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団長&副団長 × アミル

エピローグⅡ ★

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 カイルたちは予定より数日だけ早く帰還した。
 戻って来たカイルの顔を見て危険を感じる。
 その不安は夜に的中した。



 引きずり込まれた部屋で縛られた手を壁に当て、立ったまま後ろからの愛撫に耐える。

「カイル……っ、これ、解いてっ」

 身動きが取れないほどでもない拘束は淫靡に興奮を高める道具としてのみ機能し、アミルを高ぶらせていく。

「どうして?」

 アミルの勃ち上がったペニスをやわりと握り、後ろに咥え込ませた指を奥まで入れ上部から入口近くまでを刺激する。

「あああ……っ!」

 身を捩り快感を追う。
 イイところを巧みに避けながら指の抜き差しを繰り返す動きに腰が勝手に動いてしまう。
 緩やかに握っただけの手にペニスを押し付けて快感を得ようとすると、咎めるようにペニスの根元を戒められた。

「……っ! くぅ……」

「俺の手を道具に使ってイこうとしてたの?」

 楽しそうに喉を鳴らすカイルが根元を戒めたまま問いかける。

「……っ」

 自ら卑猥な動きでイこうとしていたことが恥ずかしくて、認めがたくて唇を噛む。

「やらしいね、アミル」

 もう一回したい?と聞かれて戒めていた指が緩められる。
 作った輪で僕のペニスを緩く扱き快楽を与えていくカイル。
 もっと強くほしい。頭を支配する快楽への切望が思考を奪う。
 カイルの手が誘うように淫らに動いた。

「あ……っ、はあっ……」

 ゆっくりとペニスを扱き、腰の動きに合わせるように前後させる。緩やかな動きがたまらなく気持ち良い。
 気づけばカイルの手は止まり、アミルの腰だけが動いていた。

「……っぅ!」

 弾けた快感に自分がしていた行為が蘇り、熱に浮かされていた頭がざっと醒める。
 振り返り見上げた目に映る妖しく口元を釣り上げたカイルに、アミルは完全に術中に嵌まったことを悟った。


 今度は俺の番ねと背中を壁に押し付けられ片足を持ち上げられる。戒められた手がどこかに掴まるのを阻害し不安定な体勢がほんのわずか恐れを生んだ。
 後ろの入口に当てられた熱に達したばかりの身体がひくりと震える。見上げるカイルは妖しく欲を孕んだ目をしていて、己の赴くままに貪らんとする傲慢さでアミルを貫いた。

「あああああっ!!」

 一気に奥まで突かれた衝撃に甘い悲鳴を上げる。
 達したばかりの身体はカイルの強引な動きでも快感として受け取った。
 続けざまに腰を打ち付けられ激しくなるばかりの快感。
 反応を見て弱いところを集中して虐めるようないつもの動きではなく、自身の欲望を優先する激しく身勝手な動き。
 常にない求められ方は暴力的なまでの快楽をもってアミルを襲った。

「ああああっ……!!」

 乱暴に揺さぶられ奥に放たれてもまだ抽挿は終わらない。
 押し広げるように強く中を擦りあげ、奥をぐりぐりと抉られる快感に啼く。
 達しながら激しく貫かれるのは快感というよりも拷問だった。

「あっ、カイル……っ!」

 カイルの出したモノでぐちゃぐちゃと鳴る音が受ける行為の激しさを物語っているようだった。

「アミル……」

 余裕のない声でアミルの名前を呼ぶカイルに涙で滲んだ目を向ける。
 多少落ち着いたのか有無を言わせず妖しく誘う色ではなく、いつものカイルのような飄々とした掴めない目でアミルを見ていた。

「おかえりって言って」

 ほんのわずか上げた口元で迎える言葉をねだるカイル。
 珍しい言葉に驚きをもってカイルを見つめるが……、内心を窺う余裕はアミルにはなかった。

「カイル、おかえりなさっ……!
 あっ、ああああああっっっ!!!」

 おかえりの言葉と共に激しい一撃が与えられ、奥の奥まで貪るように腰を押し付けられる。
 深いところに注がれた欲望の熱さに、アミルは何度目になるのかもわからない精をカイルの腹に吐き出した。




