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団長&副団長 × アミル

言葉も発せないほど ★

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 懐かしい風景が見えてきてやっと戻ってきたんだと実感が湧く。
 長い間離れていたからか皆ほっとした顔をしていた。

 拠点に残っていた人たちもそれは同様でやっと戻ってきたなと声が掛けられる。
 団長とカイルは残留組の指揮を執っていた方を労い、引き継ぎのため団長室に向かった。
 先輩たちはそれぞれ荷物を片したり馬を休ませに行ったりと散っていく。
 アミルも薬品類の片づけのため医務室へ向かう。
 戻ってきたという安堵感や開放感、それから夜には慰労会もあると聞いたため皆どことなく浮ついた雰囲気だった。


 食堂で開かれた慰労会では酒こそ無いものの大騒ぎだった。
 帰還して数日は休みになるということもあって皆浮かれている。
 食べて喋って笑い合って、きっと夜半まで騒ぎが続くだろう。

 賑わう食堂を離れ、宿舎の中を歩く。
 進むごとに躊躇いが足を鈍らせる。
 階段を上がり切ったところで、暗い廊下の先で壁に寄りかかっているカイルが目に入った。

「あ、ずいぶん遅かったね。
 迎えに行こうかと思っちゃったよ」

 そう言いながら満足そうに笑みを深める。
 嘘ばかり。アミルが来るのを待っていたくせに。
 アミルが快楽を求め自ら抱かれに来るのを待っていた。そうとしか考えられなかった。
 カイルの表情を見る限りそれは間違っていない。
 そして、そうとわかっていてもアミルは同じ行動を取ってしまうだろう。

 カイルが壁から背を離しアミルの側まで歩いてくる。

「遠征前からずっとしてないでしょう、待ちきれないんじゃない?」

 腰を引き寄せたのと別の手で襟元を緩め、差し入れた手が首に触れる。
 長い指が首筋をくすぐり、さわりと肌が粟立つ。

「……っ」

 悪戯にくすぐるような軽い触れ方。
 鎖骨の上を滑る感触に息を詰めるとカイルが笑みを深めた。

「ねえアミル、自分でボタン外してよ」

 指の動きはそのままにカイルが言う。

「中で……」

 部屋の中に入ってからと答えたアミルにダメだよと笑う。

「今ここで、アミルの手でボタンを外して俺を誘って」

「……っ」

 なんでもないことのように告げられた内容に息を呑む。
 それはアミルが自分から望んだことだと思い知らせる行為だった。
 羞恥に頬が熱くなっていく。
 逡巡に動けないアミルを見つめ、指でなぞるだけの微かな刺激で行為を促す。

 懇願する視線を向けてもカイルは動かない。
 アミルが迷うのすら楽しんでいる。
 迷い、躊躇いながら堕ちてくるのを。

 指先がぴくりと動き、硬直した手がゆっくりと動き出す。
 迷いを表すような緩慢な動きでもカイルは急かしたりしない。
 ただ待っていれば陥落するとわかっているかのように。
 ボタンに掛けた指先が震えて上手く動かない。
 自分を落ち着かせるように息を深く吸ってゆっくりと手を動かす。
 ぎこちない動きでひとつボタンが外れ、カイルが満足そうに口の端を釣り上げた。
 続けて下のボタンへ手を掛けようとしたとき、階下から怒りに満ちた声が響いた。

「なんのつもりだ、カイル」

 階段を上ってきた団長が低い声で問い質す。
 内包する怒りに慄くアミルとは違い、カイルは余裕のある態度を崩さない。
 ただその笑みが、楽しげなものから剣呑な空気を孕んだものへ変わっていた。
 肩を組むように後ろから腕を回し挑発的に団長を見上げるカイル。

「なんのつもりって?
 アミルを気持ち良く蕩かして俺のことが欲しくて欲しくてたまらなくなるくらい可愛がってあげるつもりですけど」

 そう言ってひとつ分だけ広がった襟元から滑り込ませた手で首筋から鎖骨の下までをするりと無でる。

「……っ!」

 ぞくりと走った感触に息を詰める。
 小さく身を震わせた僕を見て団長の額に青筋が入った。

「手を離せ、お前の言う同意は了承とは違う」

 無理矢理に迫って嫌と言わせないだけだろうと、僕の腕を引きながらカイルを睨む。

「心外ですね、ちゃんと合意ですよ」

 ね、とアミルが自分で外したボタンをとん、と指先で叩きその下のボタンへ手を滑らせた。
 カイルがボタンを外し、胸の中程まではだけたことで侵入が容易になった隙間から手を入れまだ柔らかい乳首を摘む。

「……んんっ!」

 急な刺激に身悶えし甘い声を上げる。

「ねえ? アミルはこうして俺に触れられても嫌じゃないもんね」

 そうでしょと問いかけながらふにふにと乳首を弄ぶ。

「ん……! んぅ……っ」

 久々に弄られ気持ち良さにカイルのなすがままになってしまう。
 目を伏せ快楽を受け入れていると、団長の手が顎に触れ顔を上げさせられる。
 目を開けると、ぎらぎらと燃え滾るような感情を内包した瞳と目が合った。

「……っ!」

 焼け付くほどの視線を向ける団長に、快感に飢えた身体が燃え上がるように熱くなる。

「団、長……」

 熱くて、苦しい。
 どうしたら良いのかわからなくてただ名前を呼ぶ。

「アミル……」

 掠れた声でアミルの名前を読んだ団長の手が胸元に伸びる。

「あああんっ!」

 カイルに弄られているのとは反対側の乳首を親指で擦られ快感の悲鳴を上げる。

「気持ち良くなりたいだけなら俺でもいいだろう、アミル」

「ああああっ!」

 擦り上げ立ち上がった乳首を更に擦り、快感を与えていく。

「気持ち良くさせてほしいなら俺の方が良いよね。
 アミルの良いところたくさん虐めて気持ち良くさせてほしいでしょう?」

 こんな風に、と抓まれた乳首に悲鳴を上げる。
 カイルの言葉に団長も手を動かす。
 指の腹で繰り返し刺激され快感に悶える。

「俺の手でも気持ち良さそうだぞ。
 なあアミル、別にカイルでなくても良いだろう?」

 アミルの反応を見つめる視線にも昂っていく。
 どちらから与えられる刺激にも敏感に反応し快楽へ変換してしまう。

「あっ、待っ、って、……んんっ!」

 譲らない二人の動きはどんどん激しくなっていった。
 しばらく言葉の応酬が続き、埒が明かないと同時にアミルを向く。

「なあアミル、どっちがいい?」
「ねえアミル、どっちがいい?」

 散々嬲られ与えられ続けた快感にもう限界だった。
 かくりと足が折れ、二人の腕がアミルの身体を支える。
 乱れきった息を零し身体を震わせる。
 もう、何も言葉にならなかった。


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