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〜甘い学園生活送ります〜
待ち望んだ日
しおりを挟む翌日は抜けるような青天だった。
グレイス様と軽い朝食を食べ、それぞれドレスの準備に入る。
楽しみにしてますねと言われたら、いよいよだという気持ちが強くなった。
久しぶりに侍女にメイクをしてもらい、髪を整えてもらう。
緊張なのか期待なのかわからないけれど、ずっと胸がとくとく鳴っている。
「お嬢様、美しいです。
ルーク様も今日ばかりは冷静にいられないでしょう」
「みんな、ありがとう。
ルークが動揺している姿なんてあまり想像つかないけれどね」
冗談めかして言うと侍女たちがくすくすと笑い合う。
「ルーク様は顔に出ませんけれど、お嬢様には弱いですからね」
「ええ、結婚式の準備のときだって冷静とは言い難い様子でしたもの、表情はいつもどおりの余裕があるお顔でしたけれど」
「冷静でしたら黒を使ってウエディングドレスを作ろうとはしません。
手紙を見て、だいぶ暴走していらっしゃるようだと屋敷の皆で話していたんですよ?」
軽やかに交わされる会話がおかしくて笑ってしまう。
化粧が落ちますよと言われて頑張って平静を保つ。
今日ばかりは、最高に綺麗な私を見せたかった。
転ばないようにゆっくりと足を踏み出す。
進む道の先に待っているのは、誰よりも側にいるのを待ち望んだあの人。
私と同じ、白を基調として紫の刺繍を施した衣装を纏っている。
目を細めて、私がたどり着くのを待っているルークは慣れていなければ直視すらできないほど輝かしかった。
叔父上の手を離し、ルークの腕を取る。
近くで見つめると尚更その美しさがよくわかった。
「美しい……」
「綺麗……」
私とルークのお互いの美しさを賞賛する声が重なった。
親族たちの笑い出す声と殿下たちの呆れた声が聞こえます。
「純白に施された薄紫の刺繍が肌の白さを際立たせますね。
とてもお美しい」
「ルークこそ。いつも濃い色ばかりだけど白も似合うわ、銀糸がキラキラして綺麗……。
それに、その飾り……、私の瞳の色にしたの?」
嬉しい、すごく嬉しいわ。
ベールを上げても?と問うルークへ了承を返す。
ルークがそっと手を伸ばし、白い手袋を着けた手がベールを捲り上げる。
薄い幕が無くなったらルークの深紫の瞳が思いのほか近くて息を飲む。
今日は前髪を上げていて瞳がよく見える。
伸ばした手を頬に当て、首を傾げるとルークも同じように軽く首を傾げて微笑んだ。
「お嬢の瞳が光を受けてキラキラしています」
「ルークも。
前髪を上げてるから瞳がよく見えるわ。
ルークの瞳は光の加減で色が変わるから、いつも目が離せなくなるの」
俺もですと答えるルークは幸せそうで、これまでの全てが報われた気分になる。
ひとつだけ気になったことを口にする。
「いつまで『お嬢』って呼ぶつもりなの?
それにその敬語も」
もう従者に扮する必要もないし、敬語もいらない。
昔のように話してほしかった。
「ごめん、フェリシア。
でも俺しか呼ばない『お嬢』って呼び方、結構気に入ってたから少しだけ残念かな」
もちろんフェリシアの夫になる幸福以上に惜しむものではないけどねと笑みを見せるルークは最高に格好良かった。
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