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共通ルート
偽りの愛とふさわしい場所 ★
しおりを挟む「あっ、ああっ!」
ふとももが胸に付くくらい折り曲げられて貫かれる。
「ああ、夢みたいだ……!
君とこうしているなんて!」
エリゼ、と知らない誰かの名前を呼ぶ男の肩に縋り付いて甘い声を漏らす。
魅了の魔法で想う相手だと錯覚させ、一夜の夢を見せる。
彼にはミリアレナの姿が愛しい誰かに見えているのだ。
「もっと僕を欲しがってくれ!!」
「あっ、あんっ!
気持ちいいっ! もっと、もっと奥までちょうだいっ!」
男が望む言葉を口にする。
叶わぬ想いに身を焦がし、魅了持ちの娼婦を探すほど愛しい人との一夜。
夢のようなひととき、存分に溺れて良い。
現実世界では許されない、この夜だけの幻だから。
「お願い、もっとぉっ!」
「いいよ、っ、ほら!!」
ぐっと奥深くまで押し付けられる。まるで想いを刻み付けるように。
「ああああぁっ!!」
「エリゼ、エリゼっ!」
想う相手の名を呼び、感極まったように唇を奪われる。
反射的に逃げようとした舌を吸われ、絡ませられた。
(ああ、キスは無しって言ったのに……)
魅了に溺れる人間に言っても仕方のない文句に頭の奥が冷えていく。
身体の熱が冷め、苦痛を覚えるより先に男が果てたことに、そっと安堵の息を吐いた。
◆◆◆
翌朝、眠りから覚めた男は私の胸元を見て不快そうに顔を歪めた。
まどろみの中で抱いていた愛おしい人ではなく、要監視対象の証である魔術刻印を付けた女が目に入ったのだから。
『お客様』である男へ笑みを浮かべて帰りの挨拶を述べる。
「魅了の夢は満足いただけたでしょうか。
お気に召したらまたお越しください」
返事を返さない男は、私を蔑む瞳を隠さない。
愛しい人のフリをした女、魅了の力で男を欺く娼婦。
嫌悪を向けられて当然の女。
そういった侮蔑が視線には籠められていた。
その中に、想う相手を汚した自分への嫌悪が覗く。
「お帰りの前にもう一度魅了覚ましを受けていただきます。
外にいる者がご案内しますのでお願い致します」
平然としている私が不快なのか、男は侮蔑の言葉を吐いて出て行った。
「ふん、ふてぶてしい女だ姉の婚約者を奪っただけあるな」
中途半端な情報ね、と心の中で返す。
奪うも奪わないもない。
あの男の子は、お姉様の婚約者ではなかったもの。
けれど胸の中がじくりと重くなる。
私がお姉様から奪ったというのは事実。
両親の愛情も、伯爵令嬢という身分も。
私が魅了の力で奪った。
だから、この痛みはその罰なのだ。
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