 激しすぎる行為が終わり床に崩れかけたアミルを支え、縛っていた手を解く。
 脱ぎ散らかした制服が表情に現れないカイルの余裕のなさを表しているようだった。非常に珍しい。

「団長、またずいぶんと跡付けたね」

 アミルの背にびっしりと付いた赤い跡にカイルがおかしそうに笑い、背に散っている数を教えるように指を当てていく。

「……っ」

 腰や背をなぞる指にいやらしさはないのに快感冷めやらぬ身体はそれだけで熱を集めていく。
 また行為になだれ込みそうな空気を避けるために適当な話題を口にする。


「カイルはなんだかんだ団長のことが好きですよね」

 ぱちりと目を瞬くカイルは思わぬことを言われたといった顔をしている。まさか自覚ないのかな。あれだけからかったりちょっかい出してるのに。

 カイルの性格上嫌いなものや興味のないものには近づかないと思うんだけれど。
 あからさまに態度に出すことはしないので気づかない人も多いだろうけれどアミルには確信があった。

「そりゃね、長い付き合いだし」

 当然でしょと返すカイルにずっと思っていたことを聞いてみる。

「団長の下に来たときのことがあるからですか?」

 あのとき何かカイルの琴線に触れることがあったんだろう。

「ああ、あれ?
 まあ、それの影響は大きいかな」

 その時のことを思い出したのかカイルがおかしそうに笑う。

「だってさあ、自分も疎まれて厄介な任務ばっかり押し付けられてるのに『真面目にやれ』だよ?」

 元々魔獣討伐の実績がずば抜けていることからゆくゆくは団長候補にと目されていたらしいけれど、粗悪品のポーションで不正に利益を得ていた件を暴いたことで若くして団長に上がった団長。当然周囲からのやっかみもすごかったと語るカイル。

「馬鹿みたいに真っ直ぐで、粗悪品のポーションの件では自分だって後々に響くダメージ負ってんのに腐らないでさー。
 そういうところが腐った奴らの癇に障ったんだろうね。
 だから俺みたいな面倒そうな部下を押し付けられたんだよ」

 当時カイルを団長の下に異動させた人の思惑としては扱いにくい部下を付けて団長の邪魔をしたかったんだろう。

「そんなのが、くだらない奴らのやっかみで潰されるのはおもしろくないでしょ?」

 困難があっても真っ直ぐ前に進む団長の姿に思うところがあったらしい。感化はされないところがカイルらしいなと思う。
 団長とカイルはお互いを上手く生かし次々に実績を上げていき、狙いとは真逆の結果になったわけだ。
 笑っちゃうよねと口元を吊り上げるカイルは当時のことを思い出したのかとても愉快そうだった。
 自分たちが扱えなかったからって団長もそうだとは限らないのにねと。

「そうだったんですか」

 アミルが入団したときにはもう二人は今のような信頼し合う関係だったのでこうして過去のことを聞くのは不思議な気分だ。カイルが素直に話してくれたことも。

 話をしている間に身を整え汚した床を拭き取る。
 こんなに切羽詰まって抱かれたのは初めてかもしれない。
 扉を開ける直前、思い出したことにカイルを振り返る。

「カイルは言わないんですか」

「ん?」

 一瞬目を瞬いたカイルだけれどすぐにアミルが何を求めているのか気づく。

「……ただいま」

 緩んだ口元と細められる目に胸がくすぐったくなる。
 くしゃりと頭を撫でる手が、カイルの言葉にしない気恥ずかしさを表しているようで、アミルの口元にも笑みが浮かぶ。
 もう一度おかえりなさいと伝えると、返事の代わりに軽く頭をぽんぽんと叩いて出ていった。


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