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番外編 ~ひたすら甘い新婚生活 & これからの二人 ~ など
新婚夫婦の幸せな日常
しおりを挟む春の暖かな空気の中、触れ合わせた肌がじんわりと熱くなっていく。
ルークの胸に体重を預け、肩も腰も伸ばした腕に絡め取られている。
「そろそろ執務をしなくていいのかしら」
「大丈夫だよ、父が仕事を回しているから。
頭が錆びなくて丁度良いって本人も楽しんでる」
でも最近まで領地にいない私に代わって領主代行を務めていたのだから、叔父上にも少し休んでもらった方が良いと思うんだけれど。
「フェリシア」
身体に回った腕の力が強くなる。じわじわと込められていく力に喜びが湧き上がっていく。
苦しくなる前のギリギリのところで止まった腕の感触を感じていると胸がどきどきする。
「ルーク」
窘めるような声で名前を呼ぶと少しだけ腕の力が弱まった。
「ずっと気を張っていたんだから少しくらい休んでも罰は当たらないよ」
どうせ農繁期には駆り出されるんだからもう少しだけ心と身体を休めてほしいと言われる。
「気を張っていたのは入学式までよ。
そのあとは楽しい学園生活だったし、1年で卒業するための努力も張り合いがあっておもしろかった」
なによりも学園でもルークが側にいてくれたのは心強くて不安なんて何もなかった。
「アレクシスもグレイス様も学園に戻ったし」
私の結婚式の後、アレクシスがグレイス様を領地に送っていくと報告してきたときはとても嬉しくて全力で祝福をした。
まだ声が出しづらかったので身振り手振りでだったけれど。
2年後、卒業の時には二人の関係はもっと確かなものになってるかな。
アレクシスが張り切っていたからきっと心配しなくても大丈夫だろうけど。
報告にきたアレクシスの様子を見て、意外と深く想いを傾けていたんだなと少し驚いたくらいだった。
グレイス様も嬉しそうに微笑んでいたし、私まで幸せな気持ちになってしまった。
思い出して笑みを浮かべていると髪に口づけながら拗ねた声で囁かれる。
「俺と二人なのに他の男のことを考えないで」
「グレイス様とのことでも?」
こんな会話を前もしたっけと思い出す。
「俺のことだけを考えてほしい」
甘えるように頭を擦りつけてくるルークに仕方ないと緩む口元を引き締める。
幸せに流されてしまいそうになるけれど、ずうっとこうしてはいられない。
回っている腕を軽く叩くと拘束が解かれる。
それが名残惜しいような気がしてしまうのは私も毒されているからかもしれない。
身体ごと後ろに向き直ってルークと瞳を合わせる。
「来週からは領内の視察に出るから準備をしておいて。
農繁期が近いから、その前に不足しているものや修繕が必要なものの手配がないか見に行くわ」
「もう指示は終えているよ。
修繕などは順次人をやって進めているし、遅い場所でも再来週には着手できる」
そんなことだとは思った。
私がまだ動かなくていいよう手を回していることは想定済み。
「じゃあ進捗を見るための視察になるわね。
修繕が終わっている地域から回るから施した修繕の内容と補充した物品のリストを出しておくように伝えてくれる?」
有無を言わせない笑みで指示をするとわかったと了承を返す。浮かべた笑みからはもう残念そうな感情は覗けない。
私の指示を進める段取りを組み立てているルークへ手を伸ばす。
「フェリシア?」
思考を中断して私を見つめるルークの首に手を回してお願いを口にする。
「来週の視察まで、ルークも休んでね」
仕事しちゃダメよ?と言い添えると目を見開く。
私に休みなさいと言いながらルークはずっと細々と仕事をしてた。
私の世話だったり、さっきみたいに領地に必要な手配を指示したりと休みなく。
私の側を離れることは少なかったけれど、身体が休まってないのはルークの方だと思ってる。
「その間は私のことだけ考えていて?」
さっきのお返しのように口にすると参ったというように口元を緩めて手を伸ばす。
柔らかい抱擁を受け入れてルークの髪を撫でる。
頬や瞼に軽く落とされる口づけが心地よくて目を細める。同じように口づけを返すと心から幸せそうな笑みを見せた。
甘やかな触れ合いに心が満たされていく。
――蜜月はまだ終わらない。
* * * * * * * *
こちらで番外編も完結となります。
最後までお付き合いくださってありがとうございました!!
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