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共通ルート
まともには生きられない存在 ★
しおりを挟むミリアレナが使えるのは魅了魔法だけではない。
以前にあった事故から、自分の身を守る方法として有効で他者を傷つけるものではないものは習得を許された。
相手を眠りに落とすこの魔法もそのひとつ。
鎖で拘束し襲おうとした青年を眠りに落とし、待機している職員へ緊急連絡を飛ばす。
これで魔法省で私の刻印のチェックをしている室長に連絡が行く。
拘束された手はそのままなのでしばらくは動けないが。どうしようもないと諦めていると、近くにいたのか魔法省の別の職員が駆けつけた。
いつも室長と共にいる職員ではない。
見覚えのあるその顔にどくんと嫌な予感がした。
きっと大丈夫、私を嫌悪しているこの職員は二度とあんなことはしまいと。
けして好意的ではない視線を浴びながらそう考える。
しかしそれは現実を過小評価しただけの希望にしか過ぎなかった。
部屋の惨状を見た職員は嘲笑いながら私へ舐めるような視線を這わせた。
「イイ格好だなあ。
あーあ、こんな面倒な状況じゃなければこのまま犯してえのに」
ベッドに鎖で拘束された状態でははだけた胸元を隠すこともできない。
にやにや笑う職員は片足をベッドにのせいきなり胸を鷲掴んだ。
「いっ! 何をするんですか! 止めてください」
「抵抗すると報告書が分厚くなるだけだからやめとけよ。
胸も随分育ったなあ。
あの手に完全に収まる大きさも良かったけどな」
記憶と今を確かめるように乳房を弄ぶ男へ制止の声を上げる。
「止めて! 報告されるのはあなたも一緒よ!」
「あの時と同じだろ?
魅了が暴走して俺は巻き込まれただけになる」
今回はそんな言い訳が通るわけがない。
そう思いながらその言葉を否定できない自分がいる。
だって、あの時はそうだった。
「いっそ来る前に本当にヤッちまうか?」
見下ろす職員の嗜虐と興奮に満ちた瞳に、ミリアレナはその時のことを思い出していた。
ミリアレナが成長し、ある程度力を制御できるようになってから行われた魅了の効果を確かめる実験。
危険はあるがどの程度の効果を持っているのか調べられるのは当然だし否を言う権利はミリアレナにはない。
魔法耐性のある職員相手なので最終的には全力で魅了をかけてもらうかもしれないと事前に言われていた。
異変が起こったのは半分くらいに出力を上げた頃。
「きゃあ!」
突然座っていた椅子から引きずり降ろされ床に押し倒された。
「あー、やべ。
効果絶大だ、これ」
ギラギラと欲の籠もった目で見下ろされて危険信号が頭に鳴り響く。
「……!」
手にした道具を握りしめる。
異変が起こったら使いなさいと渡されていた物。
「させねえよ」
中止の合図を送ろうと手にした魔道具を奪われる。
外とのたった一つの連絡手段を失ったミリアレナはあまりに無力だった。
抵抗敵わず、ミリアレナは純潔を散らされた。
訝しんだ室長たちが部屋に飛び込んできたときにはすべて遅く、おびただしい白濁を浴びせかけられ意識を失った私と狂ったように腰を打ち付け哄笑する職員の姿があったと報告書には記された。
私を犯した職員は担当を外されたけれど罰は受けなかった。
予想以上の魅了の力に抗えなかったのだと、事故が起こったのは最小限の人数で対応していたため止める人材がいなかったためだと。室長の危機管理を問う結果のみとなった。
あの行為の最中、何故そんな行為に及んだのかと聞いた。魅了の力のせいなのかあっさりと答えてくれた。
魅了持ちが自分たちの領域にいることが気に入らない、さっさと力を封じて放り出すべきだとずっと思っていたと。
貴重なサンプルだからといって厭わしい力の持ち主に自分の時間を取られるのが我慢ならなかった。
「さっさと消え失せれば良いんだよ。
どうせお前のことなんか誰も気にしてない。
ま、俺はこれでお前の世話から外される」
清々すると悪意を吐き捨てた職員。
室長からは管理不十分を謝罪されたけれど、扱いが変わることはなかった。
変わらず魅了の力を調べられ、嫌悪の目を向けられる。
そこに自分たちを脅かす者と見る警戒が加わった。
自分がまともに生きていける存在ではないことに気づいたのはその時だった。
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