて、
「まだまだあるけど、エレベーターに積み込み終わったら少し休憩しようか」
と社員さんが二階で言いました。
休憩するということで、二階の事務所の電気を切りました。つまり二階は真っ暗になりました。
荷物用エレベーターのスイッチを押して一階に下ろすと、僕達は一階に下りて、自動販売機でコーヒーを買って休憩していました。
すると、
ブッ。
というブザー音が鳴りました。
僕と僕の友人そして社員さんが一斉にエレベーターの方を見ました。
「今、ブザーが鳴ったよな?」
と社員さん。
「鳴りました」
と僕。
「おかしいな? 一階のブザーを鳴らすには、二階のブザーボタンを押さないといけないのに?」
そのブザーは一階で扉を閉め忘れていたり、早く作業を終えるように伝えるものなのです。
つまり一階のエレベーターのブザーを鳴らすには!
誰かが二階のブザーボタンを押さないと鳴らないのです。
僕達は幽霊の足音は何度も聞いていましたが、物理的にエレベーターのボタンを、幽霊が押したのではないか、と思うと何だか怖くなりました。
ですが、その時に居た社員さんは気の強い人で、友人同様に幽霊なんて全く信じていない人でした。
その人は大きな声で、
「二階に誰かいるのかなあ~!」
とふざけて大声を出した時でした。
ブーーー!
とブザーが鳴り止まないのです。
そうなるには!
誰かが二階のブザーボタンを延々と押しっぱなしにしないと、ブザーは鳴り続けないのでした。
僕と友人は正直怖くなってきたのてすが、社員さんは、
「これは間違いない! 泥棒だ! 今から捕まえに行くから付いてきてくれ!」
と言うのです。
僕はこの時期、やたらと変な体験が続いていたので、正直付いて行きたくなかったのですが、
「面白そうですね。行きましょうか!」
と幽霊を信じていない友人はノリノリで二階への階段を上って行くのです。
行かない訳にもいかず、僕も階段を上って行きました。
一階のブザーはまだ鳴り続けています。
二階のドアの前に三人が並びました。
ドアに付いている磨りガラス越しに二階の事務所を見ると真っ暗です。
そしてドアのすぐ前が荷物用エレベーターなのです。
ブザーはまだ鳴り続けています。
「まだ誰か押してるぞ。いいか。オレが取り押さえるから援護してくれ」
と言って、社員さんは勢いよくドアを開けて、
「この泥棒が!」
と叫びながら突入し、二階の電気のスイッチをすぐに点けたのです。
そこには誰もいませんでした。
社員さんが突入すると同時に、ブザーは鳴り止みました。
僕達三人は不思議で仕方がありません。
なぜならドアを開けるよりも早く、荷物用エレベーターから離れるなんて出来るはずがないからです。
もちろん、人間なら……。
社員さんは、
「おかしいな。おかしいな」
と辺りを見回し、
「もしかして、泥棒が隠れているかもしれないので調べてくれ」
と僕らは言われ、怖かったのですが、二階を見回りました。
当然、誰もいません。
「おかしいな~」
と社員さん。
そして社員さんは、
「おい! 誰かいるのかよ!」
とまた大声で言うと、
ブッ。ブッ。
と二回鳴ったのです。
つまり、
一階に誰かが居て、一階のブザーボタンを二回押したことになるのでした。
僕達二人は黙っていると、社員さんは、
「これ、故障だわ。故障。明日、社長に言って修理してもらおう」
ということになったのです。
次の日の午後に荷物用エレベーターの業者がやって来て、すべて点検したのですが、
「すいません。どこも悪くないんですけど」
と業者さんが困っていると、社長が、
「困るのはこっちだから。今はブザーだけの誤作動かもしれないが、もし事故でもあったらどうするんだよ!」
と業者の人に言っていました。
業者の人は困り果てて、
「分かりました。ボタンはすべて新品に交換いたします。それで許して下さい」
と言って、交換を終えると帰っていきました。
そしてその日、
また、二階の商品を一階に下ろし、同じように一階で僕達バイトと気の強い社員さんとで、一階でコーヒーを飲んでいると、
ブッ。ブッ。
と二回ブザーが鳴ったのでした。
すると社員さんは、
「おい! どこの誰だか知らないけどな! 今日、業者の人が来てボタンを全部、交換していったんだよ! なのにまたこうやって鳴ったら、社長やその業者さんが困るだろう! そういう悪戯(いたずら)はやめろ!」
と怒りを込めて大声で怒鳴りました。
するとこれ以来、ブザーの誤作動は起こらなくなったのです。
ですが、この工場には何かがいるということになり、
「もしかして浮浪者か何かが、どこかに隠れているのかもしれんな」
と社長は考え、この工場にセコムを付けることになったのです。
2024年4月15日
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