騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

文字の大きさ
上 下
57 / 69
団長&副団長 × アミル

今後の方針

しおりを挟む
 

 宿へ戻り団長とカイルと部屋で今後の話を詰める。
 襲撃してきたのが身元を隠した騎士だったことは全員に緊迫感を与えていた。

「このタイミングで騎士団が出て来るとはな。
 奴らがこの件に関わっている可能性もあるということか」

「……魔獣飼育を見逃してるだろうなとは思っていたんですが、逃走の補助をするまでとは思いませんでした。
 ただ、深く関わってるにしては魔獣の襲撃を許したりと詰めが甘いと思いますが。
 に命じられて事に及んだとも考えられます」

 口封じにまで及ぼうとしたことからこの件に騎士団が深く関わっているのではないかと懸念を上げる団長に対して、支援者に頼まれて事に及んだ可能性もあると答えるカイル。
 いずれにせよ事態は当初考えていたよりも深刻だった。

「そうだ、アミルにもこれ渡しておくよ」

 カイルから上級ポーションを渡され躊躇いながらも頷いて懐に入れる。
 緊急時に治療ができる方法を持っておくというのは備えとしてありがたい。
 団長の体質を思えばカイルだけでなく他の者も手立てを持っておくのは大事なことだろう。

「団長がポーションを使えないなんて知りませんでした。
 どうして他の人にも周知しないんですか?」

 今日のアミルのように知らずポーションを使ってしまう危険性がある。
 皆にも周知しておけばそんな危険はないのに。

「団長がポーションを使えないのは以前騎士団に降ろされていた粗悪品のポーションが原因だからだよ」

「カイル!」

 咎める声を上げた団長へ別にいいじゃないですかと肩を竦めるカイル。
 二人の間で視線をさ迷わせるアミルへ仕方ないかとため息を吐いた団長が説明をしてくれた。
 粗悪品を納め差額を懐に入れるという不正が過去にあったそうだ。

「不純物の入ったポーションを多量に使用していたことから中毒のような状態になってしまってな。
 今でも支給品のポーションが使えないんだ、使うと悪化する」

「上級ポーションは基礎に使われている素材が違うからね。
 小さな傷でも治療をするためには上級ポーションを使うしかない」

 続けられたカイルの説明に納得する。
 それでカイルが普段から上級ポーションを持っていたのか。
 いつだったか上級ポーションで打ち身の手当てをされたことを思い出す。
 頷いているアミルへ団長が心配そうな顔を向ける。

「そういう理由だから俺がポーションを使えないことは他の者には伏せておいてくれ。
 当時の関係者たちは捕まったが、不祥事として事件そのものは内々に処理をされたことだ」

 わかりましたと神妙に頷く。
 そういう理由であればアミルに言えることはない。
 これまでも怪我をしたときにはカイルが密かに治療をしてきたというし、事情を知り治療ができる人間が増えただけでも団長には良いことだと頭を切り替えた。

「そういえば捕まえた人たちはどうするんですか」

「ここの騎士団が信用できないことははっきりしたし、中央騎士団に引き渡すように指示してあるよ」

 中央騎士団の名を聞き目を瞠る。中央騎士団はその名の通り国の中央に位置する騎士団だがその他にも役割がある。
 各地の騎士団を監視し不正を摘発するのも中央騎士団の任務の一つだ。
 今回のような事件であれば報告をして協力を仰ぐこともある。

「中央騎士団が来るまではこちらで保護を?」

「ん?」

 騎士たちが犯人の口封じに動いたことから、捕らえた者たちにも同じ危険が及ぶと思いこちらで保護するのかと考えていたアミルの勘違いをカイルが訂正する。

「近くに中央騎士団の人間が駐留している街があるからそこまで移送するんだよ。
 薬を使うよう言ってあるから逃走の心配もしなくて大丈夫」

「逃げた男の追跡や関係先の監視にも人手を割いている。
 こちらの人数をこれ以上減らすわけにはいかないからな。
 襲撃者現物を持っていけば駆け付けるのも早くなるしこちらで守る必要もない」

 二人の話に成程と頷く。
 戦闘能力のある騎士を移送するには危険が伴い、本来ならそれなりの人数で監視しなければならない。それを睡眠薬や痺れ薬を使うことで派遣する人数を最小限にする、緊急事態でしか取れない方法だ。
 中央騎士団がいると言っても大人数ではないらしく、少人数でもいいから第三者として即時の同行を求めに向かうのだという。
 本隊の派遣は後々になるとしても先に中央騎士団所属の騎士が現状を把握をしておくことでその後の処理が速やかに進む。

「早く来るといいんだが。
 犯人を取り逃がすことは予定通りだったが騎士団からの横やりで見失ったりはしてないか?」

「二人以上で追っていますし、逃走先として目星を付けていた場所にも複数の人間を張り付かせてあるので完全に見失うことはないでしょう」

 気づかれていたらまた面倒なことになりますがと付け加えるカイルに団長も重々しく頷く。

「できれば中央騎士団が着く前に犯人の確保だけでもしておきたいですね」

「そうだな、口封じをされたら目も当てられない。
 騎士団のことは中央騎士団の者が着いてからでいいだろう。
 奴が逃げ込んだ場所を掴み次第潜伏先の捜索に入りたい」

 まずは逃げた犯人を確保すると団長が方針を打ち出す。
 じゃあさっさと休まないとですねと言ったカイルの言葉をきっかけに、それぞれ席を立った。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

王様お許しください

nano ひにゃ
BL
魔王様に気に入られる弱小魔物。 気ままに暮らしていた所に突然魔王が城と共に現れ抱かれるようになる。 性描写は予告なく入ります、冒頭からですのでご注意ください。

ツンデレ王子とヤンデレ執事 (旧 安息を求めた婚約破棄(連載版))

あみにあ
恋愛
公爵家の長女として生まれたシャーロット。 学ぶことが好きで、気が付けば皆の手本となる令嬢へ成長した。 だけど突然妹であるシンシアに嫌われ、そしてなぜか自分を嫌っている第一王子マーティンとの婚約が決まってしまった。 窮屈で居心地の悪い世界で、これが自分のあるべき姿だと言い聞かせるレールにそった人生を歩んでいく。 そんなときある夜会で騎士と出会った。 その騎士との出会いに、新たな想いが芽生え始めるが、彼女に選択できる自由はない。 そして思い悩んだ末、シャーロットが導きだした答えとは……。 表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ※以前、短編にて投稿しておりました「安息を求めた婚約破棄」の連載版となります。短編を読んでいない方にもわかるようになっておりますので、ご安心下さい。 結末は短編と違いがございますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。 ※毎日更新、全3部構成 全81話。(2020年3月7日21時完結)  ★おまけ投稿中★ ※小説家になろう様でも掲載しております。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

処理中です...