入学初日の婚約破棄! ~画策してたより早く破棄できたのであの人と甘い学園生活送ります~

紗綺

文字の大きさ
上 下
14 / 27
〜甘い学園生活送ります〜

小さな波紋はすぐに消える

しおりを挟む
 

教師から聞かされた処分については、他言するつもりはない。
処分が決まるまで家で謹慎していたがそのまま退学になるそうだ。休暇明けに籍が無くなっていることに気づく人間がどれだけいるか。
ルークの話ではあのレイル家の血を引く女性との婚姻は認められ、侯爵のもとで後継者の勉強を続けるらしい。

どうしても自分の直系に継がせたいデイガルド侯爵の判断に親族から不満が出ているとか。荒れそうだな。
一代飛ばして元婚約者とあの女性の子に継がせるつもりでも反発は避けられない。

容姿を見ただけでどこの家に連なる者かわかるほど希少な血筋の女性が市井にそういるわけはない。
――通常なら。
レイル家もまた醜聞を抱える家だ。
『色狂い』とまで言われた数代前の当主から流出した血であるのは間違いなく。
そんな相手と学園内で多数の人間に不貞行為を目撃され退学処分になったという、前代未聞の醜聞を作った元婚約者の子供に継がせるくらいなら現当主の甥や従兄弟に継がせた方が良いと考える者が出るのは当然だった。


いくつか手紙を書いてルークに渡す。
学園から退学処分を受けたことで元婚約者に注がれる目はより厳しいものになる。
少なくとも本人が侯爵家を継ぐことはないだろう。
もう顔を見ることもなさそうで良かった。

手紙を懐にしまったルークが何か言いたげな顔をしている。

「帰らないよ?」

釘をさすつもりで告げると悲しそうな顔をされる。
罪悪感が刺激されるのでそんな顔をしないでほしい。

「わかってます。
そうではなくて、休暇中もずっと学園で過ごすんですか?」

最初からそう言っていたのに。最短で卒業しようと思ったら領地に帰る暇はないと。

「一日くらいは休みましょう?」

「いや……」

「あ、お嬢の役に立ちそうな本が王立図書館にありましたよ。
貸し出し禁止だったので行かないと読めない本なんですよね」

「お前が写してくればいいんじゃないか?」

本気ですか、と真顔になるルークに声を立てて笑う。
専門書を丸写ししてこいなんて意地悪を言うつもりはないよ、流石に。

「チェリーの時期は終わりましたが、凍らせたチェリーを使ったデザートを出すお店があるので一緒に行きましょう」

私がいつまでも食べ物に釣られる子供だと思っているのかと軽く睨む。
正直すごく心惹かれるけど。

「子ども扱いしてるわけじゃありませんよ」

ただ、とルークが目を伏せる。

「このところ随分根を詰めていたでしょう?
少し気分転換をしませんか」

優しく言い聞かせるような声音に目を瞬く。
まいったなと前髪をかき上げ苦笑する。

「そんなに疲れた顔してた?」

「いえ、お嬢はいつも活力に満ちてますよ?
俺が勝手に心配しているだけです」

微笑んで否定をするけれど、ルークから見たら息抜きをした方が良いような状態に見えていたみたい。
情けなさと心配してくれる嬉しさが複雑に絡み合う。
ふっと息を吐いて気持ちを切り替える。

「じゃあ外出申請しておく。
一日一緒にいるのは久しぶりだ……、楽しみにしてるよ」

口にすると楽しみが強くなっていく。
ルークも俺もですと嬉しそうにするので口元の緩みを隠すことはしなかった。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜

みおな
恋愛
 大好きだった人。 一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。  なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。  もう誰も信じられない。

この波の辿り着く果てには

豆狸
恋愛
──嫌な夢をふたつ見て目を覚ましました。 最初に見たのは、学園の卒業パーティで私の婚約者サロモン殿下に婚約を破棄される夢です。婚約破棄を告げる殿下の傍らには、アンビサオン伯爵令嬢のヴィシア様の姿がありました。 なろう様でも公開中です。

幸せな人生を送りたいなんて贅沢は言いませんわ。ただゆっくりお昼寝くらいは自由にしたいわね

りりん
恋愛
皇帝陛下に婚約破棄された侯爵令嬢ユーリアは、その後形ばかりの側妃として召し上げられた。公務の出来ない皇妃の代わりに公務を行うだけの為に。 皇帝に愛される事もなく、話す事すらなく、寝る時間も削ってただ公務だけを熟す日々。 そしてユーリアは、たった一人執務室の中で儚くなった。 もし生まれ変われるなら、お昼寝くらいは自由に出来るものに生まれ変わりたい。そう願いながら

婚約者は…やはり愚かであった

しゃーりん
恋愛
私、公爵令嬢アリーシャと公爵令息ジョシュアは6歳から婚約している。 素直すぎて疑うことを知らないジョシュアを子供のころから心配し、世話を焼いてきた。 そんなジョシュアがアリーシャの側を離れようとしている。愚かな人物の入れ知恵かな? 結婚が近くなった学園卒業の半年前から怪しい行動をするようになった婚約者を見限るお話です。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

婚約破棄? 五年かかりますけど。

冬吹せいら
恋愛
娼婦に惚れたから、婚約破棄? 我が国の規則を……ご存じないのですか?

婚約破棄ですか?勿論お受けします。

アズやっこ
恋愛
私は婚約者が嫌い。 そんな婚約者が女性と一緒に待ち合わせ場所に来た。 婚約破棄するとようやく言ってくれたわ! 慰謝料?そんなのいらないわよ。 それより早く婚約破棄しましょう。    ❈ 作者独自の世界観です。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

処理中です...