君は僕がいなくても大丈夫だろう……、ってそんなの当たり前じゃないかしら。

紗綺

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すれ違いはいつからなのか

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屋台で買った軽食を手に家に向かう。
研究熱心が過ぎて食事を忘れることがある彼のために買った日持ちする焼き菓子と、今日のために買ったいつもより少し良い葡萄酒。

婚約して6か月目。
簡単なお祝いをしたいと思ったのは商売が予想以上に上手くいっていたから。
巷で人気の品を廉価で販売するという単純な手法を繰り返し、順調に資産を増やしている。
あまり褒められた手法ではないけど、本家本元に迫る品質ではないことや、対象の商品を短い間の販売にすることで、流行りに乗りたいだけの人や嗜好品に金をかけられない層を対象にしているため、そこまで目の敵にはされていなかった。

家に着いて扉を叩き、来訪を知らせて扉を開ける。
ごく一般的なことなので何も思わなかった。
彼に苦言を呈されるまでは。

集中していたのに急な訪れに思考が中断されてしまったと嘆く彼に謝り、今後勝手に扉を開けたりはしないと約束した。
彼を支える私が邪魔をするわけにはいかない。

気を取り直して食卓に葡萄酒と軽食を並べる。
美味しい物を食べて仲直りは単純かしら。

葡萄酒を半分に減らした頃、研究疲れか目元をとろんとさせた彼が口にした。
祝いだと言うのなら何か手の込んだ料理を作ってくれたらよかったのに。
そういえば彼のお母様は家族の誕生日などには必ず自慢の料理でお祝いしてくれたと聞いたことがある。
温かい料理が食べたかったな、との小さな呟きに申し訳ない気持ちになった。
お互い忙しいだろうからと簡単に祝いを済ませるのではなく、どこかに食べに行ったりすれば良かったと。


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