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共通ルート
幻影に吐き出す欲望 ★
しおりを挟む後ろから伸し掛かられて腿を撫でられる。
腰を高く上げた体勢に男が満足そうに笑う。
「いい眺めだね。
アイツは満足させてくれないの?」
トロトロと蜜を零す秘所に指を差し込まれて腰が揺れてしまう。
「そんなことっ」
「口ではなんとでも言えるよね」
濡れた指で腿をなぞられてゾクゾクと震える。
弱い刺激だけを繰り返し与えられて高められるのに解放してくれない。
男にとって復讐だからなのかいつも貶めるような言葉を吐きながら抱く。
相手への苛立ちと未練が男の言葉の端々から感じ取れた。
「軽くしか触ってないのにこんなに蜜を溢れさせてさ、欲求不満なんじゃないの」
指の先で花芯を引っかかれ、こぽりと蜜が溢れる。
「もう、もうやめて……」
男の依頼は『男を求めないこと』。
巧みな愛撫に乱されながらも男を求めない想い人を演じると、男は楽しそうに笑い硬くなった自分の欲望を押し付けてくる。
その熱さに怯えたように肩を震わせると堪えきれないように息を吐いて取り出した熱塊を秘所に当てた。
「いやっ、それはいやぁっ!
お願い、やめ、て……っ! あああっ!!!」
頭を振り乱して男の熱を受け入れている事実を拒否する。
泣き叫ぶほど男は残酷に笑い、熱を打ち付ける速さを上げる。
「あっ! ああっ、やだっ、やめてぇっ!
……っ! ああああっ!!」
早い動きで抜き差しを繰り返していた男がふいに奥を長く抉った。
ぐりぐりと押し付けられる熱に声にならない声で『嫌』と震える。
「ははっ、嫌っていうわりに気持ち良さそうだね。
やっぱり満足させてもらってないんじゃない?」
違う、やめてと泣きながら弄ばれる。
嫌と言いながら悦ぶ身体を揶揄されながら何度も貫かれた。
ねちっこい抱き方に最後は本気で泣きが入った。
私は本気で嫌がったのだけれど男はとても満足そうで、仕事としては成功のようだった。
◆◆◆
疲れ果ててベッドに倒れこんでいると、隣の男が立ち上がった。
あれだけしつこくこの身体を貪っていたのに。その体力に恐れを抱く。
体力回復の魔法と使っているとはいえ、それだけでは説明のつかない絶倫さだ。
袖のボタンを留めるのを眺めていると、私の視線に気が付いた男が笑みを浮かべて感想を述べる。
「ミアちゃん、ずいぶん啼き方を覚えたね。
最初とは大違いだ」
今日は楽しませてもらったよと楽しそうな男にどういう顔を浮かべていいかわからなくなる。
額に触れて私にも体力回復の魔法を使ってくれる男にお礼を言ってベッドから身を起こす。
男は私と会話をしようとする珍しいお客だ。
この店に私を求めてやってくる客は、結ばれない誰かを求めている。
魅了の力で想い人の夢を見るのが目的で、私そのものは現実を知らしめる疎ましい存在。
事後には顔も見たくないと思う人もいるくらいなのに、この人は最初から私と会話しようとしていた。
変わっていると思うけれど、今日に繋がる気づきを得られたのはこの人のおかげ。
当初魅了の力で一夜だけ想い人に触れることができると触れ込み客を取っていた私へ、「要望は聞いてくれるの?」と尋ねてきたこの人。
それからお客の要望を聞いて演じることを始めた。
想い人と夢の時間を過ごしたいのは同じでも、愛おしそうに名前を呼ばれたいのか、会話をせず行為だけしたいのか人それぞれ違う。
それに気づかせてくれた男には感謝している。おかげで客が絶えることはない。
親友と結婚した想い人への凶暴な情欲を吐き出すために利用させてよとストレートに頼んできたのには驚いたけど。
男はこう見えて身分も職場での地位も高いらしく、親友との関係も良好で一時の衝動で壊したくないから、と笑っていた。
その瞳の中に宿る切羽詰まった色に気づいてしまったから、断ることは考えなかった。
そこまでの執着を抱いている想い人を言葉で貶めながら抱きたいという気持ちがわかることはないけれど。
忘れられない人がいるのは私の下に来る客全てに共通していて……、ミリアレナにも覚えのある想いだった。
素早く身を整えた男はまだ仕事があるからと帰っていった。
あれだけ激しく動いていたのに、どれだけ体力があるのかと戦慄する。
同じ魔法をかけてもらったけど私はもう起き上がる気力が湧かなかった。
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