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〜甘い学園生活送ります〜
閑話 とある女生徒《ファン》の目撃談
しおりを挟む寮に戻り、机の上に今日返却期限の本を見つけて慌てて返しに行ったんです。
閉館前に間に合って良かったと思いながら寮に戻ると、あのお二人をお見かけしました。
ハイラル伯爵家のフェリシア様とルーク様!
入学式から私の周囲はあのお二人の話題で持ち切りでした!
いえ、あの事件の話ではないですよ。
もちろん何があったか知ってはいますけれど。
むしろこの学園の生徒で知らない人はいないのではないでしょうか。
お二人の話はそんなことじゃないんです!
まずはフェリ様の美しさ。
あ、私たちの間では女子の制服を着ているときをフェリシア様、男子の制服を着ているときをフェリ様と呼び分けています。
何故って? わかりやすいからです。
フェリ様は首筋が出るくらいの短い髪にしていらっしゃるので首の細さ、白いうなじの美しさが際立ちます。
下ろした前髪から除く紫の双眸は引き込まれそうなほど強く、ふいに目が合うと息を飲むほどの意志の強さを感じさせるともっぱらの噂です。
残念ながら私はまだフェリ様と目を合わせたことがありません。
もし目が合ってしまったら魂を抜かれてしまうかもしれませんね。
そしてフェリシア様。
フェリシア様のときは制服の上からでも華奢さがよくわかる身体のラインと背を覆う艶やかな黒髪が印象的です。なにより意識を引き込まれてしまうような紫の瞳は女性同士であっても目が離せなくなるくらいです。
印象がこれだけ違うのはメイクと、フェリシア様ご自身の意識の成せる業でしょうか。
普段から男装をなさっているのは正解だと思ってしまうくらい色香を感じさせるのですから、ルーク様の心配も尤もなことだと思います。
フェリシア様の従者兼婚約者のルーク様も素敵な方です。
背は高く細身ですが、腰や肩のラインをみると鍛えていらっしゃるのがわかります。
フェリシア様と同じ色味の黒髪はわずかにウェーブしていてそれがまた大人の色気を感じさせます。瞳は遠目から見たら黒に見えるくらいの深い紫。
フェリ様よりも目撃困難ですが、近くで見ると紫水晶の原石のように見る度に変わる深く引き込まれる色なのだとか。
お二人が並んでいらっしゃると本当に目の保養でいつも見惚れてしまいます。
そのお二人が!
今目の前でタルトをあーんしています!!
なんという僥倖……!
素晴らしいものを見た興奮に手が震えています。
細い指先で摘み上げたお菓子をルーク様の口元に運ぶフェリ様へ、ルーク様がもう少し近づけてと囁く。
お互いの視線を絡み合わせながら行なわれるその行為に、口元を押さえ奇声を上げそうな自分を抑えます。
婚約者同士とはいえ学園内では主従の分を越えず決して触れ合うことはありません。
そんなお二人が人目のない場所で手ずからお菓子を食べさせて……!
なんという素晴らしい場面を目撃したのでしょう!
口元を拭いルーク様がフェリ様に何かを囁いています。
内容はわかりませんがほんのりと目元を赤らめるフェリ様の様子に胸を撃ち抜かれました。
ああ……、早く同士にこの事を教えたい。
両手で自分の口を塞いだまま、フェリ様が女子寮に入るまで見守っているルーク様が立ち去るまで息を潜めていました。
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